(短編集)
竹村直伸探偵小説選1
- 探偵小説選 (68)
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お断り・・本レビューは最後に、「風の便り」「タロの死」「霧の中で」を比較検討しますので、この3編については多少ネタバレになると思います。 竹村直伸のはじめての単行本の第1集である。デビュー作の1958年の「風の便り」から、1962年の「また貸し」までの短編ミステリ18編が収録されている。 竹村直伸は元銀行員で、「宝石」等を舞台に、短編ミステリ作家として活躍したが、病のために1965年で筆を折り、塾教師になった。1989年頃、鮎川哲也がインタビューに成功しているが、以後の消息は不明である。 本書の帯で強調されているのは、竹村氏が、1959年4月号「宝石」に3編(「タロの死」「似合わない指輪」「霧の中で」)が同時掲載された作家であること(鮎川哲也のエッセイに既出)、乱歩から「日本サスペンス派の一人として大成されること」を期待された作家であることである。 ただし、本書の編者の横井氏は、「サスペンス派の作家」「サスペンスの盛り方の巧みさ」という乱歩の賛辞に対して、「サスペンスというのは小説であれば基本的に有しているものであるし、トリックやプロットの興味で読ませる作品ではまったくないのか」と異議を唱えている。しかし、乱歩は「三篇それぞれに面白いプロットなのだが」と書いており、「まったくない」などとは、ゆめゆめ言っていないのである。 一、 分類 ●18編の発表年度は、1958年1編、1959年5編、1960年7編、1961年3編、1962年2編である。(数え間違いご容赦。以下同様) ●アンソロジー収録回数は、「風の便り」が4回、「タロの死」が2回、「似合わない指輪」が1回、他の作品は単行本初収録で⒮る。 ●初期の4編「風の便り」「タロの死」「似合わない指輪」「霧の中で」では子供に重要な役割が与えられており、この点が竹村ミステリの特色となっていたのだが、第6作の「見事な女」以後は、子供はほとんど登場しなくなっている。つまり、「霧の中で」以前は「子供の絡むサスペンス」であるが、「見事な女」以後は、「男と女のサスペンス」となっている。 ●トリックのあるのは「風の便り」「タロの死」「似合わない指輪」「消えたバス」「白い記憶」ぐらいで、ほかの作品には、トリックらしいトリックはない。しかし、犯人や悪人を罠に掛ける偽装もトリックに含めれば、そういう作品は比較的多い。(後述) 二、感想 新しいものから順に感想を書く 「また貸し」・・謎の時間制転借人の正体は面白いが、最後が強引 「遺言」・・大家の遺言状で、特定の女と結婚することを条件に遺産に一部をもらえることになった男。上記の「罠」の代表作。 「ある誤算」・・妻が夫を脅そうとして失敗し・・。 「火葬場の客」・・まさに、奇妙な味 「三人目」・・妻の死が自殺か殺人かを探る男。罠、欲情、秘密が重なって複雑な展開になり、意外な犯人に辿り着く。 「白い記憶」・・竹村氏の作品は素人探偵が多いのだが、これは珍しく刑事もの。ワン・トリックが効いている。 「消えたバス」・・傑作。これも刑事もの。トリックも面白いが、所持金100万円の秘密と、複雑な愛憎関係から発生する犯罪が、じわじわと解き明かされていくのが面白い。1960年の時代色も豊か。 「非常梯子」・・殺し屋を手玉に取る悪女。面白い。 「狂気」・・殺した女から、恋い慕われる男。この難問の解は?? 「おそれ」・・夫が女に殺されると警察に訴えた妄想傾向の妻。真相は? 「殺し屋失格」・・これも、殺し屋を手玉に取る悪女。面白い。 「落札された花嫁」・・凝っているが、肝心の「花嫁落札」のアイデアが不発気味 「見事な女」・・「あげまん」の極致なのか、「さげまん」なのか微妙な「見事な女」。ちょっとだけ泣ける。 「霧の中で」・・後述 「似合わない指輪」・・四編の子供ミステリの中で、子供自身が探偵である点で、他の三篇と性格が異なる。指輪と母の行方不明を巡る謎が、初老の男女の痴情関係に行きつくのが面白い。子供については、冒頭の一行がラストの伏線となっている。 「タロの死」・・後述 「妻を殺す」・・医者が、浮気を疑って妻を殺す話を詳述する。 「風の便り」・・後述・ 三、「風の便り」「タロの死」「霧の中で」についての検討 上記3作品は、初期の「子供の絡むサスペンス」であり、特に「風の便り」は少女と死んだ父親との手紙のやり取りの謎、メルヘン的な味わいで、「タロの死」は犬好きの少年二人と、犬をあげたりもらったりの謎で、読者にアピールする構成で、どちらも竹村氏の代表作とされている。そういう魅力については、別段に異議はない。 しかし、ここでは、解題等にあまり書かれていないことを、ちょっと書いてみたい。山前譲氏は、竹村氏の作品の特徴を、「何気ない発端から未解決事件の真相が明らかになっていくプロットが特徴的」と書いているが、本3編はまさにその見本のようである。しかし、別の角度からみれば、本3篇は「過去の秘密を背負いながらも、今は静かに暮らしている子連れの家族がいて、その子供の純真な、ちょっと不思議な行動をきっかけに、警察でもない一般人が、その家族の中に強引にまたは猫なで声で入り込み、家族を威圧し、または罠にはめて、過去の犯罪を暴き立て、家族を殺人犯として告発し、結果的には子供を不幸にする」プロットであるといえる。つまり、ここには、告発する側に、「他人の家庭をぶち壊す正義」があるのかという問題が存在する。この点は竹村も意識していて・・「タロの死」では、最後に探偵に「母子二人でひっそりと暮らそうとした。私はそんなあなた方の生活を、故意にぶち壊そうと思うわけではない、だが、・・」と悩みを見せている。この点は評価できる。また、「風の便り」では、無実の夫の弟に依頼された私立探偵という設定で、「告発の正義」「他人の家庭を不幸にする正当性」問題をクリアしようと努めている。しかし、子供を使った作品であるゆえに、多少の後味の悪さが残る。 「霧の中で」はこの点では、全く配慮のない作品で、この素人探偵たちの、あかの他人の家庭の秘密の探り方、強引に他人の家庭に入って、証拠のない論理で、過去の犯罪を告発する仕方は、ほとんど犯罪者並みで、読み味、後味悪く、明らかな失敗作である。 四、ベスト5 単行本初収録作品(つまり、「風の便り」「タロの死」「「似合わない指輪」以外の15作品)から、個人的なベスト5を選んでみる。第一位「見事な女」、第二位「消えたバス」、第三位「遺言」、第四位「殺し屋失格」または「非常梯子」、第五位「三人目」である。 | ||||
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