(短編集)

伝奇集

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評判

伝奇集の評価:

4.12/5点 レビュー 41件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.12pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全62件 21〜40 2/4ページ
No.42
(4pt)

じっくり時間をかけて

私はじっくり時間をかけて読みました。

正直、前半の「八岐の園」は、最初からとっつきにくい。読みにくい。
でも、せいぜい短編なので、やっかいな哲学書に挑んでしまった時よりも救いがあります(笑)
有名な本のため、読書好きを「内心で」自称している身としては避けてはとおれないと思い、我慢して読みました。

一読してワケがわからない作品については、ネットに感想を書かれている方々の文章に助けてもらい、なんとか読了。
で、後半の比較的読みやすい「工匠集」を含めての感想は「読んで良かった。」でした。

ごく短いプロットが次々と提示されて、自分がSFや推理作家だったらネタの宝庫だと思う内容でした。
「八岐の園」の各短編ついても、咀嚼して(もしくは分からないまま受け入れて)いくうちに、余計な説明をそぎ落とした素っ気ない文体が「読みにくい」から「かっこいい」に自分の中で変りました。

独特な文体に慣れてくると味わいがあってとても良いです。
再読すると思います。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.41
(4pt)

じっくり時間をかけて

私はじっくり時間をかけて読みました。

正直、前半の「八岐の園」は、最初からとっつきにくい。読みにくい。
でも、せいぜい短編なので、やっかいな哲学書に挑んでしまった時よりも救いがあります(笑)
有名な本のため、読書好きを「内心で」自称している身としては避けてはとおれないと思い、我慢して読みました。

一読してワケがわからない作品については、ネットに感想を書かれている方々の文章に助けてもらい、なんとか読了。
で、後半の比較的読みやすい「工匠集」を含めての感想は「読んで良かった。」でした。

ごく短いプロットが次々と提示されて、自分がSFや推理作家だったらネタの宝庫だと思う内容でした。
「八岐の園」の各短編ついても、咀嚼して(もしくは分からないまま受け入れて)いくうちに、余計な説明をそぎ落とした素っ気ない文体が「読みにくい」から「かっこいい」に自分の中で変りました。

独特な文体に慣れてくると味わいがあってとても良いです。
再読すると思います。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.40
(5pt)

図書館好き、文学好きな誰かに。

"図書館は無限であり周期的である。どの方向でもよい、永遠の旅人がそこを横切ったとすると、彼は数世紀後に、おなじ書物が無秩序さでくり返し現れることを確認するだろう"1940年代発表の短編集である本書は、ラテンアメリカ文学の先駆けとして、あるいは【短い物語で根源的なテーマを描く】著者の魅力が詰まっています。

個人的には、或るトークイベントで本書に収録されている『バベルの図書館』の話になって、恥ずかしながら未読であった事から、ちんぷんかんぷんであった事(笑)また5月は図書館振興の月と、ソーシャルキャンペーン『#図書館に感謝 』を企画している立場として、読んでおかねば!と本書を手にとりました。

まず『バベルの図書館』に関しては『五つの書棚が六角の各壁に振りあてられ、書棚のひとつひとつにおなじ体裁の三十二冊の本がおさまっている。それぞれの本は四百十ページからなる』閉鎖的な図書館を舞台に世界や宇宙、永遠といった幾つもの読み方ができるのに驚きを超えて圧倒されました。(実際に映画『薔薇の名前』やポアンカレ予想、白熱教室にVRと多くの影響を知り、こちらも勉強になりました)

また本書では『バベルの図書館』以外にもプロローグをのぞいて17の物語が収録されていますが。こちらはこちらで、図書館員と無法者、メスとナイフ、病院と酒場といった、一見対照的なシンメトリーさが伝わってきて(特に『南部』)それぞれに面白く。中では『円環の物語』夢そのものに没入させられる様な幻想的な神話性は私的に好みでした。

図書館好き、文学好きな誰かに。また『長大な作品を物するのは、数分間で語りつくせる着想を五百ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である』そんな短編好きな誰かにオススメ。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.39
(5pt)

図書館好き、文学好きな誰かに。

"図書館は無限であり周期的である。どの方向でもよい、永遠の旅人がそこを横切ったとすると、彼は数世紀後に、おなじ書物が無秩序さでくり返し現れることを確認するだろう"1940年代発表の短編集である本書は、ラテンアメリカ文学の先駆けとして、あるいは【短い物語で根源的なテーマを描く】著者の魅力が詰まっています。

個人的には、或るトークイベントで本書に収録されている『バベルの図書館』の話になって、恥ずかしながら未読であった事から、ちんぷんかんぷんであった事(笑)また5月は図書館振興の月と、ソーシャルキャンペーン『#図書館に感謝 』を企画している立場として、読んでおかねば!と本書を手にとりました。

まず『バベルの図書館』に関しては『五つの書棚が六角の各壁に振りあてられ、書棚のひとつひとつにおなじ体裁の三十二冊の本がおさまっている。それぞれの本は四百十ページからなる』閉鎖的な図書館を舞台に世界や宇宙、永遠といった幾つもの読み方ができるのに驚きを超えて圧倒されました。(実際に映画『薔薇の名前』やポアンカレ予想、白熱教室にVRと多くの影響を知り、こちらも勉強になりました)

また本書では『バベルの図書館』以外にもプロローグをのぞいて17の物語が収録されていますが。こちらはこちらで、図書館員と無法者、メスとナイフ、病院と酒場といった、一見対照的なシンメトリーさが伝わってきて(特に『南部』)それぞれに面白く。中では『円環の物語』夢そのものに没入させられる様な幻想的な神話性は私的に好みでした。

図書館好き、文学好きな誰かに。また『長大な作品を物するのは、数分間で語りつくせる着想を五百ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である』そんな短編好きな誰かにオススメ。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.38
(4pt)

難しさに挑戦

思いの外難解で、まだ読破出来ていませんが挑戦しています。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.37
(4pt)

難しさに挑戦

思いの外難解で、まだ読破出来ていませんが挑戦しています。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.36
(5pt)

迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらした『バベルの図書館』

『伝奇集』(ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫)に収録されている『バベルの図書館』を読んだのですが、正直言って、迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらしてしまいました。

「書棚、謎めいた書物、旅人のための疲れることのない階段、腰おろす司書のための便所などの、優雅な基本財産をそなえた宇宙は、ある神の造られたものでしかありえないだろう。聖なるものと人間的なものをへだてる距離を知るためには、わたしの誤りを犯しがちな手が本の表紙に書きちらす、これらの震える粗雑な記号と、本のなかの有機的な文字とを比較すればたりる。後者は正確で、繊細で、鮮やかな黒で、まねのできないほど均斉がとれている」。

「ある天才的な司書が図書館の基本的な法則を発見した。この思想家のいうには、いかに多種多様であっても、すべての本は行間、ピリオド、コンマ、アルファベットの25字という、おなじ要素からなっていた。また彼は、すべての旅行者が確認するに至ったある事実を指摘した。広大な図書館に、おなじ本は2冊ない。彼はこの反論の余地のない前提から、図書館は全体的なもので、その書棚は二十数個の記号のあらゆる可能な組み合わせ――その数はきわめて厖大であるが無限ではない――を、換言すれば、あるゆる言語で表現可能なもののいっさいをふくんでいると推論した。いっさいとは、未来の詳細な歴史、熾天使らの自伝、図書館の信頼すべきカタログ、何千何万もの虚偽のカタログ、これらのカタログの虚偽性の証明、真実のカタログの虚偽性の証明、バシリデスのグノーシス派の福音書、この福音書の注解、この福音書の注解の注解、あなたの死の真実の記述、それぞれの本のあらゆる言語への翻訳、それぞれの本のあらゆる本のなかへの挿入、などである。図書館があらゆる本を所蔵していることが公表されたとき最初に生まれた感情は、途方もない歓びであった」。

「その種の冒険のために、わたしも生涯を浪費してしまった。宇宙のある本棚に全体的な本が存在するという話は、わたしには嘘だとは思えないのだ」。

「おそらく、老齢と不安で判断が狂っているかもしれないが、しかしわたしは、人類――唯一無二の人類――は絶滅寸前の状態にあり、図書館――明るい、孤独な、無限の、まったく不動の、貴重な本にあふれた、無用の、不壊の、そして秘密の図書館――だけが永久に残るのだと思う」。

図書館大好き人間の私が戸惑っているのを見て、ボルヘスは、してやったりと得意顔をしていることでしょう。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.35
(5pt)

迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらした『バベルの図書館』

『伝奇集』(ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫)に収録されている『バベルの図書館』を読んだのですが、正直言って、迷宮に迷い込んだかのように頭がくらくらしてしまいました。

「書棚、謎めいた書物、旅人のための疲れることのない階段、腰おろす司書のための便所などの、優雅な基本財産をそなえた宇宙は、ある神の造られたものでしかありえないだろう。聖なるものと人間的なものをへだてる距離を知るためには、わたしの誤りを犯しがちな手が本の表紙に書きちらす、これらの震える粗雑な記号と、本のなかの有機的な文字とを比較すればたりる。後者は正確で、繊細で、鮮やかな黒で、まねのできないほど均斉がとれている」。

「ある天才的な司書が図書館の基本的な法則を発見した。この思想家のいうには、いかに多種多様であっても、すべての本は行間、ピリオド、コンマ、アルファベットの25字という、おなじ要素からなっていた。また彼は、すべての旅行者が確認するに至ったある事実を指摘した。広大な図書館に、おなじ本は2冊ない。彼はこの反論の余地のない前提から、図書館は全体的なもので、その書棚は二十数個の記号のあらゆる可能な組み合わせ――その数はきわめて厖大であるが無限ではない――を、換言すれば、あるゆる言語で表現可能なもののいっさいをふくんでいると推論した。いっさいとは、未来の詳細な歴史、熾天使らの自伝、図書館の信頼すべきカタログ、何千何万もの虚偽のカタログ、これらのカタログの虚偽性の証明、真実のカタログの虚偽性の証明、バシリデスのグノーシス派の福音書、この福音書の注解、この福音書の注解の注解、あなたの死の真実の記述、それぞれの本のあらゆる言語への翻訳、それぞれの本のあらゆる本のなかへの挿入、などである。図書館があらゆる本を所蔵していることが公表されたとき最初に生まれた感情は、途方もない歓びであった」。

「その種の冒険のために、わたしも生涯を浪費してしまった。宇宙のある本棚に全体的な本が存在するという話は、わたしには嘘だとは思えないのだ」。

「おそらく、老齢と不安で判断が狂っているかもしれないが、しかしわたしは、人類――唯一無二の人類――は絶滅寸前の状態にあり、図書館――明るい、孤独な、無限の、まったく不動の、貴重な本にあふれた、無用の、不壊の、そして秘密の図書館――だけが永久に残るのだと思う」。

図書館大好き人間の私が戸惑っているのを見て、ボルヘスは、してやったりと得意顔をしていることでしょう。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.34
(5pt)

手を変え品を変え、現実を揺さぶる

この本を買ったのは3,4年ほど前なのですが、未だに魅了され続けています。暇があったら読み返してしまいますし、そのたびに発見があります。
解説も野暮になるくらいの優れた(それも、長編を煮つめたような濃い)短編が詰まっています。
「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」「バビロニアのくじ」など、大好きですけど、確かに、解釈が困難な作品もあります。
一方、「刀の形」「死とコンパス」などは――この短編の本質ではないのかもしれませんが――、ボルヘスの作家としての実力の確かさ、器用さを示していて、短編としてもとても優れていると思います。

難しいというのは、作中、「リデル・ハートの『ヨーロッパ大戦史』」「フロイト流のコメディ」「カルカッタのマチュア市場の鼻もまがるような悪臭」「ウィリアム・ジェイムズの同時代人であるメナール」「四文字語(テトラグラマトン)」など、ボルヘスの膨大な知識量と発想の跳躍によってそんな特異な名詞がポンポンと出てきてしまうので、
外国の知識人の基礎的教養レベルが必要とされるのかなと思いますが、まぁ修飾語の一種だと思い、個人的にはなんとかついていけました。

翻訳が批判されているようですが――いかんせん他の人の翻訳を読んだことがないので比較もできないんですけど――、
ボルヘスの冷静で皮肉っぽい、流れるような語り口が日本語を通して伝わってきたので、細かい誤訳などはあると思いますが、とても好きです
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.33
(5pt)

手を変え品を変え、現実を揺さぶる

この本を買ったのは3,4年ほど前なのですが、未だに魅了され続けています。暇があったら読み返してしまいますし、そのたびに発見があります。
解説も野暮になるくらいの優れた(それも、長編を煮つめたような濃い)短編が詰まっています。
「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」「バビロニアのくじ」など、大好きですけど、確かに、解釈が困難な作品もあります。
一方、「刀の形」「死とコンパス」などは――この短編の本質ではないのかもしれませんが――、ボルヘスの作家としての実力の確かさ、器用さを示していて、短編としてもとても優れていると思います。

難しいというのは、作中、「リデル・ハートの『ヨーロッパ大戦史』」「フロイト流のコメディ」「カルカッタのマチュア市場の鼻もまがるような悪臭」「ウィリアム・ジェイムズの同時代人であるメナール」「四文字語(テトラグラマトン)」など、ボルヘスの膨大な知識量と発想の跳躍によってそんな特異な名詞がポンポンと出てきてしまうので、
外国の知識人の基礎的教養レベルが必要とされるのかなと思いますが、まぁ修飾語の一種だと思い、個人的にはなんとかついていけました。

翻訳が批判されているようですが――いかんせん他の人の翻訳を読んだことがないので比較もできないんですけど――、
ボルヘスの冷静で皮肉っぽい、流れるような語り口が日本語を通して伝わってきたので、細かい誤訳などはあると思いますが、とても好きです
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.32
(4pt)

円環の廃墟が良い

作家のための作家。もし「小説」(文学)に自分は興味があり、それなりに詳しいと自負するような人であるならば一読はすべきだろう。形而上学的な作品となるので、人によっては哲学書でも読んでるような気分になるかもしれない。

 解説より、
「すなわち神の探求であり、存在の究極的な意味のそれにほかならない。真偽の必ずしも明らかでない博識、シーリアスな象徴体系、知的なユーモア、エキゾチックな背景、神秘的な雰囲気といった、ボルヘスの短編の世界をつらぬく特質」
 とあるが、せいぜい10ページ(20枚弱)ほどの短編の中に、色々な要素が噴出し、物語世界は広がり、収縮する。小説とは、読者の中に現れる一つのイメージだと言えると思うが、ここには確実にボルヘス独特の小説世界がある。

*********

 円環の廃墟は、一般的には芸術家の創作という営為であり、生の探求と反復という隠喩だということだが、一番完成度が高いと思った。

「最初、夢は混沌としていたが、間もなく、いわば弁証法的なものとなった。よそ者は、焼け落ちた神殿にどことなく似た、円形の階段教室の中央にいる自分を夢にみた。黙りこくった大勢の学生が階段席を埋めていた。(中略)男は学生たちに解剖学や宇宙形状額、魔法などを講義していた。」
といった簡潔だが、特殊な文体で、失敗の先の成功、そして終わりという創造の営為が語られていく。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.31
(4pt)

円環の廃墟が良い

作家のための作家。もし「小説」(文学)に自分は興味があり、それなりに詳しいと自負するような人であるならば一読はすべきだろう。形而上学的な作品となるので、人によっては哲学書でも読んでるような気分になるかもしれない。

 解説より、
「すなわち神の探求であり、存在の究極的な意味のそれにほかならない。真偽の必ずしも明らかでない博識、シーリアスな象徴体系、知的なユーモア、エキゾチックな背景、神秘的な雰囲気といった、ボルヘスの短編の世界をつらぬく特質」
 とあるが、せいぜい10ページ(20枚弱)ほどの短編の中に、色々な要素が噴出し、物語世界は広がり、収縮する。小説とは、読者の中に現れる一つのイメージだと言えると思うが、ここには確実にボルヘス独特の小説世界がある。

*********

 円環の廃墟は、一般的には芸術家の創作という営為であり、生の探求と反復という隠喩だということだが、一番完成度が高いと思った。

「最初、夢は混沌としていたが、間もなく、いわば弁証法的なものとなった。よそ者は、焼け落ちた神殿にどことなく似た、円形の階段教室の中央にいる自分を夢にみた。黙りこくった大勢の学生が階段席を埋めていた。(中略)男は学生たちに解剖学や宇宙形状額、魔法などを講義していた。」
といった簡潔だが、特殊な文体で、失敗の先の成功、そして終わりという創造の営為が語られていく。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.30
(4pt)

円環の廃墟が良い

作家のための作家。もし「小説」(文学)に自分は興味があり、それなりに詳しいと自負するような人であるならば一読はすべきだろう。形而上学的な作品となるので、人によっては哲学書でも読んでるような気分になるかもしれない。

 解説より、
「すなわち神の探求であり、存在の究極的な意味のそれにほかならない。真偽の必ずしも明らかでない博識、シーリアスな象徴体系、知的なユーモア、エキゾチックな背景、神秘的な雰囲気といった、ボルヘスの短編の世界をつらぬく特質」
 とあるが、せいぜい10ページ(20枚弱)ほどの短編の中に、色々な要素が噴出し、物語世界は広がり、収縮する。小説とは、読者の中に現れる一つのイメージだと言えると思うが、ここには確実にボルヘス独特の小説世界がある。

*********

 円環の廃墟は、一般的には芸術家の創作という営為であり、生の探求と反復という隠喩だということだが、一番完成度が高いと思った。

「最初、夢は混沌としていたが、間もなく、いわば弁証法的なものとなった。よそ者は、焼け落ちた神殿にどことなく似た、円形の階段教室の中央にいる自分を夢にみた。黙りこくった大勢の学生が階段席を埋めていた。(中略)男は学生たちに解剖学や宇宙形状額、魔法などを講義していた。」
といった簡潔だが、特殊な文体で、失敗の先の成功、そして終わりという創造の営為が語られていく。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.29
(4pt)

円環の廃墟が良い

作家のための作家。もし「小説」(文学)に自分は興味があり、それなりに詳しいと自負するような人であるならば一読はすべきだろう。形而上学的な作品となるので、人によっては哲学書でも読んでるような気分になるかもしれない。

 解説より、
「すなわち神の探求であり、存在の究極的な意味のそれにほかならない。真偽の必ずしも明らかでない博識、シーリアスな象徴体系、知的なユーモア、エキゾチックな背景、神秘的な雰囲気といった、ボルヘスの短編の世界をつらぬく特質」
 とあるが、せいぜい10ページ(20枚弱)ほどの短編の中に、色々な要素が噴出し、物語世界は広がり、収縮する。小説とは、読者の中に現れる一つのイメージだと言えると思うが、ここには確実にボルヘス独特の小説世界がある。

*********

 円環の廃墟は、一般的には芸術家の創作という営為であり、生の探求と反復という隠喩だということだが、一番完成度が高いと思った。

「最初、夢は混沌としていたが、間もなく、いわば弁証法的なものとなった。よそ者は、焼け落ちた神殿にどことなく似た、円形の階段教室の中央にいる自分を夢にみた。黙りこくった大勢の学生が階段席を埋めていた。(中略)男は学生たちに解剖学や宇宙形状額、魔法などを講義していた。」
といった簡潔だが、特殊な文体で、失敗の先の成功、そして終わりという創造の営為が語られていく。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.28
(5pt)

円環する幻の迷宮

(他の者たちは図書館と呼んでいるが)宇宙は、真ん中に大きな換気孔があり、きわめて低い手すりで囲まれた、不定数の、おそらく無限数の六角形の回廊で成り立っている。・・・という「バベルの図書館」の冒頭部分の、カッコでくくられた部分から「宇宙は」までを読んだとき、感動のあまり、なんだかしらないけれど、叫びたくなった。図書館や書籍に関するベストセラーは多々あるが、こんなに端的に書籍の魅力を表現した作家は他にいないのではないか?と思う。
ボルへス自身、本の魅力に取り憑かれた人で、幼年期は父の蔵書に囲まれて過ごし、晩年はアルゼンチン国立図書館の館長に任命された。これも果てのない(ように感じられる)巨大な図書館が登場する、ウンベルト・エーコ著『薔薇の名前』に登場する盲目の図書館長は、ボルへスがモデルだといわれている。図書の作家、書籍の作家、そんな印象が強い。

ミステリやSF小説において、結末で冒頭に戻されて、えんえん同じ小説を読み続けなければならない、という仕掛けは、現在では「ありがち」な結末の一つで、単なる仕掛けとしてパズルのように使われると「ああ、またこれね・・・」と、うんざり、まったく何の味わいもないのだけれど、ボルへスの短篇は物語が発する世界の空気が濃い霧のようにたちこめているので、読み始めるや一寸先も見えなくなってしまい、読者は美しい円環の迷宮に囚われて逃げられなくなってしまう。

ボルへスの小説の魅力は、一人で静かに読むのも、もちろん素晴らしい経験になるのだが、驚きの結末や迷宮のありようを、他の読書人に説明し「語る」とき、それがさらに輝きを増すという不思議さにあると思う。
多分、彼の小説は、読んだ者の想像力の箍を外してしまうのだ。そうして、千差万別、個人の脳の迷宮に入り込んで、アウトプットするとき個々の空想を知らずくっつけてくる。なので、語れば語るほど壮大に面白く感じられる、という「起爆的」な物語なのだ。

ネットでボルへスを調べていたら、「ボルへス会」なるものを見つけた。説明によるとこの会は「ボルヘスの知的で幻想的な作品に魅せられ、職業や関心事などのジャンルを越えたメンバーからなる異色の集まり」とのこと。
なるほど、と思った。そう、語り合いたくなるのだ。そして読者たちは「ボルへス」という円環のなかで永遠に幸福に迷い続ける。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.27
(5pt)

円環する幻の迷宮

(他の者たちは図書館と呼んでいるが)宇宙は、真ん中に大きな換気孔があり、きわめて低い手すりで囲まれた、不定数の、おそらく無限数の六角形の回廊で成り立っている。・・・という「バベルの図書館」の冒頭部分の、カッコでくくられた部分から「宇宙は」までを読んだとき、感動のあまり、なんだかしらないけれど、叫びたくなった。図書館や書籍に関するベストセラーは多々あるが、こんなに端的に書籍の魅力を表現した作家は他にいないのではないか?と思う。
ボルへス自身、本の魅力に取り憑かれた人で、幼年期は父の蔵書に囲まれて過ごし、晩年はアルゼンチン国立図書館の館長に任命された。これも果てのない(ように感じられる)巨大な図書館が登場する、ウンベルト・エーコ著『薔薇の名前』に登場する盲目の図書館長は、ボルへスがモデルだといわれている。図書の作家、書籍の作家、そんな印象が強い。

ミステリやSF小説において、結末で冒頭に戻されて、えんえん同じ小説を読み続けなければならない、という仕掛けは、現在では「ありがち」な結末の一つで、単なる仕掛けとしてパズルのように使われると「ああ、またこれね・・・」と、うんざり、まったく何の味わいもないのだけれど、ボルへスの短篇は物語が発する世界の空気が濃い霧のようにたちこめているので、読み始めるや一寸先も見えなくなってしまい、読者は美しい円環の迷宮に囚われて逃げられなくなってしまう。

ボルへスの小説の魅力は、一人で静かに読むのも、もちろん素晴らしい経験になるのだが、驚きの結末や迷宮のありようを、他の読書人に説明し「語る」とき、それがさらに輝きを増すという不思議さにあると思う。
多分、彼の小説は、読んだ者の想像力の箍を外してしまうのだ。そうして、千差万別、個人の脳の迷宮に入り込んで、アウトプットするとき個々の空想を知らずくっつけてくる。なので、語れば語るほど壮大に面白く感じられる、という「起爆的」な物語なのだ。

ネットでボルへスを調べていたら、「ボルへス会」なるものを見つけた。説明によるとこの会は「ボルヘスの知的で幻想的な作品に魅せられ、職業や関心事などのジャンルを越えたメンバーからなる異色の集まり」とのこと。
なるほど、と思った。そう、語り合いたくなるのだ。そして読者たちは「ボルへス」という円環のなかで永遠に幸福に迷い続ける。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.26
(5pt)

読者を迷宮に誘い込む魅惑的短編集

架空の書物・人物・事物の評伝という形式で作者自身の思惟を奔放に綴って読者を迷宮に誘い込む短編集「八岐の園」、練達した小説技巧でカミュ「追放と王国」を彷彿とさせる短編集「工匠集」の二部構成から成る作品。

「八岐の園」では、読み手が持つ宇宙観、哲学体系、時間の概念などを揺るがす。例えば、時間についてはその均一な連続性を否定する以下の様な言辞もある。

  「未来は現在の願望としてしか現実性を持たず、
   過去も現在の記憶としてしか現実性を持たない」

記憶、時間、循環性は繰り返し語られるモチーフである。本についての以下の言辞も面白い。倉橋由美子氏「スミヤキストQの冒険」を想起させる。

  「世界には唯一の(基底)本しか存在せず、全ての現存する本は
   その無限分岐の結果である」

叙述形式は古代伝承的でもあり抽象論理的でもありカフカ的でもあり幾何学的でもある。これらが渾然一体となって読む者を包む。輪廻など東洋思想にも触れている。

「工匠集」では、南米特有の狂騒的リズム感とシニカルな視線が混淆した世界が展開される。作者がポーやチェスタトンを読み込んでいるのは驚きで、小編の多くにミステリ的構成や計算が施されている。読み応え充分であり、読者を迷宮に誘い込む魅惑的短編集だと思う。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.25
(5pt)

読者を迷宮に誘い込む魅惑的短編集

架空の書物・人物・事物の評伝という形式で作者自身の思惟を奔放に綴って読者を迷宮に誘い込む短編集「八岐の園」、練達した小説技巧でカミュ「追放と王国」を彷彿とさせる短編集「工匠集」の二部構成から成る作品。

「八岐の園」では、読み手が持つ宇宙観、哲学体系、時間の概念などを揺るがす。例えば、時間についてはその均一な連続性を否定する以下の様な言辞もある。

  「未来は現在の願望としてしか現実性を持たず、
   過去も現在の記憶としてしか現実性を持たない」

記憶、時間、循環性は繰り返し語られるモチーフである。本についての以下の言辞も面白い。倉橋由美子氏「スミヤキストQの冒険」を想起させる。

  「世界には唯一の(基底)本しか存在せず、全ての現存する本は
   その無限分岐の結果である」

叙述形式は古代伝承的でもあり抽象論理的でもありカフカ的でもあり幾何学的でもある。これらが渾然一体となって読む者を包む。輪廻など東洋思想にも触れている。

「工匠集」では、南米特有の狂騒的リズム感とシニカルな視線が混淆した世界が展開される。作者がポーやチェスタトンを読み込んでいるのは驚きで、小編の多くにミステリ的構成や計算が施されている。読み応え充分であり、読者を迷宮に誘い込む魅惑的短編集だと思う。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.24
(5pt)

世界の真実に切り込むボルヘス流千夜一夜

アルゼンチンを代表する現代作家ボルヘスの17の短編が収められ、彼の代表作といえるバベルの図書館や 円環の廃墟なども含まれています。 表紙の気難しそうなおじさんがボルヘスその人ですが、その顔に負けず作品もかなり気難しく少々とっつきにくい 面があるのも事実です。 ですが、ラテンアメリカ的でありながら古今のあらゆる題材 (哲学、宗教、寓話)を料理する手腕は緻密ですばらしく、 何度も読み返すとその幻想的な世界に引き込まれる事は確実です。 時代の変化に影響されない碩学の力を堪能できる一冊と言えると思います。
ボルヘス「伝奇集」 Amazon書評・レビュー: ボルヘス「伝奇集」より
4828840125
No.23
(5pt)

世界の真実に切り込むボルヘス流千夜一夜

アルゼンチンを代表する現代作家ボルヘスの17の短編が収められ、彼の代表作といえるバベルの図書館や 円環の廃墟なども含まれています。 表紙の気難しそうなおじさんがボルヘスその人ですが、その顔に負けず作品もかなり気難しく少々とっつきにくい 面があるのも事実です。 ですが、ラテンアメリカ的でありながら古今のあらゆる題材 (哲学、宗教、寓話)を料理する手腕は緻密ですばらしく、 何度も読み返すとその幻想的な世界に引き込まれる事は確実です。 時代の変化に影響されない碩学の力を堪能できる一冊と言えると思います。
伝奇集 (岩波文庫) Amazon書評・レビュー: 伝奇集 (岩波文庫)より
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