(短編集)

症例A

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評判

症例Aの評価:

4.21/5点 レビュー 72件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.21pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全118件 41〜60 3/6ページ
No.78
(5pt)

サイコでない多重人格物

多重人格を絡めた精神疾患の少女にまつわるストーリーと古美術品の贋作にからんだミステリーをテーマとした作品.2つのストーリーが平行して進み,最後に統合して結末を迎えるが・・・実際のところ,贋作の話は蛇足気味で,多重人格のストーリーの方が圧倒的に読み応えがある.多重人格を扱ったノンフィクションは多いが,本作品では多重人格に対する精神科医の懐疑的な見方から始まる.サイコでミステリアスな病気という興味本位な取り上げ方ではなくイーブンな目線からこの病気にテーマとした姿勢に好感が持てる.何より,言葉や仕草からいろいろな情報を読み取っていく精神科医の姿が非常にリアルで関心した.こういうシーンをわざとらしくなく表現するのはなかなか難しいものである.作者は精神科医ではないようだが,精神科医の書いたノンフィクションと比べても遜色ない出来と言える.
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.77
(5pt)

サイコでない多重人格物

多重人格を絡めた精神疾患の少女にまつわるストーリーと古美術品の贋作にからんだミステリーをテーマとした作品.2つのストーリーが平行して進み,最後に統合して結末を迎えるが・・・実際のところ,贋作の話は蛇足気味で,多重人格のストーリーの方が圧倒的に読み応えがある.多重人格を扱ったノンフィクションは多いが,本作品では多重人格に対する精神科医の懐疑的な見方から始まる.サイコでミステリアスな病気という興味本位な取り上げ方ではなくイーブンな目線からこの病気にテーマとした姿勢に好感が持てる.何より,言葉や仕草からいろいろな情報を読み取っていく精神科医の姿が非常にリアルで関心した.こういうシーンをわざとらしくなく表現するのはなかなか難しいものである.作者は精神科医ではないようだが,精神科医の書いたノンフィクションと比べても遜色ない出来と言える.
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.76
(5pt)

読みながら、いろいろと考えてこんでしまった

精神科医の榊は、病院の問題児である少女・亜左美を担当するが、前任者の下した診断に疑問を抱きはじめる。
彼は臨床心理士の由起と力を合わせ、亜左美の病根をつきとめようとする。
医療サスペンスでは、外科医が主人公になることが多いが、この作品では精神科医が主人公だ。
精神科医、その患者の心情、苦悩があまりに克明に描かれている。
読んでいると、思わず顔をしかめてしまう。
こんなこと書かないでくれよ。
それでも読むのをやめられない。
博物館がどうとか、解離性同一性障害がどうとかに、かなりページを割いている。
全体としては、ミステリー小説仕立てになっている。
ミステリーとしても面白いとは思う。
だが、それを一切なくして、医療モノとして読んでみたかった。
それでも充分に、むしろその方が引きつけられると思う。
読みながら、いろいろと考えてこんでしまった。
もう一回じっくり読もうと思います。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.75
(5pt)

読みながら、いろいろと考えてこんでしまった

精神科医の榊は、病院の問題児である少女・亜左美を担当するが、前任者の下した診断に疑問を抱きはじめる。
彼は臨床心理士の由起と力を合わせ、亜左美の病根をつきとめようとする。
医療サスペンスでは、外科医が主人公になることが多いが、この作品では精神科医が主人公だ。
精神科医、その患者の心情、苦悩があまりに克明に描かれている。
読んでいると、思わず顔をしかめてしまう。
こんなこと書かないでくれよ。
それでも読むのをやめられない。
博物館がどうとか、解離性同一性障害がどうとかに、かなりページを割いている。
全体としては、ミステリー小説仕立てになっている。
ミステリーとしても面白いとは思う。
だが、それを一切なくして、医療モノとして読んでみたかった。
それでも充分に、むしろその方が引きつけられると思う。
読みながら、いろいろと考えてこんでしまった。
もう一回じっくり読もうと思います。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.74
(4pt)

知らなかった症例

一気に読めました。
人間には,本当にいろんな病と言うか,症状があるんだな、、、、と思いました。これは小説だけれども、実際にもこのような症例の人間が居るという事が解りました。解決策はどこにでもあるわけではないけれど。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.73
(4pt)

知らなかった症例

一気に読めました。
人間には,本当にいろんな病と言うか,症状があるんだな、、、、と思いました。これは小説だけれども、実際にもこのような症例の人間が居るという事が解りました。解決策はどこにでもあるわけではないけれど。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.72
(4pt)

リアルだが、最後が残念。

精神医学のことはよくわからないが、こういった事例はたくさんあるのだろうか。
それにしても患者亜左美の人を振り回す悪質さ。不覚にも読んでいるだけで腹が立ってきた(苦笑)。榊が亜左美の診断にとまどう姿はリアルに感じた。亜左美のあの行動の数々は、簡単に病名の診断を下すことができない支離滅裂さだ。
そして臨床心理士の広瀬由起。初めは主人公の精神科医榊と協力して患者の治療に当たる役割なのだと思っていたが、まさか広瀬自身も精神医学的問題を抱えていたとは・・・。
こんなにリアルで読み応えのある作品だが、途中から「おやおや」という展開になってくる。亜左美と広瀬に共通する症状。そんなにこの症例には頻繁にお目にかかるものなのか?と。ただ、精神分析医の岐戸と榊の、多重人格についての真剣なやりとりはかなりページが割かれていて読み応えがある。
最後の方の榊の亜左美と広瀬に対する対応は、精神科医としてはどうかと思う。精神科医が患者に対して保つべき距離を越えて相手に踏み込んでしまっているように感じる。実際の治療場面ではどうなのだろうか。この作品には患者の治癒という結末はないが、今後の治療にはマイナスではないかと感じた。続きがあるとするならば、これは主治医交代か、治療失敗、榊の精神的破滅といった悲劇に向かうような、そんな気がしてならない。
博物館の方のエピソードと2本立てで話は進むが、精神科病棟の話だけで読んでみたかった作品。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.71
(4pt)

リアルだが、最後が残念。

精神医学のことはよくわからないが、こういった事例はたくさんあるのだろうか。
それにしても患者亜左美の人を振り回す悪質さ。不覚にも読んでいるだけで腹が立ってきた(苦笑)。榊が亜左美の診断にとまどう姿はリアルに感じた。亜左美のあの行動の数々は、簡単に病名の診断を下すことができない支離滅裂さだ。
そして臨床心理士の広瀬由起。初めは主人公の精神科医榊と協力して患者の治療に当たる役割なのだと思っていたが、まさか広瀬自身も精神医学的問題を抱えていたとは・・・。
こんなにリアルで読み応えのある作品だが、途中から「おやおや」という展開になってくる。亜左美と広瀬に共通する症状。そんなにこの症例には頻繁にお目にかかるものなのか?と。ただ、精神分析医の岐戸と榊の、多重人格についての真剣なやりとりはかなりページが割かれていて読み応えがある。
最後の方の榊の亜左美と広瀬に対する対応は、精神科医としてはどうかと思う。精神科医が患者に対して保つべき距離を越えて相手に踏み込んでしまっているように感じる。実際の治療場面ではどうなのだろうか。この作品には患者の治癒という結末はないが、今後の治療にはマイナスではないかと感じた。続きがあるとするならば、これは主治医交代か、治療失敗、榊の精神的破滅といった悲劇に向かうような、そんな気がしてならない。
博物館の方のエピソードと2本立てで話は進むが、精神科病棟の話だけで読んでみたかった作品。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.70
(4pt)

丁寧な作品

 精神病棟を舞台にした「症例A」を丁寧に描いた作品。
 一般的に医師や看護師といった医療職でなければ、仕事としてそういった症状と接することはないが、ケースワーカーの仕事をしていた際に接した人々を思い起こすと、仕事として接することの難しさを思い出してしまった。
 多重人格を核に、統合失調症(かつての精神分裂病)、人格障害、躁鬱といった心の病を、丁寧な距離感で物語に溶け込ませている。「病気」「異常」として突き放すこともなく、「普通」とだますこともなく絶妙な距離感で描いており、しっかりとした取材をされているんやなぁと感心。
 ラストについて賛否があるようだが、小説として描くのであれば、個人的にはあのラストしかないんじゃないかと思います。安易な「治療」や「治癒」を描くのは違う気がしますので。
 それよりも、首都国立博物館の遙子の視点でのストーリーが中盤で一気に失速してしまう方が気になるんですよねぇ。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.69
(4pt)

丁寧な作品

 精神病棟を舞台にした「症例A」を丁寧に描いた作品。
 一般的に医師や看護師といった医療職でなければ、仕事としてそういった症状と接することはないが、ケースワーカーの仕事をしていた際に接した人々を思い起こすと、仕事として接することの難しさを思い出してしまった。
 多重人格を核に、統合失調症(かつての精神分裂病)、人格障害、躁鬱といった心の病を、丁寧な距離感で物語に溶け込ませている。「病気」「異常」として突き放すこともなく、「普通」とだますこともなく絶妙な距離感で描いており、しっかりとした取材をされているんやなぁと感心。
 ラストについて賛否があるようだが、小説として描くのであれば、個人的にはあのラストしかないんじゃないかと思います。安易な「治療」や「治癒」を描くのは違う気がしますので。
 それよりも、首都国立博物館の遙子の視点でのストーリーが中盤で一気に失速してしまう方が気になるんですよねぇ。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.68
(4pt)

面白い作品では、あるが・・・。

作品全体を通して、緻密に取材されている作品である。しかし、後半に入って、急いでる様な感じで、謎解きが始まり、なんとなく、尻切れトンボで、終わってしまう様な感じは、否めない・・・。欲を言えば、登場人物のその後も、知りたい。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.67
(4pt)

面白い作品では、あるが・・・。

作品全体を通して、緻密に取材されている作品である。しかし、後半に入って、急いでる様な感じで、謎解きが始まり、なんとなく、尻切れトンボで、終わってしまう様な感じは、否めない・・・。欲を言えば、登場人物のその後も、知りたい。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.66
(5pt)

いまさらですけど

書きます。
DIDを取り上げたものすごい小説がある。
しかもその参考文献に、私の尊敬する、ある精神科医師の著書が挙げられている。
というのはずいぶん前から知っていたが
職業柄多忙で後回しになり、やっとこの2日間で購入・読破することができた。
荒廃した精神病院の現実の有様、その中で葛藤しS病院にたどり着いた榊医師と
S病院で待ち受ける亜左美の判別困難な行動や言動。
統合失調症・ボーダー・DIDの判別の困難さひとつをとってもリアリティーにあふれ、
シビアな現実の中で、
誠実に精神科医療や亜左美をはじめとする患者に向き合おうとする榊医師には
勇気付けられ 目頭が熱くなった。
確かに結末に腑に落ちなさも感じるが、
このあとの榊医師に予想される苦難の数々を思うと、
半端ゆえに残る不安感に妙に納得したりもした。
榊医師の鬱症状が悪化しないことを切に祈る。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.65
(5pt)

いまさらですけど

書きます。
DIDを取り上げたものすごい小説がある。
しかもその参考文献に、私の尊敬する、ある精神科医師の著書が挙げられている。
というのはずいぶん前から知っていたが
職業柄多忙で後回しになり、やっとこの2日間で購入・読破することができた。
荒廃した精神病院の現実の有様、その中で葛藤しS病院にたどり着いた榊医師と
S病院で待ち受ける亜左美の判別困難な行動や言動。
統合失調症・ボーダー・DIDの判別の困難さひとつをとってもリアリティーにあふれ、
シビアな現実の中で、
誠実に精神科医療や亜左美をはじめとする患者に向き合おうとする榊医師には
勇気付けられ 目頭が熱くなった。
確かに結末に腑に落ちなさも感じるが、
このあとの榊医師に予想される苦難の数々を思うと、
半端ゆえに残る不安感に妙に納得したりもした。
榊医師の鬱症状が悪化しないことを切に祈る。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.64
(5pt)

リアリティ故に

心の病に関わる医師や、患者の苦悩等の描写がものすごくリアルなので、
小説に書かれた出来事から、距離を保ちつつ読まないと、ちょっとまずいかも。
特に、精神疾患に心当たりがあって、知見を得るために、この手の小説を読む癖のある人、
物語を用いて自己分析をする癖のある人は、読まない方が良いと思った。
リアルすぎるが故に、フラッシュバックの恐れがあるかもしれない。
精神病について知りたい人は、スリリングなストーリーと
膨大な情報量がとても魅力的に映るだろうけれど、
とにかくリアルすぎる。
フィクションとしてはとても読み応えがあるし、
薄っぺらい眉唾小説とは違う事がわかるので、オススメですが、
警告はした方がいいかなぁと思ったので、書かせていただきました。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.63
(5pt)

リアリティ故に

心の病に関わる医師や、患者の苦悩等の描写がものすごくリアルなので、
小説に書かれた出来事から、距離を保ちつつ読まないと、ちょっとまずいかも。
特に、精神疾患に心当たりがあって、知見を得るために、この手の小説を読む癖のある人、
物語を用いて自己分析をする癖のある人は、読まない方が良いと思った。
リアルすぎるが故に、フラッシュバックの恐れがあるかもしれない。
精神病について知りたい人は、スリリングなストーリーと
膨大な情報量がとても魅力的に映るだろうけれど、
とにかくリアルすぎる。
フィクションとしてはとても読み応えがあるし、
薄っぺらい眉唾小説とは違う事がわかるので、オススメですが、
警告はした方がいいかなぁと思ったので、書かせていただきました。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.62
(5pt)

「科学」と「文学」との狭間で

 この作品はそのリアルさもさることながら、二つの点において一際優れている。
 まず一つ目は、登場人物が全員「上品」であることだ。
 精神病院というある種の「異質な空間」が舞台となっている中において、「悪」や「偽」はなく、誰もが懸命に「生きようと」あるいは「職務を全うしようと」している。
 読んでいて非常に「品」を感じるのである。
 そして二つ目に、精神病院と博物館をパラレルに描いたことである。
 この対比は主人公・榊医師の心理描写と一致する。
 つまり、初めは「科学的心理学」の立場をとり、精神分析に対して懐疑的な主人公が、次第に「美術」という「非科学的」な分野と接触を持つようになるのである。
 このような「解釈」を榊医師は嫌うかも知れないが、このような解釈がかすんでしまうほど
 名著である。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.61
(5pt)

「科学」と「文学」との狭間で

 この作品はそのリアルさもさることながら、二つの点において一際優れている。
 まず一つ目は、登場人物が全員「上品」であることだ。
 精神病院というある種の「異質な空間」が舞台となっている中において、「悪」や「偽」はなく、誰もが懸命に「生きようと」あるいは「職務を全うしようと」している。
 読んでいて非常に「品」を感じるのである。
 そして二つ目に、精神病院と博物館をパラレルに描いたことである。
 この対比は主人公・榊医師の心理描写と一致する。
 つまり、初めは「科学的心理学」の立場をとり、精神分析に対して懐疑的な主人公が、次第に「美術」という「非科学的」な分野と接触を持つようになるのである。
 このような「解釈」を榊医師は嫌うかも知れないが、このような解釈がかすんでしまうほど
 名著である。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010
No.60
(4pt)

「多重人格」さえ無ければ

精神医療に真摯に取り組む一人の精神科医を主人公にして、その精神科医が総合失調症や境界性人格障害と闘う姿と、東京都博物館における真贋騒動をカットバックで描きながら、両者を見事な線で結び付けると言う構想力豊かな作品。真贋の謎が、主人公の前任者の不慮の死の謎と密接に関係する辺り巧みだと思う。
また、冒頭から披露される精神医学に関する作者の勉強量・知識の豊富さには感心させられる。本書に対する作者の力の入れ方が分かる。ある意味、"虚しい闘い"である精神医療の現実が良く表現されている。しかし、「多重人格」が出て来る時点で幻滅させられた。本書で「多重人格」を登場させる必然性があったのだろうか ? 本書が刊行されたのは2003年だと思うが、現在の精神医学では「多重人格」なる概念は完全に否定されている。
「多重人格」なるものは「患者と精神科医とが共謀してデッチ挙げたもの」というのが定説だ。主に精神科医の功名心による所が大きいと言う。本書中でも、その危険性は指摘されているのに...。「多重人格」を敢えて取り上げなくても、例えば登場人物を境界性人格障害としても、話の大筋は変らなかった事を考えると、作者が何故「多重人格」に拘ったのか理解できない。これを除けば、精神医療を真っ向から見据えた重厚な作品でありながら、真贋騒動とアクロバティックな融合を図った傑作。
症例A Amazon書評・レビュー: 症例Aより
4048732315
No.59
(4pt)

「多重人格」さえ無ければ

精神医療に真摯に取り組む一人の精神科医を主人公にして、その精神科医が総合失調症や境界性人格障害と闘う姿と、東京都博物館における真贋騒動をカットバックで描きながら、両者を見事な線で結び付けると言う構想力豊かな作品。真贋の謎が、主人公の前任者の不慮の死の謎と密接に関係する辺り巧みだと思う。
また、冒頭から披露される精神医学に関する作者の勉強量・知識の豊富さには感心させられる。本書に対する作者の力の入れ方が分かる。ある意味、"虚しい闘い"である精神医療の現実が良く表現されている。しかし、「多重人格」が出て来る時点で幻滅させられた。本書で「多重人格」を登場させる必然性があったのだろうか ? 本書が刊行されたのは2003年だと思うが、現在の精神医学では「多重人格」なる概念は完全に否定されている。
「多重人格」なるものは「患者と精神科医とが共謀してデッチ挙げたもの」というのが定説だ。主に精神科医の功名心による所が大きいと言う。本書中でも、その危険性は指摘されているのに...。「多重人格」を敢えて取り上げなくても、例えば登場人物を境界性人格障害としても、話の大筋は変らなかった事を考えると、作者が何故「多重人格」に拘ったのか理解できない。これを除けば、精神医療を真っ向から見据えた重厚な作品でありながら、真贋騒動とアクロバティックな融合を図った傑作。
症例A (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 症例A (角川文庫)より
4043690010