ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台
評判
ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台の評価:
4.35/5点 レビュー 115件。 B ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全116件 61〜80 4/6ページ
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ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台の評価:
4.35/5点 レビュー 115件。 B ランク
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栞子の親族を中心とした人間関係が、シェークスピアの作品群における人間関係になぞらえられ、世代間、知人関係へと連鎖し、物語は重層的に構築されています。シェークスピア作品の中のセリフがビブリアの中で、生き生きとして印象的です。その土台に、あらゆるピースがカチッとはまっている感じです。
ビブリアの良さは、見開きの、古書店の風景が象徴するような、息が抜けるような、ほっとする、いい意味でこじんまりとした空間から、濃密な人間関係が流れ出るところところではないでしょうか。古書はせいぜい100年、200年前といったところかもしれませんが、人間関係の濃度はそれをはるかに凌ぐのかもしれません。
今後も大輔以外の視点からの外伝やアニメ、映画とまだまだ楽しめそうですね。
今作は、栞木の母がなぜ出て行ったのか、それと栞子の親族関係が明らかにされてゆきます。第6作から2年ほど経過しているので、私も内容を忘れてしまっていて、前作を読み返さなければだめかと不安もあったのですが、その心配はありませんでした。実に丁寧な回想、人物紹介がありました。それでいて、決して取ってつけた感がないのは、最終巻が今までの話のエッセンスであるからでしょう。
話は、久我山家との事件がひと段落した後から始まります。栞子は久我山真理から、久我山家の蔵書を買い取ることになっていました。その中には、古書ストーカー田中敏雄に売るべく太宰の「晩年」もありました。しかし真理は既にほかの業者売り払ってしまった後でした。しかし幸いなことにその業者とも連絡が取れ、再度買い取ることとなりました。
しかしその業者、舞砂道具店の吉原喜市と名乗る男は、強引な手段で古書を売る、あの久我山尚大の弟子であり、栞子は法外な値段で「晩年」を買い取る羽目になってしまいました。そして吉原はなぜか「人肉質入裁判」という本を栞子に差し出すのです。
世界は人々がそのうえで演じる舞台といわんばかりに、栞子は吉原のしつらえた、シェークスピア稀覯本の真贋見極め、という見世物舞台に押し上げられてゆくのです。そして目の前には、敵か味方か定かではない、母、智恵子が立ちはだかります。
さて、実に興味深く進んでゆくストーリーですが、中盤からは、シェークスピアの古書の‶ページ”に関してのややこしい内容が続きます。ここら辺はなかなか、電車の中等では読みづらい所かもしれません。
要は、シェークスピアのファクシミリ本において、水城英子の持つ黒い本と、智恵子の蔵書のノートン版で、ページの在り方が異なるというのです。黒い本はロミオ完のページの裏がトロイラス、かたやノートンはロミオ完のページの裏がアテネのタイモン。
ここで少し引っかかったところを挙げるなら、ビブリア7巻p143には、ロミオの終幕が78pと書いてありますが、p181には、ロミオの終幕は77pとなってずれています。これはその後の2冊の比較において、77pが正しそうですね。
そもそも、製本の流れというのがあって、①ロミオ―トロイラスだったのが②歴史劇―トロイラス―悲劇(ロミオ)となり、③その後誰かがトロイラスを再度ロミオの後にねじ込む、といった経緯を踏みます。ゆえに黒い本には2つのロミオ完のページが存在するとのこと。とてもややこしい話ですね。
製本、ということに関しても、三枚重ねて帖とする、というのはページのvvvの底辺をパチンと閉じる、なのかページvvvを上から重ねてひとつのvにして真ん中でパチンと閉じるのか、あれこれ考えてしまいました。まあどうでもいいことですね・・・。
さてとにもかくにも、‶黒い本”というのが、真の稀覯本のヒントになっている、というのが凝っていましたね。久我山尚大も、別れた女性への選別として、本物を渡してもよさそうなのに、そうではなくて、本物は千恵子への復讐に使うあたりは、さすがは最終巻にまで影を落とす悪役といった感じでした。(しかし本は傷つけていないのがすごいです。)
ビブリアは栞子が大輔に古書の内容を語る、というのが心地よい作品です。このスマホ、メールの時代に人の声で語るということの復権といってもいいかと思われます。しかしそんな魅力的なヒロインをも圧倒する?存在なのは意外にも五浦大輔というキャラクターかもしれません。
初めは普通過ぎて、特に関心はなかったのですが、最終的には吉原喜すらブッダの手のひらの上の猿のごとくあしらった、智恵子にすら‶予測できない”といはしめたのですから、すごい存在です。
本が読めない体質、という設定。確かに本を読むのが苦手とか、活字が苦手とか、読む気分ではないとかありますね。心因性の何かもう少し重いものであることもあるでしょう。いずれにせよ、最後までその体質の大輔でしたが、そのことが、予測させない、ある種場をかき乱す役割となり、尚且つ、推理の聞き手として、栞子との間に安定した構図を作り出しました。
ビブリアが7巻で終わるのも、そのことに少し関係があるかもしれません。巻が長くなると、もしかしたら大輔の、読書における進化も描かなければならないかもしれません。三上さんなら、いかようにもできるとおもわれますが、そうすると、栞子との関係性も変わってしまうかもしれません。
大輔のこの体質、そして栞子さんの語り、そして地理的にも北鎌倉―大船あたりから出ない、いい意味でのこじんまり感、ここら辺に作者の並々ならぬセンスを感じます。
ところで、博覧強記の女の子が事件を解決する作品というのはたくさんありますね。例えば松岡圭祐氏の「万能鑑定士Q」そして三上延氏の「ビブリア古書堂の事件手帳」。これらは、不思議にも同じような時期に始まり、同じような時期に完結しています。こういったヒロイン像はある種時代が求めたものなのかもしれません。それらが終わるのは、一つの到達点にたどり着いたということでもあるのでしょう。
しかし個人的には、これで終わりではなく、これらは普遍的なパターンとなりつつ、新たな展開を見せるのでないか、と個人的には買ったに感じています。
正直はじめは、小説にちょっと偏見がありました。しかしこれらヒロインが活躍する物語を読むことで、それを払拭するに至りました。なので、その端緒の一つにもなってくれたビブリアに感謝の思いです。歓び以上の思い・・・です。