オーデュボンの祈り

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種別
長編
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あらすじ

2003年11月28日 オーデュボンの祈り (新潮文庫)

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。(「BOOK」データベースより)

評判

オーデュボンの祈りの評価:

6.05/10点 レビュー 20件。 C ランク

書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点6.05pt

オーデュボンの祈りの総合評価:

7.91/10点 レビュー 362件。

感想一覧

サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

全5件 1〜5 1/1ページ
No.5
(10pt)

心くすぐられ、そして満たされ

2000年代のミステリシーンを代表する作家となった伊坂幸太郎の、奇想天外なデビュー作。
しかし奇想天外でありながらこの上なく爽やかで、そしてヤバい。

数あるミステリを読んできたが、人語を話し、未来を予測する能力を持つ案山子が殺される事件を扱ったミステリはまさに前代未聞だ。

それを筆頭に嘘しか云わない画家、園山や島の秩序を守るために殺人が許されている桜と云う男。天気を当てる猫に、300キロを超える大女など不思議の国に迷い込んだかの如き世界が繰り広げられる。

こういう風に書くとディキンソンのような過剰に異様な世界ではなく、牧歌的で寓話的なところが特徴的だ。案山子が優午と名付けられ、少し先の未来を予見できることが普通の日常として受け入れられるような普通に満ちた世界が荻島にはある。

この荻島と云う不思議の国の成立ちまでも伊坂氏は細やかに設定している。
150年もの間鎖国状態であり、独自の秩序で生活されている荻島という孤島。しかし鎖国状態でありながら、腕時計や洋服、車も走っており、どこか胡散臭さを感じる、テレビのセットのような作り物めいた世界を感じさせるこの島はその由来を伊達正宗の時代にヨーロッパへ渡った支倉常長によって隠密裏にヨーロッパと交易を成すために開かれたとされている。

さらに言葉をしゃべる優午の成立ちさえも時代小説の体裁で語られるのだ。それはお伽噺のようなエピソードであるが、その物語の強さを感じるお話には妙な求心力がある。

そんなゆっくりとした時間が流れる荻島でも犯罪はある。婦女強姦から弟殺しと云った残酷なエピソードも挿入される。
それはどこか「桜の木の下には死体が眠っている」という言葉のような、至極平和な生活に潜む闇のように。それら犯罪者に引導を渡すのは警察ではなく、桜と云う名の殺し屋だ。人を殺すことを認められたその男は寧ろ日常は異常な世界と共存して成り立っているのだと我々に知らしめているようにも取れる。日常生活を営む中で、我々が食む牛肉や豚肉を生産するために、知らない所で屠殺が行われているという惨たらしい事実のように思える。

対象的に極悪非道的な恐ろしさを見せるのは伊藤が逃げた仙台で元同級生で警官の城山のパートだ。
警官でありながらも人間の偽善性を試すように一般人の日常を暇つぶしに蹂躙する非情さを持っている。しかも感情で心を乱すことはなく、冷静かつ冷徹。城山によって囚われの身となった伊藤の元彼女静香の言葉を借りれば、まさに無敵の存在だ。

そして物語の終盤、それまで伊藤の目を通して我々読者に島民たちの奇妙な振る舞いや行為がパズルのパーツが収まるかのようにカチカチとある一点に収束していく様はまさに壮観。

しかしなんという世界観なのだろう、この作品は。
こののどかな営みの中で起こる人の死は決して少なくないのにも関わらず、それをあるがままに受け入れ、日常が続いていく。それは一種、天藤真氏の作風にも似ている。
そしてただ単純に穏やかで平和な世界ばかりが描かれるわけではなく、きちんと傷ましい事件や残酷な所業も挿まれる。それはこの世は決して綺麗事だけでは成り立っていないのだと我々に諭すかのように。

とにもかくにも島の住民日比野によって紹介される一種変わった島民たちのエピソードや過去、そして時折挟まれる伊藤の祖母の語りなどは実に示唆に富んでおり、日常生活で出来た心のささくれのどこかに引っかかってなかなか離れない。
それは教訓と呼ぶほどには説教じみてはないのだが、普通に過ごしていて忘れがちな約束事を思い出させてくれるかのような但し書きのように気付かせてくれるのだ。

名セリフに溢れた本書の中で私が最も印象に残ったのは優午が島唯一の郵便局員、草薙を評した言葉だ。
「彼は花と同じで、悪気がありません」
こんな文章に出逢うだけで私は何だか幸せな気持ちになってしまう。

物語の中で唯一暗い光を放つ存在、城山も静香を人質にして荻島に渡る。この物語の中で最もスリリングなのがこの城山のパートなのだが、実に爽快な始末の付け方を伊坂氏はしてくれる。

そして物語は唯一残った謎、「この島に足りない物」の謎を解いて実に気持ち良く終えるのだ。

ああ、まだ私の胸に留まる伊坂氏が残した歓喜を挙げたくなる嬉しさにも似た何かが心くすぐって堪らない。
なんと優しさに満ちた物語か。
なんと喜びに満ちた物語か。
こんな物語を紡ぐ作家が現れたことを素直に寿ぎたい。


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Tetchy
WHOKS60S
No.4
(10pt)

オーデュボンの祈りの感想

!

hiloaki
QC6TR8ZY
No.3
(9pt)

オーデュボンの祈りの感想

よくこんな設定を考えますよねえ。
でも面白かった。


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レッダーン
JX3FQ5JY
No.2
(10pt)

オーデュボンの祈りの感想

未来が見える案山子がしゃべる・・
独特のルールを持つ島の住人・・など、奇抜な設定ですが、すんなり入れました。
謎解きのように回想がはいり、納得しながら話を読み進めることが出来ます。
物事は複雑に見えて、原理は単純なもの。
人の未来も、単純な願いから始まるってことでしょう。

Hidezo
GX0TU62Y
No.1
(9pt)

オーデュボンの祈りの感想

これが伊坂さんのデビュー作だとっ!?いきなりこんなすごいのだしたのかっ!
最後に全てがつながる爽快感はさすがは伊坂幸太郎です。
案山子が喋る(←裏表紙にも書いてあります)など、展開は斬新です。
実に面白かったです。

アンコウ
BKBVHN0W

Amazonレビュー

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No.342
(5pt)

優午が好き。

読み終わりはスッキリ!とはしない。でも、なんだか分からないけど心地よい。そんな不思議なお話。
オーデュボンの祈り (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: オーデュボンの祈り (新潮文庫)より
4101250219
No.341
(5pt)

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オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部) Amazon書評・レビュー: オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部)より
4106027674
No.340
(4pt)

人間が生み出したしゃべる案山子

並走する異なる物語ごとに見合ったイラストで、読者が識別でき読み易く工夫されているのに感心した。今から20年以上も前に書かれた作品であるにもかかわらず、まったく古臭さを感じさせない独創的な世界観がたまらない。この物語のしゃべる案山子にあやかって私も人間にしゃべりかけたくなった。「推しの歌や小説は人生を変えることもある」「人生の最後の推しは自分だよ」
オーデュボンの祈り (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: オーデュボンの祈り (新潮文庫)より
4101250219
No.339
(4pt)

人間が生み出したしゃべる案山子

並走する異なる物語ごとに見合ったイラストで、読者が識別でき読み易く工夫されているのに感心した。今から20年以上も前に書かれた作品であるにもかかわらず、まったく古臭さを感じさせない独創的な世界観がたまらない。この物語のしゃべる案山子にあやかって私も人間にしゃべりかけたくなった。「推しの歌や小説は人生を変えることもある」「人生の最後の推しは自分だよ」
オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部) Amazon書評・レビュー: オーデュボンの祈り (新潮ミステリー倶楽部)より
4106027674
No.338
(4pt)

人は往々にして残酷なのです

伊坂幸太郎作品が数多く読んできましたが「しゃべるかかしが殺される」との設定にリアリティが感じられないのではないか、との思い込みから敬遠していたのですが、同様に「しゃべる車の一人称小説」との設定でリアリティがないのではないかと敬遠していた『ガソリン生活』がべらぼうに面白かったがため、自身の思い込みを反省し、伊坂幸太郎のデビュー作である本書をようやく読むことにしました。
 確かにその後の数々の傑作作品と比較すると、デビュー作ならではの文体の硬さを感じますが、「支倉常長」といった実在の人物や、「リョコウバトの絶滅」「ラ・ベル・プール号の話」という歴史的事実を物語に絡ませることで知的好奇心が刺激され非常にワクワクしてきます。
 本書のタイトル「オーデュポン」とは19世紀に実在した動物学者で、『アメリカの鳥』といった素晴らしい鳥の画集を発表しています。
 そのオーデュポンが発見したのがリョコウバト。
 何十億と存在していたリョコウバトは人間による乱獲により1914年絶滅しました。
 そんなリョコウバトの話が本物語にどのように絡んでくるのか、本書を読んで堪能してください。
オーデュボンの祈り (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: オーデュボンの祈り (新潮文庫)より
4101250219

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