昼が夜に負うもの
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時代は1930年代以降、作者の祖国アルジェリアを舞台とし、 主人公の生涯を幼年期から晩年まで四部構成で綴っておられます。 この3日間、主人公ユネスの人生の苦悩・せつない恋にくっついて、 濃密な読書生活をすることできました。久しぶりの秀作です。是非! アラブ人の主人公ユネスは、没落した地主の家系に生まれましたが、 (豊作が見込まれた年、農地を)収穫を眼の前に放火されてしまい、 父と母、耳口の不自由な妹とともに、 アルジェリア第二の都市・オランの貧民窟に移ります。 貧窮を極めた生活を脱することはできず ユネスの教育を案じた父は、彼を裕福な伯父夫妻の元へ里子に出し、 ユネスはフランス風のジョナスという呼び名で呼ばれるようになり 新しい生活がはじまります。 しかし、伯父にイスラムの指導者たちの革命運動を支援したという嫌疑がかけられ、 オランからブドウ畑の立ち並ぶ美しい村リオ・サラドへと逃れていきます。 彼はヨーロッパ系社会へとコミュニティを変えながら、 親友も3人できて、楽しい青春時代を送っていましたが、 エミリーとの恋愛問題をめぐって、友情は微妙に変化し、 1954年の対仏独立戦争も勃発して、民族間の対立も生まれて、 彼は元の「ユネス」に立ち戻って、 自らの出自や内面の世界に対峙していかなくてはならなくなります。 彼のエミリーに対する純粋な気持ちと裏腹な 頑ななまでのまじめな姿勢には もどかしく、胸が締め付けられるほど苦しく・・・。 なお、オランは、カミュの『ペスト (新潮文庫)』の舞台であり、 訳者あとがきによると、 作者はカミュの小説を読んで、 フランス語で執筆する小説家を目指したそうです。 | ||||
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他の方が色々書いてらっしゃることでこの作品の真価は十分判ると思うのでここでは私的な感想を述べたいと思います。 一番最初の部分で主人公とその家族の体験する貧困はどのこの時代の世界でも万国共通であったらしく、似たような話は結構多く聞きますが、やはりこのアルジェリアでも相当厳しかったらしいのが判ります。そんな状況でも苦難に立ち向かう主人公をみると、自分の今現在の境遇を顧みて生きる希望を与えてくれて元気がでます。 中盤以降の恋愛に苦悩する所もやはり万国共通の真実を描いていて国、人種、言語、性別に係わらず誰もが体験する問題としてとてもリアリティがあり、主人公の抱える苦悩も他人事じゃない切実な問題として心を揺さぶります。 そしてアルジェリアの独立戦争の所も、そもそも自分の国とは何か、自国のアイデンティティとは何か、という著者の問いかけが聴こえてきて、日本とは、日本人とは、と考えさせられ、その真摯な姿勢に粛然としてしまいます。 著者によると前に書いたものが重たいテーマだったので、少し軽めの物語をと、書いたそうですが、それでも読んだ人一人ひとりに様々な問題を提起してくる素晴らしい作品でした。タイトルは多分人間の営為が行われる朝から昼の苦悩は、夜の営みによって昇華される、なので当たり前の日常を暮らす為にも平和な世界を勝ち取らねばならない、という意味合いだと思いましたが、どうでしょうか。 小説を読む喜びを最大限に味わえる傑作。訳者の方が書いている「アルジェの戦い」という映画も凄い映画で、戦争映画としてお勧めしておきます。 | ||||
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この作品を評そうとするものは、皆戸惑いを覚えるであろう。 複雑な味わい、巧みに配された迷路のような構造、重層的に共鳴しあう文脈の 美しく魅惑的な誘い、それらを作者は気取られないように一行一行の文章の中に 作戦図のように構築するのである。 読み手は、作家の構築した陣地にいつしか誘いだされ、進出する目標を定めようとする、 が、その時に突然読者の全身を照らし出す明々とした不吉な照明弾が 打ち上げられるのである。 作者は、元軍人、元アルジェリア陸軍大佐である。 しかも情報担当将校、したたかである。 と同時に、数多くの他者の死を目の当たりにする、それを日常の生業となし、 最後には輝かしい軍歴を捨てなばならないほどに死が差し迫ってくる、そのような 体験を経た人物である。 ここで私は、ある知人のフランス人を思い出す。 彼は自分のことを自嘲するようにpied-noirと呼ぶ。 幼年時に父に手をひかれ、鞄一つでアルジェの港から船に乗った。 かすかな記憶の中で、今でも銃声と爆発音を聞くという。 彼も含めた家族の苦労を、彼は語ろうとはしない。 冬のブルターニュの海を語る時は懐かしそうな顔をする。 この作品の中で星のように明滅する登場人物、砂漠の夜の如くに美しく、淋しく、孤独であり無力でもある。 星を追いながら砂漠の迷路をひたすた歩み続けてきた人物こそは、作者である。 彼があまり語ろうとしなかった、いや語ろうにも語れなかった月、あるいは地平線に沈んだ太陽こそは この作品の中で貧困と汚辱の中で姿を消していった父であり母である。 作品をノスタルジーに絡めた愛の物語であることを拒絶するものは、この陰惨な逸話であり、これこそが作品の骨格である。 作者にとってのアルジェリアそのものなのである。 | ||||
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文学の持つ力をまた信じてみようかなという気にさせてくれる本でした。 | ||||
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日本において、アルジェリアに関しては良くも悪くもフランス側の視点から入って来る情報量が圧倒的に多い。 フランスへの”移民”としてのアルジェリア人を描くものは多いけれども、日本人の私たちは余程積極的にならないとアルジェリア人視点の考えを知る事は出来ない。 そういう意味では、この作品は、無論小説というフィルターを通してではあるが、裸のアルジェリアを知る事が出来る数少ない優れた媒体だと思う。 アルジェリアでは人種が混在しているだけに、アラブ人でありながら青い目を持った白人の様に見える主人公の様な存在も、普通に存在する。 イスラムとキリストという宗教の対立だけでなく、目に見える”人種”の壁と差別は、アメリカのそれとはまた違う意味を持ち、残酷でもある。 この作品は、凄惨なアルジェリアという国の歴史を背景にしてもいるのだけれども、硬い本では決してない。 少年から晩年にかけての1人の男性の数奇な人生譚であり、とても面白い。 長編ではあるけれども、読み始めるとその訳文の流麗さも手伝い、一気に引き込まれてしまう。 非常にアラブ的と思える、日本人には相容れない激しさもあるにはあるけれども、非常に魅惑的な作品であった。 | ||||
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