(短編集)

祈りの海

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評判

祈りの海の評価:

3.93/5点 レビュー 28件。 B ランク

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平均点3.93pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全44件 21〜40 2/3ページ
No.24
(4pt)

いろいろなタイプの作品が読めた。

短編集「」を読み、長編「」に取りかかっている間に読んだ「祈りの海」。個人的に好きな方向のSFとは少し違っていた。SFというよりは現代をテーマにした物語と言っていいものもあった気がする。でも、いろいろなタイプの作品が読めて、お得な1冊だった。

「貸金庫」。これはせつなかった。「わたし」は宿主から宿主へと移動しながら生きている存在。「わたし」が誰なのかは、ラストにわかるのだが、せつない…。

「キューティ」。子供が欲しい「僕」と欲しくないパートナー。不毛な議論は何度となく繰り返され、去っていったパートナー。それでも子供の欲しい「僕」は…。これもせつない物語なのだろうが、個人的には展開と結末には、やや不快感も感じる作品だった。

「ぼくになることを」。これはSF、と感じた作品。人類皆、頭の中には脳の他に「宝石」が埋め込まれている。脳も宝石も、同じ記憶を保持するのだが…。「わたし」とは何かを、いろいろと考えさせられた物語。ラストは怖かった。

「繭」。ジェンダーを取り扱った作品と言って良いと思う。推理小説にも近いものがある。

「百光年ダイアリー」。もしも、これから起きることを先に知っていたら、人間は果たしてどう生きていくのだろうか。著者は物語の中でそれを書き出しているが、私だったら、虚無感と絶望に囚われるかもしれない。知っていても絶対に回避できない悲劇を先に知っているとしたら…。

「誘拐」。著者が良く使うテーマがモチーフとなっている。しかし、ここに書かれている「私」のパートナーは、本当に「私」に愛情を持っているのか?なぜ一緒に暮らしているのか、疑問だ…。

「放浪者の軌道」。これも好きなタイプのSF。地球にあるときから起きた変化。人々の生き方はがらりと変わるが、それに適応できない人々もいる。だが…。

「ミトコンドリア・イブ」。信じることは結構だが、自分だけが正しいということがどれだけの狂気となるか、皮肉な思いで読んだ作品。「ぼく」は出会って間もない彼女を失いたくないがために、自分の信念を捨てて、あるいは曲げて、彼女の信念に付き合っていくのだが、それが情けなくしか感じられなかった。しかし結末はある意味爽快だ。

「無限の暗殺者」。これも好きなタイプのSF。パラレルワールドを扱っている作品で、読み応えがあった。

「イェユーカ」。これは貧富の差を描き出した作品かと思う。

「祈りの海」。この本の中では一番中長い作品。地球から遠く離れた星に移住して久しい人々。彼らがどんな姿をしているのか想像するのは難しい。人間にきわめて近い形だとは思うが、生殖の部分の描写はそうではないことも暗示させる。信仰がテーマにもなっている。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.23
(4pt)

いろいろなタイプの作品が読めた。

短編集「」を読み、長編「」に取りかかっている間に読んだ「祈りの海」。個人的に好きな方向のSFとは少し違っていた。SFというよりは現代をテーマにした物語と言っていいものもあった気がする。でも、いろいろなタイプの作品が読めて、お得な1冊だった。

「貸金庫」。これはせつなかった。「わたし」は宿主から宿主へと移動しながら生きている存在。「わたし」が誰なのかは、ラストにわかるのだが、せつない…。

「キューティ」。子供が欲しい「僕」と欲しくないパートナー。不毛な議論は何度となく繰り返され、去っていったパートナー。それでも子供の欲しい「僕」は…。これもせつない物語なのだろうが、個人的には展開と結末には、やや不快感も感じる作品だった。

「ぼくになることを」。これはSF、と感じた作品。人類皆、頭の中には脳の他に「宝石」が埋め込まれている。脳も宝石も、同じ記憶を保持するのだが…。「わたし」とは何かを、いろいろと考えさせられた物語。ラストは怖かった。

「繭」。ジェンダーを取り扱った作品と言って良いと思う。推理小説にも近いものがある。

「百光年ダイアリー」。もしも、これから起きることを先に知っていたら、人間は果たしてどう生きていくのだろうか。著者は物語の中でそれを書き出しているが、私だったら、虚無感と絶望に囚われるかもしれない。知っていても絶対に回避できない悲劇を先に知っているとしたら…。

「誘拐」。著者が良く使うテーマがモチーフとなっている。しかし、ここに書かれている「私」のパートナーは、本当に「私」に愛情を持っているのか?なぜ一緒に暮らしているのか、疑問だ…。

「放浪者の軌道」。これも好きなタイプのSF。地球にあるときから起きた変化。人々の生き方はがらりと変わるが、それに適応できない人々もいる。だが…。

「ミトコンドリア・イブ」。信じることは結構だが、自分だけが正しいということがどれだけの狂気となるか、皮肉な思いで読んだ作品。「ぼく」は出会って間もない彼女を失いたくないがために、自分の信念を捨てて、あるいは曲げて、彼女の信念に付き合っていくのだが、それが情けなくしか感じられなかった。しかし結末はある意味爽快だ。

「無限の暗殺者」。これも好きなタイプのSF。パラレルワールドを扱っている作品で、読み応えがあった。

「イェユーカ」。これは貧富の差を描き出した作品かと思う。

「祈りの海」。この本の中では一番中長い作品。地球から遠く離れた星に移住して久しい人々。彼らがどんな姿をしているのか想像するのは難しい。人間にきわめて近い形だとは思うが、生殖の部分の描写はそうではないことも暗示させる。信仰がテーマにもなっている。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.22
(5pt)

濃いめの化粧

グレッグ・イーガン、オーストラリアのSF作家。彼の作品たちは素晴らしい。内容には触れずそれらに共通する様式美について言及しようと思う。

少し話は逸れるが、昔テレビで見た企画にこのようなものがあった。原宿を歩くギャルたちに彼女らの濃い化粧を落としてもらい、素顔を見るというものだ。
素顔を見て私が思ったのは、化粧を落とした、ナチュラルメイクの彼女たちの方がかわいいもしくは綺麗だということであった。TVに出演していた芸能人たちも同様の感想を述べていたのを覚えている。

話を戻すと、イーガンの作品は基本的に”化粧が濃い”。難解な設定、量子力学や生物化学についての様々な空想、それらの説明は作品中できちんとなされることもあればそうでないこともある。そして、我々にはその空想が本当に現代科学の延長上に存在しうるのかということは知りえない場合が多い。その難解な設定を前に読み手は進むことを躊躇してしまう。確かに、その内容が理解できれば作品を楽しむことができるであろう。

しかし、それが彼の作品を楽しむことの本質なのだろうか?

ギャルに例えてみれば、日頃の濃い化粧を見ても本当の彼女に近づくことはできない。その化粧を取った彼女を知り、更に長く付き合うことで初めて近づくことができたと言えよう。その化粧に目をくらまされ、一晩を過ごした程度では何もわからないのである。

イーガンの作品たちに根付く様式美は、女性で言えば素顔であり、心の素顔でもある。その特徴は、現代社会における問題をSFと言う極端な例を用いて考えてみるというところにある。例えば、死生観についてなら、不老不死になった人類を考えてみるのである。

この様式美に気が付けばイーガンの作品はいっそう味わい深いものとなる。ハラハラ、ドキドキするだけの空想や夢から、物語の中にいるにも関わらずいっきに現実に引き戻される快感を味って欲しい。

イーガンの様式美を少しだけマネさせてもらった。濃いめの化粧に騙されないように気を付けてもらいたい。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.21
(5pt)

濃いめの化粧

グレッグ・イーガン、オーストラリアのSF作家。彼の作品たちは素晴らしい。内容には触れずそれらに共通する様式美について言及しようと思う。

少し話は逸れるが、昔テレビで見た企画にこのようなものがあった。原宿を歩くギャルたちに彼女らの濃い化粧を落としてもらい、素顔を見るというものだ。
素顔を見て私が思ったのは、化粧を落とした、ナチュラルメイクの彼女たちの方がかわいいもしくは綺麗だということであった。TVに出演していた芸能人たちも同様の感想を述べていたのを覚えている。

話を戻すと、イーガンの作品は基本的に”化粧が濃い”。難解な設定、量子力学や生物化学についての様々な空想、それらの説明は作品中できちんとなされることもあればそうでないこともある。そして、我々にはその空想が本当に現代科学の延長上に存在しうるのかということは知りえない場合が多い。その難解な設定を前に読み手は進むことを躊躇してしまう。確かに、その内容が理解できれば作品を楽しむことができるであろう。

しかし、それが彼の作品を楽しむことの本質なのだろうか?

ギャルに例えてみれば、日頃の濃い化粧を見ても本当の彼女に近づくことはできない。その化粧を取った彼女を知り、更に長く付き合うことで初めて近づくことができたと言えよう。その化粧に目をくらまされ、一晩を過ごした程度では何もわからないのである。

イーガンの作品たちに根付く様式美は、女性で言えば素顔であり、心の素顔でもある。その特徴は、現代社会における問題をSFと言う極端な例を用いて考えてみるというところにある。例えば、死生観についてなら、不老不死になった人類を考えてみるのである。

この様式美に気が付けばイーガンの作品はいっそう味わい深いものとなる。ハラハラ、ドキドキするだけの空想や夢から、物語の中にいるにも関わらずいっきに現実に引き戻される快感を味って欲しい。

イーガンの様式美を少しだけマネさせてもらった。濃いめの化粧に騙されないように気を付けてもらいたい。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.20
(4pt)

ぼくになること

これは古代から続く哲学問題『テセウスの舟』のSF版とも言える。
それゆえ根幹のアイデア事態は目新しいものではないが、SF作家らしい設定の導入によって珠玉の一品となっている。
何よりとてもその概念が理解がしやすいため私のようにSFに疎くても読みやすいのもいい。
一番のお気に入り。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.19
(4pt)

ぼくになること

これは古代から続く哲学問題『テセウスの舟』のSF版とも言える。
それゆえ根幹のアイデア事態は目新しいものではないが、SF作家らしい設定の導入によって珠玉の一品となっている。
何よりとてもその概念が理解がしやすいため私のようにSFに疎くても読みやすいのもいい。
一番のお気に入り。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.18
(4pt)

僕は本当のぼくなのだろうか。

永遠に生き続けるということは本当に幸せなのだろうか。
 本作品集に収録された「ぼくになることを」を読んだとき,しばらく呆然となりました。
 人間は寿命があり,いつかは死んでしまう。
 科学が進歩し,肉体を別の代替物に変えることができても脳を変えるわけにはいかない。なぜなら,脳をかえるとそれは別人になってしまうから。でも,脳もやはり老化するので永遠に生き続けるということは不可能だ。
 これが過去のSF小説においても常識的に考えられてきたことだ。
 ところがイーガンは,とんでもない手法を思いつく。
 なんと,脳をバックアップするというのだ。
 脳の中にバックアップ用の「宝石」とよばれる物質を納め,脳の発達とともに「宝石」にもその情報がバックアップされる。
 そして,脳が老化を始める前の若い段階で,本来の脳からバックアップ用の「宝石」にスイッチを切り替え,本来の脳を取り出し処分してしまう。「宝石」は本来の脳とまったく同じ働きをし,意識もそのまま引き継がれる。するとスイッチを切り替えた本人は,これまでと何ら変わることなく生活をすごすことが出来る。
 老化しない「宝石」により永遠に人は生き続けることが可能となったのだ。
 そこで,疑問が生じる。
 「宝石」のぼくは本当のぼくなのだろうか。

 以前イーガンの「宇宙消失」にチャレンジしましたが私には少し難しく感じました。本作品集においては「ぼくになることを」のほかにも「百光年ダイアリー」「繭」「誘拐」「貸金庫」と粒ぞろいの短編が収録されています(中には少し難しく感じる作品もありましたが)ので,イーガンに関しては,まずは短編集から入るのが良いかもしれません。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.17
(4pt)

僕は本当のぼくなのだろうか。

永遠に生き続けるということは本当に幸せなのだろうか。
 本作品集に収録された「ぼくになることを」を読んだとき,しばらく呆然となりました。
 人間は寿命があり,いつかは死んでしまう。
 科学が進歩し,肉体を別の代替物に変えることができても脳を変えるわけにはいかない。なぜなら,脳をかえるとそれは別人になってしまうから。でも,脳もやはり老化するので永遠に生き続けるということは不可能だ。
 これが過去のSF小説においても常識的に考えられてきたことだ。
 ところがイーガンは,とんでもない手法を思いつく。
 なんと,脳をバックアップするというのだ。
 脳の中にバックアップ用の「宝石」とよばれる物質を納め,脳の発達とともに「宝石」にもその情報がバックアップされる。
 そして,脳が老化を始める前の若い段階で,本来の脳からバックアップ用の「宝石」にスイッチを切り替え,本来の脳を取り出し処分してしまう。「宝石」は本来の脳とまったく同じ働きをし,意識もそのまま引き継がれる。するとスイッチを切り替えた本人は,これまでと何ら変わることなく生活をすごすことが出来る。
 老化しない「宝石」により永遠に人は生き続けることが可能となったのだ。
 そこで,疑問が生じる。
 「宝石」のぼくは本当のぼくなのだろうか。

 以前イーガンの「宇宙消失」にチャレンジしましたが私には少し難しく感じました。本作品集においては「ぼくになることを」のほかにも「百光年ダイアリー」「繭」「誘拐」「貸金庫」と粒ぞろいの短編が収録されています(中には少し難しく感じる作品もありましたが)ので,イーガンに関しては,まずは短編集から入るのが良いかもしれません。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.16
(4pt)

アイデンティティネタの印象は強いですが

表題作を含む11作を収録した短編集。

毎日異なる他人の体で目覚める「私」、次々に並行世界を移っていく「私」、「私」とは一体何か?
また、未来のことが全てわかっていてその通りにせざるを得ない行動、
化学物質によって否応無く覚える感情は、果たして「私」のものと呼べるのか?

そういったアイデンティティについて扱った話が多い印象ですが、
同時に信じていたものが一瞬でひっくり返るような、いわば悲劇のカタルシスも
感じることができます。

ただし、普通に読んでいると「えっ、ここで終わり?」というような
オチの理解しにくさもあるので、流し読みでは楽しみにくいかもしれません。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.15
(4pt)

アイデンティティネタの印象は強いですが

表題作を含む11作を収録した短編集。

毎日異なる他人の体で目覚める「私」、次々に並行世界を移っていく「私」、「私」とは一体何か?
また、未来のことが全てわかっていてその通りにせざるを得ない行動、
化学物質によって否応無く覚える感情は、果たして「私」のものと呼べるのか?

そういったアイデンティティについて扱った話が多い印象ですが、
同時に信じていたものが一瞬でひっくり返るような、いわば悲劇のカタルシスも
感じることができます。

ただし、普通に読んでいると「えっ、ここで終わり?」というような
オチの理解しにくさもあるので、流し読みでは楽しみにくいかもしれません。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.14
(4pt)

非SF者の感想=「ホーガン以来!」

私はSFはたまにしか読まない。これまでのマイベストSFはホーガン『星を継ぐもの』。圧倒された。

 雑誌のSF特集でオールタイム・ベストの1位にイーガンの『万物理論』が挙げられていて、「イーガン以降」という言い回しさえあるらしい。こりゃ、読むべし!だが、いきなり長編は途中挫折のリスクも大きいんで、まずは日本オリジナル編集の第一短編集である本書からトライ。

 まず、冒頭の「貸金庫」から圧倒されたねー。地味なタイトルからは予想外の奇想天外の世界観。科学的にはありえねー設定なんだが、思考実験乃至幻想譚としては一級品。

 続く「キューティー」は現在〜近未来にはさもありなん設定。子供の無い私には切実感強し。

 3作目「ぼくになることを」これもボルヘス的な幻想譚として秀逸。自己意識とは何か、という問題に真正面から取り組んでいる。

 「繭」・・・これも題名は地味だが、内容はスゴイ。主人公が、ごく普通にゲイで、同性愛者に対する差別を扱っている。しかも、生体的理論説明もいかにも本物っぽい。
 
 「百光年ダイアリー」・・・タイム(予知)・パラドックスを最新科学風ガジェットを駆使してそれらしく理屈付けている。へー、って感じ。でも真剣に付いていこうとするとかなりシンドそう。

 「誘拐」・・・ハリウッド映画にすれば面白そう。ってか、ハリソン・フォードを主役に想定して読んでいた。

 「放浪者の軌道」・・・これは設定が良く分からなかった。量子力学的な説明なのかな?

 「ミトコンドリア・イブ」・・・人類共通祖先を求める一種のカルトの対立。レイシスト(人種主義者)のパロディか?

 「無限の暗殺者」・・・雰囲気的には映画『ブレード・ランナー』的世界観。だが、「可能世界」、「バージョン」という設定が難解、ってかかなり無理がありそう。

 「イェユーカ」・・・アフリカを舞台にした、エイズみたいな難病に取り組む医師のヒューマン・ドラマ。ラストは結構、感動的。

 「祈りの海」・・・ヒューゴー賞&ローカス賞受賞、ってんで期待して読んだが、うーん。宗教にたいするパロディだろうなあ。一神教の伝統の無い日本人にはあまりピンと来ないと思う

 総合的評価=とにかく設定の突飛さ、世界観の多様さに眩暈がした。意図的に多様な傾向の作品を集めて編集したそうだが、非常に厚み・満腹感のある作品集と言えよう。でもSF慣れしていない読者には付いて行けないほど、科学的ガジェット(小道具・設定)は多用されているので、誰にでも薦められるシロモノではない。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.13
(4pt)

非SF者の感想=「ホーガン以来!」

私はSFはたまにしか読まない。これまでのマイベストSFはホーガン『星を継ぐもの』。圧倒された。

 雑誌のSF特集でオールタイム・ベストの1位にイーガンの『万物理論』が挙げられていて、「イーガン以降」という言い回しさえあるらしい。こりゃ、読むべし!だが、いきなり長編は途中挫折のリスクも大きいんで、まずは日本オリジナル編集の第一短編集である本書からトライ。

 まず、冒頭の「貸金庫」から圧倒されたねー。地味なタイトルからは予想外の奇想天外の世界観。科学的にはありえねー設定なんだが、思考実験乃至幻想譚としては一級品。

 続く「キューティー」は現在〜近未来にはさもありなん設定。子供の無い私には切実感強し。

 3作目「ぼくになることを」これもボルヘス的な幻想譚として秀逸。自己意識とは何か、という問題に真正面から取り組んでいる。

 「繭」・・・これも題名は地味だが、内容はスゴイ。主人公が、ごく普通にゲイで、同性愛者に対する差別を扱っている。しかも、生体的理論説明もいかにも本物っぽい。
 
 「百光年ダイアリー」・・・タイム(予知)・パラドックスを最新科学風ガジェットを駆使してそれらしく理屈付けている。へー、って感じ。でも真剣に付いていこうとするとかなりシンドそう。

 「誘拐」・・・ハリウッド映画にすれば面白そう。ってか、ハリソン・フォードを主役に想定して読んでいた。

 「放浪者の軌道」・・・これは設定が良く分からなかった。量子力学的な説明なのかな?

 「ミトコンドリア・イブ」・・・人類共通祖先を求める一種のカルトの対立。レイシスト(人種主義者)のパロディか?

 「無限の暗殺者」・・・雰囲気的には映画『ブレード・ランナー』的世界観。だが、「可能世界」、「バージョン」という設定が難解、ってかかなり無理がありそう。

 「イェユーカ」・・・アフリカを舞台にした、エイズみたいな難病に取り組む医師のヒューマン・ドラマ。ラストは結構、感動的。

 「祈りの海」・・・ヒューゴー賞&ローカス賞受賞、ってんで期待して読んだが、うーん。宗教にたいするパロディだろうなあ。一神教の伝統の無い日本人にはあまりピンと来ないと思う

 総合的評価=とにかく設定の突飛さ、世界観の多様さに眩暈がした。意図的に多様な傾向の作品を集めて編集したそうだが、非常に厚み・満腹感のある作品集と言えよう。でもSF慣れしていない読者には付いて行けないほど、科学的ガジェット(小道具・設定)は多用されているので、誰にでも薦められるシロモノではない。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.12
(5pt)

人として人類としてのidentityを問う短編集

イーガンの共通した命題である、人として人類としてのidentityを問う短編傑作集です。科学的手法を用いた人類のあくなき挑戦に対する絶賛の賛同と同時に、人類としての限界を認知することに対しての人類への慈愛の念が、最近の長編の難解さ無しで、ストレートに伝わってくる名作集です。初めてイーガンを読まれる方にはお勧めです。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.11
(5pt)

人として人類としてのidentityを問う短編集

イーガンの共通した命題である、人として人類としてのidentityを問う短編傑作集です。科学的手法を用いた人類のあくなき挑戦に対する絶賛の賛同と同時に、人類としての限界を認知することに対しての人類への慈愛の念が、最近の長編の難解さ無しで、ストレートに伝わってくる名作集です。初めてイーガンを読まれる方にはお勧めです。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.10
(5pt)

「わたし」の意味

ある日、普段どうりスタスタ歩いているとイーガンさんに出合った。
イーガンさんがいうことにゃ「ちょっと、自分の足元を見てごらん」。
で、下を見ると…あると思ってた地面はなく、真っ黒な虚空が広がるのみ。
それじゃ、どうして歩けていたかというと、
踏み出そうとする先に、ちょうど足がのるだけの大きさの円板がパッと現れ、
そこに足がのってもびくともしないけれど、足が離れると、すっと消える。
ただ、これの繰り返しだったのだ。
気づいてしまったこのときから、恐怖と不安に捕われる。
その円板は何なのか、どうやって現れるのか、これからも現れてくれるか…?
いままでずっと大地を踏みしめてると思ってたのに!
もちろん、”自分って?”について考えたり読んだりしたことはあるけれど、
この本の物語の中で様々な角度から直面させられると、やはり感じる重みが違います。
(特に「ぼくになることを」、ズンときます)
それに、イーガンさん、やっぱり物の語りがうまい!
「ぼくになることを」のどんでん返しは見事だし、
「無限の暗殺者」はおもしろいパズルを解いた気分にさせてくれるし、
「繭」は上質のミステリーだし、「貸金庫」のラストの、主人公の健気さは泣かせるし…。
それに、素人考えで、EPRは瞬間的な情報伝達に利用できるんじゃないかと思ってたんだけど、
「ミトコンドリア・イヴ」の主人公のセリフ数行であっさり霧消。うぅ、確かにそうです…。
これは、私にとってうれしいおまけでした。
ところで、私が読んだのは三刷なんだけど、425ページのこの文…
「…兄は、微笑みを絶やさずにはいられないのだった。」
あれ?
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.9
(5pt)

「わたし」の意味

ある日、普段どうりスタスタ歩いているとイーガンさんに出合った。
イーガンさんがいうことにゃ「ちょっと、自分の足元を見てごらん」。
で、下を見ると…あると思ってた地面はなく、真っ黒な虚空が広がるのみ。
それじゃ、どうして歩けていたかというと、
踏み出そうとする先に、ちょうど足がのるだけの大きさの円板がパッと現れ、
そこに足がのってもびくともしないけれど、足が離れると、すっと消える。
ただ、これの繰り返しだったのだ。
気づいてしまったこのときから、恐怖と不安に捕われる。
その円板は何なのか、どうやって現れるのか、これからも現れてくれるか…?
いままでずっと大地を踏みしめてると思ってたのに!
もちろん、”自分って?”について考えたり読んだりしたことはあるけれど、
この本の物語の中で様々な角度から直面させられると、やはり感じる重みが違います。
(特に「ぼくになることを」、ズンときます)
それに、イーガンさん、やっぱり物の語りがうまい!
「ぼくになることを」のどんでん返しは見事だし、
「無限の暗殺者」はおもしろいパズルを解いた気分にさせてくれるし、
「繭」は上質のミステリーだし、「貸金庫」のラストの、主人公の健気さは泣かせるし…。
それに、素人考えで、EPRは瞬間的な情報伝達に利用できるんじゃないかと思ってたんだけど、
「ミトコンドリア・イヴ」の主人公のセリフ数行であっさり霧消。うぅ、確かにそうです…。
これは、私にとってうれしいおまけでした。
ところで、私が読んだのは三刷なんだけど、425ページのこの文…
「…兄は、微笑みを絶やさずにはいられないのだった。」
あれ?
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.8
(4pt)

表題作も良いけど。

とぎれとぎれに読んだので、消化し切れていない部分もありますが、ご勘弁を。
ヒューゴー賞、ローカス賞を取った表題作「祈りの海」も良かったが、貸金庫や順列都市、イェユーカーなどの小品がピりっとしていてなかなか良い。決定的に一神教の束縛から彼らは離れられないのだなあと思う。作品集全体がアイデンティティの問題を取り上げているのだが、小品ならいいのだが、中編くらいのボリュームになると(わたしのようなじじいには)底が見えてくるのが残念。
おおらかな味も良し。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.7
(4pt)

表題作も良いけど。

とぎれとぎれに読んだので、消化し切れていない部分もありますが、ご勘弁を。
ヒューゴー賞、ローカス賞を取った表題作「祈りの海」も良かったが、貸金庫や順列都市、イェユーカーなどの小品がピりっとしていてなかなか良い。決定的に一神教の束縛から彼らは離れられないのだなあと思う。作品集全体がアイデンティティの問題を取り上げているのだが、小品ならいいのだが、中編くらいのボリュームになると(わたしのようなじじいには)底が見えてくるのが残念。
おおらかな味も良し。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G
No.6
(5pt)

注目したい作家だ、と思わせられた

大作家の手際よく処理された長編よりもよっぽど面白い短編集だ。
現在では作品のプロットというのは、ほとんどの場合、他の誰かが手がけたものである。しかし本作品では視点がいつも主人公に固定されている感じで、ブレが無く、非常に明快であり新鮮だ。このあたりを解説者はアイデンティティを扱っている作品と捉えており、科学的な記述よりも自分を描くことで作品として成り立っていると解説している。同感である。
この作者の長編は、まだ成長途中というようなものらしいが、注目したい作家だと思った。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) Amazon書評・レビュー: 祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.5
(5pt)

注目したい作家だ、と思わせられた

大作家の手際よく処理された長編よりもよっぽど面白い短編集だ。
現在では作品のプロットというのは、ほとんどの場合、他の誰かが手がけたものである。しかし本作品では視点がいつも主人公に固定されている感じで、ブレが無く、非常に明快であり新鮮だ。このあたりを解説者はアイデンティティを扱っている作品と捉えており、科学的な記述よりも自分を描くことで作品として成り立っていると解説している。同感である。
この作者の長編は、まだ成長途中というようなものらしいが、注目したい作家だと思った。
祈りの海 Amazon書評・レビュー: 祈りの海より
B00RKN487G