白夜に沈む死
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
評判
白夜に沈む死の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 - ランク
白夜に沈む死の総合評価:
9.00/10点 レビュー 4件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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前作では、太陽がまったく昇らない冬の四十日間を背景にしていたのが驚愕であった。本作では、春を迎えた同地域を舞台に、太陽が沈まない白夜の季節を背景にして、またまた物語世界の辺境性に興味を注がれることこの上ない。しかも石油開発景気に沸く海辺の小村を背景に、潜水夫という極めて特殊な作業に携わる男たちの宿命に焦点を当ててゆく物語。ページを開いた途端、強烈に引き込まれるのは、登場する人物たちの個性でもあり、石油景気という異常なまでの状況ゆえでもあろうか。
ノルウェー南部から派遣され、同じ国内でありながら極めて異質な日照時間や生活環境に圧倒されるニーナ。彼女とペアを組むトナカイ警察のクレメットはサーミ人の血を引く先輩警察官。二人の主役コンビは、スノーモービルで、氷が解けかけた危険な水辺や雪原を疾駆しつつ、辺境の仮野営設備の小屋を拠点に、日々を過ごす。あまりにワイルドな職場環境に圧倒されながら、彼らならではの活躍に胸躍らされるのが、本シリーズの個性でもある。
今回は、石油開発を背景にした海辺での事故を探るうちに、思いがけぬ過去の暗闇や亡霊の存在が浮き彫りにされてゆくという内容である。原作者がそもそもノルウェー駐在のフランス人ジャーナリストであるゆえに、彼の取材活動から浮上してきたであろう様々な事実が、作中でも生々しい。先住民のサーミ人は国境や私有地を持たず、トナカイを放牧させて暮らしてきたのだが、開発や同化政策が進むにつれ、土地の私有化や企業誘致が進む北辺の村では、古い歴史と新しい文明との利害が様々な形で衝突し合うようになった。
中でも石油開発が端緒に着いたばかりの近海では、巨大資本をバックにした企業と、町の政治家たち、先住民と新住民との文化的対立、その他ノルウェーが現実に山積みにしてきた問題が、様々な階層で浮き彫りになりつつあった。本書の凄みは、ミステリーとしての構造を確立させながら、知られざるノルウェー北部の現実を読者に突き付けてくるところである。登場人物たちの個性も素晴らしく、町そのものが良く活写されて見える点も好ましい。
我々は、ノルウェー南部育ちのヒロインであるニーナの眼を通して、改めてこの国の地理的、経済的、民族的問題を驚きや発見とともに体感してゆくことになる。ちなみに人口がノルウェー540.8万人、北海道が528.1万人。面積は、ノルウェーが385㎡、日本が378㎡。如何にノルウェーの人口密度が低いかがおわかりかと思う。一部が北極圏という特異な環境も大きく影響しているのだろう。
この国の北部。その暗夜と白夜と、二つを、作品で示してくれたこの作者。本書では潜水夫に課された驚くべき過酷な労働環境、後遺症などに関しても徐々に記述されてゆく。本書は、ジャーナリスト魂の十分にこもった、熱血作品でもある。作者の怒りや公平な視線を存分に感じながら、過去と現在を去来する壮大な物語と、二人のトナカイ警察たちのバイタリティ溢れる活躍とを、思い切り楽しんで頂きたいと思う。