「禍いの荷を負う男」亭の殺人
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種別
長編
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評判
「禍いの荷を負う男」亭の殺人の評価:
4.00/10点 レビュー 1件。 D ランク
「禍いの荷を負う男」亭の殺人の総合評価:
7.75/10点 レビュー 8件。
感想一覧
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本書を読み終え、巻末の杉江松恋氏の解説を読み、著者がアングロファイルであることを詳しく説明をしていた。
アングロファイルとは、「英国びいき」という意味なのである。
著者のマーサ・グライムズは生粋のアメリカ人なのに、イギリス古典探偵小説の熱烈なファンであり、自身がミステリー作家としてデビューするにあたって本書のような世界を使うことを選択したのである。
本書のような世界とは、かのイギリス古典探偵小説の黄金期で活躍したアガサ・クリスティーやドロシー・L・セイヤーズがテーマにしたような世界なのである。
本書の物語もまさにクリスティー作品に登場するミス・マープルの住まう舞台となったセント・メアリー・ミード村と似たようなイングラド中部ノーサンプトンシャーの小村ロング・ピドルトンで起きた奇妙な連続殺人事件である。
住民は殆ど顔見知りであり、それぞれ他人に知られたくない過去や秘密もある個性豊かなキャラクターの持ち主である。
著者は、この舞台に登場する個性的な人物をユーモアや皮肉を交えた筆致で秀逸に描写している。
地方警察だけでは手におえない連続殺人事件だから、ロンドン警視庁警部のリチャード・ジュリーとその部下のアルフレッド・ウィギンズ部長刑事が派遣され、事件を解決することになる。
この捜査を命じたロンドン警視庁主任警視レイサーは、この手の小説によく登場する絵に描いたような嫌な上司であり、レディ・アガサ・アードリーというとんでもない女も著者は登場させて物語に色を添えている。
このアガサは、元貴族メルローズの叔母(父親の弟の妻)は、アメリカ人で俗物丸出しなのに、著者はなぜか「アガサ」と名前をつけているから笑えてしまった。
派遣されたのが、殺人があってから数日過ぎていたことから、ジュリー警部は捜査を現場に居あわせた人たち一人一人に会いに出かけ尋問するところからこの物語は進んで行く。
一階はパブで二階(三階もあるかも)に部屋を持つイギリス地方の旅籠で連続で発見された死体がこれ見よがしで奇妙な状態であったから謎が深まる。
パブの名前の由来などを、本書に登場する牧師のデンジル・スミスに薀蓄を披露させていたから評者など初めて知ることができた。
このあたりが著者マーサのイギリスおたくの本領発揮といったところかな、と興味深く読んでしまった。
地元の元貴族であるメルローズ・プラントの明晰な頭脳の力も借りながら、ジュリー警部は、この寒々とした小村でクリスマスを挟んだ日々を過ごしながら捜査を進めて行く。
ジュリー警部本人はこの小村の景色が好きであり、二人のジェームスという子供も登場してジュリー警部と交わす会話やエピソードなどは微笑ましく描写されていて、この陰惨な殺人事件の一服の清涼剤となっている。
事件の終盤にジュリー警部が一人で教会へ出かけて行き、ふと気が付き証拠の日記を探しだしたその場に犯人登場というストーリー展開にはどうも不自然さを感じてしまった。
評者は、誰が犯人かを本書を読みはじめて三分の一ほどのページで探偵することが出来たが、初めて読んだマーサ・グライムズの古典的なフーダニットものを結構楽しむことが出来た。