雷桜

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評判

雷桜の評価:

4.61/5点 レビュー 46件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.61pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全92件 61〜80 4/5ページ
No.32
(5pt)

せつなさ

公開直後の映画を見て、即、本屋に向かいました。

主人公の遊のなんとブッキラボウな事!
相手役の斉道の、なんと我儘な事! と思いつつ見ていると
徐々に雪が解けるように、それぞれの人物の芯が見えてくる。

遊と斉道をつなぐ人々の二人に寄せる思いが、時には怒りとなり
時には涙となり現れて、読者を「せつなく」させるのです。

本書では”二人だけ”についての描写は少ないけれど、それ故に
二人の会話が忘れられません。
斉道が遊に思いを遂げる時「許せ、遊」という・・・
この一言だけで、
その何十倍、何百倍の思いが伝わって来るようでした。

冒険物や歴史書的な物が好きな私ですが、一読後、即、読み返した本は
初めてでした。 是非、読んで頂きたい一冊です。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.31
(5pt)

せつなさ

公開直後の映画を見て、即、本屋に向かいました。

主人公の遊のなんとブッキラボウな事!
相手役の斉道の、なんと我儘な事! と思いつつ見ていると
徐々に雪が解けるように、それぞれの人物の芯が見えてくる。

遊と斉道をつなぐ人々の二人に寄せる思いが、時には怒りとなり
時には涙となり現れて、読者を「せつなく」させるのです。

本書では”二人だけ”についての描写は少ないけれど、それ故に
二人の会話が忘れられません。
斉道が遊に思いを遂げる時「許せ、遊」という・・・
この一言だけで、
その何十倍、何百倍の思いが伝わって来るようでした。

冒険物や歴史書的な物が好きな私ですが、一読後、即、読み返した本は
初めてでした。 是非、読んで頂きたい一冊です。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.30
(5pt)

もう一度読みたくなる作品

ドラマティックな展開に寝る時間を惜しんで一気に読んだ。

映画化になったことで小説の存在を知り購入。
ただの恋愛小説ではない、それぞれの思惑が交錯する読み応えのある一冊。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.29
(5pt)

もう一度読みたくなる作品

ドラマティックな展開に寝る時間を惜しんで一気に読んだ。

映画化になったことで小説の存在を知り購入。
ただの恋愛小説ではない、それぞれの思惑が交錯する読み応えのある一冊。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.28
(5pt)

切なすぎる...

読み終わった後も涙が止まらず、ずっとひきずってしまう作品に出会ったのは
初めてでした。

率直な感想は「せつな過ぎる」です。
庄屋の娘に生まれながらも、かどかわしにあって狼女のように育った遊という女性と
将軍の息子という地位に生まれついても、孤独で哀しい斎道という男性。
お互いに身分の差という越えられない壁はあっても
「側女(そばめ)になれ」と殿は遊を求めているし
遊は「殿がほしい」と思ってる。
お互いが純粋に愛し合っているのに
結ばれないことってあるのかな、理不尽じゃないかなと
ずっと涙が止まりませんでした。

血が湧き立つような恋、二人を見ているとそんな気がしました。

添い遂げられなかったけれど、たった一度結ばれただけで
二人は幸せだった、そう信じたいです。

二人を取り巻く人々が温かく、優しい気持ちにもなれました。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.27
(5pt)

切なすぎる...

読み終わった後も涙が止まらず、ずっとひきずってしまう作品に出会ったのは
初めてでした。

率直な感想は「せつな過ぎる」です。
庄屋の娘に生まれながらも、かどかわしにあって狼女のように育った遊という女性と
将軍の息子という地位に生まれついても、孤独で哀しい斎道という男性。
お互いに身分の差という越えられない壁はあっても
「側女(そばめ)になれ」と殿は遊を求めているし
遊は「殿がほしい」と思ってる。
お互いが純粋に愛し合っているのに
結ばれないことってあるのかな、理不尽じゃないかなと
ずっと涙が止まりませんでした。

血が湧き立つような恋、二人を見ているとそんな気がしました。

添い遂げられなかったけれど、たった一度結ばれただけで
二人は幸せだった、そう信じたいです。

二人を取り巻く人々が温かく、優しい気持ちにもなれました。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.26
(4pt)

私が未熟なせいでしょうか

宇江佐先生の作品は初めて、といか時代小説自体初めて読みました。1人1人が細かく、生き生きと描かれていたので話に入りやすく、どんどん読み進められました。
が、私があまりにも恋愛恋愛と期待したせいか、実際の二人の恋模様は一瞬で、前置きが少し長い気がしました。(そこがいいのかもしれないけど…)
長編だった割には遊の魅力もあまり書かれておらず、斉道の思いの変化もよく感じ取れなかったのが残念です。
とはいえ、その時代にタイムスリップするように引き込む技術は圧巻でした。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.25
(4pt)

私が未熟なせいでしょうか

宇江佐先生の作品は初めて、といか時代小説自体初めて読みました。1人1人が細かく、生き生きと描かれていたので話に入りやすく、どんどん読み進められました。
が、私があまりにも恋愛恋愛と期待したせいか、実際の二人の恋模様は一瞬で、前置きが少し長い気がしました。(そこがいいのかもしれないけど…)
長編だった割には遊の魅力もあまり書かれておらず、斉道の思いの変化もよく感じ取れなかったのが残念です。
とはいえ、その時代にタイムスリップするように引き込む技術は圧巻でした。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.24
(5pt)

純粋で一途なお遊に涙…。

乳飲み子の時に藩の確執によって拉致された庄屋の娘・お遊がヒロインです。
拉致に携わった親父様と云う男の手によって山小屋で育てられます。
お遊拉致後の当家の悲劇の様子にも胸が痛みます。

ある時武家に奉公していた次男が山越えの時にお遊を見つけ
山を下りて実家に戻る様に促しお遊15歳の時に実現します。
その時のお遊は馬(東雲という名前)に乗り
どこからどこまで垢まみれで恰好も物言いも男そのものの少女になっていました。
そしてお遊の実家(特にお母さん)の喜び様は大変なものでした。

そこから本格的なストーリーが始まります。
ある日、次男の奉公先の殿がお忍びで村を訪れます。
それと云うのも殿は今で云うストレス性の心の病気で
度々、攪乱を起こしては家臣を悩ませていたのです。

そして偶然ともつかない殿とお遊との出逢い。。
そのお遊の武骨で気取らない口調に殿はいささか面喰いますが
まんざらでないご様子。。
次第に惹かれ合う二人には立場上、身分上の避けられない別れが…。
殿は側室になれと遊に言いますが遊は誰か(この場合正妻)
が不幸になるのはいやだとキッパリ否定します。

離れ離れになった二人は各々の道を生きていくのですが
いつも心の底には殿には遊が遊には殿がいました。
最後のシーンはとても感動的です。
悲しい別れを受け入れた遊は助三郎と云う忘れ形見を得て幸せだったのだろうか…
としみじみ思いました。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.23
(5pt)

純粋で一途なお遊に涙…。

乳飲み子の時に藩の確執によって拉致された庄屋の娘・お遊がヒロインです。
拉致に携わった親父様と云う男の手によって山小屋で育てられます。
お遊拉致後の当家の悲劇の様子にも胸が痛みます。

ある時武家に奉公していた次男が山越えの時にお遊を見つけ
山を下りて実家に戻る様に促しお遊15歳の時に実現します。
その時のお遊は馬(東雲という名前)に乗り
どこからどこまで垢まみれで恰好も物言いも男そのものの少女になっていました。
そしてお遊の実家(特にお母さん)の喜び様は大変なものでした。

そこから本格的なストーリーが始まります。
ある日、次男の奉公先の殿がお忍びで村を訪れます。
それと云うのも殿は今で云うストレス性の心の病気で
度々、攪乱を起こしては家臣を悩ませていたのです。

そして偶然ともつかない殿とお遊との出逢い。。
そのお遊の武骨で気取らない口調に殿はいささか面喰いますが
まんざらでないご様子。。
次第に惹かれ合う二人には立場上、身分上の避けられない別れが…。
殿は側室になれと遊に言いますが遊は誰か(この場合正妻)
が不幸になるのはいやだとキッパリ否定します。

離れ離れになった二人は各々の道を生きていくのですが
いつも心の底には殿には遊が遊には殿がいました。
最後のシーンはとても感動的です。
悲しい別れを受け入れた遊は助三郎と云う忘れ形見を得て幸せだったのだろうか…
としみじみ思いました。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.22
(5pt)

「爽快感」満点のラヴ・ストーリー

何とも「爽快感」満点のラヴ・ストーリーです。

この「爽快感」がどこか来るのか考えてみると、主人公の遊の「潔さ」から来ているように思えます。
徳川御三家の側室になることを言下に拒否し、その落としだねである助三郎を一家の秘密にし一切語らず、斉道の想い出として育ててゆくと言う、その心根にある様な気がします。

作者は、そうした遊の人物造形のために、庄屋の一人娘が一歳の初節句に誘拐され、山の中で育ての親の手一つで育てられ、しかも里人との接触を禁止されると言う、非常に特殊な環境で育った「おとこ姉様」として描いています。
その男勝りの気性が、そうした「潔さ」に説得力を与えているように思います。

ラヴ・ストーリーとしても、二人の出会いと別れのシーンが実に美しく、唯一のラヴ・シーンとも言える馬上の接吻のシーンも綺麗に描かれています。

この小説の素晴らしさは、そうした人物造形・状況設定だけではなく、「謎」と伏線を張り巡らせた、完成度の高い作品と言うこともあります。

なかなか読後感の良い、素敵な小説でした。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.21
(5pt)

「爽快感」満点のラヴ・ストーリー

何とも「爽快感」満点のラヴ・ストーリーです。

この「爽快感」がどこか来るのか考えてみると、主人公の遊の「潔さ」から来ているように思えます。
徳川御三家の側室になることを言下に拒否し、その落としだねである助三郎を一家の秘密にし一切語らず、斉道の想い出として育ててゆくと言う、その心根にある様な気がします。

作者は、そうした遊の人物造形のために、庄屋の一人娘が一歳の初節句に誘拐され、山の中で育ての親の手一つで育てられ、しかも里人との接触を禁止されると言う、非常に特殊な環境で育った「おとこ姉様」として描いています。
その男勝りの気性が、そうした「潔さ」に説得力を与えているように思います。

ラヴ・ストーリーとしても、二人の出会いと別れのシーンが実に美しく、唯一のラヴ・シーンとも言える馬上の接吻のシーンも綺麗に描かれています。

この小説の素晴らしさは、そうした人物造形・状況設定だけではなく、「謎」と伏線を張り巡らせた、完成度の高い作品と言うこともあります。

なかなか読後感の良い、素敵な小説でした。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.20
(5pt)

映画公開が待ち遠しい

時代小説のロミオとジュリエット版が映画化される本に興味を覚え読破。号泣です。遊の愛しい人・斉道が37才の若さで亡くなった事を読んで知るとせつなさで涙が溢れて…。遊が瀬田村に残る選択は正しかったのか?斉道は遊のいない江戸の世界は幸せだったのかと…。斉道が亡くなる前に言った[遊はどこじゃ]の言葉が私の胸にぐっと突き刺さりました。純愛すぎます。今年の秋に遊を蒼井優ちゃん 斉道を岡田将生クンで映画公開されます。映像でたっぷりと堪能したいと思います。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.19
(5pt)

映画公開が待ち遠しい

時代小説のロミオとジュリエット版が映画化される本に興味を覚え読破。号泣です。遊の愛しい人・斉道が37才の若さで亡くなった事を読んで知るとせつなさで涙が溢れて…。遊が瀬田村に残る選択は正しかったのか?斉道は遊のいない江戸の世界は幸せだったのかと…。斉道が亡くなる前に言った[遊はどこじゃ]の言葉が私の胸にぐっと突き刺さりました。純愛すぎます。今年の秋に遊を蒼井優ちゃん 斉道を岡田将生クンで映画公開されます。映像でたっぷりと堪能したいと思います。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.18
(5pt)

「潔さ」の文学

私が時代小説に惹かれるのは、もはやこの世界でしか存在しないかもしれない「潔さ」にあるのだと思う。

この小説には、江戸時代を生きる人のきっぱりとした潔さが貫かれている。

嵐の晩にかどわかしにあって行方しれずとなった遊と、山で生き抜いていることを信じ抜いた家族の絆。

また、遊を育てた親父様のことは数行でしか語られていないが、その数行に親父様の壮絶で愛に生きた生き様を見ることができる。

兄弟の愛情、母の愛情、また、兄嫁の思い。

数奇な運命に翻弄された遊と、2つの藩の狭間で翻弄される瀬田村。

背景となるできごともうまく構成されていて、ドラマティックに物語は進んでいく。

一度きりの契りを交わした遊と殿の清らかな姿は、文章に描かれたように美しい名画となって迫ってくる。

文章も美しく江戸の凛々しい人間像がすばらしい。

映像化できたら、それも素晴らしいと思った。

この人の作品は初めて読みましたが、他にも是非読みたいと思う。

一力の「あかね空」以来の感動作品だった。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.17
(5pt)

「潔さ」の文学

私が時代小説に惹かれるのは、もはやこの世界でしか存在しないかもしれない「潔さ」にあるのだと思う。

この小説には、江戸時代を生きる人のきっぱりとした潔さが貫かれている。

嵐の晩にかどわかしにあって行方しれずとなった遊と、山で生き抜いていることを信じ抜いた家族の絆。

また、遊を育てた親父様のことは数行でしか語られていないが、その数行に親父様の壮絶で愛に生きた生き様を見ることができる。

兄弟の愛情、母の愛情、また、兄嫁の思い。

数奇な運命に翻弄された遊と、2つの藩の狭間で翻弄される瀬田村。

背景となるできごともうまく構成されていて、ドラマティックに物語は進んでいく。

一度きりの契りを交わした遊と殿の清らかな姿は、文章に描かれたように美しい名画となって迫ってくる。

文章も美しく江戸の凛々しい人間像がすばらしい。

映像化できたら、それも素晴らしいと思った。

この人の作品は初めて読みましたが、他にも是非読みたいと思う。

一力の「あかね空」以来の感動作品だった。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.16
(5pt)

澄んだ清水のような作品

一言で言うと美しい物語だ。数奇な人生を送る一人の女性の物語。恋愛物語でもあるが、この女性の人生の物語でもある。脇役もいい役割を果たしていて、ストーリーとしてもなかなか面白い。派手過ぎず、かといって淡々としすぎず、この作家は微妙で不思議な空気を持っている。なかなかいいバランスを作り出していると思う。描かれる山の風景が美しく幻想的であるばかりでなく、物語そのものが幻想的な余韻を残す。

とても繊細な作品だ。例えば最近僕が特に高く評価している宮城谷昌光は、人生を如何に生きるべきかという主題を正面において、ある意味哲学を論じている。非常に高尚だし自分の生き方を振り返ったり、ヒントを与えてくれるものだ。無論それは素晴らしいし、文学と言っていいレベルだろう。一方で、哲学であるからやはり堅い。真摯に生を見つめる厳しい姿勢に感動する。それはそれで僕は大好きだし、深く感動し人生を思うことはある充実感をもたらす。

しかし小説には色々なものがある。ハリウッド映画のような娯楽小説もあるし、淡々と雰囲気を味わうものもある。どきどきするサスペンスや推理小説もあれば、何気ない日常を描いて心を癒してくれるものもある。

この人の小説はとても繊細だ。女性ならではの繊細なポイントがあるのだろう。理屈じゃない、割り切れない、白でも黒でもない、でも確かに存在するポイント。それを表現するために作者の筆力が駆使される。説明的になりすぎず、ほのかな感情の機微や、心もとなさ、僅かな寂寥感、一瞬の笑顔。通り過ぎる一瞬の感情を見事に描きながら、しかも誰もがあこがれる永遠を描いてみせる。

純文学ではない。サスペンス調の味付けも入り、読むものへの期待を持続する。娯楽小説としても上質である。が、この本は娯楽小説ではない。その手法を排除しない作者の精神の自由が伝わるし、描かれた世界全体が清涼な清水のように読者の心を洗う。

読了感が良い。少し物悲しい切なさを伴ってしんみりとする。しかし透明で清廉な風が心の中を洗う様だ。ひとつの完成された世界を作り出しているといえるだろう。「凄く面白かった!」という感想ではなく、「ああ、これはいい作品だわ」と思う。この作品は長く心に残り、折に触れ記憶の中から蘇るだろう。甘く切なく、でも朗らかで愛おしい。そんな心象風景を読者に描かせるこの作品は名著と言っていいだろう。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.15
(5pt)

澄んだ清水のような作品

一言で言うと美しい物語だ。数奇な人生を送る一人の女性の物語。恋愛物語でもあるが、この女性の人生の物語でもある。脇役もいい役割を果たしていて、ストーリーとしてもなかなか面白い。派手過ぎず、かといって淡々としすぎず、この作家は微妙で不思議な空気を持っている。なかなかいいバランスを作り出していると思う。描かれる山の風景が美しく幻想的であるばかりでなく、物語そのものが幻想的な余韻を残す。

とても繊細な作品だ。例えば最近僕が特に高く評価している宮城谷昌光は、人生を如何に生きるべきかという主題を正面において、ある意味哲学を論じている。非常に高尚だし自分の生き方を振り返ったり、ヒントを与えてくれるものだ。無論それは素晴らしいし、文学と言っていいレベルだろう。一方で、哲学であるからやはり堅い。真摯に生を見つめる厳しい姿勢に感動する。それはそれで僕は大好きだし、深く感動し人生を思うことはある充実感をもたらす。

しかし小説には色々なものがある。ハリウッド映画のような娯楽小説もあるし、淡々と雰囲気を味わうものもある。どきどきするサスペンスや推理小説もあれば、何気ない日常を描いて心を癒してくれるものもある。

この人の小説はとても繊細だ。女性ならではの繊細なポイントがあるのだろう。理屈じゃない、割り切れない、白でも黒でもない、でも確かに存在するポイント。それを表現するために作者の筆力が駆使される。説明的になりすぎず、ほのかな感情の機微や、心もとなさ、僅かな寂寥感、一瞬の笑顔。通り過ぎる一瞬の感情を見事に描きながら、しかも誰もがあこがれる永遠を描いてみせる。

純文学ではない。サスペンス調の味付けも入り、読むものへの期待を持続する。娯楽小説としても上質である。が、この本は娯楽小説ではない。その手法を排除しない作者の精神の自由が伝わるし、描かれた世界全体が清涼な清水のように読者の心を洗う。

読了感が良い。少し物悲しい切なさを伴ってしんみりとする。しかし透明で清廉な風が心の中を洗う様だ。ひとつの完成された世界を作り出しているといえるだろう。「凄く面白かった!」という感想ではなく、「ああ、これはいい作品だわ」と思う。この作品は長く心に残り、折に触れ記憶の中から蘇るだろう。甘く切なく、でも朗らかで愛おしい。そんな心象風景を読者に描かせるこの作品は名著と言っていいだろう。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X
No.14
(5pt)

おとなのファンタジー

感動のために読後虚脱感にとらわれる本はめったにないが、久々にそれを味わった。
この作品は、宇江佐作品にはめずらしく、田舎の野山が中心の舞台となっている。
しかも、愛し合うふたりが、山で育った「狼女」とお殿様、それも将軍の息子という、
実に極端な設定。
入ってはならない山という舞台設定が、ファンタジーの世界へ一気に転換させてくれ、
ありえない出会い、純愛を納得させてくれる。その力量はさすがである。

実は山の情景や遊の生活の描写には少々不満も残った。動物や、桜以外の植物が
ほとんど登場しないし、遊と親父様は山に潜んで暮らしているというのに、獣を
捕らえて食べるでもなく、木の実・山菜を主食とするでもなく、畑もつくらない。
炭を売って里から食料を仕入れるとだけしか書かれていないのはちょっと不自然に
感じてしまう。山のにおい、山の音がいまひとつ立ってこない。

しかしながら、事の起こり方の必然性、人物の活写、気を逸らせずぐんぐん引っ
張っていく展開など、気持ちよく乗せられていく力強い舟といった感じで、忘れら
れない一書となった。
雷桜 Amazon書評・レビュー: 雷桜より
4048732218
No.13
(5pt)

おとなのファンタジー

感動のために読後虚脱感にとらわれる本はめったにないが、久々にそれを味わった。
この作品は、宇江佐作品にはめずらしく、田舎の野山が中心の舞台となっている。
しかも、愛し合うふたりが、山で育った「狼女」とお殿様、それも将軍の息子という、
実に極端な設定。
入ってはならない山という舞台設定が、ファンタジーの世界へ一気に転換させてくれ、
ありえない出会い、純愛を納得させてくれる。その力量はさすがである。

実は山の情景や遊の生活の描写には少々不満も残った。動物や、桜以外の植物が
ほとんど登場しないし、遊と親父様は山に潜んで暮らしているというのに、獣を
捕らえて食べるでもなく、木の実・山菜を主食とするでもなく、畑もつくらない。
炭を売って里から食料を仕入れるとだけしか書かれていないのはちょっと不自然に
感じてしまう。山のにおい、山の音がいまひとつ立ってこない。

しかしながら、事の起こり方の必然性、人物の活写、気を逸らせずぐんぐん引っ
張っていく展開など、気持ちよく乗せられていく力強い舟といった感じで、忘れら
れない一書となった。
雷桜 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: 雷桜 (角川文庫)より
404373901X