氷壁

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評判

氷壁の評価:

4.37/5点 レビュー 83件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.37pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全377件 321〜340 17/19ページ
No.57
(5pt)

死に吸い寄せられる青年

かなり前に読んでいたのですが、昨年のNHKのドラマ化をきっかけに、何年振りかで読み返してみました。
おそらく「神々の山嶺」よりはこちらの方を先に読んだはず。ですが「山」というよりは魚津という青年の内面描写しか印象に残っていませんでした。自分が「山」に全く縁がなく、「ザイル」「ピッケル」という道具の形状も、用途も知らないということも、もちろんあります。
しかし何よりもこの作品の肝は、会社勤めをしながら山に登ってはいたが心情的にさほど山に入れこんでいる訳ではなく、バランスをとりながら都会生活を送っていた青年が、自分の譲れない主張が裁判で証明できない→世の中に分かってもらえない、また分別もありながら人妻の魅力にあらがえず、それでも自分を想ってくれる人の気持に答えなければ…という葛藤から追い込まれて、まるで山に呼ばれるかのように「死」に吸い寄せられていく…という青年の変化であると思います。
「ナイロンザイルは切れるはずがない」という当時の定説。いや、でもザイルは切れたんだ!これは死亡した小坂の友人としても、登山家の端くれとしても譲れない!やがて都会生活の中で息苦しくなっていき逃げ込むかのように山へ…。
2度目読むと、しっかり「山」のことを書き込んでありました。にも関わらず後に残っていないくらい、青年の内面を描いたしっかりした文学作品です。
山には関係なく、本格的な文学好きな方にこそ是非読んでいただきたいです。
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
B0099FMQS6
No.56
(5pt)

死に吸い寄せられる青年

かなり前に読んでいたのですが、昨年のNHKのドラマ化をきっかけに、何年振りかで読み返してみました。
おそらく「神々の山嶺」よりはこちらの方を先に読んだはず。ですが「山」というよりは魚津という青年の内面描写しか印象に残っていませんでした。自分が「山」に全く縁がなく、「ザイル」「ピッケル」という道具の形状も、用途も知らないということも、もちろんあります。
しかし何よりもこの作品の肝は、会社勤めをしながら山に登ってはいたが心情的にさほど山に入れこんでいる訳ではなく、バランスをとりながら都会生活を送っていた青年が、自分の譲れない主張が裁判で証明できない→世の中に分かってもらえない、また分別もありながら人妻の魅力にあらがえず、それでも自分を想ってくれる人の気持に答えなければ…という葛藤から追い込まれて、まるで山に呼ばれるかのように「死」に吸い寄せられていく…という青年の変化であると思います。
「ナイロンザイルは切れるはずがない」という当時の定説。いや、でもザイルは切れたんだ!これは死亡した小坂の友人としても、登山家の端くれとしても譲れない!やがて都会生活の中で息苦しくなっていき逃げ込むかのように山へ…。
2度目読むと、しっかり「山」のことを書き込んでありました。にも関わらず後に残っていないくらい、青年の内面を描いたしっかりした文学作品です。
山には関係なく、本格的な文学好きな方にこそ是非読んでいただきたいです。
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.55
(5pt)

昭和中期のひとびとの、凛とした、生きざま

山岳小説の名作として有名ですが、最近はじめて読みました。山の魅力がよく伝わってきます。また重い社会派サスペンスとしてのドラマ性も含まれており、とくに企業間のエゴや微妙な連携の手法は今日の社会のありようそのものです。巨大製薬企業の横暴をえがいた映画「ナイロビの蜂」を思いだしました。

この小説のもうひとつの大きな魅力は、昭和30年代初頭の東京人や、日本の女性たちの生き様が、鮮やかに描かれていることです。いまとくらべるとどこか不器用だが、実に凛として、自己の魂の清潔さや、誇り高さを自己注視する文化がそこにあり、日本人はこれほどしっかりしていたのか、と読んでいて気恥ずかしくもなり、また、元気とエネルギーをもらいました。

文豪井上さんの若き日の傑作であるとともに、日本の近代文学のなかで、経済成長著しい昭和中期の銀座界隈など東京の様子や、ひとびとの生き方が鮮やかに描写されている、稀少で、極めて重要な作品とおもいます。
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025093
No.54
(5pt)

昭和中期のひとびとの、凛とした、生きざま

山岳小説の名作として有名ですが、最近はじめて読みました。山の魅力がよく伝わってきます。また重い社会派サスペンスとしてのドラマ性も含まれており、とくに企業間のエゴや微妙な連携の手法は今日の社会のありようそのものです。巨大製薬企業の横暴をえがいた映画「ナイロビの蜂」を思いだしました。

この小説のもうひとつの大きな魅力は、昭和30年代初頭の東京人や、日本の女性たちの生き様が、鮮やかに描かれていることです。いまとくらべるとどこか不器用だが、実に凛として、自己の魂の清潔さや、誇り高さを自己注視する文化がそこにあり、日本人はこれほどしっかりしていたのか、と読んでいて気恥ずかしくもなり、また、元気とエネルギーをもらいました。

文豪井上さんの若き日の傑作であるとともに、日本の近代文学のなかで、経済成長著しい昭和中期の銀座界隈など東京の様子や、ひとびとの生き方が鮮やかに描写されている、稀少で、極めて重要な作品とおもいます。
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025123
No.53
(5pt)

昭和中期のひとびとの、凛とした、生きざま

山岳小説の名作として有名ですが、最近はじめて読みました。山の魅力がよく伝わってきます。また重い社会派サスペンスとしてのドラマ性も含まれており、とくに企業間のエゴや微妙な連携の手法は今日の社会のありようそのものです。巨大製薬企業の横暴をえがいた映画「ナイロビの蜂」を思いだしました。

この小説のもうひとつの大きな魅力は、昭和30年代初頭の東京人や、日本の女性たちの生き様が、鮮やかに描かれていることです。いまとくらべるとどこか不器用だが、実に凛として、自己の魂の清潔さや、誇り高さを自己注視する文化がそこにあり、日本人はこれほどしっかりしていたのか、と読んでいて気恥ずかしくもなり、また、元気とエネルギーをもらいました。

文豪井上さんの若き日の傑作であるとともに、日本の近代文学のなかで、経済成長著しい昭和中期の銀座界隈など東京の様子や、ひとびとの生き方が鮮やかに描写されている、稀少で、極めて重要な作品とおもいます。
氷壁 (1963年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (1963年) (新潮文庫)より
B000JAHJIM
No.52
(5pt)

昭和中期のひとびとの、凛とした、生きざま

山岳小説の名作として有名ですが、最近はじめて読みました。山の魅力がよく伝わってきます。また重い社会派サスペンスとしてのドラマ性も含まれており、とくに企業間のエゴや微妙な連携の手法は今日の社会のありようそのものです。巨大製薬企業の横暴をえがいた映画「ナイロビの蜂」を思いだしました。

この小説のもうひとつの大きな魅力は、昭和30年代初頭の東京人や、日本の女性たちの生き様が、鮮やかに描かれていることです。いまとくらべるとどこか不器用だが、実に凛として、自己の魂の清潔さや、誇り高さを自己注視する文化がそこにあり、日本人はこれほどしっかりしていたのか、と読んでいて気恥ずかしくもなり、また、元気とエネルギーをもらいました。

文豪井上さんの若き日の傑作であるとともに、日本の近代文学のなかで、経済成長著しい昭和中期の銀座界隈など東京の様子や、ひとびとの生き方が鮮やかに描写されている、稀少で、極めて重要な作品とおもいます。
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
B0099FMQS6
No.51
(5pt)

昭和中期のひとびとの、凛とした、生きざま

山岳小説の名作として有名ですが、最近はじめて読みました。山の魅力がよく伝わってきます。また重い社会派サスペンスとしてのドラマ性も含まれており、とくに企業間のエゴや微妙な連携の手法は今日の社会のありようそのものです。巨大製薬企業の横暴をえがいた映画「ナイロビの蜂」を思いだしました。

この小説のもうひとつの大きな魅力は、昭和30年代初頭の東京人や、日本の女性たちの生き様が、鮮やかに描かれていることです。いまとくらべるとどこか不器用だが、実に凛として、自己の魂の清潔さや、誇り高さを自己注視する文化がそこにあり、日本人はこれほどしっかりしていたのか、と読んでいて気恥ずかしくもなり、また、元気とエネルギーをもらいました。

文豪井上さんの若き日の傑作であるとともに、日本の近代文学のなかで、経済成長著しい昭和中期の銀座界隈など東京の様子や、ひとびとの生き方が鮮やかに描写されている、稀少で、極めて重要な作品とおもいます。
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.50
(5pt)

誰かが呼んでいる

誰かが背中を押している

何かが見える

もう、後ろを振り向いてはいけない

前だけを見て、未来への一歩を踏みだす

氷のように冷たく、山のように高い、

人生の壁を乗り越えようとする時、

それを支えているのは、人と人との絆だと実感できる、

恋と友情の物語。

待っていてください
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025093
No.49
(5pt)

誰かが呼んでいる

誰かが背中を押している

何かが見える

もう、後ろを振り向いてはいけない

前だけを見て、未来への一歩を踏みだす

氷のように冷たく、山のように高い、

人生の壁を乗り越えようとする時、

それを支えているのは、人と人との絆だと実感できる、

恋と友情の物語。

待っていてください
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025123
No.48
(5pt)

誰かが呼んでいる

誰かが背中を押している

何かが見える

もう、後ろを振り向いてはいけない

前だけを見て、未来への一歩を踏みだす

氷のように冷たく、山のように高い、

人生の壁を乗り越えようとする時、

それを支えているのは、人と人との絆だと実感できる、

恋と友情の物語。

待っていてください
氷壁 (1963年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (1963年) (新潮文庫)より
B000JAHJIM
No.47
(5pt)

誰かが呼んでいる

誰かが背中を押している

何かが見える

もう、後ろを振り向いてはいけない

前だけを見て、未来への一歩を踏みだす

氷のように冷たく、山のように高い、

人生の壁を乗り越えようとする時、

それを支えているのは、人と人との絆だと実感できる、

恋と友情の物語。

待っていてください
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
B0099FMQS6
No.46
(5pt)

誰かが呼んでいる

誰かが背中を押している

何かが見える

もう、後ろを振り向いてはいけない

前だけを見て、未来への一歩を踏みだす

氷のように冷たく、山のように高い、

人生の壁を乗り越えようとする時、

それを支えているのは、人と人との絆だと実感できる、

恋と友情の物語。

待っていてください
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.45
(5pt)

井上靖の中で私が一番好きな作品

新進の2人の登山家の一人が山で事故にあう。切れるはずのないザイルが切れたのか、あるいは誰かが切ったのか、事故か自殺か殺人かと言う状況の中、残された登山家と、死んだ登山家が愛していた人妻、同じく死んだ登山家の妹との恋愛感情のもつれを事故に絡め、緻密に描いていきます。私などにとってはあの懐かしい昭和のよき時代も偲ばれます。

 一見長い小説で手に取りにくく思われる方もいるでしょうが、極限状態の連続で一気に読めてしまえます。間違いのない名作です。
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025093
No.44
(5pt)

井上靖の中で私が一番好きな作品

新進の2人の登山家の一人が山で事故にあう。切れるはずのないザイルが切れたのか、あるいは誰かが切ったのか、事故か自殺か殺人かと言う状況の中、残された登山家と、死んだ登山家が愛していた人妻、同じく死んだ登山家の妹との恋愛感情のもつれを事故に絡め、緻密に描いていきます。私などにとってはあの懐かしい昭和のよき時代も偲ばれます。

 一見長い小説で手に取りにくく思われる方もいるでしょうが、極限状態の連続で一気に読めてしまえます。間違いのない名作です。
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025123
No.43
(5pt)

井上靖の中で私が一番好きな作品

新進の2人の登山家の一人が山で事故にあう。切れるはずのないザイルが切れたのか、あるいは誰かが切ったのか、事故か自殺か殺人かと言う状況の中、残された登山家と、死んだ登山家が愛していた人妻、同じく死んだ登山家の妹との恋愛感情のもつれを事故に絡め、緻密に描いていきます。私などにとってはあの懐かしい昭和のよき時代も偲ばれます。

 一見長い小説で手に取りにくく思われる方もいるでしょうが、極限状態の連続で一気に読めてしまえます。間違いのない名作です。
氷壁 (1963年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (1963年) (新潮文庫)より
B000JAHJIM
No.42
(5pt)

井上靖の中で私が一番好きな作品

新進の2人の登山家の一人が山で事故にあう。切れるはずのないザイルが切れたのか、あるいは誰かが切ったのか、事故か自殺か殺人かと言う状況の中、残された登山家と、死んだ登山家が愛していた人妻、同じく死んだ登山家の妹との恋愛感情のもつれを事故に絡め、緻密に描いていきます。私などにとってはあの懐かしい昭和のよき時代も偲ばれます。

 一見長い小説で手に取りにくく思われる方もいるでしょうが、極限状態の連続で一気に読めてしまえます。間違いのない名作です。
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
B0099FMQS6
No.41
(5pt)

井上靖の中で私が一番好きな作品

新進の2人の登山家の一人が山で事故にあう。切れるはずのないザイルが切れたのか、あるいは誰かが切ったのか、事故か自殺か殺人かと言う状況の中、残された登山家と、死んだ登山家が愛していた人妻、同じく死んだ登山家の妹との恋愛感情のもつれを事故に絡め、緻密に描いていきます。私などにとってはあの懐かしい昭和のよき時代も偲ばれます。

 一見長い小説で手に取りにくく思われる方もいるでしょうが、極限状態の連続で一気に読めてしまえます。間違いのない名作です。
氷壁 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.40
(5pt)

小説とドラマの違い

テレビドラマに惹かれて原作を読んだが、ドラマの方が娯楽性が強く面白いと思った。

まず、主人公魚津恭太(TV=奥寺)の親友の小坂乙彦(TV=北沢)の登攀途中の滑落死については、ドラマではカラビナの故障、小説では使用したザイルが突然切れた事によるもので大した違いはない。しかしその後、ドラマでは事故の真相をめぐり製造元の佐倉製鋼を絡めた法廷論争に展開するのに対して、小説はザイルの耐久不良を匂わせる程度。親友の死を無駄にしないため、事故の真相を解明しナイロンザイルの特性を理解しようとする魚津の姿勢は立派だと思うが、世間の人は大方無関心だったのである。なぜなら、登山家は人口のごく一部に過ぎないからだ。しかしだからといって、ザイルは決して切れないと言い切る佐倉製鋼の傲慢さも許せない。それは両者共通だが、問題は、小説には真実を捻じ曲げようと暗躍する人物が登場しない事である。物言わぬ大企業も確かに不気味だが、これでは不善な企業に警鐘を鳴らしているとは言い難い。

 一方、二人の男をたぶらかす八代美那子は悪女だと思うが、魚津と奥寺ではその対応が異なる。何処までも硬派な魚津は八代美那子を忘れ、小坂の妹かおると結婚を誓い合うが、奥寺は情熱に身を任せ、結果的に夫哲夫の手から美那子を奪ってしまう。なるほど、理性より、友情より、愛情である。ストーリーはこの方が面白い。

 結局の所、著者は一登山家の姿を描いていた。山を心から愛し、義理人情に厚い男のそれだ。そんな心情を察すると、美那子を忘れる為に一人単独で穂高に登ろうとする魚津の悲愴感が痛いほど胸に伝わってくる。魚津はこの登攀で命を落とすが、自分の趣味に命を捧げたのだからなんて幸せなのだと言いたい。童謡に『山男の歌』という曲があるが、魚津はその例にピッタリ合致する。冒頭でドラマに一票投じたが、お互い視点が違う。甲乙つけがたい傑作と言うのが本音だ。
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025093
No.39
(5pt)

小説とドラマの違い

テレビドラマに惹かれて原作を読んだが、ドラマの方が娯楽性が強く面白いと思った。

まず、主人公魚津恭太(TV=奥寺)の親友の小坂乙彦(TV=北沢)の登攀途中の滑落死については、ドラマではカラビナの故障、小説では使用したザイルが突然切れた事によるもので大した違いはない。しかしその後、ドラマでは事故の真相をめぐり製造元の佐倉製鋼を絡めた法廷論争に展開するのに対して、小説はザイルの耐久不良を匂わせる程度。親友の死を無駄にしないため、事故の真相を解明しナイロンザイルの特性を理解しようとする魚津の姿勢は立派だと思うが、世間の人は大方無関心だったのである。なぜなら、登山家は人口のごく一部に過ぎないからだ。しかしだからといって、ザイルは決して切れないと言い切る佐倉製鋼の傲慢さも許せない。それは両者共通だが、問題は、小説には真実を捻じ曲げようと暗躍する人物が登場しない事である。物言わぬ大企業も確かに不気味だが、これでは不善な企業に警鐘を鳴らしているとは言い難い。

 一方、二人の男をたぶらかす八代美那子は悪女だと思うが、魚津と奥寺ではその対応が異なる。何処までも硬派な魚津は八代美那子を忘れ、小坂の妹かおると結婚を誓い合うが、奥寺は情熱に身を任せ、結果的に夫哲夫の手から美那子を奪ってしまう。なるほど、理性より、友情より、愛情である。ストーリーはこの方が面白い。

 結局の所、著者は一登山家の姿を描いていた。山を心から愛し、義理人情に厚い男のそれだ。そんな心情を察すると、美那子を忘れる為に一人単独で穂高に登ろうとする魚津の悲愴感が痛いほど胸に伝わってくる。魚津はこの登攀で命を落とすが、自分の趣味に命を捧げたのだからなんて幸せなのだと言いたい。童謡に『山男の歌』という曲があるが、魚津はその例にピッタリ合致する。冒頭でドラマに一票投じたが、お互い視点が違う。甲乙つけがたい傑作と言うのが本音だ。
氷壁 Amazon書評・レビュー: 氷壁より
4103025123
No.38
(5pt)

小説とドラマの違い

テレビドラマに惹かれて原作を読んだが、ドラマの方が娯楽性が強く面白いと思った。

まず、主人公魚津恭太(TV=奥寺)の親友の小坂乙彦(TV=北沢)の登攀途中の滑落死については、ドラマではカラビナの故障、小説では使用したザイルが突然切れた事によるもので大した違いはない。しかしその後、ドラマでは事故の真相をめぐり製造元の佐倉製鋼を絡めた法廷論争に展開するのに対して、小説はザイルの耐久不良を匂わせる程度。親友の死を無駄にしないため、事故の真相を解明しナイロンザイルの特性を理解しようとする魚津の姿勢は立派だと思うが、世間の人は大方無関心だったのである。なぜなら、登山家は人口のごく一部に過ぎないからだ。しかしだからといって、ザイルは決して切れないと言い切る佐倉製鋼の傲慢さも許せない。それは両者共通だが、問題は、小説には真実を捻じ曲げようと暗躍する人物が登場しない事である。物言わぬ大企業も確かに不気味だが、これでは不善な企業に警鐘を鳴らしているとは言い難い。

 一方、二人の男をたぶらかす八代美那子は悪女だと思うが、魚津と奥寺ではその対応が異なる。何処までも硬派な魚津は八代美那子を忘れ、小坂の妹かおると結婚を誓い合うが、奥寺は情熱に身を任せ、結果的に夫哲夫の手から美那子を奪ってしまう。なるほど、理性より、友情より、愛情である。ストーリーはこの方が面白い。

 結局の所、著者は一登山家の姿を描いていた。山を心から愛し、義理人情に厚い男のそれだ。そんな心情を察すると、美那子を忘れる為に一人単独で穂高に登ろうとする魚津の悲愴感が痛いほど胸に伝わってくる。魚津はこの登攀で命を落とすが、自分の趣味に命を捧げたのだからなんて幸せなのだと言いたい。童謡に『山男の歌』という曲があるが、魚津はその例にピッタリ合致する。冒頭でドラマに一票投じたが、お互い視点が違う。甲乙つけがたい傑作と言うのが本音だ。
氷壁 (1963年) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 氷壁 (1963年) (新潮文庫)より
B000JAHJIM