ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち
評判
ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たちの評価:
7.06/10点 レビュー 18件。 B ランク
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全12件 1〜12 1/1ページ
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ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たちの評価:
7.06/10点 レビュー 18件。 B ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
2011年に刊行されるや一気にブームとなった古書店を舞台にしたライトノヴェル。ドラマ化もされたので本を読む人以外でもその名を知っているほどの有名な作品をようやく手にしてみた。
第1巻である本書は4つの短編で構成された短編集である。
主人公は五浦大輔と篠川栞子。
五浦大輔は大学を卒業したものの就職先が決まっていない就職浪人。篠川栞子は北鎌倉に店を構える「ビブリア古書堂」を亡き父の跡を継いだ店主。この2人が出逢う話が第1話目の「夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)」である。
シリーズの幕開けを告げる本作はいわばビブリア版『マディソン郡の橋』とも云うべき適わぬ恋の物語だ。昭和の女性として飲む打つ買うの三拍子好きだった祖父にひたすら耐えるように連れ添った厳しかった祖母が棺まで持って行ったたった1つの本当の恋愛が死後1年経って、その蔵書から解かれる。
平凡と思われた家族にも何かしら隠された秘密はあるものだ。
そして五浦はこの事件がきっかけでしばらく古書堂のお世話になることになる。
第2話「小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」は五浦がビブリア古書堂で働き出して3日目の事件を扱っている。
本作のミソは依頼人の志田が盗まれた本が新潮文庫だったという点だ。
これを大切なプレゼントの応急処置としたところが作者の着眼点の妙だろう。本作で挙げられている作品『落穂拾ひ』が本書の話と絡むのは当然のことながら、文庫をこのような小道具としたところを賞賛したい。本に纏わる話を考えていると取り上げる作者の経歴とかテーマとなる話そのものから物語を考えるので、なかなか本作のような発想は思いつかないものである。天晴れ。
3話目「ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」はある夫婦に纏わる話だ。
紳士の暗い過去を知られないために本を処分するという動機の方が味わい深いと思わせながら、最後にさらに夫婦の仲が深まるエピソードに落とすあたりはなかなか。
謎と云い、物語と云い、小粒感は否めないが、それは本作が最後のエピソード「太宰治『晩年』(砂子屋書房)」への橋渡し的な役割を果たしているからだ。
古書に纏わる事件と云えば狂信的な収集家が起こす事件が定番だが、ラノベである本書では敢えてそのディープな内容を避け、本に纏わる日常の謎について語ってきたのだが、最後の事件になってようやく核心的な謎について触れられている。
1冊の本のために数百万もの大金を出し、手に入らないと解れば持ち主を殺してでも奪おうとする狂信的な書物愛こそが古本マニアの本質だ。最後に登場した栞子の宿敵とも云える大庭葉蔵の正体は正直意外だった。
また掉尾を飾るエピソードとあって、それまでの話に出ていた登場人物が登場する。2話目で志田と親しくなった女子高生小菅奈緒はビブリア古書堂の常連に、3話目に登場した坂口夫婦も登場し、更に1話目で判明した五浦の出自も意外な形で物語に関わってくる。
しかしこのコレクター魂こそが収集狂の典型とも云える。
冒頭にも書いたように既にドラマ化もされ、文庫も版を重ねたベストセラーシリーズの第1弾。旬も過ぎたかと思われたこの頃になってようやくその1巻目を手に取ることにした。
私は熱心なライトノヴェル読者ではないのでそれほど同ジャンルの作品を数多く読んでいる訳ではないのだが、色んなメディアから見聞きした昨今の業界事情から考えるとキャラクター設定としては決して突飛なものではなく、ミステリを中心に読んできた私にしてもすんなり物語に入っていけた。
人見知りが激しいが、いざ書物のことになると饒舌になり、明敏な洞察力を発揮する若き美しい古書店主というのは萌え要素満載だが、いわゆる“作られた”感が薄いのが抵抗なく入っていけた点だろう。また古書店主というのが本読みたちの興味をそそる設定であることもその一助であることは間違いでないだろう。
しかし扱っているテーマは古書というディープな本好きには堪らないが普段本を読まない中高生にはなんとも馴染みのない世界であるのになぜこれほどまでに本書が受け入れられたのだろうか。
上にも書いたがこういった古書ミステリに登場する古書収集狂は最後のエピソードにしか出てこないことが大きな特徴か。
本に纏わる所有者の知られざる過去が判明する第1話。
その文庫しかないある特徴を上手く利用した、本自体を物語のトリックとして使用した第2話。
夫が大事にしていた本を突然売ることになったことでそれまで隠されていた過去が判明する第3話と、1~3話まではいわゆる本を中心に生きてきた狂人たちは一切出てこらず、我々市井の人々が物語の中心となっていることが特徴的だ。従って古書を扱っていながらも所有者の歴史を本から紐解くという趣向がハートウォーミングであり、決してディープに陥っていない。
しかしそれでも1話目から作者自身が恐らく古書、もしくは書物に目がないことは行間から容易に察することができる。従って作者は話を重ねるにつれて読者を徐々にディープな古書の世界へと誘っていることが判ってくる。
例えば1,2話では現存する出版社の本であるのに対し、3話目からは青木文庫、砂子屋書房と今ではお目に掛かれない出版社の書物を扱ってきており、そこからいわば古書ミステリのメインとも云える収集狂に纏わる事件となっていく。
しかしそれでも作者自身もこれほどまでに世間に受け入れられるとは思っていなかっただろう。なぜならば本書にはシリーズを意図する巻数1が付せられてなく、また話も五浦の出生に纏わる過去が最後で一応の解決が成され、更に五浦がビブリア古書堂を去るとまでなっていることからも本書で一応の幕が閉じられるようになっていたことが判る。
しかしその作者の予想はいい方向に裏切られ、現在7巻まで巻を重ね、人気シリーズとなっている。これはビブリオミステリ好きな私にとっても嬉しいことだ。
そしてそのことが拍車をかけたのか、作者も古書の世界をさらにディープに踏み入り、そしてミステリ興趣も盛り込むことで『このミス』にランクインするほどまでにも成長した。
ラノベという先入観で手に取らなかった自分を恥じ入る次第だ。このシリーズがたくさんの人々に古書の世界への門戸を開くためにバランスよく味付けされた良質なミステリであることが今回よく解った。
次作も手に取ろうと思う。
栞子さん目当てでなく、あくまで良質なビブリオミステリとして、だが。
▼以下、ネタバレ感想