〔けころ〕とよばれる娼家から身請けされ、いまは囲われ者となっているおせんと、かつてのなじみ客でゆすりの罪で島流しにあった男の母親との心のふれあいを描いた表題作。

囲碁の口論から父を惨殺した笠原孫七郎を追って三十年。信州松本藩の夏目半介は仇討ち費用を人に貸して生計を立てる江戸暮らし。

野州・真岡の小栗一家と竹原一家の大喧嘩にやとわれて人を殺めてしまった渡世人たちーその不幸な生い立ちゆえに敵・味方をこえて結ばれる男と男の友情を描く連作「さいころ蟲」「あばれ狼」「盗賊の宿」。

酒と女に溺れ家中の鼻つまみものである榎平八郎は二十一歳。

深夜、覆面をして、酒に酔った侍に喧嘩をしかけては、髷を切ったり川に投げ込んだりして楽しんでいる男装の女剣士。

「光秀が生きていたぞよ」。山崎の合戦で明智光秀の首を取り、甲賀から離れた小五郎に、かつて命を救った仲間の助七がささやく。

養子に入った武家の妻にへきえきしていた男が、初めて連れていかれた谷中の茶屋の女に魅せられ、武士の身分を捨ててしまう表題作。

元・岡っ引きの伊之助の心に去来する、別の男と死んだ女房の面影――。 時代小説の名手が描く、江戸のハードボイルド。

――殺しだよ。 傷は、柔術で言う独古(どっこ)と呼ぶ急所を抉ったあとだった……。

人間という生きものの不思議さ、運命のおそろしさ……。

元は凄腕の岡っ引、今は版木彫り職人の伊之助。

法の裁きの届かぬ悪を、闇から闇へと葬る仕掛人。

織田信長、浅井長政らの屋敷に身分を偽って仕え、機をうかがう於蝶。

2020年は著者没後30年。 再び味わいたい、池波正太郎の世界。

豊臣家の猛将・福島正則の前に現れた徳川方の女忍者・小たまは、正則を籠絡し、巧みに城内に入り込んだ。

2020年は著者没後30年。 再び味わいたい、池波正太郎の世界。

人生、なかなかこの木のようには……。 練達の筆がとらえた人の世の哀歓。

江戸の十二カ月を鮮やかに切りとった十二の掌篇「江戸おんな絵姿十二景」と、広重の「名所江戸百景」から触発された七つの短篇。

ひくく声をかけて、いきなり女に飛びかかった小平次は、恐ろしい力で首をしめあげ、すばやく短刀で心の臓を一突きに刺し通した。

小兵衛と大治郎の親子が、ばっさばっさと悪を斬る。女武芸者・三冬も登場――。

短編の名手が綴る 哀しく愛しい男と女 貧しくも、明日への夢を持って健気に生きる女。

武家の非情な掟の世界を端正な文体で描き、直木賞を受賞した表題作。

宮本武蔵が撃つ!柳生宗矩が斬る! 死を賭して得た剣名、生を捨てて得た剣技、何人にも負けるわけにはいかない――。

若くして頭髪が抜け落ちる奇病を主君の嗣子・千代之助に、侮蔑された１７歳の源太郎は、乱暴をはたらき監禁される。

盗賊の小頭、雲津の弥平次は、山奥の湯治場で思いもつかない〔ひろいもの〕をする。

「半どのに、会いとうて、ここへ来た…」はじめて女の体を教えてくれた於蝶と再会した半四郎。

時は元禄ー旗本の息・徳山五兵衛（幼名・権十郎）は、妾腹の子ゆえに父から疎まれていた。

仕掛人・藤枝梅安非情の世界に棲む男 生かしておけないやつらを闇へ葬る仕掛人。

音もなく小兵衛の前に現れ、「秋山先生に勝つために」、八年ぶりに帰ってきたとうそぶく役者のような若侍の正体は? 次々と道場を襲い相手を一撃のもとに殺していく魔性の天才剣士と秋山父子との死闘を描く表題作。

若衆髷をといて、裸身を湯槽に沈めた佐々木三冬に突然襲いかかる無頼の浪人たち。

四谷伝馬町の御用聞き・弥七、下っ引きの「傘徳」こと傘屋の徳次郎、 亀沢町の町医者・小川宗哲、そして居酒屋「鬼熊」の亭主・熊五郎……。

秋山小兵衛の若き日の愛弟子が斬り殺された事件と、江戸市中の三か所で女が殺され、陰所と左の乳房が抉られていた事件。

盲目の武士をやさしくいたわる托鉢僧――旅の途中で出会った、年老いた二人連れが何故か秋山大治郎の心に残った。

足軽という身分に比して強すぎる腕前を持ったがために、うとまれ、踏みにじられ、孤独においこまれた男。

越後、新発田の剣客・神谷弥十郎の道場で下女として働いていたお福は、主人が暗殺されたため、下男の五平と一緒に江戸へ出る。

二人そろって朴念仁(ぼくねんじん)ゆえ、らちがあかぬ……。

江戸で父の敵を探しつづける浪人・堀辰蔵は、空腹のあまり逆上し、煙管師を斬殺してしまう。

彦根藩の勘定方・三浦芳之助が斬殺された。下手人は御目付方・近藤虎次郎らしい。

新宿角筈村に剣術道場を構える老剣客・日影一念は、臨終の床で、なぜか二人の内弟子、白根岩蔵と成子雪丸に、自分の遺体と共に秘伝の書を土中に埋めよと言い残す。

物のはずみで起きた決闘で相手を斬殺した片桐宗春は、逆うらみによる敵討ちに狙われていた。

「まだ…まだ死ねぬぞ、まだ十人あまりもいる…」死病に冒されながら、世話になった村に巣くう無頼浪人どもの一掃を最後の仕事と心に決め、ひとり剣をにぎる中年の剣客・村松太九蔵。

白子屋残党との息づまる闘いの日々 鍼医師として人を救い、仕掛人として命をうばう。

江戸のピカレスク梅安シリーズ最終話 白子屋残党の執拗な攻め。

人間の計らいを越えた運命の糸にあやつられ、奈落に落ちてゆく男たちの宿命――独自の色調で描かれる初期の傑作5篇を収録!

微禄の若者小森又十郎は、辛夷の花のようだと憧れていた首席家老の娘の再婚相手に指名され、夢見心地。

秘剣、外に語らず―藤沢周平が剣客小説に新境地を開いた名品集“隠し剣"シリーズ。

日残りて昏るるに未だ遠し――家督をゆずり、離れで隠棲の日をおくる清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。

藩中一、二を競う遣い手同士の凄絶な果し合いを乾いた抒情で描きだす表題作はじめ、円熟期士道小説の中・短篇二十三篇をおさめる

剣の屈指の使い手であるにもかかわらず、役所きっての自堕落者と知られる玄次郎の心の闇とは? 虚しさと憐れみが去来する8篇

市井の人々の悲哀をつつみ、今日も「しぐれ町」は明け暮れる――。 再会、借金、深情け。

時代ものの小説を書いていると、とかく筆が江戸期にむかい、 またその時代を小説にするのが一番面白い。

部屋住みの源次郎が心寄せる娘の家が突然改易。父親は藩金横領の科で切腹させられたらしい。

その試合「負けてやれ」。

祖父の代から目黒に道場を構えていた小野派一刀流の剣客・波切八郎は、御前試合の決勝で敗れた秋山小兵衛に真剣勝負を挑み、小兵衛は二年後の勝負を約した。