虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ
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あらすじ
虚言症が蔓延するアメリカで、稀代の嘘つき男が仕掛ける奇想天外なロードトリップ――ピュリッツァー賞候補作家が放つ長編小説、待望の全訳! オブライエン(著)×村上春樹(訳)ある理由で一流ジャーナリストからフェイクニュースの王に転落した中年男ボイド。カリフォルニアの田舎町でデパートの店長をしている彼は地元銀行の窓口係アンジーに銃をつきつけ、奪った8万1千ドルと彼女を連れ逃避行に出る。仕切り屋で喋り通しのアンジーに閉口しつつアメリカを縦断するボイドと、彼をとりまく大富豪、悪徳警官、美人妻、殺人者――追う者追われる者が入り乱れ、嘘と疫病に乗って全米を疾走するが……。ティム・オブライエン、20年ぶりの長編小説。(「BOOK」データベースより)
評判
虚言の国 アメリカ・ファンタスティカの評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 B ランク
虚言の国 アメリカ・ファンタスティカの総合評価:
8.89/10点 レビュー 9件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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しかし、読み始めてすぐ、オブライエン氏の文体の変化に大いに戸惑うことになった。全体が56の章に分けられており、興味深い幾つかの事件が起こり、登場人物の抱えている秘密が徐々に明らかになっていく。読みやすい。新作は、会話主体、しかも気の利いた印象的なセリフを主体にして物語が進む。まるでスティーブンキング作品のようだ。文章を読むスピードと物語が展開するスピードが同じで、ドキドキの読書体験が得られる。
しかし、違うのだ。これまでのオブライエンの文体の特徴は、会話よりも、グダグダとした登場人物についての説明や描写の書き込みにあった。その記述の間は、ストーリ展開は停滞するが、その文章にひたることによって読者は独特のオブライエン的な世界にどっぷりと浸ることができた。今回の新作には、それがない。
そもそも、本作は村上氏もあとがきで指摘している通り「シリアスな喜劇」として書かれているようだ。物語は、銀行強盗や殺人、金融犯罪を軸にしながら進んでいくが、ご都合主義的に破滅が回避されたり、逆にあっさりとした死が訪れたり、リアリティを無視した「喜劇」として描かれている。そもそも現実のアメリカで起こっている様々な悲惨な事件が、ある意味で非リアルな喜劇と化していることを反映しているのかもしれない。
新たなオブライエン作品を読めた喜びと、その変化に戸惑いを感じた読書体験であった。文章の密度を楽しむのではなく、「セリフ」の面白さに着目した、また別の味わい方をすれば、評価も変わっていくのかもしれない。軽めではあるが、世界になじめない者に寄り添うような物語であり、一読の価値は十分ある。