オリンピックの身代金

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オリンピックの身代金の評価:

4.15/5点 レビュー 176件。 A ランク

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平均点4.15pt

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全208件 201〜208 11/11ページ
No.8
(4pt)

『最悪』『邪魔』の奥田英朗シリアス路線。熱い「昭和」を活写した傑作

『最悪』『邪魔』の奥田英朗が帰ってきた。’04年の第131回直木賞受賞作の『空中ブランコ』をはじめとするユーモア路線の作品もそれなりに良いが、やはり私はシリアスな奥田英朗を待っていた。本書は期待を裏切らない、1400枚にも及ぶ社会派サスペンス大長編であった。
昭和39年夏、アジアで初開催の東京オリンピックに沸き返る東京で、警察を狙ったテロリストによる爆破事件が連続して起こり、脅迫状が届いた。事件はオリンピックという大事業を目前にひかえて、国民にいらぬ動揺を与えないよう事実報道は伏せられ、極秘に、しかし大量に捜査員が動員されて大がかりな国家の威信をかけた捜査が始められる。公安警察も独自に動き始める。
これは、プロレタリアート革命を信じるひとりの東大大学院生が、オリンピック開催に際しての、支配層と被支配層の矛盾に怒りを覚えて、東京オリンピックそのものを人質にとって8000万円の身代金を要求して国家に挑んだ反逆ののろしだったのである。
物語は主に犯人側の島崎国男の章と警察の捜査側の章が、時間をさかのぼったり戻ったりして交互に描かれる。読みどころは、捜査側の刑事課と公安課との綱引きとか、徒手空拳の島崎が大それた犯罪を思いついて実行するに至る経過とか、警察対島崎の戦いとか、色々あるが、やはりなんと言っても一番は、敗戦後19年、この東京オリンピックを契機に高度経済成長期へと突き進む直前の「昭和」を、この小説が圧倒的なスケールと緻密な描写で活写していることだろう。
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4048738992
No.7
(5pt)

たいしたモンだべ

言わずと知れたトンデモ精神科医伊良部シリーズの作者による、社会派サスペンスである。これがとんでもなく、いい。
昭和30年代半ば、日本は高度成長のきっかけを東京オリンピックに見出そうとしていた。
秋田県の貧農出身の東大生島崎国男が、出稼ぎ労働者の兄の死を乗り越えられずに怨念を東京オリンピックに収斂させていく。彼を取り巻くように、警視庁の刑事、相棒となる老スリ師(「師」というのもなんだかなぁ)、東大で同期だったテレビマンなど登場人物が、当時の様々な社会の断面にはめ込まれていく描写は、さすがである。
特にラスト、オリンピック開会式が整然と進行している最中、観客席の下では、落合警部補と島崎の対決に向けて臨場感あふれる描写で、まるで映画監督マイケル・マン(「ヒート」や「ローニン」など)の映画を観るようなスピード感と臨場感で一気に読ませる。
また、対決が終わった後で、落合警部補の子供が無事生まれた知らせを受ける場面では、思わず涙腺がゆるんだものだった。
丹念な時代考証を経て、昭和30年代の熱気がいっぱいに詰まっている快作である。スポットライトの当たらない側面で、文字通り命がけで働く出稼ぎ労働者や在日問題、左翼運動、警察機構の縦割り社会の様子など、当時の様々な要素を織り込みながら、東京オリンピックの闇と光を凝縮した一冊である。
織田裕二(落合警部補役)主演で、ぜひ映画化して欲しいと思うのであるがいかがか。
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4048738992
No.6
(4pt)

今回もおもしろく読めた

 登場人物ごとに場面を分けて話を進める独特の書き方で、奥田氏の小説を読みなれている者にとっては、たいへん読みやすい描き方である。ストーリー展開のテンポもよく、いつもながらうまさを感じる。
 時代背景が東京オリンピックのころで、競技場やその周辺の突貫工事(ちょうど北京五輪のような)に携わる出稼ぎ労務者の過酷な労働がストーリーの大部分を占めている。折りしもプロレタリア文学の『蟹工船』がブームとなっている今、作者はきっとそれを意識しているに違いないだろう。昭和の『蟹工船』を描きたかったのだとすれば、時流に迎合しているようで、ちょっと興ざめした。その分★1つ減。
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4048738992
No.5
(4pt)

あいかわらずウマイと思う。

国家の威信をかけたオリンピックといえば、08年の北京オリンピックもそうだが、奥田英朗がこの作品を執筆する動機にこの北京オリンピックの存在があったのだろう。
彼の作品を読んでいつも感じるのは、物語が佳境に入ったときのスピード感、後味の良さ、職人的な上手さ、そして読者に決して損はさせないというコストパフォーマンスの高さだが、この作品にもそれを感じる。
正直、中盤までは読んでいてかったるい感じがしたのと同時に、登場人物(主人公の島崎も含めて)のキャラクター設定もこの時代を象徴する人物像のような気がして、いまいちのめり込むができず、ページがなかなか進まなかったのだが、もう一人の主人公といえる村田と島崎の行動が表に出始めてからの展開以降からはイッキに読み終えた。
突飛なストーリーでもなく、ぶっ飛んだキャラクターも登場しないのに、時間軸を微妙に前後させる巧みな構成とわかりやすい文章で、誰でも楽しむことができる質の高いエンタメ作品に仕上げてしまう奥田英朗という作家はやはり実力がある。
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4048738992
No.4
(5pt)

著者稀な社会派サスペンスだが、文句なくお薦め!

年末も押し迫った折、奥田英朗、満を辞しての登場である。今回はなんとサスペンス、しかも読み進めてみれば、これがかなり本格的な社会派なのだ。
いきなりオリンピック直前に沸く60年代の東京の街並みが活写され、その時代考証ぶりに幼心が甦るが、物語はこの後、東京と秋田、千駄ヶ谷周辺と飯場ニコヨンと、まるで正反対の“世界”が交互に描かれ、正に、富む者と貧しき者、繁栄する側と取り残される側、高度経済成長期に於ける光と影が照射される展開となる。
選ばれた存在でありながら、社会の不平等と一極集中する富の理不尽さに怒り、孤高の闘いを挑む犯人。粗悪なヒロポンの打ちすぎで命を落とした人夫仲間の葬儀に郷里の貧村から出てきた女性の「東京は祝福を独り占めしている」との諦感の言葉に、「そんな事はさせない」と語るその確信的思い。
犯罪を実行していく者と検挙に奔走する者、タイムラグを保ちながら進んでいく両者の攻防が、クライマックスを迎えるに連れ狭まり、ついに合致、対峙する構成がスリリングでお見事。
戦争の傷痕も窺わせながら、世紀のイベント開催に自信と希望を湧き起たせる庶民の高揚感と、その陰で取り残されていく者たちの無念さ、これが奥田なりの高度成長期の昭和史の風景なのか。
ジャンルは違うが、映画「天国と地獄」や「新幹線大爆破」を想起させる面白さだが、それでいて、いかにも奥田らしいユーモアのセンスはここでも健在。
様々な要素が盛り込まれ、読了後も幾多の思いが胸をよぎる力作、奥田ファンならずとも文句なくお薦め。
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4048738992
No.3
(4pt)

奥田流の昭和史はどこか楽天的だ

『サウスバウンド』で見られた昭和への憧憬は本作にも引き継がれ、高度成長期の闇の部分をも活力に転換して描写する、熱いドラマになっています。犯人側と刑事側の両者の視点で描きこんでいるのですが、時系列をずらしたことにより、展開の一部分が読者に隠されたまま推移して、それがミステリ的な謎としても機能しています。だから次から次へとページを繰る手が止まらない。
全体のトーンとしては、例えば黒澤明のモノクロ映画を見るようなかっちりしたリアリズムというより、『三丁目の夕日』タイプの、現代からの視点で再構築したノスタルジー香る筆致で、そこに奥田英朗の持ち味が出ていると思います。
しかしながら、細部の流れ、特に犯人に有利に働く展開が、昔の話だからというご都合主義に甘えておらず、ちゃんと納得できるだけの人物なり環境なりの描き込みがしっかりなされている、そこは本当に凄いと思いました。スリのおっさんがまたいいキャラなんですよねぇ。
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4048738992
No.2
(4pt)

「日常」と「非日常」の対比によるサスペンス。

 昭和39年の東京。
 オリンピックに間に合わせるための突貫工事で、出稼ぎに来ていた兄を
失った東大大学院生の島崎は、遺骨を受け取りに兄が暮らしていた飯場を
訪れた。
 マルクスを専攻していた島崎は、わずかな賃金で働き、明日への希望の
見えない末端の労働者の現実を目の当たりにして、自分も出稼ぎの人々と
一緒に働く決心をする。
 過酷な労働を続けるうち、オリンピックに疑問を抱いた島崎はひとつの
解決方法を見出すのだった。
 島崎の視点と、彼を取り巻く普通の人びとの視点を交互に描き、日常を
描くほどに島崎の視点がきわだってくる、という手法が面白い。
 あの時代、戦後はもう終わったといいながら出稼ぎに明け暮れる貧困が
あり、ニコヨンと言われた現場労働者の生活は当時も変わりなく引きずっ
ていた。
 確かに、ビルが建ち高速道路はでき、国産自動車が走るようになったが、
社会が変わったわけではなかったのかもしれない。
 それを言い出すと、人の営みは未来永劫変わらないことにはなるのだが。
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4048738992
No.1
(5pt)

一番じゃないかなぁ。

奥田作品で一番いいと思います。私は東京オリンピック以降に生まれたため、当時を知りません。この作品により当時の雰囲気を少し味わうことが出来ました。ストーリーに関しては、驚くような展開があったわけではありません。しかし、場面ごとに感動や憤りなどを感じることが出来る構成を気に入っています。そして、著名人や名車などの小ネタなども効いていて読み易く感じました。ラスト、物足りなさも感じるかもしれません。が、犯人側と警察側の心情もラストを迎えるまでにしっかり描かれていると思いますし、国が一つとなってオリンピック開催に向かった圧倒的な力を表現したのではないかと思いました。
オリンピックの身代金 Amazon書評・レビュー: オリンピックの身代金より
4048738992