岬一郎の抵抗

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種別
長編
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あらすじ

1991年08月01日 岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫)

岬一郎は東京・下町に住むごく普通のサラリーマン。しかし、彼の体内では不思議な力が成長していて、ある日、その力が思いがけない形で噴出する。町内で発生した公害問題の陳情に出向いた岬一郎の眼前で、環境整備局課長が突然死んでしまったのだ。さらに第二の怪死が…。日本SF大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

評判

岬一郎の抵抗の評価:

0.00/10点 レビュー 0件。 B ランク

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岬一郎の抵抗の総合評価:

8.86/10点 レビュー 7件。

感想一覧

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Amazonレビュー

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.7
(5pt)

半村さん

半村さんの小説が、現代のいわゆるエンタメや
大がかりな伝奇小説と違うのは、実体験に
基づいた人間描写の深さではないでしょうか。

ですから、絶対的な悪や善を用意してストーリーを
簡略化しないで、お話はある意味沈痛に進んで行きます。

しかしドストエフスキーのように悪とは何か罪とは?
などという生活から乖離した問いかけはなされません。

人間にはそれぞれ事情がある、欲望がある、
でも正義や善も確かにある。

あるけれども善悪も正邪も純粋も汚濁も、
その場その場ですり換わって
たった一人の聖者はどう生きたらいいのか?

半村さんが伝奇・SF・人情もので培った筆力を
すべてそそいでぼくらに、手に汗握らせながら
問いかけてくれます!!

SFの元祖のひとり、オラフ・ステープルドンの
「オッド・ジョン」を思い出す、
胸の締め付けられる傑作です!!
岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫)より
4061849654
No.6
(5pt)

昭和のSF傑作

10年以上前に一度読んで、強烈に印象に残っていた作品を、もう一度読んでみた。初版は1988年出版され、日本SF大賞を受賞している作品だそうだ。昭和の匂いがプンプン漂う下町の人情話と、無敵な超能力者という奇妙な取り合わせだが、全然無理は感じない。

何の変哲もない下町にアパート暮らしする平凡なサラリーマン岬一郎が、ひょんなことから超能力を発現し、次第に力を強大化させていくストーリーだ。岬一郎は、超能力が社会に及ぼす影響を恐れ、自らを律し能力の行使を封印する。だが、社会は過剰に反応し、次第に岬一郎を排除する方向へ動いていく。

といったあらすじだが、主人公はこの超能力者岬一郎ではない。同じ町内で小さな印刷屋を営む、ジャーナリスト上がりの野口という男の視点で、物語は綴られていく。近所のおっちゃん、おばちゃんたちは、岬の能力に驚き、感謝し、隣人であることを誇りに思い、支持しサポートし始める。権力は、岬の能力を警戒し、恐れ、いらだち、やがて排除しようとし始める。ジャーナリズムは、まずネタに飛びつき、もてはやし、大騒ぎして、やがて権力に迎合して、岬を糾弾し始める。

著者は、野口という男に、元ジャーナリストというバックグラウンドを与えた。当の岬一郎には、ほとんど何も語らせず、野口の目を通して三者三様の反応の推移を、ある意味第三者的視点で語らせていく。うまいやり方だ。と同時に、そういった演出意図を読者に感じさせない著者の筆力に感心させられる。

この物語の主題は、本文中にも書かれているが、キリストの受難を現代に(といっても20年以上前だが)再現したことだろう。読み進めるうちに、もしかしたらイエス・キリストも超能力者で、岬一郎が物語の中で直面するような葛藤や不安を経て、悟りを開いたんじゃないかなんて気になってくる。いろいろ考えさせられる物語だ。

最後になったが、残念ながらこの本はもう絶版になっているらしい。紙の本は古本屋でしか手に入らないようだ。私は、昔買った文庫本はどこかに行ってしまったが、電子書籍版を購入して読んだ。XMDF形式でダウンロード可能だ。
岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫)より
4061849654
No.5
(4pt)

超能力者の孤独と葛藤の心理描写を読み解く。

超能力者の物語が大好きな読者には、一読の価値があります。
かなり長編なので、たっぷり考えながら、味わい深く楽しめます。

テレパシーや念力、患部に触れるだけで病を治す不思議な能力。
意識的にコントロールができる能力であれば、それは素晴らしい能力です。
すべての思いが現実化する怖さもあります。
かなり、穏やかな精神状態で、優しさと思いやり、そして善悪の判断力が必要な能力です。

岬一郎の人生は、この超能力によって、思いも寄らない方向に動き出す。
超能力者・岬の心理描写を読みながら、作者・半村良の思考が伝わってくるようだ。

J・B・ライン/C・G・ユング他著『超心理学入門』(青土社1993年)、L.ワシリエフ著『テレパシーの世界』(白揚社1973年)を読まれると、この小説『岬一郎の抵抗』が、かなりシリアスに感じられるかも知れない。
岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫)より
4061849654
No.4
(5pt)

傑作です。まちがいなく。

素晴らしい本です。しばらく本棚で寝かしてありましたがふと手に取って読み始めたらもう止まりません。
普通のサラリーマンだった岬一郎にある時から不思議な力が強くなりはじめる。神か悪魔か。
下町の人情に泣かされます。SF嫌いの方もぜひ読んでみてください。
岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫)より
4061849654
No.3
(4pt)

「神殺し」の解題

ある「普通」の人間が、「神」になる物語──。

「普通」であることと、「超人」であることをつなげるのが著者の終生のテーマであったが、

これはその集大成だ。

「普通」を、これ以上ないほどに平凡の典型として描き、その対極となるはずの「超人」を、ついに「神」として描いた。

これは、日本版・現代版の「イエス・キリスト物語」である。重い、ドラマだ。

SF伝奇小説として見ても究極の到達点と思うが、実のところその定義からもさらに進化していて、これを位置付けるジャンルはまだないだろう。

なにしろ、ここで提示されているいくつもの命題は、哲学的でもあり、思想的でもあって、半村作品だからエンターテイメントだと思いこんでいると、とんでもない深い闇に引っ張り込まれることになる。

斜め読みを許さない書き方で、メッセージを発信するためにこういう方法もあったのだと、改めて考え込ませる。

正面切って「神」や「救世」を云々しても、誰も聞く耳を持たないだろうが、半村作品に潜ませた暗喩はそういう人にも深く突き刺さるだろう。

「神」は、私たちのとなりにいるのかもしれない。

そしてもちろん、その「神」は、わたしたち人間によって殺される。

──希望と絶望。

本書に代わる作品は見当たらない。かけがえのない作品だ。もっと広く多くの人に読まれることを願っている。
岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 岬一郎の抵抗〈1〉 (講談社文庫)より
4061849654

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