苦役列車

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評判

苦役列車の評価:

3.84/5点 レビュー 276件。 C ランク

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平均点3.84pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全370件 281〜300 15/19ページ
No.90
(4pt)

やみつきになるダメ男

中卒で怠け者で下劣でコンプレックスの塊。19歳の主人公貫多の特徴である。

私小説の中で躊躇なく露呈される彼の中流層に向けた見当違いの恨みの心情、勝手な妄想、狡猾さ。妬み、僻(ひが)み、嫉(そね)みが延々と連鎖する救い用のない考え癖。
良くもまぁこれだけの負の感情に終始囚われながら正常で居られるもんだと、感嘆さえ覚える。いや、正常で居られずに臨界点を越えた時は暴言と暴力となって迸り噴出するし、またその沸点が低いから周りは迷惑でしかない。

父親の性犯罪という大変な重荷を11歳から背負わされ、これまた沸点の低い母親に育てられた愛情に恵まれなかったという不遇は、中流層に対する僻みを醸成するに充分な温室だったとは思う。しかし両足に嵌められた重い鎖を自ら外す意思も脆弱で、ただただ、性の放出費用とその日食べるための日銭稼ぎを、気持が高揚したか経済が窮地の時だけに行う事から抜けられないのは全て自己責任。

まぁ、そんなことは彼は解っていて、殊勝になることも有るけど、ちょっとした外部からの刺激で殊勝さはとたんに引っ込み、開き直りがムクムクと頭を擡げる。
延々この連鎖だから救われない。

でも、この救い様の無い彼の言動から目が離せずについつい先を読んでしまうのは、彼が自分の代弁者でもあるからだと思う。僕らが平穏に日常を過ごすために心に蓋をしておく負の感情を、彼は思い切り迸らせ、言動で表す。自分を基準にした時に、彼はやり過ぎだろうと思える事には嫌悪を覚えるけど、同意出来る部分も多いにある。例えば怠け者根性とか。

ヒーローが活躍する勧善懲悪のストーリーで非力な自分に代わりヒーローが悪を懲らしめるとスカッとするのとは真逆にあるけど、貫多もまた大人の僕らが抑えている事を開き直って全開にしているので、代弁者なんだと思う。
なので、病みつきになるダメ男。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.89
(5pt)

実力が同時代の作家から抜きんでている

年を取ると読書は実用書ばかりになって純文学から遠ざかる

でも彼の「風俗」発言が気になって本書を読んでみて、感動して手が震えた

成功している人間はほんの一握り、もちろんだからこそ「成功者」は少なく、多かれ少なかれ著者のような鬱積した気持ちを抱えて生きているか

もしくは若い時分に無限に可能性があると思った自分が、実は落ちこぼれであった時の社会への妬み僻みを誰もが一度は抱えたのではないか

そんな思いを彼は文学の中に見事に表現している・・・

彼の本を読んでから純文学に目をむけようと2000年以降の芥川賞受賞作をあらかた読んでみた

その中での結論は

「彼は同時代の作家から実力が抜きんでている」
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.88
(4pt)

快作

150本近くのレビューがアップされ、その大半に目を通し、多くに感心した手前、もはや気の利いた新しいコメントは難しい。芥川賞受賞の標題作ほか1編を含む当文庫は1年前の刊行。石原慎太郎氏が小説家の肩書きで「魅力的な大男」と題する短い解説を書いており、そこには「成功がもたらすだろう生活の変質の中で、このしたたかな大男がさらに大きくなるのか萎縮するのかその変質に尽きせぬ興味がある」とある(170頁)。

 評者にも確かにそんな読後感があり、いま現在の作者の様子と最新作を知りたくなった(芥川賞受賞からしばらくした後、テレビのインタビューで、作者が「毎月々々銀行口座に100万円入ってくるんですから」云々と答えるのを見たことはあるが)。なお、当文庫の読後の第一印象は、時代に背を向けた若さの悲惨、自暴自棄がもたらす貧窮の苦渋、そして自らを客観視しようとするうえでの巧まざる諧謔といったところか。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.87
(4pt)

生きるってこういうこと

芥川賞受賞作品ではあるのだけど、
西村さんの授賞の際の発言などから女子供が読むにはどうなの〜?ってイメージでした。
でも、女の私でも面白かった!
自分の好きなタイプの小説とは真逆なんだけど、とまらなかったです。
文章もうまい。巧みな言葉のチョイスには思わずにやりとしてしまいます。

ガチの私小説だし、主人公が感じている生きにくさや葛藤が生々しい。
19歳貫太はダメなままで成長も反省もなく、何もなく終わるのがリアル。
そして「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」で40代になった彼を見て、
人生の目的を見つけ、身を削るように生きる姿に凄まじい生命力を感じた。
どこからだってのし上がれる。生きるって泥臭いものなのだ。
19歳から40まで彼はどんな生き方をしてきたのだろう。
それを想像するのも楽しいです。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.86
(5pt)

この作家の出発点

読了後、ドストエフスキーの『地下室の手記』を思い出した。
 自分自身のどうしようもなさを理解しながら、次々に、また不合理な行動をとっていく主人公・貫多。
 たとえ、一瞬に反省するにしろ、やはり、また、同じような、だめ人間の行動を反復していく...
 その様を、『苦役列車』となぞらえ、具体的に、克明に描き出す、西村氏の執念に脱帽した。
 西村氏の画期的な点は、私小説を、通俗化して見せた点にあるといっていいだろう。
 西村氏の私小説には、私小説が持っていた、芸術家を標榜する者たちの驕り、
 あるいは、共産主義的な政治性を有することなく、
 身近な文学として、提示されている。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.85
(5pt)

OK!

満足してます!面白い本で何度も読んでしまいました。また西村さんを読んでみたいと思いました。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.84
(4pt)

友達になりたくない主人公

日雇い労働の仕事場で仲良くなった日下部との友情を壊してしまうのだが、またこれが自業自得。
仲良くなって間もない日下部に半ば無理やり何万というお金を借りたり、
日下部に彼女ができたと知ったら、嫉妬し、自分から日下部の彼女も含め、3人で遊ばないかと
誘っておきながら、最終的には、日下部、彼女らに暴言を吐き、不快にさせるところなど、
実に大人げない。そんな主人公と距離を置いた日下部の判断は正しいだろう。
育った環境うんぬんより、人を妬むか見下すかしかできない人間は友達ができないのだなと勉強になった。
しかし、主人公の貴多は嫌な奴だが、妙に人間臭くて憎みくれない。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.83
(5pt)

かんた

西村賢太の作品は本作以外のものから読み始めた。
貫多を主人公とする私小説であり、いつもの西村節であると感じるのだが、
他作品よりはかなり文章が洗練されているように思う。
難漢字の類を多用され読み方のわからない場合が多いのだが、
ここはKindleを使って読んだのですぐに辞書が引けて便利ではあった。
難しい言葉は鼻につくのだが、この人は文章力がかなりある。
描写するのが上手なのである。

この作品は言ってみれば性根の定まらない10代の若者が主人公であり、
学歴もなく友もなく女もいない日雇いしか出来ない貫多の、とある日常を描いたもの。
日下部という男と知り合い、彼との交流の顛末を描いている。
私小説なんだから当たり前だが、別にどうでもいい日常を描いている。

だけど面白いのである。
何故かといえばそれはやはりこの作家の表現の巧みさに理由があるのではないか。
感情を表現するのが上手なのである。

表題作以外にもう一篇収録されているが、こちらも面白い。
40代の貫多のとある日常。
起伏があって感情に訴えるような場面があるような話でもないのだがやっぱり面白い。
この奇妙な面白さを味わうために、この作家の作品を読み続けたくなってしまう。

関係ない話だが、ハードカバーよりは安いが文庫版よりはちょっと高いKindle版の値付け、
ちょっとどうかと思うんだけどねえ。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.82
(4pt)

絶望的な前向きという逆説

アマゾンのレビューをちょっと覗いたら高評価ばかりでビックリ。
こんな時代だからこそこんな小説が受け入れられるのかなと。
どうしようもない人間のどうしようもない話。
まさにどん底って感じなんだけど、なぜか小説全体はどんよりしていないし、絶望的でもないし、前向きに読める。
それがこの小説家の素晴らしいところなんじゃないか。
やっぱり小説って言うのは、読み終えたあと何かしらのパワーをもらえるモノが良い小説家駄作かの基準だと思っている。個人的に。

また、小説は読者というか、人々の声を代弁するみたいなことをよく言うが、まさにこの小説はアマゾンのレビューやらを見ても圧倒的な共感を呼んでいる。
そういう意味でやはり芥川賞を受賞してしかるべきなんだろうな。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.81
(4pt)

本物だ

近年の芥川賞作家の中では、確立したスタイルを持っているという点で、
抜けているし、すでに本物だと思います。私小説にありがちな力みが無いのも、この作家の持続性を保証する気がする。題材は陳腐だが、それでも読ませるのも実力だろう。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.80
(4pt)

良かった。

芥川賞はだいたい読んでるけど、西村賢太は面白いんだよね。
ただ、どうしても毎回同じような感じはしてしまう。
これが芸風だからしかたないし、ぶった切りのアホの豊崎みたいに「これは毎回新しいんだ」という意見も、まあわからないでもない。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.79
(4pt)

西村濃度45%

先ず個人的なタイトルの考察を述べさして頂くと、「苦役」は北町貫多の自尊心、自己嫌悪、悪態な素行、等を全部ひっくるめて「苦役」としており、「列車」とはそれがこれからもずっと続くだろう、と云う至極後ろ向きな題だと私は思った。西村氏の作品の大きなテーマをここで掲げているように感じたのである。
今作は芥川賞受賞作として名高く映画化もされた、云わずもがな西村氏の代表作となった私小説であるが、これ以前から西村氏の著作を愛読してきた者としては「これじゃない」感が多分にあり、理由は迫力不足である。
確かに、面白さは健全であるが、如何せん淡々とし過ぎていると云うか、退屈な気がする。
当然この作から西村氏の私小説に触れる人がほとんどであろうけれども、これが西村氏の本領ではないことを大声にして言いたい。
これより面白い作に、「暗渠の宿」や「小銭をかぞえる」がある。私は「小銭をかぞえる」が現在までの西村氏の著作で一番面白いとおもっているのでお薦めだ。「苦役列車」で終わるのじゃなくて、「苦役列車」で始めてほしい。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.78
(5pt)

度胆を。。

久々に度胆を抜かれた作品である。
私小説は初めての体験であるが、ほぼ著者の経験をそのまま作品にしていると考える。(計算もあるだろうが。。)
正直、人間の赤裸々な暮らし、行動や考えをそのまま記述されると引いてしまうところがある。
男性ならニヤリとしながら読む場面も女性は引くであろう。
しかし正直面白い。これからも読み続けたい作家である。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.77
(4pt)

結句、立派な主人公

日常的に使われないような単語や言い回しが出てくるので、少し前の時代に書かれた小説を読んでいるような気分になった。結句ってなんだろうと、思わず辞書を久しぶりに引いた。
 主人公の貫多は勝手気ままで自堕落な生活を送っているように見えるが、私からみたらそういう生活を意志を持って選んでいる、発止とした青年に感じられる。
 家賃は平然と踏み倒し、その日暮らしの収入だけで良しとし、それでいて風俗へ行く分の貯金はきちんとしている。世間からはみ出した生き方は意志を持たなければ出来ない。だからこの青年は立派だと思う。社会の枠内から見ると、そんな自由さは真似できない憧れも感じるし、ダメ人間でもいつか何か起こるぞという、夢や将来も感じる。

 だけど併録されている「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の40代になった貫多は、なんだか情けない。腰痛持ちに文学賞の名声を神頼みで待つ始末で、ちょっとあたふたしているようで無様。行く末は孤独死かと思わせられる心細いこちらの貫多に、逆に私はちょっと共感というか親しみを感じた。なかなか面白い二編でした。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.76
(4pt)

私の中にもいる”貫多”

前々から読みたかった作品が文庫本になったので購入しました。

まず文学性と反権威を両立させたタイトルが秀逸。
そして中身も正統派の文学作品でありながら、鋭い爪と毒々しさを持った作品です。

10代の頃の貧乏なんて不幸でもなんでもありませんが、”貫多”が真に不幸なのは、
必死で働いてせっかくお金が入っても、しょうもない居酒屋や風俗で散財してしまう、
勤め先で待遇改善のチャンスがあっても理由ともつかない理由で棒に振ってしまう、
そんな非上昇志向な気質を持っていることでしょう。

そしてそのような気質は、なんとか人並みの社会人になった私の中にも間違いなくあり、
この作品を読んでいると、「私の中の”貫多”」に、暗い沼の底へ引きずりこまれるようで
怖い反面、心地よくもあるのです。

解説は石原慎太郎氏。いまや権威の象徴のような石原氏とこの作品は真逆のように見えますが、
氏のなかにもやはり”貫多”がいるとしたら、非常に健全だし心強いことです。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.75
(5pt)

ジャパンドリームか!最底辺からのし上がるこの猛獣をみよ!

主人公:北町寛多は、著者:西村賢太の単純変換だそうです。ということで、著者の私事をデフォルメ脚色したまさしく私小説。本書は、著者一連の寛多シリーズ?の一遍で、寛多19才明日無き青春編といったところ。芥川賞受賞作、映画化も決定した。氏の他の著作は大人になった寛多が表で文学趣味に没頭し家ではDVの両輪が痛々しく生々しいですが、本作はまだなにかほのぼのします。たぶんバブルピーク時崩壊直前のころと思われる。デズニーランドがオープンし、ディスコブーム、ポパイが売れ、大学はレジャーランドと化し、大方の若者は新人類とちやほやされ、合コンサークルとはしゃいで浮かれていた時代。その片隅にこんなやつがいたのかよっ。ストーリーではなく、著者独自の世界観を堪能するというか、これマジっすか?サイテーっスッゲーなどといいつつ、夢を求めましょうなどと言う文部省推薦の薄っぺらさでない、生きてる人間の生臭ささに圧倒される。驚愕と苦笑という複雑な感情を惹起させる作品なので、この本だけでは、はあ?でよくわからないかもしれない。他の著作も併せて読む必要あり。
 一連の作品のどの辺がフィクションかは著者のみぞ知るですが、著者曰く相当ノンとのこと。現実著者は性犯罪者の親、自身も暴力沙汰で前科持ち、学歴中卒、容貌醜悪、風呂も入らず衛生観念なし、女性は単に性のはけ口で、風俗通いは日常の重要関心事、肝心の人間性もネガティブかつ、自意識過剰という、社会的にも人間的にも破綻者。最近TVでよく見るが、暴言の数々は伝説的ともいえ、芥川賞授賞式における風俗発言を始まりとし、中でも「笑っていいとも」で、お昼時間にもかかわらず、風俗通いや女性蔑視の言行は、放送事故スレスレ、現場の女性客、日本中の良識ある人々を激怒させ、良識のない人々、下品な中高年男性を驚喜させた。著者によると、やっと得た異性のパートナーに些細なことでDVのあげく逃げられた。酒ぐせも悪く、暴言暴行も茶飯事だが、たいていは自分で起こしたトラブルの返り討ちにあうという情けない結末。また、関係した人々に小金を土下座で借金し、それを風俗で使い踏み倒す。風俗通いで、たまに相手に惚れたりすると、金をだまし取られたりする。著者は、まさしく社会的破綻者で、悪事をやってのける度胸はないが、カッとして殺人などおこして、殺意はなかったんですなどと主張しつつ刑務所に入る確率120%であろう人物だななどと周りから思われ、常識ある人々から関わらんとこなどと見られていたのだろうと想像する。
 しかし、そうはならず、この破綻者の著作が数々の賞をとり、現実受けて判を重ねているのは、自業自得のくだらぬトラブルと同列に、幸運の出会いや運も相当にあるという奇跡。さらにの注目は、人を楽しませるのが好きであったという、かの太宰治と同質のサービス精神が根底にある点。自身のだめ人間ぶりが、実は他人を喜ばせ楽しませるネタとしての価値に気づき、それを提供したいというサービス精神。そこにそれをうまく提供できる文才に恵まれるという希有なコラボ。そこにそんなものが世に出るなどけしからんと、常識ある人々が押さえつけたが、それがまさしくたまったマグマの大爆発ということになった奇跡。我々は、新たなる何者かの登場を見ているのかもしれません。ただ著者の成功や、調子に乗ってニヤニヤとTVで暴言を吐く著者を複雑な思いで見ているであろう、関わってひどい目にあった被害者?の方々、特に逃げた同棲相手の心情を思うと、今後、猛獣注意の看板、檻に入れての厳重管理は必要かも(笑。人目のないところで二人きりなど、絶対厳禁。
 著者にぞっこんで作品解説もしている石原慎太郎は、今後の活躍を期待しつつ、金も名誉も得た彼を逆に心配もしている。それを知ってか知らずか、著者は、私小説しか書けないので、今後は題だけ変えたようなモノを書くなどと、ファンをも愚弄するかの、さらなる暴言を重ねている。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.74
(4pt)

一気に読んでしまった

作者の他作品は未読。
身を削っている。
私も随分病んでいる。過半数の人が病んでいると思うが、その闇を作者のように表現し芸術にできる者はそういない。
後味はよくないがそんなことはどうでもいいことだ。
他作品も読んでみたいが、なかなか覚悟が要りそうだ。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.73
(4pt)

貧困と性欲と病気。自然主義の三大要素で出来た作品。

表題は『苦役列車』だが『苦役マイクロバス』っといったところか。

学歴も家庭もコネもない世をすねた少年が港湾労働に従事する話。現代版の蟹工船と言えるかもしれない。

現代の私小説というか自然主義作品、プロレタリア文学と言った趣である。

描かれるのは貧困と性欲と病気である。現代において、こんなにも私小説&自然主義作品の三大要素で出来上がった作品もめづらしいと思う。そこが今の読者には目新しく共感を呼ぶのだろうと思う。

文章がうまいという評判だが、プロレタリア文学などに見られる汚らしい表現が多く、潔癖症の人が読んだら眉根をひそめそうな感じである。その薄汚いところが小説の内容とマッチしていて読者を揺さぶるのだろうけれど、おおよそ漢文の素養から来る日本語の流れとは違うところにある文体である。これもある意味、名文ともいえるが。

主人公の『北町貫多』はまぎれもなく『西村賢太』氏で、氏に興味がある読者には堪らなく面白い小説だろうと思う。

しかし、私小説はいつか行き詰まるのは歴史が証明しているので、身辺を書き尽くしたあとが西村氏の正念場であろう。
これからも氏の小説的精進を見守りたいと思う。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.72
(5pt)

ダメ人間と言う言葉を文字に表したような本

普段から小説はほとんど読まないのですが色々な所で噂されてたんで、買ってしまいました。

読んだ感想は、作者は本当の「ダメ人間」をこの本一冊にまとめたかったんだなぁと個人的に感じました。
文章は本人の好みなのか又は単に作者が中卒と言うことから自分の頭の良さを見せ付ける為にわざと難しく書いているのか、いずれにせよ本の内容から自身の止められない欲とコンプレックスがにじみ出てくる作品でした。 劇的なクライマックスがある訳でもなくただ単に欲に負けてしまう自身の人生を分かりやすく説明しているかの様な内容ですが、 恐らく作者が自身のだめっぷりをとことん分かってもらう為に意図的に練りだした拘りの様な気がしました。 起承転結もさほど無く特に光る様なところもないが、最終的にはこの本の主軸に沿った自身の欲とコンプレックスに溺れる様を語るだけで見事に一冊の本にまとめてしまっている。 「コイツ本当にバカだなぁ(笑)」 という感じで読めば後味の悪い終わり方もダメな方向にしっかり完結している(笑)。

現代の「ダメ人間」という言葉を一冊の本に表す一つの芸術作品である事は間違いない、と思いますよ〜。
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324
No.71
(5pt)

阿部、西村、川上

阿部和重が好きだった。彼の作品が時代の最先端のような気がしていた。芥川賞よろしく、その人のピークから一歩遅れた作品に賞をあげてしまう。それが グランド・フィナーレ 。

5年後に西村賢太の作品を文芸誌で読んだ。「けがれなき酒のへど」だった。時代錯誤な私小説。だが圧倒的なリアリティがあった。
出自が同人誌というのも、彼らしい。いかにも雑草。比べれば阿部和重は「つくりもの」めいた感じがしてきた。
西村賢太が初めて芥川賞候補になったとき、けっこう衝撃だった。時代が動いた?感じ。

阿部和重と西村賢太。まったく作風もキャラも違うようなふたり。
でも実はほぼ同い年(1968年と1967年)。それにもびつくり。

が、合点がいった。
ニューアカや90年代のサブカルチャーを偽装してみせた阿部。
大正時代の私小説を平成の世に偽装してみせる西村。
どちらも文学ぶりっこ。

つーか、もうベタは無理で、文学やろうと思えば「ぶりっこ」しかない。
サブカルだろうと私小説だろうと。

しかしこのほぼ同い年の芥川賞作家。ふたりとも情念は(やっぱり)半端ない。だから作家、か。

にしても、このアマゾンで 苦役列車 と「よく一緒に購入されている商品」が川上未映子 すべて真夜中の恋人たち とは??
この川上が阿部の奥さんなのだ。

この「僥倖」をみなさんはどう思うだろうか?
苦役列車 Amazon書評・レビュー: 苦役列車より
4103032324