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夢宮殿
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夢宮殿の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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難解だと思いましたが、2時間ちょっとで読破しました。 この前に読んだ本が1984だっただけに、その全体主義への批判が気持ちよかった。 『A Girl in Exile』の翻訳も期待したいです。 | ||||
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国民の夢を検閲してそこから得られる情報の断片から国家の危機に関わるような危険の芽を摘む機関の話、 というフィリップ・K・ディックのマイノリティー・リポートの幻想版、というストーリーで、 設定がほぼ全てでそこからの展開も読者の想定の域を出るものではないが、ディックの作品が「悪意」を検閲し、 犯罪行為を未然に防ぐことをまず目的として、それが結果的に民主主義の危険に通じかねないというものであったが、 こちらの作品ではその目的が全体主義に対する危険の排除という、より直接的に国家権力の暴走の恐怖を描いている。 作者は多作のベストセラー系の作家らしいので、一つの作品の質はそこそこということだと思うが、 ただテーマとは別に面白いのが、エリート省庁「夢宮殿」に勤めることになった主人公が、その新しい未知の世界に飛び込んで、 多少神経症的とさえ言えるかもしれない不安感や警戒心、恥をかきたくない恐怖心や結果を出そうとする焦りが、 新たに社会に飛び込む現実の世界の新社会人の心労とほとんど同じに描かれているように思えるところ。 そんな不穏な世界で働き始める主人公に同情できる。 テーマから広げたかたちで恐ろしく思えるのは、夢の検閲など非現実的に思えるが、 現代ではインフラを通じて個人の思考に通じる情報も吸い上げられまくっていて、それが検閲されるならば、近未来を扱ったディックの作品よりも、むしろこっちの作品の方がリアルに近いというところ。 | ||||
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バルカン半島の小国アルバニア出身のイスマイル・カダレ(1936年生れ)が書いたミステリアスな傑作長編です。 国家によって国民の夢を管理するという超ユニークな・ブッ飛んだアイデアにひかれて読みました。 この作品、難解な現代文学と思いきや、わりとサクサク読めました。 理由は簡単です。夢宮殿(タビル・サライ)に職を得た主人公マルク=アレムが、少しずつ仕事を覚えていき、配属先も夢の〈選別〉部署から〈解釈〉部署へさらには夢宮殿の指導的地位へと順次出世するにつれて、不可解きわまる夢宮殿および夢の扱いについて少しずつ分かっていくという、ミステリータッチの展開なので、どうしても先を読まずにはいられないのです。こんな推理小説のような展開なら、この作品はもっと話題になって売れてもいいような気がしました。 読み進むにつれて、夢宮殿の内情や国家における特異な役割、さらには広大な帝国全土から集められた国民の夢がどう取り扱われ、どう解釈され、それが現実の世界にどういう影響を与えていくのか、ということが次第に明らかになっていきます。 最後のほう、ある夢の解釈が原因で、主人公マルク=アレムの属する名門一族キョプリュリュ家に招いた二人の吟遊詩人が警察によって殺され叔父のクルト氏が逮捕され、最後は処刑されるというところまで読み進んだ時点で、何だか背筋がゾッとしました。 しかも、それが荒唐無稽な夢物語ではなく、人間性の暗部をえぐり出しているようにも、アルバニアのような政治情勢的に不安定な国のある種の真実を突いているようにも見えるところがスゴイと思いました。カフカのアルバニア・バージョンとでも言えばいいのでしょうか。 ノーベル賞候補にも名前を連ねている小さな国の唯一の世界的作家カダレ。その幻想性や現代性、アクチュアルな問題への深い洞察には脱帽です。 私は、今回カダレの作品をはじめて読んでみて、バルカン半島の南イタリア寄りの端っこにある日本の九州より小さい人口わずか300万人の国に、村上春樹やカズオ・イシグロと肩を並べる大作家がいたことに非常に驚きました。 予想をはるかに超えて面白く、しかも有意義な読書体験でした。 | ||||
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紹介文を読んで、初めは夢宮殿にまつわる込み入った話が展開されるのだろうと思っていたのだが、ちょっと違う。むしろこれは、夢宮殿という不可思議な機関を中心に据えた、キョプリュリュ家というこれまた不可思議な一族にまつわる話、というのが実際。キョプリュリュ家の象徴、武勲詩にまつわる皇帝との因縁、夢におけるそれらの暗示、などがそれとなく示され、物語はミステリの様相を帯びてゆく。全体の構成からして、この物語が周到・堅固なプロットに基づくものであることがわかるが、しかしそれほど作為的な感じがないのは、語り口の所為だろうか。 この話にリアリティを与えているのは、描写だ。主人公マルク=アレムはたびたび夢宮殿のなかを迷うのだが、そのたびにこの施設の広大さ、まさに夢のごとき茫漠とした印象、得体の知れない雰囲気、などが増長されてゆく。それはマルク=アレム自身の神経症じみた不安や、どんよりした冬の情景(室内では石炭が焚かれている)などと相まって、物語全体に霧を掛ける。それが、夢宮殿の謎と、キョプリュリュ家にまつわる謎という、論理的に提示される二つの謎をさらに謎めかしている。 ただ何故だろう、全体として陰鬱ではあるのに、読み進めていくにあたっての陰鬱さはなく、読み手としてはむしろ謎への興味に駆られてゆく。そして謎が謎を呼ぶ展開ではあるものの、一応のところすべてが不足なく説明されるので、もやもやは残らない。理不尽ではあるが、真に理不尽ではない。それは夢を媒介にしてはいるものの、徹頭徹尾論理的な仕方での理不尽なのだ。したがって、例えばカフカ作品のように、不条理文学的な妙味はそれほど感じられない。 謎の提示とその解決がわかりやすい、親切設計の幻想文学、と言うべきか。 | ||||
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名門出の青年が職を得た「夢宮殿」は、国民の見た夢を分類・解釈する機関だった。 ここには、国家が個人の無意識までを管理する怖るべき世界が描かれている・・・。 上記のような紹介文を読むと、作者カダレがアルバニアという、旧東側諸国の中でも とくに実態が謎に包まれた国の出身ということもあり、カフカとオーウェル『1984年』を 足して2で割ったような、全体主義体制下での抑圧的な官僚機構を描いた、ひたすら 暗く重苦しい作品を予想しかねないところだが、実際に読んでみた感触は幾分違う。 他に邦訳のある作品を読む限り、カダレの作風は、アルバニアの風土や民俗に取材した かなり土着性の強いものなのだが(ただし、手法はあくまでモダンで洗練されている)、 本書でも、一見民族色を拭い去られた、無味乾燥な官僚機構が描かれているようでいて、 「タビル・サライ」とも呼ばれる「夢宮殿」は、実はオスマン・トルコ帝国の一官庁ということ になっている。時代設定も、おそらく19世紀前半のはずなのだが、それでいて描かれる 風景は、執筆当時のアルバニアの首都ティラナを思わせるというように、意図的に時空を 混乱させた舞台設定が魅力的に感じられる。(付言すると、慌ただしく馬車が発着する 「夢宮殿」の中庭は、カフカの世界からそのまま抜け出してきたかのようだ。) カダレ作品の特徴として、地味で単調極まりない灰色の風景や人物が多く描かれる一方で、 本書中の叔父クルトのような華やかな存在も時折姿を現し、一瞬にして物語を混沌の渦に 叩き込むかのような、演劇的な構成や手法の巧みさが挙げられると思う。個人的には、 ギリシアに近い風土性や灰色の風景、悠揚迫らぬ展開と劇的な事件のコントラストなどの 特徴から、隣国の映画監督テオ・アンゲロプロスの作品を連想することがあるのだが、 そういった視点で読み直してみても面白いかもしれない。とにかく、本書が文句なしの 世界文学の傑作であることは断言できると思う。 | ||||
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きっと東欧小説の入門に、よい本だと思われます。おすすめします。 | ||||
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アルバニアの名家キュビュリュリュ家の傍系にあたるマルク=アレムは、職を求めて、<タビル・サライ>、通称<夢宮殿>を訪問する。そこは、国民の夢を集め、国家の意思決定に供するための<親夢>を析出する、重要な政策機関であった ・・・ 本書の作者イスマル・カダレは、アルバニア出身の作家である。 本書が書かれた当時のアルバニアは、厳重な鎖国政策をとった独裁政権国家。「未だに中世のような生活をしている国」と揶揄されていたようだ。そして、本書の舞台は、オスマントルコ帝国統治下の19世紀のアルバニア。自治権を求める民族運動から政治機関が結成された年近くにあたる。 <夢宮殿>の迷路の如く続く回廊、<親夢>係を頂点とした階層化された組織機能、黙々と仕事をつづける夥しい人々。人々の夢の中に埋没し、除々に現実が色褪せていく主人公マルク=アレムを通して、読者は、夢幻の世界に入りこんでいく。<夢宮殿>の絵画的な描写に比べて、登場人物たちのほとんどは名前を持っておらず、彼らの外見を語る言葉は極端に少ない。主人公をノッペラボウが取り巻いているようだ。読み進めるうちに、幻想的で不安定な世界観を強く印象づけられることになる。 幻想小説? だが、物語はこのまま終わらない。夢さえも政争の具とする現実へと移行していく。人々が畏敬の念を抱く<夢宮殿>は、人々を恣意的に統制するための装置であったことに主人公は気づくのだ。そして、主人公にとって<夢宮殿>そのものが彼の未来を予見させる悪夢の様相を呈してしまう。 カダレが設定した架空の<夢宮殿>は、作者の心象風景ということになるのだろう。独裁政権下にあって、民族運動が熱をおび始めた時代に思いを馳せているのかもしれない。 本書は、全体主義への批判であるとともに、最貧国として蔑まれ孤立化した故国を嘆く、カダレからの近隣諸国への文学によるメッセージだったのだと思う。 | ||||
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(ネタバレを含むので、未読の方はお気をつけください) 国家が夢を管理する、というアイデアがいい。そんなことあるわけ…と言いかけて、止まってしまう。…あるかもしれない。どこか遠い国でならあるかもしれない。たとえば、アルバニアのような。 主人公が名のある家の出身なので、どんどん出世していく。それが怖い。出世はするんだけど、国家の全貌がまるで掴めない。カフカの「審判」に通じるものがある。そういえばこの小説、全体的にどこかカフカエスクだ。そうして詳しいことはわからないままに、物語は沈黙してしまう。 正直に言えば、そこがぼくには少し不満だった。せっかく面白いアイデアなのだから、もっともっと掘り下げて欲しかった。細部を知りたかった。夢判断の新人研修とか、でっちあげでもいいから書いて欲しかった。 とはいえ、この小説は妙に心に残る。この物語に漂う独特の不安感は、おそらくアルバニアという国に由来している部分もあるのだろう。アルバニア事情に明るかったら、もう少しこの小説に踏み寄れたかもしれないですね。つまりぼくが悪いわけで、この本が悪いわけでは決してないです。 | ||||
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いわゆる、青年の成長物語なんですけれども。 たんたんと話が流れていくんですが、読んだあとぞぉ~~っとする。夢に見たことまで国家に管理されちゃうなんてコワイです。支配側も同じように何か大きな力で持ち上げられたと思うと人柱にされちゃったりする。とにかく不思議にひっぱられる本。 | ||||
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