怪奇小説日和: 黄金時代傑作選
評判
怪奇小説日和: 黄金時代傑作選の評価:
3.50/5点 レビュー 6件。 C ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1〜3 1/1ページ
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怪奇小説日和: 黄金時代傑作選の評価:
3.50/5点 レビュー 6件。 C ランク
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本書の巻末にある「怪奇小説考」の「怪奇小説の黄金時代」の479頁「怪奇小説の分野で黄金時代という言葉を最初に用いたのは、アンソロジストのフィリップ・ヴァン・ドーレン・スターンであるらしい。~、一八九八年から一九一一年までの十四年間を怪奇小説の黄金時代と命名している。」とあり、480頁に「黄金時代というものを無理矢理仕立てあげる必要はないだろうが、あらためて考えてみると、この<本書の>アンソロジーに収録した作品はまぎれもなく黄金時代に属しているという印象がある。~。~、ここではひとまずゴシック・ロマンスとモダン・ホラーのあいだの期間に現れたものと考える。」
そして本書の「怪奇小説日和」にはこれらの時代の物が以下18作収められている。
うち11作は本書編者の西崎憲の訳で、ほか2作が西崎憲と他者との共訳である。5作が他の者の訳である。以下に記したように著者にノルウェー人が一人いるが、以上のことから本書の著作の全ては英文と思われます。
〇墓を愛した少年7 作フィッツ=ジェイムズ・オブライエン Fitz-James O'Brien アイルランド生まれのアメリカ 1862年没 訳西崎憲
〇岩のひきだし15 作ヨナス・ラウリッツ・イデミル・リー ノルウェー Jonas Lauritz Idemil Lie 1908年没 訳西崎憲
〇フローレンス・フラナリー34 作マージョリー・ボウエン Marjorie Bowen イギリス 1952年没 訳佐藤弓生
〇陽気なる魂22 作エリザベス・ボウエン Elizabeth Bowen 英国系アイルランド 1973年没 訳西崎憲
〇マーマレードの酒14 作ジョーン・エイケン Joan Aiken イギリス 2004年没 訳西崎憲
〇茶色い手27 作アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle イギリス 1930年没 訳西崎憲
〇七短剣の聖女21 作ヴァーノン・リー Vernon Lee イギリス(大半をイタリアですごす) 1935年没 訳西崎憲
〇がらんどうの男22 作トマス・バーク Thomas Burke イギリス 1945年没 訳佐藤弓生
〇妖精にさらわれた子供15 作ジョセフ・シェリダン・レ・ファニュ Joseph Sheridan Le Fanu アイルランド 1873年没 訳佐藤弓生
〇ボルドー行の乗合馬車5 作ロード・ハリファックス Charles Lindley Wood, Viscount Halifax イギリス 1934年没 訳倉阪鬼一郎
〇遭難39 作アン・ブリッジ Ann Bridge アメリカ 1974年没 訳高山直之・西崎憲
〇花嫁26 作マシュー・フィップス・シール Matthew Phipps Shiel イギリス 1947年没 訳西崎憲
〇喉切り農場8 作ジョン・デイヴィス・ベリズフォード John Davys Beresford イギリス 1947年没 訳西崎憲
〇真ん中のひきだし26 作ハーバード・ラッセル・ウェイクフィールド Herbert Russell Wakefield イギリス 1964年没 訳西崎憲
〇列車69 作ロバート・フォーダイス・エイクマン Robert Fordyce Aickman イギリス 1981年没 訳今本渉
〇旅行時計10 作ウィリアム・フライアー・ハーヴィー William Fryer Harvey イギリス 1937年没 訳西崎憲
〇ターンヘルム30 作ヒュー・シーモア・ウォルポール Hugh Seymour Walpole イギリス 1941年没訳西崎憲・柴崎みな子
〇失われた船11 作ウィリアム・ワイマーク・ジェイコブス William Wymark Jacobs イギリス 1943年没 訳西崎憲
なお題名の後の数字はそれぞれの短編の頁数をカウントし、自ら独自に付記したもの。
参考であるが、英語版に記載はあるが、日本のウィキペディアに掲載されていない者は以下の8名でした。マージョリー・ボウエン、ヴァーノン・リー、トマス・バーク、ロード・ハリファックス、アン・ブリッジ、マシュー・フィップス・シール、ジョン・デイヴィス・ベリズフォード、ハーバード・ラッセル・ウェイクフィールド。
一冊読むとお腹は一杯になります。一頁で縦39文字(14.8センチ)に横17行(10.5センチ)の、読点の後に改行されてスペースが置かれることは殆どなくびっしりと文字で埋め尽くされて、あとがき等を含めて513頁(厚さ1.9センチ)。18名もの作者の作品が収められているから満腹感が得られるのだろう。でも何処から読んでもよければ、一冊最後まで読み切れる。読書の不慣れの者にはその量に完読は難しいかもしれない。が、各話の前に一頁分の作家の紹介と解説が個別に付記されているので、それを参考にして好きなところから読むのも良いだろうし、頁数の小さなものから読むのも良いだろう。
普通、作者は自分の生きた時代を背景に作品を書いている。のであれば、作者の没年からおよそ作品の時代のが推定ができる。4名が第二次世界大戦以降生きながらえてるものの、前述した「黄金時代」からだろう、小説の舞台はいずれも現代ではない。1914年は第一次世界大戦勃発の年であるが、その辺りを見当とし推測した。
ところで、「怪奇小説日和」という名前から「怪奇」を期待してがっかりするかもしれない。中にはどこが「怪奇」なのだろうと思われるものもあって(ただし読者の感じ方はさまざまだが)、「怪奇」という言葉は、前述した「モダンホラー」の類推の結果からくるのかもしれない。むしろ前時代の「文学」という点に視点を置いた読書の方が好いのかもしれない。
巻末にある「怪奇小説考」の「怪奇小説の黄金時代」の486頁に「~十八・十九世紀の英国にかぎったわけではない。江戸時代の百物語の隆盛『甲子夜話』『耳嚢みみぶくろ』などといった書物がゴシップないしはエピソードを集めた書物であったこと、曲亭馬琴の諸国の珍しい事物を集めた『耽奇漫奇』、~」とあったように、こういった作品も今後は読んでみようかとも思った。
最後に、本書「怪奇小説日和」の18作のうち「失われた船」が一番面白かった。訳者は464頁で「御覧の通りの神韻縹渺たる傑作である。」と記している。21頁分ある「七短剣の聖女」は解説本文にあるように「幻想に傾いた」ということからか重厚に訳したこともあってだろうか読み難かった。一方一番長い69頁分の「遭難」はすんなりと読めた。