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名探偵の呪縛



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【この小説が収録されている参考書籍】
名探偵の呪縛 (講談社文庫)

名探偵の呪縛の評価: 6.33/10点 レビュー 3件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.33pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

作者不遇の時代の実験的小説

『名探偵の掟』の名探偵天下一が再登場する長編。しかし作者東野氏自身と思われる作家が図書館に迷い込むうちに自分が天下一になってしまうというファンタジーな設定になっている。そのためか実に内容はメタフィクショナルだ。

常に読者の目を意識した天下一の言動は前作『~の掟』を踏襲した本格ミステリの約束事を意識的に揶揄したものだし、またその言葉は作者東野圭吾氏の生の声でもある。

そのために本格ミステリの特異性を際立たせるために本格ミステリのない世界を設定したのが素晴らしい。つまりそこでは本格ミステリの約束事がそのまま普通に暮らす人々にとっては訳の解らない思考であることが逐一書かれる。

例えば最初に出てくる事件では初めて密室殺人事件に遭遇した登場人物たちは殺人を犯すのになぜ密室を作る必要があるのかが全く理解できない。
さらに当たり前すぎる動機では読者に罵倒されると思わず漏らす主人公などなぜ普通の理由で、普通の方法で人を殺していけないのかが改めて問われる。この辺のやり取りは実に面白かった。

そして読み進むにつれ、これは東野氏の本格ミステリからの訣別宣言を表した書だということが解る。かつて江戸川乱歩賞でデビューした作者はその後もトリックを駆使した密室殺人をいくつも著していたが、もはやそんな物に興味を失ってしまったと吐露する。しかしそれが完全なる訣別ではなく、またいずれは帰ってくる場所であることも書かれている。

以前から書いているが『宿命』を契機に誰が殺したとかどうやって殺したといった推理クイズのような楽しさよりも人間の心情の謎について書くことに興味が移ってしまった東野氏だが、その後も探偵ガリレオシリーズなども書き継いでいることから、初期作品からブラッシュアップされた本格ミステリを書くことを心掛けているのが解る。
訣別しようと思いながらも本格ミステリが持つ独特の魔力に抗えない、そんな心情を東野氏はこの作品で見事に表している。つまり本書は小説の形を借りながら東野氏の本格ミステリへの思いを綴ったエッセイであると云えるだろう。

さて本書が刊行されたのは1996年。つまりもう23年も前の作品であるのだが、そのため今読むと興味深い記述も見られる。
特に冒頭の図書館のシーンで自分の作品を発見し、貸し出し状況を見ようと思ったがその結果が怖くて結局見ないことにしたという一節があるが、今の東野フィーバーの状況を考えると隔世の感がある。確かにこの頃はミステリ読者からは好評は得ていたものの、売れていたとは決して云えない状況だったのだ。

そんな観点で読むとまた当時の東野氏の作家としての立ち位置なども垣間見え、最近ファンになった人々も興味深く読めるのではないだろうか。
ただやはり本書はある程度本格ミステリを読んでからにしてほしい。そうでないと解らない面白味に溢れているのだから。

Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

名探偵の呪縛の感想

「名探偵の掟」の続編ですがそれとは大分テイストの違う作風。私(=東野圭吾)として読むと、東野圭吾さんの本格ミステリに対する持論・考え方の変化・・葛藤が伝わってくる内容でした。私は本格も社会派もどちらにもそれ特有の魅力があると思っています。

水生
89I2I7TQ

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