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インディヴィジュアル・プロジェクション



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インディヴィジュアル・プロジェクションの評価: 3.65/5点 レビュー 40件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.65pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全40件 1~20 1/2ページ
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No.40:
(5pt)

日本版ファイトクラブ

スリリングな作品である。だが最もスリルを味わったのは阿部和重氏自身では無いだろうか。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
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No.39:
(5pt)

阿部和重で2番めに好きな小説

第10回三島賞候補作。
 阿部和重が小説家として乗りに乗っていた最盛期に書いた(と私が考える)、「阿部和重節」あふれるキレッキレの純文学作品。
 阿部作品に頻出の暴力、のっぴきならない状況、苦境からの脱出劇、といったものが好きな方には楽しめると思う。主人公の自我がゆらいでいく過程の描き方がやはり阿部らしくて良い。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
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No.38:
(5pt)

幻視なのか、リアルなのか、読者にほとんど確信を与えないスゴワザ小説だ

山形県東根市出身の芥川賞作家。individual projection 各個の投影。この英語の意味を確かめずに読みだして、むしろ楽しめた。タイトルは一種のネタばらしだ。といっても、相当読み進まないとこのタイトルの意味は分からないだろう。

スニーカーや銃や服のファッションなど詳しくして、わたしはなどそこでもはや着いていけなくなりそうだが、そこは分かったふりをして進む。
フリオ・イグレシアスという歌手が好きたということで、歌詞の鑑賞が入る。フリオはかろうじて私の青春期に引っ掛かっていた歌手なので抵抗はない。むしろ作中の若者が好きだということに引っ掛かってしまった。
フリオが33歳の時に書いたという「33歳」という歌詞の解釈によると、33歳という年齢は青年と中年の境にあり、なにか決心を迫られる年齢らしい。「きのうという時」という語句は不吉な響きがあるらしい。
小説を最後まで読み進んでいくと、この「きのうという時」は、ただの感傷的な表現、過ぎ去る青春などというものではなく、とんでもないドラマの回想であることに気づかされる。
日記形式で書き進められるドラマは、過去を整理するものであったり、過去の影響で現在起きている事件を分析したりしているが、最後の最後は、執筆者オヌキのレポートへの高踏塾々長マサキの感想が添えられているということで、これまで営々と読みながら構築してきた自分なりの解釈が一瞬で覆されることになる。

高踏塾とは、山形県東根市と思しき場所に設置されたスパイ養成塾で、映画学校の生徒たちが卒業作品を制作するべくその地にやってきてハマってしまったものだ。
スパイ養成塾とはいっても、たとえばニンジャ塾のように、ゴッコを少々本気でやる、そんな類のものではなかった。若者たちは、だんだんと本気度が進んで行ったのか、相当ヤバイところま深まっていく。グループなので、登場人物が多い。
主人公のオヌキは、潜むように逃げるように渋谷のヤバい場所にある映画館の映写技師になるが、JK(女子高校生)とのつきあいもあり、その関係でヤクザ殺害現場に巻き込まれたり、と発展していく。映画館の関係者たちもこうして登場し、さらに登場人物たちが増える。

だが・・・、ひょっとして彼って統合失調症? と思えるような錯覚のような間違いをしでかす。イノウエのアパートに侵入したつもりが、自分のアパートであり、イノウエは自分だったかということになる。それがどこまでも進むので、あれほどたくさんいた登場人物たちのほとんどが統合失調症の幻視、あるいは多重人格的分身か、とドラマの終わりが見えてきたころはそう思わせられるようになる。それが、最後の「感想」つまり日記形式のレポートへの感想を見ると、やっぱりみんな実在していたのか、と思い返されるが、その感想を書いたマサキもまたオヌキの分身かも、という疑惑もぬぐいきれない、という塩梅なのだ。
ここまで曖昧だと心理劇のような感じもするが、スパイ養成ということではまるでアクション映画を見ているような感じでもある。例えばマット・デイモンの「ボーン」シリーズなどを彷彿とさせられた。ジェイソン・ボーンは心因性健忘で架空の元CIA暗殺者という役どころである。そのように、日記は主人公のオヌキの心因性による幻視なのか、リアルなのか、読者にほとんど確信を与えないスゴワザ小説だ。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.37:
(3pt)

今、注目している作家です!

彼の作風は、本来、僕の好むも二ではないのですが,なぜか、時に、バイオレンステイックであり、セクシュアルでもあり、ありきたりの世界を描いた作品ではない。しかし、彼の文体には、内容いかんにかかわらず、引き込まれていく。文体に「力」があるのだろう。どう評価してよいのかは、僕には、まだ、難しいところであるが, 今後、注目の作家の一人だろう。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.36:
(2pt)

映写技師、

テロ組織、多重人格と某海外文学と共通するが、全てが「渋谷」に帰結する脳内の自閉的物語。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.35:
(3pt)

フリオ・イグレシアスの詩の解釈

それなりに面白いんだけど、著者が愛読していたらしいF.K.ディックから借用してきたような多重人格&現実崩壊ネタには既視感ありまくり。プルトニウム云々は映画『太陽を盗んだ男』を連想させるが、ブラックボックス化し、本当にプルトニウムかどうかさえ疑わしいその存在は、この作品の構造そのものの暗喩だろう。映画フィルムのショット群の中で反復されている被写体を探す辺りは、蓮実重彦的主題論の応用か。裏表紙の紹介文にある「苛烈な心理戦」は、主人公の疑心暗鬼という独り相撲と渾然一体であって、普通のスパイ小説的なものは、あまり期待しない方がいい。東浩紀の解説は、著者との個人的交友を踏まえつつ、作品の批評そのものが一種のフィクションであることを強いられる構造を語っており、この解説込みでこそ面白く読める。尤も、書かれた時期を差し引いても、発想の新しさは感じ難い作品。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.34:
(3pt)

個人的な投影は

本作品は、渋谷の映画館で働く映写技師オヌマの4ヶ月にわたる日記という体裁である。

高踏塾というスパイ養成所に5年間入塾していた過去をもつオヌマ。オヌマは、今や、高踏塾と縁を切り身を隠すように暮らしていた。ある日、オヌマに仲間の死の報がもたらされる。訓練途中にヤクザから奪ったプルトニウムが原因の報復か。それとも、高踏塾の粛清にあったのか。拡大するトラブル、そして元同志イノウエの陽動に、オヌマの思考は乱れに乱れてしまうのだった。 ・・・

あらすじを書いてしまうと謀略小説のように見えてしまうが、これが全く違う。

オヌマが現実逃避のかっこうで入塾したのは、マサキという胡散臭い男の開いた私塾だ。マサキの指導を仰ぐ塾生たちは、訓練の一貫で、暴力団組長を誘拐し、プルトニウムを強奪してしまう。もうこの時点で現実性がない。どこか抜けている。この違和感は、本作品の最後まで続く。

マサキを失い、塾を抜けたオヌマに次々に降りかかる暴力沙汰。その過程で、オヌマは自分自身と他人の区別がつなかくなっていく。Individual Projection=個人的な投影は、自我が拡大していく様のようだ。徐々に、オヌマの日記が真実であるのか、オヌマの頭の中の出来事なのかが判然としなくなる。オヌマの願望を充足するめの人格がかたちづくられているのか、それとも単なる妄想か。自己というアイデンティティの崩壊は、フィリップ・K・ディックの作品に見られるような心もとなさを喚起する。

結末までオヌマの錯乱は続くかと思いきや、最後の3頁で、ひっくり返される。冒頭のフリオ・イグレシアスの歌詞から始まるこの物語は、束縛からの脱却へ という大きなテーマにそって流れているようだ。ここで好き嫌いが別れそうだが、どうだろう。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.33:
(4pt)

説明不足による異常と正常の混乱

印象として、なんだかヌルヌルしている。
それは血であり、精液であり、とにかく肌触りとしてヌルヌルしている気味悪さがある。
気味悪さの要因としてもう一つ、物語も挙げられる。
日記体で書かれる語り手がまず信用できない。つまり、正常には到底思えない。
では描かれる世界、出来事は信用できるかと言えば、まるで信用できない。
一体何が起きて、何が起きなかったのか、さっぱり分からない。
事実が一つとして無い気すらする。謎が謎のまま。
ただ悪い印象を受けているかと言えば、そうじゃない。4点つけてますしね。

阿部和重が通っていた映画学校の一年後輩で、漫画家の榎本俊二。
彼を阿部の作品と結びつけるのは強引かもしれないが、
コントグループ・ラーメンズの小林賢太郎が榎本に
「美しき説明不足」という言葉を送っていました。
美しいとまで言ってしまうのは、さすがに無理あるかなーと思いつつ
説明不足であることが、良い方向に向いている気がする。

あと文芸評論家が超好みそう(というか当時実際、嬉々として取り上げてました)
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.32:
(5pt)

ニュー恋愛と暴力

なぜかは訊くな!
俺はこの「±$1文庫本」を
大阪に行く時チカテツとかで拾い読む。
読むほどにオモシロをかし//

セリフ日記styleだからか?

たぶんそういわれて悪い気はしない。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.31:
(5pt)

妻には内緒にしておきたい『インディヴィジュアル・プロジェクション』

もう昔の話だ。
僕が三番目に寝た女の子は、僕のペニスのことを「あなたのインディヴィジュアル・プロジェクション」と呼んだ。

――『インディヴィジュアル・プロジェクション』

 最近の”小説”はどんなものかと思い、マルグリット・デュラスとパラレルで読み始めたのが、阿部和重のこれ。
 なぜタイトルを英字表記しないのかが不思議である。――”Individual Projection”――その方が僕たちにとってはむしろ読みやすいし、また格好もよかろうに。

 《人が暴力的なことに惹かれるメカニズムは、とりあえずぼくにはこんなふうに想像できる。問題解決へのより明解な手段として認識されていたその行為が、反復されてゆくなかで生じた美的なイメージの効果や快へと転ずる刺激の波及によって当初の志向から外れてゆき、暴力的なことそのものの目的化が起こる。つまりオマケの独り歩きにぼくらは魅せられているというわけだ。もっとも、こうした仕組みはなにも暴力的なことのみに妥当するわけではないのだから、再び当初の問いへとひき戻されてしまう。》
〜本文より引用〜

 この作品に仕掛けられているのは”性”と”暴力”と”サスペンス”といったところだ。それはそれで一向に構わないのだが、イスラエルやら中東や、諜報機関といったKeyワードの出現をオープニングで見い出した瞬間、”いかにも”といった印象を拭い去ることができず、ちょっとダメかなとも思った。
 それでもこのスピード感ある文体と、適度に今時の”若者言葉”が散りばめられているが嫌味という程のものでもなく、文章自体も以外にも癖がなく非常に読み易いということにおいて、ある一定の評価を与えたい。十分に楽しみ、読了するにも多くの時間を要しない。この作品は”Interesting”的面白さというよりも、むしろ”Amusing”的面白さ、ということで間違いない。

 その意味では、最近読んだこの類の作品として青山真治の『ホテル・クロニクルズ』を僕は個人的に推したいのだが、文章のまとまりさ加減において阿部和重に軍配を上げざるを得ないだろう。
 若手というには微妙な40代。それでも阿部和重が力量のある書き手であることには変わりはない。・・・ただ、カバーが若干エロいんだな。満員電車の中でも読んだりするので、仕方なしに文庫本カバーでカモフラージュしている。

インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.30:
(5pt)

大体、2作目は失敗作であるジンクスを吹き飛ばした傑作。

東北の山形県出身なので、同じ東北の田舎町の人間としては、特に思い入れは強いのかもしれませんが、彼の処女作「アメリカの夜」が凄くて、そしてこれが来ましたよね。間違いなく、本物だと思いましたね。見事な傑作です。また、当時は渋谷系J文学とポップに言われてましたけど、新しい文学の潮流を確かに作ったエポックメイキングな作品でもあるでしょう。その後、ある意味で、天才の伊坂幸太郎さんに押されちゃいますが、そのエンターテインメント性から言えば・・。彼は、別な方向性へ向かって行ったわけです。明らかに、ダブル村上世代から、脱した一冊ですね。まず、表紙だけで買い、ですよね。良い写真ですが、内容とは全く違います。「美丘」の表紙も、つい買いたくなる表紙ですけど(笑)でも、石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」シリーズより、面白いですよ。衣良さんよりは、池袋少年ギャング闘争を描いた井上三太さんの漫画の方がずっと面白いですね、僕には。この本はもちろん、それ以上ですよ。絶対に。東北人、阿部さん、冲方さん、清野さん、伊坂さん、宮藤官九郎さん、「掏り」を書いた作家・・、みんながんばってまんがな。井上ひさしさんの功績も土井晩翠さんの功績も大きいのかな?
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.29:
(4pt)

渋谷を暗躍するぼく、女子高生、ヤクザ

渋谷の古ぼけた映画館で映写技師として働くオヌマは25歳。バイトの同僚の売った
ケンカではやたら強いということがわかった彼の過去にはいったいなにがあったのか。
彼の日記がそれを次第に明らかにしていく・・・。
阿部和重といえば、この常盤響がつとめる本作の表紙がもっとも有名だと思うが、彼
の代表的著作の一つ。
彼の小説には「とにかく胡散臭い人」がよくよく顔を出す。本作でも、主人公の地元と
で謎の私塾を開いているマサキの胡散臭さは、特筆すべきものがある。その目的の
わからなさや、スケールは大きいがたまらなく嘘っぽいこととやそれに見合うちんけな
末路にしろ、決してお金は貸したりなどして関わりたくはないが(十中八九迷惑をかけ
られるから)、人づてにずっとその動向を探っていたいと思わせる。本作はあくまでオヌ
マの回想に登場するのみであり、あくまでストーリーに絡んでくることはないが、一際
魅力を放っている。
もうひとつ、阿部作品の中で妖しい魅力を放っているのは、後の『ニッポニア・ニッポン』
にも通ずるような誇大妄想気味の主人公の存在である。日記の中で自分の思考の過
程を、まさに漏らすことなく筆記し続けている彼であるが、実はこのオヌマも決してまとも
だといはいえず、読者はこれが彼の日記を盗み見るという体さいであることを忘れかけて
いたころに、ある「錯誤」を彼がしているということを知り、足場を急に外されたかのような
薄ら寒い思いをすることになるだろう。そう、この小説は地の文もうかうか読んでられない
のだ。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
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No.28:
(3pt)

買い、かな・・・。

渋谷系とかJ文学とかかまびすしく騒がれていましたし、このあとにこの人が書いたものと関連させて考えなければいけないかとも思いますが、「こういった世界もあるんだなぁ、ないかもしれないけど、小説だから」といった醒めた気持ちにさせられました。個人的に苦手な話題で、体質的な問題だとは思いますが、あまり楽しめませんでした。誤解を恐れずに言えば、映画のよい原作になるような(あるいはそれを見越して書かれているような)小説は、ひとつの作品としては本質的によい作品にはなりえないと考えているので。
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4101377219
No.27:
(4pt)

インディヴィジュアル・インプレッション

著者の魅力が出ている。
J文学と呼ばれてはいるが、そういったことばでカテゴライズしたくない作品でもある。
手紙形式という、割と古い手法をちょっとひねって、最後の最後に実はそれが、スパイ養成塾のレポートであるというのは、なかなかよいと思った。
大小の伏線もあり、不可解な部分、倒錯する部分ありで、楽しめる。
この作品は、たぶん読む人によって受け取り方に非常に巾が出る作品。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.26:
(4pt)

阿部和重全開

日記形式で書かれた小説に限らず、誰かの視点でその小説が書かれている場合その視点や思考は主観に過ぎず、そこにおける客観性というものを読者は「他者の言動」のみからしか判断することができない。では、その他者が真実を述べていなかったらどうなるのか。自分を騙そうとしているとしたらどうなのか。あるいは。……。
膨大な伏線とほとんど解決されないまま終わるそれら(かなり集中して読んでいたせいで少し泣けた)、もしくは無数の解釈が可能なそれら。そしてラスト。
読み終わった瞬間は消化不良な想いがじわじわと湧くけれど、東浩紀の解説によってその想い以上に驚嘆が広がる。阿部和重が好きならオススメ。自分が理解できていないのに言うのはなんだけど、芥川賞受賞作の「グランド・フィナーレ」よりはこちらの方を強く勧めます。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.25:
(4pt)

巡る阿部ワールド

 ただ、この作品が 面白いのか、面白くないのか、それだけを気にしているあなたに僕が言うとするならば、この作品は 面白い。がしかし、阿部和重の本をまだ読んだことがない人にとっては、内容はともかくとして、書き方がハードな文体である為に、読みにくいかもしれない、ということは頭に入れておいてほしい。
 もう少し、この作品の詳細を言うあなたに。この作品は旧友との間での心理戦が繰り広げられ、スリルのある作品だと僕は思っている。だが阿部和重は、書き方が固く厳しく、その分、読むスピードが落ちる。そう言った意味で、展開が遅い(逆に阿部ワールドを体感できる)。その中で、こういったスリルのある作品を書ける阿部にはかなり感動させられてしまった。シメも阿部らしい終わりで、この作品を読めば、阿部和重を知ることが出来ると僕は思う。
 かなり詳細を知りたいあなたに僕がレビューを書くとするなら、少し話の内容を説明することになる。それに加え、阿部和重の他の作品を読まないと僕が記述する内容が分からなくなってしまいかねない。
 文体はあくまでも"阿部和重"なわけだが、このインディヴィジュアル・プロジェクションの以後に発刊された、『シンセミア』、『グランド・フィナーレ』、『プラスティック・ソウル』と比較すると、ストーリーのプロットの組み方がかなり異なってくる。
 インディビジュアル・プロジェクションやニッポンニアニッポンといった作品は『一つの目的』を通してストーリーが発展していくのだ。それに比べると、グランド・フィナーレ等はコレといった目的もなく、ストーリーの展開も地味で(しかし面白い)、リアリティが追及されている様に見える。
 そこが、阿部和重の前後の作品の違いだと思われる。
 この作品の素晴らしいところは、一つの目的(心理戦をこなしていく)へ向かう過程での面白みが存分に書かれていて、ストーリーが巡るに巡る。グランド・フィナーレ等を先に読んだ方々には、こういう"阿部和重"があることを是非とも知ってほしい。
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4101377219
No.24:
(4pt)

多角的に読めます。

はじめて読んだのは大学3回生。
「スリラーとノワールが融合した扇情的な語り口調だな」と思っていた。
社会人になって再読してみると、ポストモダンをモデル化するために「小説」というツールを用いたのではないか、
と疑いたくなる表現が散見されて面白かった。
阿部和重作品はフレームワークを理解できないひと(あるいは現代思想に興味のないひと?)を拒絶する傾向が強い気がする。『IP』はそのなかでも「ヘンテコなハードボイルド小説」として異彩を放っている。
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4101377219
No.23:
(4pt)

文庫本を買って解説読んだ方がいい(難しい本ではないけど)

映画学校の通っていた塾生達が、行きがかり上関わっていくヤクザとの抗争。乱れ錯綜する記憶、人物。主人公の混乱ぶりにこちらまで巻き込まれて、真実の境目がわからなくなっていく。日記調の文体に乗るようにサクサク読める。スピード感がある。一番関心したのが、映画学校生徒だった主人公達が抗争に巻き込まれていくまで裏社会に染まっていくきっかけ部分。マサキという怪しげなオヤジからスパイの指導を受けるのがきっかけなのだけれど、そのオヤジも最初からスパイに精通していたのではなく、最初はただの武道を教えるおっさんだったのが、映画学校の取材を受けるうちに次第次第に気が大きくなっていき、そこに取材する側も巻き込まれ、引き込まれていつからかスパイの指導を受けることに・・・って部分。共同体が知らずに生む狂気のようなリアリティがあった。後半の錯乱もそのリアリティがあればこそ引っ張れたのではないかとすら思った。「渋谷」「暴力」みたいなステレオタイプな展開に最初はどこか冷めた思いがあったが、読むうちに引き込まれる。普通におもしろい。
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No.22:
(3pt)

スパイ養成施設、ヤクザ、不良高校生

 主人公はスパイ養成所上がりで暴力沙汰には自身はあるのだけれど極力それを隠すようにしている、それは・・・ といった感じで話が進んでいく。中盤以降きちんと読んでないと何が何やら分からなくなってしまう何処となく映画の「ファイトクラブ」を彷彿とさせる内容となっている。好きな人は好きかも知れないけれど私はあまり・・・
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4101377219
No.21:
(5pt)

時代が回転する小説

友人がこの本を読んだというので感想を聞くと、この一言。「B級小説だね」最初、ムッとしたのだけれど、しばらく後に「言いえて妙である」と腑に落ちた。そう、この作品はまぎれもなくB級なテイストを思う存分漂わせた小説である。スリリングにストーリーは展開してゆきながら、最終的には文学たりえているのだ。その鍵はもしかしたら、文中に登場する「フリオ・イグレシアス」にあるのかもしれない。冒頭と最後で象徴的に登場するフリオ。なぜ、フリオっ? てところが文学。そして、表紙も当時は大胆で奇抜で新しかった。「インディヴィジュアル・プロジェクション」というタイトルが英語なのも、今までにほとんど例がなかったらしい。阿部和重の輝かしい出世作。J文学はここから始まった。時代が回転する小説がコレだ!
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4101377219

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