暗幕のゲルニカ

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評判

暗幕のゲルニカの評価:

4.19/5点 レビュー 199件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.19pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全315件 241〜260 13/16ページ
No.75
(4pt)

この時代を書くならキャパやゲルダ・タローを出してほしかったです。

9.11以降の現代(2003年頃を想定)と1930年台後半のスペイン内戦や
第一次世界大戦時といった過去を交互に並べて
時空を越えた接点を読者に見せていく手法で書かれています。

10代の頃に主人公の瑤子がアメリカのMoMAで見たゲルニカ
この出会いが彼女をピカソ研究の道へと引き入れました。
MoMAのキュレーターになった彼女がピカソ展を企画していた時
9.11が発生し、愛するご主人を亡くしてしまいます。

テロとの戦い、いやテロリストには屈しないという強いメッセージを発信するには
この展示会にゲルニカを登場させるほかない
彼女の全身全霊をかけた戦いが始まる。。
これが現代を生きる主人公瑤子の歩む粗筋です。

一方、愛人ドラと過ごしていた頃のピカソは
ゲルニカの無差別爆撃を新聞ニュースで知ることになります。
怒りを突き抜け、無になったピカソはゲルニカを作製することになるのですが
ドラや、支援者となりかつ現代の瑤子とも接点を持つことになるパルドを通して
ゲルニカ作製、完成後の展示、アメリカへの”亡命”に至る流れを史実を絡めながら
リアルに描いてあり、歴史に興味のある人ならすごく面白く読むことが出来ると思います。

ただ残念なのは、せっかくこの時代のパリ、スペイン内戦を描くのなら
ましてピカソやドラを描くのならこの時代を生きて強力に輝いた
ロバート・キャパやその恋人で女性初の報道カメラマンだったゲルダ・タロー
同時期にパリにいた岡本太郎や藤田嗣治などを登場させたら
もっと幅広く時代を感じられたのでは。。ということです。

さし絵、口絵として実際のピカソの作品を載せても良かったのにとも思いました。

でも、全体としては楽しめました。
絵画と言えば切っても切り離せない富裕層を反発心無く読めたのは
原田さんの文章の巧さなんだろうと思います。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.74
(4pt)

この時代を書くならキャパやゲルダ・タローを出してほしかったです。

9.11以降の現代(2003年頃を想定)と1930年台後半のスペイン内戦や
第一次世界大戦時といった過去を交互に並べて
時空を越えた接点を読者に見せていく手法で書かれています。

10代の頃に主人公の瑤子がアメリカのMoMAで見たゲルニカ
この出会いが彼女をピカソ研究の道へと引き入れました。
MoMAのキュレーターになった彼女がピカソ展を企画していた時
9.11が発生し、愛するご主人を亡くしてしまいます。

テロとの戦い、いやテロリストには屈しないという強いメッセージを発信するには
この展示会にゲルニカを登場させるほかない
彼女の全身全霊をかけた戦いが始まる。。
これが現代を生きる主人公瑤子の歩む粗筋です。

一方、愛人ドラと過ごしていた頃のピカソは
ゲルニカの無差別爆撃を新聞ニュースで知ることになります。
怒りを突き抜け、無になったピカソはゲルニカを作製することになるのですが
ドラや、支援者となりかつ現代の瑤子とも接点を持つことになるパルドを通して
ゲルニカ作製、完成後の展示、アメリカへの”亡命”に至る流れを史実を絡めながら
リアルに描いてあり、歴史に興味のある人ならすごく面白く読むことが出来ると思います。

ただ残念なのは、せっかくこの時代のパリ、スペイン内戦を描くのなら
ましてピカソやドラを描くのならこの時代を生きて強力に輝いた
ロバート・キャパやその恋人で女性初の報道カメラマンだったゲルダ・タロー
同時期にパリにいた岡本太郎や藤田嗣治などを登場させたら
もっと幅広く時代を感じられたのでは。。ということです。

さし絵、口絵として実際のピカソの作品を載せても良かったのにとも思いました。

でも、全体としては楽しめました。
絵画と言えば切っても切り離せない富裕層を反発心無く読めたのは
原田さんの文章の巧さなんだろうと思います。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.73
(5pt)

ホントの出会い!

大変良い本に出会ったと思いました!PICASSOの絵画の見方が変わります!
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.72
(5pt)

ホントの出会い!

大変良い本に出会ったと思いました!PICASSOの絵画の見方が変わります!
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.71
(4pt)

初めて原田マハさんの作品を読みました。

本屋さん大賞6位ということで
初めて原田マハさんの作品を読みました。

フィクションとはいえ
実在の絵画をみごとに1930年代のヨーロッパと
2000年代のアメリカ合衆国を舞台に
サスペンス小説として成立させている手腕に星4つ。

ただ、ラストのサスペンス要素はなくても
良かったんではないかと、私は思いました。

北朝鮮とアメリカ合衆国のきなくさいニュースが流れる今
著者のメッセージがストレートに受け取れました。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.70
(4pt)

初めて原田マハさんの作品を読みました。

本屋さん大賞6位ということで
初めて原田マハさんの作品を読みました。

フィクションとはいえ
実在の絵画をみごとに1930年代のヨーロッパと
2000年代のアメリカ合衆国を舞台に
サスペンス小説として成立させている手腕に星4つ。

ただ、ラストのサスペンス要素はなくても
良かったんではないかと、私は思いました。

北朝鮮とアメリカ合衆国のきなくさいニュースが流れる今
著者のメッセージがストレートに受け取れました。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.69
(4pt)

眠れなくなる!

今読み始めて7章までいきましたが大変面白いです。
翌日が仕事なのも忘れてどんどん引き込まれてしまいます( ^^)
現代に生きる人のピカソへの思いとピカソと同時代を生きた人のピカソへの思いが交代交替ででてきてまるで映画のように感じました!
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.68
(4pt)

眠れなくなる!

今読み始めて7章までいきましたが大変面白いです。
翌日が仕事なのも忘れてどんどん引き込まれてしまいます( ^^)
現代に生きる人のピカソへの思いとピカソと同時代を生きた人のピカソへの思いが交代交替ででてきてまるで映画のように感じました!
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.67
(5pt)

私たちはゲルニカのメッセージをきちんと受け取るべきなのかもしれない

「ゲルニカ」--。最初にこの絵に出会ったのはテレビだった。深夜番組だったと思う。テレビの中のゲルニカを見て、涙が出てきた事を覚えている。独り暮らしで使っていた小さなブラウン管テレビ。それでもゲルニカは私の心を抉るインパクトがあった。こんな経験は自分だけかと思っていたが、どうやらゲルニカには人々に強烈な印象を与える何かがあるのだろう。本書は「ゲルニカ」に心を奪われた人々の物語。9.11をきっかけに「ピカソの戦争」というテーマで展覧会を企画したMoMAのキュレーターである瑶子が、ピカソがゲルニカで訴えたかった事を世界に示す。暗幕は平和に目をつぶる行為の比喩である。もしかすると、世界の惨状に目を向けない私たちも世界に暗幕をかけてしまっているのかもしれない。そんなことも考えさせられた。怖くても暗幕は取らなければ! そして本物の「ゲルニカ」をいつかはこの目で観たい。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.66
(5pt)

私たちはゲルニカのメッセージをきちんと受け取るべきなのかもしれない

「ゲルニカ」--。最初にこの絵に出会ったのはテレビだった。深夜番組だったと思う。テレビの中のゲルニカを見て、涙が出てきた事を覚えている。独り暮らしで使っていた小さなブラウン管テレビ。それでもゲルニカは私の心を抉るインパクトがあった。こんな経験は自分だけかと思っていたが、どうやらゲルニカには人々に強烈な印象を与える何かがあるのだろう。本書は「ゲルニカ」に心を奪われた人々の物語。9.11をきっかけに「ピカソの戦争」というテーマで展覧会を企画したMoMAのキュレーターである瑶子が、ピカソがゲルニカで訴えたかった事を世界に示す。暗幕は平和に目をつぶる行為の比喩である。もしかすると、世界の惨状に目を向けない私たちも世界に暗幕をかけてしまっているのかもしれない。そんなことも考えさせられた。怖くても暗幕は取らなければ! そして本物の「ゲルニカ」をいつかはこの目で観たい。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.65
(4pt)

使命感

美術の教科書でしか見たことがない「ゲルニカ」……。
 絵画に全く興味のない私でさえ、どんな作品だったか思い出せるということは、よほど強烈な印象だったのだろう。
 その制作過程を描いた部分が一番ワクワクした。
 
 決してピカソが絵筆を折ることがないよう、様々な敵から守った愛人ドラ。
 「ゲルニカ」を戦禍から逃し、アメリカ“MoMA”へ持ち込み、真のメッセージを世界に向け発信しようとしたバルド。
 この20世紀パートの登場人物からは、強い意志、使命感が感じられ、生き生きと描かれていた。
 
 しかし、21世紀パートの登場人物の主役である瑤子の描き方が雑。命が吹き込まれていなかった。
 「9.11」と「ゲルニカ」を結びつけたのは理解できるが、成功したとは言えない。 
 表現の繰り返しが多過ぎるのも気になった。ちょっとしつこい。
 瑤子が、テロ組織「バスク祖国と自由」に拉致されるあたりからは、「うーん……?」と唸るしかなくて、最後の展覧会の描写に至っては、盛り上がるどころか、興ざめ。
 
 パブロ・ピカソの代表作の一つ「ゲルニカ」が生まれた背景を知ることができたことは良かった。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.64
(4pt)

使命感

美術の教科書でしか見たことがない「ゲルニカ」……。
 絵画に全く興味のない私でさえ、どんな作品だったか思い出せるということは、よほど強烈な印象だったのだろう。
 その制作過程を描いた部分が一番ワクワクした。
 
 決してピカソが絵筆を折ることがないよう、様々な敵から守った愛人ドラ。
 「ゲルニカ」を戦禍から逃し、アメリカ“MoMA”へ持ち込み、真のメッセージを世界に向け発信しようとしたバルド。
 この20世紀パートの登場人物からは、強い意志、使命感が感じられ、生き生きと描かれていた。
 
 しかし、21世紀パートの登場人物の主役である瑤子の描き方が雑。命が吹き込まれていなかった。
 「9.11」と「ゲルニカ」を結びつけたのは理解できるが、成功したとは言えない。 
 表現の繰り返しが多過ぎるのも気になった。ちょっとしつこい。
 瑤子が、テロ組織「バスク祖国と自由」に拉致されるあたりからは、「うーん……?」と唸るしかなくて、最後の展覧会の描写に至っては、盛り上がるどころか、興ざめ。
 
 パブロ・ピカソの代表作の一つ「ゲルニカ」が生まれた背景を知ることができたことは良かった。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.63
(5pt)

自由と平和のための戦い

イラク空爆前夜、当時のアメリカ国務長官コリン・パウエルが国連本部で記者会見した際、そこにあるはずのタペストリーが暗幕で隠されていたという出来事があったそうだ。
それが、ピカソのゲルニカのレプリカだった。

その出来事に立脚されているが、物語中の「現在」は仮名を与えられた人物達が生きる、少し仮想の現在になっている。
その少し仮想の21世紀と、「ゲルニカ」を描いているピカソとそれを撮影するドラ・マールが生きる20世紀が、同時進行に語られる。
少々、複雑な進行をしているわけだが、ゲルニカの空爆と9.11やイラクへの空爆がぴたりと重なり合い、その野蛮に対するアートからの抵抗が呼応する。
そして、ドラのピカソへの愛と、瑤子のイーサンへの愛が共鳴しあう。
どこまでが事実に基づいており、どこからが創作であるのか、溶け合ってわからないほど。
物語がどこへたどり着くのか、ページを繰るのももどかしくなる。

私の敵は、戦争である。暴力である。憎悪である。
絵筆一本で闘ったピカソと、美の守護神となることで共闘した人々の祈りに満ちた物語だった。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.62
(5pt)

自由と平和のための戦い

イラク空爆前夜、当時のアメリカ国務長官コリン・パウエルが国連本部で記者会見した際、そこにあるはずのタペストリーが暗幕で隠されていたという出来事があったそうだ。
それが、ピカソのゲルニカのレプリカだった。

その出来事に立脚されているが、物語中の「現在」は仮名を与えられた人物達が生きる、少し仮想の現在になっている。
その少し仮想の21世紀と、「ゲルニカ」を描いているピカソとそれを撮影するドラ・マールが生きる20世紀が、同時進行に語られる。
少々、複雑な進行をしているわけだが、ゲルニカの空爆と9.11やイラクへの空爆がぴたりと重なり合い、その野蛮に対するアートからの抵抗が呼応する。
そして、ドラのピカソへの愛と、瑤子のイーサンへの愛が共鳴しあう。
どこまでが事実に基づいており、どこからが創作であるのか、溶け合ってわからないほど。
物語がどこへたどり着くのか、ページを繰るのももどかしくなる。

私の敵は、戦争である。暴力である。憎悪である。
絵筆一本で闘ったピカソと、美の守護神となることで共闘した人々の祈りに満ちた物語だった。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.61
(5pt)

巧みな物語に記憶を呼び覚まされた

こんどバスクに行くんですよと知り合いに言ったらこの本をすすめられた。ゲルニカ。気になって調べたところ、ゲルニカにはゲルニカはなく、マドリッドにある。そういう話もこの小説の複線になっている。原田マハさんはテレビの美術番組で見たことがあり、何をする人なのかなと思っていたがこういう小説を書く人なんだ。キュレーターとしてMoMAにいたこともある。登場人物の一人がMoMAのキュレーターというこの小説は彼女の経験と見識に裏打ちされて、大胆な筋書きながら絵空事とは思えない本物感が随所に出ていて読みごたえがあった。

ピカソは20世紀の芸術の代名詞みたいな人だけれども、子供のころに箱根の森美術館でピカソの陶芸コレクションを見たときには、「これの何がいいのだろう」と思った。長じて2回、ピカソの展覧会に行った。ひとつはMoMAのPicasso and Portraiture(1996)、もうひとつはTATE ModernでのMattisse Picasso(2002)。後者においてはマチスの存在感が圧倒的だったが、ピカソの描いた肖像画ばかりを集めたMoMAの展覧会はピカソの自在さと力強さとそれらの源泉となった彼にまつわる実在の人間の息吹が伝わってくるもので、強く印象に残っている。なかでも彼のミューズとなった女性たちのそれぞれの個性がカンバスに生き生きと再現されていて、彼女たちを知っているような気にさえなった。印象に残っているのはビスクドールのように端正なオルガ。母性溢れる温かなマリーテレーズ。そして、首の長い花として描かれたフランソワーズ。なぜかドラ・マールのことはあまり印象にない。そのとき自分が絵をみたかぎりでは、ピカソはマリーテレーズのことをもっとも愛したのではないかと思った。

しかし本書での主役はドラ・マールである。彼女がこの歴史的な作品の制作過程を写真におさめていた。ゲルニカはピカソにとっても特別な作品であろう。そのコンセプトの誕生から絵の完成までをともにしたドラ・マールとの関係が壊れたのは必然だったかもしれない。ピカソが苦しみ抜いて描いたゲルニカは、祖国を守るために世界を放浪するという悲劇の運命を背負っていた。この絵の母ともいえるドラを見るたびにそのことが思い出されただろう。ゲルニカがなければ二人の関係は少なくとももう少し長続きはしていただろうか。あるいは、ゲルニカを作るために二人の関係は続いたのか。というようなところは、本書の脇道の話だが、読みながら20年以上も前にニューヨークで見たピカソポートレート展の記憶が押し寄せるように戻ってきて、その後ほとんど思い出すことのなかった絵そのものもぼんやりと思い出されてきた。ピカソがマリーテレーズに会いにいっているかもしれない、「次の女」を見つけようとしているかもしれない、と思っていたたまれなくなるマリーテレーズ。でも「が、このいたたまれなくなる感じがいっそ好きだった」。マハはそんなふうにドラを描く。ポートレート展では絶対に「泣く女」もあったはずなのに、はっきり像を結ばない。その理由さえこの本が与えてくれているような気がした。

あの展覧会は9.11以前のことだった。2003年にパウエル長官が国連安保理会議場のロビーで会見したときにゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられていたというのは本当のことらしいが、知らなかった。それに憤った大コレクターの言葉を目にして原田マハはこの小説を書くと決めた、と東洋経済オンラインのインタビューで読んだ。おなじインタビューでこの作品は10%が史実で90%がフィクションであるとも書いてあった。フィクションの部分の最大の謎は「誰がゲルニカに暗幕をかけたのか」である。普通に考えるとホワイトハウスだが、深読みをするとあの人であるような気もする。それにしても、ヒトラー。最近読むどんな本にも出てくると言ったらいいすぎか。ピカソも含むモダン・アートの作品をわざと劣悪な展示環境で価値のないもののように展示した「退廃芸術展」なるものがあったことをこの本で初めて知った。芸術が政治の道具にもなり得るし、政治に対する武器にもなり得るということの証左である。

この小説に描かれる八神瑤子のゲルニカを借り出すための命懸けの戦いは、「映画みたい」な話ではなく、十分にありえた話だろう。芸術もビジネスにまけずおとらずかけひきとパワーゲームの世界であり、展覧会はキュレーターが全人格をかけてつくりあげたコンテンツだ。今回、自分の行った展覧会についての記録をネットで調べてみたが、たとえばMoMAのサイトではExhibition Historyとして展覧会の記録を開館当時のものまでさかのぼることができる。マドリッドではゲルニカを必ず観に行こうと思った。「世界が崩れる瞬間を見てしまった、創造主の目」をした牡牛に対面しに。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.60
(5pt)

巧みな物語に記憶を呼び覚まされた

こんどバスクに行くんですよと知り合いに言ったらこの本をすすめられた。ゲルニカ。気になって調べたところ、ゲルニカにはゲルニカはなく、マドリッドにある。そういう話もこの小説の複線になっている。原田マハさんはテレビの美術番組で見たことがあり、何をする人なのかなと思っていたがこういう小説を書く人なんだ。キュレーターとしてMoMAにいたこともある。登場人物の一人がMoMAのキュレーターというこの小説は彼女の経験と見識に裏打ちされて、大胆な筋書きながら絵空事とは思えない本物感が随所に出ていて読みごたえがあった。

ピカソは20世紀の芸術の代名詞みたいな人だけれども、子供のころに箱根の森美術館でピカソの陶芸コレクションを見たときには、「これの何がいいのだろう」と思った。長じて2回、ピカソの展覧会に行った。ひとつはMoMAのPicasso and Portraiture(1996)、もうひとつはTATE ModernでのMattisse Picasso(2002)。後者においてはマチスの存在感が圧倒的だったが、ピカソの描いた肖像画ばかりを集めたMoMAの展覧会はピカソの自在さと力強さとそれらの源泉となった彼にまつわる実在の人間の息吹が伝わってくるもので、強く印象に残っている。なかでも彼のミューズとなった女性たちのそれぞれの個性がカンバスに生き生きと再現されていて、彼女たちを知っているような気にさえなった。印象に残っているのはビスクドールのように端正なオルガ。母性溢れる温かなマリーテレーズ。そして、首の長い花として描かれたフランソワーズ。なぜかドラ・マールのことはあまり印象にない。そのとき自分が絵をみたかぎりでは、ピカソはマリーテレーズのことをもっとも愛したのではないかと思った。

しかし本書での主役はドラ・マールである。彼女がこの歴史的な作品の制作過程を写真におさめていた。ゲルニカはピカソにとっても特別な作品であろう。そのコンセプトの誕生から絵の完成までをともにしたドラ・マールとの関係が壊れたのは必然だったかもしれない。ピカソが苦しみ抜いて描いたゲルニカは、祖国を守るために世界を放浪するという悲劇の運命を背負っていた。この絵の母ともいえるドラを見るたびにそのことが思い出されただろう。ゲルニカがなければ二人の関係は少なくとももう少し長続きはしていただろうか。あるいは、ゲルニカを作るために二人の関係は続いたのか。というようなところは、本書の脇道の話だが、読みながら20年以上も前にニューヨークで見たピカソポートレート展の記憶が押し寄せるように戻ってきて、その後ほとんど思い出すことのなかった絵そのものもぼんやりと思い出されてきた。ピカソがマリーテレーズに会いにいっているかもしれない、「次の女」を見つけようとしているかもしれない、と思っていたたまれなくなるマリーテレーズ。でも「が、このいたたまれなくなる感じがいっそ好きだった」。マハはそんなふうにドラを描く。ポートレート展では絶対に「泣く女」もあったはずなのに、はっきり像を結ばない。その理由さえこの本が与えてくれているような気がした。

あの展覧会は9.11以前のことだった。2003年にパウエル長官が国連安保理会議場のロビーで会見したときにゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられていたというのは本当のことらしいが、知らなかった。それに憤った大コレクターの言葉を目にして原田マハはこの小説を書くと決めた、と東洋経済オンラインのインタビューで読んだ。おなじインタビューでこの作品は10%が史実で90%がフィクションであるとも書いてあった。フィクションの部分の最大の謎は「誰がゲルニカに暗幕をかけたのか」である。普通に考えるとホワイトハウスだが、深読みをするとあの人であるような気もする。それにしても、ヒトラー。最近読むどんな本にも出てくると言ったらいいすぎか。ピカソも含むモダン・アートの作品をわざと劣悪な展示環境で価値のないもののように展示した「退廃芸術展」なるものがあったことをこの本で初めて知った。芸術が政治の道具にもなり得るし、政治に対する武器にもなり得るということの証左である。

この小説に描かれる八神瑤子のゲルニカを借り出すための命懸けの戦いは、「映画みたい」な話ではなく、十分にありえた話だろう。芸術もビジネスにまけずおとらずかけひきとパワーゲームの世界であり、展覧会はキュレーターが全人格をかけてつくりあげたコンテンツだ。今回、自分の行った展覧会についての記録をネットで調べてみたが、たとえばMoMAのサイトではExhibition Historyとして展覧会の記録を開館当時のものまでさかのぼることができる。マドリッドではゲルニカを必ず観に行こうと思った。「世界が崩れる瞬間を見てしまった、創造主の目」をした牡牛に対面しに。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.59
(4pt)

勉強になる

どこまでが事実なのかよく知らないながらも、ゲルニカの描かれた意図、ドラ・マール、の存在、ETAのことなど
とても勉強になりました。

楽園のカンヴァスの方が良いという意見がたくさんありますが、楽園のカンヴァスを読んだ時以上に「そうなんだ!」ということが多かったです。
でも楽園のカンヴァスも久しぶりに読み直してみようと思いました。

今のような時代だからこそ、例えば芸術の力で平和が実現するような世界が本当に来ると良いな、という祈り、願いを強く感じます。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.58
(4pt)

勉強になる

どこまでが事実なのかよく知らないながらも、ゲルニカの描かれた意図、ドラ・マール、の存在、ETAのことなど
とても勉強になりました。

楽園のカンヴァスの方が良いという意見がたくさんありますが、楽園のカンヴァスを読んだ時以上に「そうなんだ!」ということが多かったです。
でも楽園のカンヴァスも久しぶりに読み直してみようと思いました。

今のような時代だからこそ、例えば芸術の力で平和が実現するような世界が本当に来ると良いな、という祈り、願いを強く感じます。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523
No.57
(4pt)

現代の問題意識を持って読むのにぴったりです。

ヨーロッパに反移民と極右の波がひたひたと押し寄せ,アメリカにトランプなどというおよそアメリカ民主主義とはかけ離れた大統領が誕生するとき,第1次大戦後の Naziが誕生するときに驚くほど似ている現代に,Francoと真正面から向き合った Picasso の作品を, 2011年の WT Center への飛行機の突入とからませてストーリーを展開していく様子は,大変共感して読むことができた。多分そのころよりも今はもっと Fascism の脅威が強まっていると思われる。この時期に是非この本を多くの読者に読んでもらいたいと思う。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4101259623
No.56
(4pt)

現代の問題意識を持って読むのにぴったりです。

ヨーロッパに反移民と極右の波がひたひたと押し寄せ,アメリカにトランプなどというおよそアメリカ民主主義とはかけ離れた大統領が誕生するとき,第1次大戦後の Naziが誕生するときに驚くほど似ている現代に,Francoと真正面から向き合った Picasso の作品を, 2011年の WT Center への飛行機の突入とからませてストーリーを展開していく様子は,大変共感して読むことができた。多分そのころよりも今はもっと Fascism の脅威が強まっていると思われる。この時期に是非この本を多くの読者に読んでもらいたいと思う。
暗幕のゲルニカ Amazon書評・レビュー: 暗幕のゲルニカより
4103317523