蛍の森
評判
蛍の森の評価:
3.78/5点 レビュー 27件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全54件 41〜54 3/3ページ
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蛍の森の評価:
3.78/5点 レビュー 27件。 B ランク
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初めての小説、しかもミステリーということですが、ミステリーとしても小説としても、説得力を欠くものだと感じました。現代の殺人事件をめぐる描写と、1950年代の四国の仮想の集落を舞台にした描写とが交互に綴られるという、しばしば用いられる手法を採用していますが、最初に違和感を感じたのは、登場人物が全て「きれいな標準語」を使うことです。架空の集落だから、特定の方言を用いることを避けたのかもしれませんが、不自然に感じました。それに、語り手の父親の数奇な生い立ちとその経歴、語り手を何としても医師にしようとしてそれを実現させたことなどを前提とすると、父親と語り手とが非常に疎遠であり、ここに描かれた途方もない事件によって初めて心を通じあわせることができたというのは、いかにも不自然です。語り手と、妻や娘との関係を前提とすると、その後の語り手の行動や推理に至る経過について、どうにも不自然な気持ちを払拭できないのです。
また、これでもかというほどに残忍な描写が繰り返されますが、過剰に過ぎます。
これも大変残念な点ですが、ハンセン病問題について描くのであれば、医学的にも正確な記述をしてほしかったと思いますし、国が推し進めた強制隔離政策についての記述も極めて不十分です。
最後に語り手が小春と出会う場面で、小春の顔貌の描写がありますが、それはまるで発症時を示すような表現であって、感染症としては治癒し、後遺症としての顔貌の変化を遺す状態の描写としては不適切です。
ハンセン病問題については、数多の参考文献があります。著者はそれらを精読したのでしょうか。また、いったいどのような取材をしたのでしょうか。
訴訟自体が控訴断念によって終結した後も連綿と続いている国との協議、また、韓国や台湾で日本時代に強制収容された回復者への補償問題や、本書でも取り上げられている収容を免れた「非入所者」の皆さん(その多くは沖縄在住で、未だに殆どの人が差別を怖れて名乗ることをしていません)の被害回復のため、どんな試みが続けられているのか、ご存知ないのでしょうか。
また、療養所における「園内結婚」について、あるいは女性の扱いについての記述は、確かに園内結婚を認めること自体が隔離政策を確実にするための手段として行われ、女性の比率が圧倒的に少ないために、有無を言わさず結婚が決められたというような側面があったことも事実ですが、療養所において、弱い者どうし、寄り添いながら、助け合いながら、過酷な環境を乗り越えてきた多くの方々が、今も生きておられます。
高く評価されている方々のレビューを拝見すると、確かにこのようなエキセントリックな表現が読む人の感情を揺さぶるという効果はあるのかもしれませんが、これほどにデフォルメせずとも、淡々と史実に即して記述するだけでも、訴えることはできるはずです。
裁判から10年以上を経て、多くの人がこの問題を忘れかけているこの時期に、著明な著者があえてこの問題に取り組んだこと自体は評価したいのですが、残念だと思わざるを得ません。