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(短編集)

白戸修の事件簿(ツール&ストール)



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【この小説が収録されている参考書籍】
ツール&ストール
白戸修の事件簿 (双葉文庫)

白戸修の事件簿(ツール&ストール)の評価: 6.00/10点 レビュー 2件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

中野はトラブルのメッカ?

東京中野駅は白戸修にとってまさに鬼門だった。平凡な大学生白戸修の日常を脅かす事件は決まって中野駅から起こる。そんな彼が巻き込まれる事件5編。

白戸修初登場の「ツール&ストール」では就職先が決まり、卒業を控えた最後の破産法の試験を3日後に控えた時に突然事件に巻き込まれる。
第20回小説推理新人賞を受賞したのが本作。受賞作に相応しいなかなか趣向の凝った作品だ。
まずは真犯人捜しの元スリ専門の捜査官と共に行動して色々なスリの手口を目の当たりにするのが非常に面白い。電車内での典型的なスリの手口から、駅構内のトイレで2人一組で行われる巧妙な手口、更には混んだ店内で予約ミスと見せかけて集団で行うスリと、実にヴァラエティに富んでいる。
さらに最後に明らかになるタイトルの意味。
そして平凡な男に過ぎなかった白戸修がいつの間にかお人よしの頼りない好青年として刷り込まれていることに気付く。白戸修の紹介状として申し分ない好編だ。

続く「サインペインター」では白戸修は犯罪の片棒を担ぐことになる。
巻き込まれ好青年白戸修が、友人の為に何やら怪しげなバイトに巻き込まれ、強引かつ無神経な男に振り繰り回される顛末を描きながらも、実はその中に謎が隠されていたという構成の上手さが光る1編。
物語も半ばが過ぎないと何が謎なのか解らないという、実は技巧としては高度な物語なのだ。それを2作目で行うあたり、大倉氏が既に本格ミステリ作家としてのサムシング・エルスを持っていることが解る。

「セイフティゾーン」でまたもや事件に巻き込まれる。
事件の最中で意外な事実が判明していくという、ジェフリー・ディーヴァ―の『静寂の叫び』を思わせるような物語。

さて昨今では殺人事件にまで発展するストーカー被害。間違い電話に出た白戸修はこの被害の捜査に巻き込まれるのが「トラブルシューター」。
ストーカー事件が世に知られるようになった現在では、そうと解らない読者の為に門外漢の白戸の目を通して語られる被害者杉本恵の奇妙な日常風景の描写は逆にまどろこっしく感じた。
とにかく世にあるストーカーの卑劣な仕打ちが被害者の日常を通じて一部始終が語られる辺りは特に陰鬱。短編集の中でも最もダークでシリアスな展開。

「ショップリフター」とは万引き犯と云う意味。最後の短編で白戸修が出くわす犯罪は身近でありながら深刻な被害となっている万引きだ。
第1編「ツール&ストール」を髣髴とさせる仕掛けとサプライズに満ちた1編だ。
身に覚えのない万引きの濡れ衣を着せられた白戸はマイペースな保安員深田によって万引き犯捜索の手伝いをさせられて、デパートの上から下まで引き摺り回されてしまう。と思いきやそれが白戸を犯罪者に仕立てる一連の計画だったことが明らかにされる。万引き犯を追いながら店を出た途端に逆に万引きの現行犯に仕立て上げられてしまうというこのサプライズはなかなか強烈。久々に「えっ!?」となってしまった。
また作品で開陳される様々な万引きの手口は実に興味深く、これも「ツール&ストール」で披露された様々なスリの手口と同じような薀蓄に満ちている。


刑事コロンボを髣髴とさせる福家警部補シリーズがドラマ化された大倉氏の数あるシリーズのうち、最も平凡なキャラクターである白戸修作品初登場の短編集。

平凡な学生白戸修が巻き込まれるのはスリにステ看貼りに銀行強盗、そしてストーカー被害に最後は万引き。軽犯罪だけでなく命に係わる事件にも巻き込まれる受難男。

しかもここに収められた5つの事件は就職先も決まり、大学卒業を目前に控えた最後の単位取得の試験の時期、その1月後、そして卒業式も終わって入社式を迎える猶予期間、入社式前日までの大学生活最後の年の後半に起こっており、白戸修はこの短期間でドミノ倒しの如く次々と事件に巻き込まれていくという濃密な数ヶ月を送っている。
しかもそのいずれも中野駅界隈であるのが面白い。作者は中野駅にどんな恨み(?)があるのだろうか。

物語の最初はいつも頼みごとを断りきれない気の弱いお人よしの青年という、いささか頼りない男と映る白戸修が、物語の最後ではそのお人よしぶりがこの上ない善人になり、稀に見る好青年となって読者の心に印象づけられていき、どの作品も読後は爽やかな涼風が心に吹く思いを抱かせる。

特に巻き込まれながらも目の当たりにする犯罪の有様に白戸自身の考えもやる気の無いものから、どうにか犯人を捕まえたい、事件を解決したいという前向きな物に変わっていくのもこの頼りない主人公に好感を持つ大きな要素になっている。

白戸修が出くわす犯罪では必ずしも犯罪者が悪人ということではないのが面白い。
また身を隠す犯罪者が必ずしも悪人ではないことも語られている。

個人的ベストは「ツール&ストール」、「サインペインター」、「ショップリフター」の3編。
「ツール&ストール」と「ショップリフター」は姉妹編とも云うべき好編でそれぞれスリと万引きと云う軽犯罪を扱っており、その手口のヴァリエーションも紹介され、その奥の深さに唸らされるが、最後に明らかになる事件全体に仕掛けられたトリックが判明するところは久々に不意打ちを食らった感があった。
「サインペインター」は単なる巻き込まれ騒動の1編と思わせつつ、実は意外な謎が隠されていたという読者がその真相を探るのがほとんど不可能な構成の妙を買う。ホント、何が謎なのか全く解らなかった。

とはいえ、まだまだ特色のあるシリーズとはこの段階では云い難い。逆に最後の短編でシリーズキャラクターとなりそうな人物が再登場した事でこれからシリーズとしての奥行きと幅が出てきそうな予感がする。

次回からは出版社に就職した社会人として白戸修がまたもや事件に巻き込まれていくことになるのだろうが、どんな形で事件に関わるのか暖かい眼で見守ってやりたい。白戸修にはそんな魅力がある。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:
(5pt)

白戸修の事件簿(ツール&ストール)の感想

読んで感じたのは、主人公の白戸君は、鮎川哲也氏の亜愛一郎に似ている!
お人好しで、おっちょこちょいであり、それでも探偵となる。
しかし、亜愛一郎シリーズのほうが面白いと感じたため、評価が低くなってしまったのが残念である。

鼻毛のびのび
YLPLRW2J

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