漣の王国
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. テレビのヒットドラマ『相棒』や『科捜研の女』の脚本家である岩下悠子氏による、連作短編ミステリです。 ◆『スラマナの千の蓮』 :京都の大学の水泳部員・遠山瑛子は自分の競技者能力に伸び悩みを感じていた。医学部の学生・猫堂から泳力を鍛える特訓を施してあげると持ちかけられるが、その代わりに奇妙な依頼を受ける。ミスキャンパスの北里舞が妊娠している様子なので、子どもの父親を探ってほしいというのだ。ひょっとして相手は水泳部のエースでプレイボーイの綾部蓮なのか? 瑛子は意外な真実を知ることになる……。 「――この世には美しいものがある」(94頁) ◆『ヴェロニカの千の峰』 :修道女の森江“ヴェロニカ”絹子が修道院から忽然と姿を消す。先輩シスターの北里舞はその行方を探るが、絹子がかつて水泳クラブに通っていた年上の少年シンちゃんに淡い恋心を抱いていたらしいことにたどり着く。シスター森江はシンちゃんに会いに行ったのか? シンちゃんの居場所を探すうちに、舞は綾部蓮とシンちゃんの接点を見出すことになる……。 「恋も一種の信仰なのだろうと舞は思う。秘匿すれば秘匿するほど激しく燃え立ってしまう」(136頁) ◆『ジブリルの千の夏』 :東京の主婦・朝子は坂口という見知らぬ青年から連絡を受ける。西アジアの旅先で医師として働くライラという女性から託された物を届けたいと話す。ライラは朝子の通う京都の大学の医学部にいた留学生だ。届けられたものとは、7時過ぎで針の止まった皿時計だ。その時刻にはどんな意味があるのか? 朝子は学生時代の記憶――綾部蓮との苦い恋の思い出――をたどっていくことになる……。 「ジハードは本来、最大の努力という意味です。他者と戦うことではなく、自分自身と戦うこと。自分を正しく作り上げる行為こそが。真のジハードなのです」(200-201頁) ◆『きみは億兆の泡沫』 :猫堂は医学部の恩師・狐塚教授と久しぶりに会う。水泳部のエースといわれた綾部蓮が亡くなって3年の歳月が流れた。琵琶湖疎水で事故死したとされるが、猫堂は事の真相を狐塚教授に突きつける。教授と綾部の間には一体何があったのか……。 ------------------------ 私は『相棒』も『科捜研の女』も視聴したことがありません。そんな私がこの書を手にしたのは、YouTubeの読書エンターテインメントチャンネル『ほんタメ』で、MCを務める〈あかりん〉こと女優の齋藤明里氏が、先月(2024年4月)の動画で「文章がめっちゃ綺麗なミステリ」と絶賛していたのを耳にしたのがきっかけです。その評判どおりの小説でした。 取り立てて豪奢な言葉遣いがふんだんに散りばめられているというわけではありません。ですが、リズミカルで、和語と漢語のバランスが見事で、読んでいてとても心地よいのです。 そしてミステリーとはいえ、描かれる事件が凶悪な犯罪というよりは、ままならぬ人の想いを慈愛あふるる視点で見つめ、その末にそっと包みこんでくれる人の優しさが各編にあふれています。 おのおのの物語は、仏教、キリスト教、イスラム教と、人生の指針となる悠久の智慧の言葉が綴られています。物語の一方の極に、生まれてきたことに懐疑の念を抱き続ける綾部が位置づけられ、人生の目的を見失い、再び見出すこともできず、生に恐れおののくばかりの姿が描かれます。 しかしその対極には、この世に美しいものがあることに気づいていく瑛子や猫堂の、前を見つめる眼差しが確かに置かれています。 「この世は生まれてくるに値する場所だという考えが、突如、力強く萌芽するのを感じた。なにやら生の希望に呑まれるようで、猫堂はふうと息をついて頭上を振り仰いだ。円形に近い月が、月兎の影をうつして空を昇っていく」(265頁) 作者の岩下悠子氏はシナリオライターの仕事が多忙なためか、小説家としてはまだ寡作のようです。でももっとその作品を読んでみたいと強く思わせる作家と新たに出会えたという確かな思いが私の中に芽生えています。 . | ||||
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「相棒」などを手がける人気脚本家の作品が、待望の文庫本になりました! 文章が流れるように美しく、映像が目に浮かぶような作品で、読んでいる間、至福の時間に浸れます。 ぜひ、映像化してほしい作品です。多くの方に読んでいただきたいですし、この作家さんの次の作品が待ち遠しいです! | ||||
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