彼女がその名を知らない鳥たち

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彼女がその名を知らない鳥たちの評価:

3.90/5点 レビュー 136件。 C ランク

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全186件 181〜186 10/10ページ
No.6
(5pt)

けがれの象徴だったのか

 気味の悪い恋人同士が描かれる。その、互いに傷つけあい依存しあう寄り添い方が醜悪である。終盤まで、その生々しい傷つけあい方、相互不信が生々しい。でもなぜか別れられない踏ん切りの悪さも、論理以前の説得力がある。
 陣治への生理的な嫌悪は、一人称で語られるだけにわかりやすい。それは理屈ではないからだ。理屈では、十和子の接し方一つで、陣治の献身が好転するだろうとわかるのだが…。読者としては十和子の徐々に明らかになるトラウマに共感してしまい、破滅的な十和子の行動を追認してしまう。仕方ないよね…嫌いなものは嫌いなんだ…と。
 だが、十和子が陣治を嫌うのは、論理的な心理メカニズムであると、終盤知らされる。陣治は、けがれの象徴だったのだ。そしてそれを最後まで引き受ける陣治のラストシーンは、鮮やかだ。
彼女がその名を知らない鳥たち Amazon書評・レビュー: 彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.5
(5pt)

心配するって心をくばること

十和子は八百屋お七のように8年前に別れた(というか捨てられた)黒崎という男を思います。
あいたいあいたいあいたいあいたい。
十和子はうつろにDVDレンタル映画を見ること以外なにもしません。
十和子には同居人が居ます。
周囲からは別姓の夫婦であると考えられているような男が。
女の生理的嫌悪感を具象化したような男,十和子から決して離れない男です。
それが陣治です。
十和子は男を苛めて責めます。肺腑をえぐるかのように,存在を否定するかのように。
陣治はただひたすら打ちひしがれ,許しを請います。
そんな救い様の無いかのような状況から,十和子は更に立ち入り禁止の柵をなぎ倒して進みます。
見え隠れする男達の不誠実を,十和子は自己の虚無の中に隠しこみます。
欺瞞の多幸感を消さないために。
スモッグがはれる時,十和子はなにを見るのでしょうか。
抜群の小道具,いやになるほど冷淡な視線,完全にノックアウトされました。
大芸術!!
ところで著者のプロフィールにある,主婦→僧侶→会社経営って何者でしょう。凄すぎです。
彼女がその名を知らない鳥たち Amazon書評・レビュー: 彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.4
(5pt)

傑作

まず前作(デビュー作)に比べて筆力が格段に上がっている。比喩や日常の描写が秀逸で、そのデリケートな描出が物語に並々ならぬ緊迫感を付与している。タクラマカンのエピソードも全体を覆う閉塞感とリンクしていて良かった。これ以上は望めないだろうと思っていた前作の質を、あらゆる面で上回る出来だと思う。こうなると次回作が楽しみで仕方ない。
ただ、物語の核心とも言える「何故ピアスが陣治の部屋にあったか」という謎の真相が個人的には少し残念だった。もっともそれはミステリ的な読み方をすると残念という意味で、この作品の色からすれば気にするべきところではないのかもしれない。
最後に、作品自体の質とは違う話になってしまうが、表紙がすばらしかった。記憶していないか、或いは単に読み方が拙かっただけだと思うけど、自分はこの物語のいずれの場面でも「青空」を思い描くことができなかった。壊れそうな緊張感に終始するこの物語には、降雨寸前の曇天、あるいは星の浮かない夜空がよく似合う。あのエンディング、胸の締め付けられるような思いで読了したとき、本を閉じてそこに青い空があると、本当に救われた気分になる。
彼女がその名を知らない鳥たち Amazon書評・レビュー: 彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.3
(5pt)

[彼女がその名を知らない鳥たち]を道徳で裁けるか

お花畑さんのコメントを読み、意見交換したいのですが、方法がわかりません。お花畑さんはこの作品の愛の形について、後味が悪い、と書かれています。その理由を、追記のなかで「こうした愛が成立するならストーカーだって愛があるといえるのではないか」といった趣旨の意見をのべられています。相手への思いやりが愛の根源的な問題、本質であるとも。
たしかに、私たちがいきていく上ではそうした規範も必要かと思います。しかし、規範や道徳を問題にするなら、絵や小説や詩歌などは、私たちにとって、必要のないものとなるのではないでしょうか。谷崎潤一郎などまったく不要で、島崎藤村も(晩年の)椎名燐三も田山花袋も存在するに足りないものとなるのではないでしょうか。日常を離れたところに存在するある何か、自由と呼んでもいい、開放と呼んでもいい、そうしたものを求めて私は読書します。読書のなかにおいては、「ストーカー」だって立派な愛、ねじれていようが、裏返っていようが愛であり、人間の本質に迫っているならば何だってアリ、と私は思います。ワイドショーなどで道徳の権化のような話を我が物顔でする司会者もいます。小説家もずいぶんコメンテーターとして出席していますが、ある事件をとらえて、人間の本質に迫る発言を耳にしたことは、いまだありません。ボキャブラリーにとぼしく、うまくいえませんが、嘆かわしいことと私にはうつります。お花畑さんが既成の概念を排除して作品を読めば、世界がもっと広がるように思いますが、少し言いすぎかもしれません。お前はどうなのかと問われると、読解力にはあまり自信がありませんから。
彼女がその名を知らない鳥たち Amazon書評・レビュー: 彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.2
(5pt)

不器用な愛の交差

もし実写化になったらどんな風になるだろうと思うくらい内容に厚味があって面白かったです。
ほのかに緊張感が漂って、結末はどうなるのだろうかとハラハラされられながら一気に読みました。
主人公を含め登場人物たちが順々にほつれていく様が見ものです。
彼女がその名を知らない鳥たち Amazon書評・レビュー: 彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.1
(5pt)

ミステリーとして読んでよいか。

この作品は人間の内面を突きつめていく中で、愛なるものを屹立させ、一切の妥協を排除して愛を結晶化させています。前作「九月が永遠に続けば」同様、この作者の作品はどうにも純文学的ですね。しかし、エンタメとして読んでも人間のダメさかげんのなかから、ドラマが展開されていき、十分に面白いと僕はおもうのですが・・・。十和子も陣治も僕にとっては愛すべき人間です。変な人間が好きで、人間のくだらなさが好きで、しかし、それをつまびらかにすれば身辺が息苦しくなるので、僕は本を読みます。キレイゴト、道徳、そんなものに堕した物語など、噴飯ものだと思いますが、いかがですか。
彼女がその名を知らない鳥たち Amazon書評・レビュー: 彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399