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下垣内教授の江戸
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下垣内教授の江戸の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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彼の作品はほとんど読んでおりましたが、中でも深い感動を与えてくれる作品です。 | ||||
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作家を志す青年・守屋広臣が新聞社に務めているときに、美術の世界で高名な下垣内邦雄氏に面談した時の話を書いている。守屋は作家になるために後に新聞社を退職してこの話を書いたのだった。 下垣内は、守屋が下垣内の家の応接間に飾ってある絵に見入っている様子や、下垣内がかつて訪ねた鎌倉郡瀬谷村が守屋の生地であることに心を許し、自身の生い立ちを語るのだった。それは、下垣内が青年時代を過ごした幕末から明治初頭にかけての話で、「俺は人を切ろうとしたことがあるんだよ」から始まった。 多摩の豪農の次男として生まれた下垣内は、十八歳になるまでに昌平黌に通いながら北辰一刀流の中目録免許を納め、剣術の他にも、書、画、聞香、古琴、茶などを習った。いわば何不自由なく青春を謳歌し、生来の素直な性格も相まって好青年として育ったのだった。下垣内の話し方や挙措動作に、躾けられた者の美しさを感じた(青山文平氏の文体である)。そして慶応三年四月の初めに兄に呼ばれて故郷の多摩へ戻ってきたその時は、十月に大政奉還があった年である。 そこからの話は、関東一円に蔓延ることになった百姓一揆やそれに対して兄の下垣内昌邦たち豪農が農民隊を率いて戦った話や、農政改革や多摩地方の農業の様子、横浜の外国人たちとの商いなど、まさに歴史に肉付けしての下垣内家の活躍や生き様が語られていく。当時の多摩地方、新撰組の近藤勇や土方歳三の出た土地だが、の様子がよくわかり興味深く読んだ。 前置きが長いのはこの人の作品「泳ぐ者」に似ているが、そこは剣士・下垣内邦雄の人となりを知るのに大事なところなので少々退屈ではあるがじっくりと読む必要がある。そして主題となる「俺は人を切ろうとしたことがあるんだよ」につながり、急転直下に下垣内の人生が変わっていく。剣士が美術の教授に到達するまでに不自然さを感じないのは、ここまでの語られていた伏線が鮮やか蘇る(よみがえる)からである。改めて書き出しに戻って下垣内の登場してきた様子を読み返して、その重厚さと奥の深い人生に感銘を受けるのだった。 青山文平氏の作風の面目躍如たるものがあり、氏の作品を愛するものとして満足感を持って読み終えた。 | ||||
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