苦役列車

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評判

苦役列車の評価:

3.84/5点 レビュー 276件。 C ランク

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全370件 341〜360 18/19ページ
No.30
(5pt)

文章力がすごい

彼の文章の素晴らしさ、語彙の豊富さは、ちょっと真似のできない熟成されたレベルだと感じる。

話の筋自体はすごく単純だ。
しかし著者のいう苦役とは何も港湾荷役の仕事自体を指しているのでは無いのは明らかである。

普通の人なら脱出することがそれほど困難でもないにもかかわらず、
自らの生い立ちやそれによる狷介で攻撃的な、それなのにプライドが高い性格などの要因が作用して、
そこから脱することのできない貫多の現在の境遇そのものを指している。
だから何も大きなことは起こらないし、淡々とダメな日常生活が続く。
しかしこれこそがこの作品のキモだと思う。

つまり、淡々としたダメな日常的なストーリーだからこそ、
著者の豊富な語彙力や文章力によって読者を一気に引き込む。

何も発想力だけが小説じゃない。
小説に華々しさや荒々しさなどのアイディアだけを求める人こそ偏ってはいないか。

未来や過去を行き来するような未来的な話も小説なら、
こういう古臭くて何もできないダメ人間のくすぶった話だって小説だと僕は思う。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.29
(5pt)

旺盛な食欲

もう読んで何日か経つのだけれども、天丼をかきこんで、
そばのつゆを最後の一滴まで飲み込んで、やっと人心地つく、
という食いっぷりが忘れられない。
思い出してはニヤニヤしてしまう。

労働で汗を流した後の飯のうまさは、やっぱり格別だよな
と肉体労働のバイトをしていたころを思い出した。(港湾労働ではなく物流系だけど)
三ツ矢サイダーも美味そうなんだよな。

星4ってとこだけど、ご祝儀も兼ねて、星5で。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.28
(4pt)

その存在が他人を救う

小説、ましてや純文学とは無縁の私ですら、この「苦役列車」は面白くスラスラと読めてしまった。同じ平成という時代を生きる一人のダメ男として、似たようなコンプレックスや願望を持ち、似たような行為をする主人公、北町貫多に素直に共感する所が多かったからだろう。一方で著者の西村賢太氏がインタビューで「自分よりダメな人間がいると思ってもらえれば・・・」と語っていた通りに、「いくら私がダメ人間とはいえ北町貫多よりは余程ましだ」という上から目線で安心して、半分面白がりながら「ほんとにこいつ(北町貫多)はしょうがないなー」と他人事のように読めた事もあるだろう。
 もう一つの小説「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、文学賞というものを散々コケにして、文学賞を欲しがる作家を俗物扱いしながら、実は北町貫多自身が誰よりも文学賞を欲している一番の俗物だったということを恥も外聞もなく告白している。
 このような読みやすい(「読みやすい」というのは西村氏の優れた技量による)純文学の私小説作家の存在は貴重である。読者が抱えている他人に対する卑俗なコンプレックス、嫉妬、妬み、厭らしさなどを吸収し、その代わりにカタルシス、自己の存在の安心感というものを読者に与えてくれるからだ。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.27
(4pt)

汗の匂いと熱気を

正直、作者の経歴に興味を持ち読みたくなった本だった。
もう一方の文学一家に育ちきっと何の不自由もなく育った「お嬢様」作家とかことごとく違った作品だ。
ある意味殺人と同じくらい忌み嫌われている「性犯罪」を犯した父を持ち、母からも愛を受ける事なく育った作者のただひねくれた性格から
起こった出来事なのだからそれこそ「自己責任」の一言で終わるものかも知れない。
しかし、作家として「書きたい」という思いと「作品」の中には熱すぎる熱気と汗と泥臭さがドン!と読む側に伝わってくる。
その臭さがまったく嫌な感じがしなかったのが不思議だった。
また次の「作品」を読みたいと思わせる十分な「作品」だと思う。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.26
(4pt)

芥川賞受賞を言祝ぐ

本書には、芥川賞受賞で話題になった表題作ほか1篇が収録されている。その「苦役列車」の方は、まずまず期待していた通りのおもしろさであった。こぢんまりとはしているが、最後にやはり藤澤清造の名が出てくるところなど、演出もうまく利いていて、小説として体よくまとめられていると思った。また、わずか40頁ほどの「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の方もなかなかよい。古本を買うシーンが出てきて、こういうのは古本好きにはたまらない。主人公が買う本がまたシブくて、唸ってしまった。

さて、西村賢太の魅力は、何といっても自分の言葉を持っているところにあると思う。この作家にしか使えない言葉があるのだ。あまり馴染みのない語彙や言い回しがそこには多く含まれ、辟易する読者もいるかもしれないが、作家の固有性はまずその言葉にこそ表象されるものである。それらは何も奇を衒って使われているのではなく、長い年月をかけて熟成させ血肉化してきた言葉なのだ。他に名を挙げれば、野坂昭如、車谷長吉、町田康なども同列に並べることができるかもしれない。私はこういう作家たちを大切に読んでいきたいと思う。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.25
(4pt)

そこはかとなく感じられる「おかしみ」

芥川賞を受賞作をいち早く読むという習慣もなく、『KAGEROU』のような
話題作にもまったく食指が動かない私のような人間でも、授賞式の記者会見で著者
を初めて知って以来、読まざるを得ない気持ちになった。この著者は小説を書か
ざるを得ない人だということが直感的に伝わってきたから。

私小説であるというその内容は、罪なき罰を背負った青年の、孤独と不満と諦念
の入り混じった塩辛い日常を淡々と描いたものである。もちまえの過剰な自意識
がこの青年にことさらに卑屈な態度をとらせ、せっかくできた友人も遠ざかって
いく。かといって青年は一念発起するわけでもなく、凶悪犯罪に走るでもなく、
自分を罵ったり、他人を妬んだり、もうどうでもよくなったりしつつ、日雇いの
仕事と居酒屋と風俗店のループから出ることなく日々過ぎていく。

暗くて後味の悪い小説を予想していたが、意外にも、その独特な文章からは「お
かしみ」が滲みでていて、深刻になりすぎないよう絶妙にコントロールされてい
る。語り口を変えれば、「未来を閉ざされ、友も恋人もなく、単純労働で日銭を
稼ぐ毎日」という設定のこの物語も、随所で笑えるドラマやマンガにさえなるよ
うな気がした。その「おかしみ」は、この本に収録されている短編、「落ちぶれ
て袖に涙のふりかかる」でも存分に発揮されている。著者は、尊敬してやまない
藤澤清造の作風を「滑稽だけど悲惨味もある」と評しているが、この小説は、
「悲惨だけど滑稽味もある」ふうに仕上がっている。私小説が日記や自伝と違う
のは、自分の人生や経験なりをあくまで第三者的に見て、読者目線で構成しなお
し、悲惨さなり滑稽さなりで入念に味付けをしているところだろう。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.24
(5pt)

悲しいときに元気がでる

辛い体験をユーモラスに書いてあって、読んでて元気になった。とても良かった。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.23
(4pt)

人間の欲求の果てに

西村さんの私小説を読み、肉体労働者の方たちが訴えるような社会主義・左翼的発言がないことから、このひとは私小説を書くにふさわしい方なのだと思いました。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.22
(4pt)

しょうもない、でも愛すべき男の話

読んでいて何度も、「ほんと、しょうもないな〜」
とつぶやかずにはいられない、
そんなしょうもない19歳の男の話だか、なぜか最後まで
一気に読んでしまい、終わりには愛着まで湧いてくる
そんな不思議な小説だ。

主人公は19歳の男の子。中卒で、日雇いとして働いている。
過去に父親が性犯罪を犯し、引っ越しをしたりして友達と呼べる
存在もなく、日雇いもただその日を食いつないでいくための
手段。夢も希望もなく生きている。
そんなある日、日雇いの仕事中に同年代の、久しぶりに
友達になりたいと思う男の子と出会う。彼に触発され、主人公は
持ち金がなくなれば働く、というスタンスから、毎日のように
働くようになるのだが…

しょうもない彼の、しょうもない話です。
でも、やめられない。
そして、なんか文体がいいのです。古風な文体と言葉遣い。
こんなしょうもない小説、あっていいと思います。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.21
(4pt)

現代無頼私小説家

知り合いになったらすごく付き合いにくそうな人である。ほぼ事実を書いた私小説だという。自分を卑下しているようでいて、どこかで他者を見下している。コンプレックスというのはそうしたものだろうが、それにしてもめんどくさい人だ。
 中学校卒業以来その日暮らしの肉体労働をしてきたという暮らしぶりには圧倒される。そしてそんな無為な日々をやりすごしながら、どこかで一発逆転を虎視眈々と狙っている風でもある。
 かくして、このように有名作家となったなったわけだから、人の一念というのは大したものだ。車谷長吉(近作は私小説ではないが)と双璧を成す現代の無頼私小説家である。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.20
(5pt)

この作家の前に 襟をただしたい!

一気に拝読しました。 ほんものの 紛い物でない作品に出会い グサッと 心に落ちて来ました。 生きることは 生きるとは、 今 この日本の若者に是非読んで欲しいと思いました。 無理なく自然体で 自分自身を見つめ対峙していることに、感銘を受けました。ご本人は劣悪な環境と言われていますが、 汚れを感じない、むしろ精神性の高さに脱帽です。芥川賞の全うさを信じました。そして選者の勇気に、日本の失われていない文化圏を感じています。この偉大な作家の作品を 眼を凝らして 読みたいと心から思いました。ありがとうございました。 古代紫
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.19
(5pt)

苦しさを鋭い感性で描いています

自分自身の苦しかった時期を思い出します。そして、これから先何度か再び経験することになるのだろうか・・・。ある意味暗くなりますが・・。
私小説ならば、芥川賞を受賞した後の華やかな人生劇場もぜひ書いて欲しい!ぱーっと明るく?
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.18
(5pt)

周りに読ませて感想を聞きたくなります?

受賞の報は「フーン」という感じでしたが、日曜の日経書評を読んで興味をもち、購入。
個人的には久々ヒットの小説。面白いです。

インパクト文章・ユーモア。笑ってしまいつつ主人公の病理心理が映す現代人の「普通」
に慄然としました。洒脱・・・という言葉の恐らく対極?粘着なのかアッサリなのか
名状し難い筆致で、ホラ!読みやがれ的にどうしようもないライフを読まされてしまう。。。
移動のあいまの1−2時間で読めてしまう小説ですが何とも言えない読後感:寂寥感・
焦燥感・絶望感が残ります。・・・ひとに読んでもらって反応みたくなります。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.17
(4pt)

面白いが、先が心配

環境そのものだけをみれば、貫多程度では、
まだまだ底辺には程遠い落ちぶれぶりだが、
若い身空(10代後半)であの境遇に置かれれば、
それはまるで行き先の決まった列車に乗った気分にもなるだろう。

そういう観点からすれば(つまり苦役が主観的なものだとすれば)、
ほとんどの人間が苦役列車に、一度は乗っているはずであり、
誰でも、この小説のどこかしらには、共感を覚えると思う。

ただ、今後のことを考えると、
己の体験が創作の源泉である以上、
ありきたりの生き方では、
面白味のある小説が生み出せないという点が、
この著者の限界であると思う。

無責任な取りまきや読者に乗せられて、
今後も破滅にひらめきを見出し続けるとしたら、
この著者はどうなってしまうのだろうか。
心配だ…。

同収されていた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」は、
貫多40代の話だが、確実に破滅の予兆はあると思うのだが…。
よくある私小説家のありふれた終わり方にならないことを祈る。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.16
(5pt)

私小説初体験

「私小説」というものを初めて読みました。
この小説はひねくれる要素満載の設定で飽きてしまいそうにも見えますが、
こちらの胸ぐらをつかんで離さない力強さがありひきこまれました。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.15
(4pt)

確かに私小説

こういう作品が文学なのかは僕は分からないが、
一気に押し込まれたような読後感がある。
とても印象的な作品だ。
私小説ってこういう小説なんだ、
ということが良く分かった。
私小説だから、
自分の境遇と照らし合わせるとか、
緻密な構成に感嘆するということは、無い。
作中人物のケガれネジれた根性を目の当たりにし、
ぐっと息を呑む。
そういう「娯楽作品」。
ゾンビ映画と同じかなと思う。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.14
(4pt)

ちょっと黒い

最近忘れかけていた、人間のどす黒い部分を感じた。登場人物に共感も反感も感じないが、自分はまだ大丈夫、まだやれる、という気がしてきた。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.13
(4pt)

これが受賞作であるのならば、もうとっくに・・・。

芥川賞受賞を心よりお祝い申し上げます。

とは言え、この作者が書いた、過去の候補作やその他の作品と比べて、今作がとりたてて優れた作品とは思えない。
むしろ、やや冗長で、プロットも内的緊張に欠けるのではないかというのが、私的な印象だ。
今作より精緻に構成された作品はいくつも公刊されていると、私には感じられた。

併せて収められた作品は、作家生活に入ってからの文学賞落選を巡るエピソード。
これを読んで、驚愕させられたことがある。作家生活を送る、今の「私」或いは「貫太」なる人物に、十代後半と比較して、人間的成長が全く感じられないのだ。
つまり、年齢を重ね、過去の経験を対象化し、作品に結晶化するという体験を積み上げても、人間的には成長できないということなのか。
或いは、作品のネタを拾うために、敢えて自ら成長を止め、だめな人間として自己劇化しているということか。
作品に追い越されたあとの人生はどうなるのか。

時間軸を遡ったり下ったりしながら、パズルのピースを埋めるが如く書き連ねられていく西村作品に、私は、私小説と実生活の連関に関わるある問題が存在するように思えた。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.12
(5pt)

これぞ文学

西村賢太氏の作品を全て十分に読み込んだ。その上での感想だが、これぞ文学、である。文学というものはどうしたって、作者の経験から描き出すもの。西村文学は、力強い独白で、傷だらけの数奇な生き方を文学として見事に昇華している。人間の弱さ、狡さ、したたかさから目を背けない作品群。こんなに夢中になれる作家と久々に出逢った。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.11
(5pt)

駄目な自分を巧く客観視した作品

西村氏の私小説は内容が凄過ぎる。
犯罪者となった父親、それに絶望し半ば投げやりな人生を送る自分の駄目さを客観視し巧く描いている。
怠惰な日常生活を送り、やりがいのない低賃金の仕事に甘んじている一方で、素敵な女性を欲し、その夢叶わず自慰にふける。
友人は極めて少なく、変にプライドは高い。
真に嫌になるような人生・人物であるがなぜか共感してしまう部分が少なくない。

芥川賞受賞の際に「私小説しか書く気がしない」とインタビューに答えていたが、作品の幅を拡げ今後も益々活躍して欲しい。
歴史に残る作家となる予感がする。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324