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図書準備室



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【この小説が収録されている参考書籍】
図書準備室
図書準備室 (新潮文庫)

図書準備室の評価: 3.63/5点 レビュー 16件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.62pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全16件 1~16 1/1ページ
No.16:
(3pt)

文章は魅力的だが

学校や戦後の社会から疎外された登場人物たち。
人と関わることを通すことでしか,人は自分を実感しないという矛盾。
文章は魅力的だが,全体的に長すぎると思った。
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No.15:
(5pt)

芥川賞作家のデビュー作

冷たい水の羊、デビュー作でこれは単純にすごいと思った。主人公が海で溺れる場面、最後の鳥居の場面は圧巻だった。
大長編「燃える家」にかなり濃い形で繋がっていると感じた。
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No.14:
(2pt)

構成が変

作家本人が一押しの新人賞作品「冷たい水の羊」が題にならず、
駄作が題になって文庫になる意味が不明、でした。新潮のやりそうなこと。
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No.13:
(5pt)

無題

主人公は高校を卒業してから一度も働いていません。
通学のバスで人にぶつかったことから始まり、ある教師に挨拶ができなかったことを回想し始める。
細かいことにこだわって人生棒に振っちゃってる感じがする。

なぜ周りに迷惑や気苦労をかけてまで、そういう細かいことを考え続けて生きるんですかね。
この作者に嫉妬します。

この表題作の謎の吸引力。
この作品で語られる世界は未開拓地です。
その未開拓地と、その他の人間が生きる一般的な現実の溝が深すぎる。

語り手、ひいては作者は「もう死にたい」って言ってますけど、生かされるべき人間って、こういう人なんじゃないかと思います。
でも生かされなくても、一人で勝手に世間とか時代を置いて行って、別の世界にたどり着くのかもしれないな、という気もします。
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No.12:
(2pt)

分かりにくい内容でした

『情熱大陸』で田中慎弥氏のことを知り、本書の他2冊を購入した。
 番組で「自分は作家になるまではひきこもりで、母に酒代をたかって
 生活していた」とあった。

そんな中で本書のあらまし「なぜ30歳を過ぎても私は働かず
母の金で酒を飲んでいるのか」を見て、「田中氏が作家になる
までの経緯が読めるのでは」と思って読んだが、期待外れだった。

次に、新潮新人賞を獲得した『冷たい水の羊』だが、読みにくかった。

物語は特に項目で分けられてない。

『図書準備室』のような1人称なら良かったが、後半から突然
3人称になり、視点が主人公からいつの間にか母親に変わって
いて混乱した。物語の項目分けを空間1行でやっているから
こういうことになると思った。

『冷たい水の羊』の該当する場面だが、寒い冬に密閉空間に
 裸で閉じ込められ、冷たい水を注ぎ込まれるというものだった。

読み終えて、なぜこの小説が新潮新人賞を獲得できたのか
自分には意味が分からなかった。解説の中村文則氏のように、
もっと多角的な視点を持たねば、と勉強の必要性を改めて感じた。

田中氏の本に触れたのは本書が初めてなので、あとの2冊
『共喰い』と『切れた鎖』で新たな世界を期待したい。
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No.11:
(2pt)

弱さを書ききることから逃げている

『図書準備室』
吉岡と対決する場面で、主人公は呆れるような的外れなことばかり言うが、緊迫度が頂点に達した所で、ほぼ一頁にわたって立て続けに質問を繰り出す。そこだけが、多義的で矛盾を含み、豊かで謎に満ちている。主題はほぼ、その前後数頁に出尽くしていると思う。
このような豊かな謎を使って人物を動かし、事件を起こし、破壊と再生を描けたら、読み応えのある長編になるかもしれないと思った。もう既に書かれているのだろうか。
最新作を読んでみるか
でも正直に言えば、僕とは相性の悪い作風だった。結局読まないだろうという気がする。

『冷たい水の羊』
自殺願望は自己の主体性の底から出てくるのではなく、主体性の無さから出てくるのですらなく、身の回りの他者との空疎な関係から出てくることが、よくわかる。無論、その空疎さを主人公に対して責めるのは、一義的には間違っている。特筆すべきなのはこの状況に対する答えのなさではなく、答えのなさを言語化する眼が残っていたことである。
要するに弱さの言語化であり、弱さ自体は或る意味では大事な宝だと僕も思うが、結果として書かれたこれはどんなものか。
というのは、ただ弱さを書いたのか、それとも弱さが書けるということに復讐が息づいていないか、と思ってしまうからだ。もし後者なら、書かれているものは最早弱さではない。
北上や主人公の父母の、ありきたりでお粗末な内省を挿入しなければならないと著者が考えたのは、何故か。

田中慎弥『図書準備室』
新潮文庫 9487
平成二十四年五月一日 発行
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No.10:
(4pt)

美しくてオリジナルな風景描写

デビュー作『冷たい水の羊』の方をおもしろく読みました。

とりわけ印象に残ったのは風景の描写。
決して美しい光景ばかりを書いているわけではないのですが、
擬人法を用いた風景、あるいは季節の推移の描き方は、
これまで読んだことのないものでした。

多くの小説では、情景描写というのは申し訳程度だったり、
紋切り型だったりしますが、
田中さんはしっかり自分で見た光景を自分の言葉で表現していると感じました。
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No.9:
(5pt)

作家と世界との遭遇の瞬間

田中慎弥のデビュー作品集である。表題作と新潮新人賞受賞作の「冷たい水の羊」を併録している。僕は「冷たい水の羊」から読み始めて大変面白くて感心した。

主人公の真夫は級友たちの生け贄としていじめの標的にされている。他のクラスメイトたちは真夫と比べられることによってどうにかいじめられない側の輪の中に留まろうと必死になっている。ところが真夫はいじめられている自分を相対化するために「自分はいじめられていない」という一見矛盾する独自の論理を作り出す。

真夫は毎日のように金をせびられる。いつも用意しておいた金を渡す。金がない時は屋上に連れていかれ殴る蹴るだけでは済まない屈辱的な暴行を受ける。

論理が薄れ、いじめという三文字が近づいてくる。真夫は目だけを動かせる。海峡がぼやけて見える。

水原という女の子が唯一なぜか真夫がいじめられていることを気にかけている。ところが逆に真夫は彼女を殺そうと考える。包丁を買い彼女を殺すチャンスを待っている。そして自分も一緒に死のうとしている。

いじめを苦にした自殺というのは古くて新しい社会問題だから、それをそのまま描いても小説にはならない。ではどう描くかが問題になる訳だが、田中慎弥は徹底的に心の闇の奥の奥まで、果てしない暗部の核心へと迫ろうとしているようだ。しかも非常に高度な抽象概念を用いて。

本書の解説は新進気鋭の作家である中村文則氏が書いている。彼は「デビュー作は未知(作家)と世界との遭遇の瞬間といえる。その作家の本質的な部分が現れるともよく言われ、独特の魅力が宿る」と書いているが納得した。
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No.8:
(4pt)

田中慎弥という名の個性

『共食い』だけではもったいない田中慎弥の秀作がふたつ。◆表題作である『図書準備室』を一言で形容すると、金八先生に

出会えなかった者のいいわけとなるだろうか。三十過ぎて働かない理由を直ぐとは答えず、尋ねた伯母も(読者も)嫌になる

くらいの長話を興ずる。その中で昔、リンチを主導した中学教師の罪を白状させるのだが、その教師(吉岡)はもちろん金八

でないので生徒を懐柔する術を持っていない。挨拶されないことを咎めるでもなく、(怖がらせてしまったことに対して)頭

を下げただけ。この時もしも改心させられていたのなら、まともな大人になれただろうという理屈を答えとみるべきか否か。

いつも逃げ出す従妹の娘を飽きさせなかったことには拍手するが、金八の笑顔の裏に潜む醜態を見せてくれなかったという不

満は残る。

「もっとやれ」

◆まさか読者の願いが聞こえたわけではあるまい。もう一つの収載作『冷たい水の羊』の大橋真夫の心の声である。この小説は、

いじめを認識しなければされていることにならないとする論理を携え、無抵抗の羊であり続ける真夫の視点を中心に、加害者・

告発者・被害者の両親の気持ちにも触れているが、そのどれもが孤立している。例え救われないとしても、いじめの標的となっ

た子供を持つ父母の苦悩が『ナイフ』や『セッちゃん』(共に重松清作)あたりで示された頃よりも、問題の深淵が深まったと

言えようか。真夫の視線は最初から向こうの世界(黄泉国)に注がれており、(水原里子の存在はさておき)そこに辿り着く方

法を画策する点が北条民雄の名作『いのちの初夜』を想起させる。だが、この著者の命の表記は、若くして死ぬ運命を背負った

北条とは比べるまでもなく軽い。言いたいことはそれが悪いとか嫌いではなく、罠を仕掛けることのみ心を砕き、そこに獲物

(読者)を引っ掛けることを愉しんでいるふうに映る。読んだ者の「三島由紀夫ごっこ」の声さえ計算済みのようなデビュー作

において、書き手の野心が形を変え、政界進出を目指す真夫の父伸二に憑依したと読めなくもない。なるほど。「もっとやれ」

とは『図書準備室』の童女の声であり、くどくどしい長話で周囲を煙に巻いた著者自身のそれである。この人なら、いつかもっ

と大きい価値転倒をやってのけてくれそうな気がする。いや、未読の小説の中で既に書いているかもしれない。
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No.7:
(3pt)

印象的な

「図書準備室」(『新潮』2006年7月号)
 前半三分の二は叔母に対する一人語りで、いつものように何が言いたいかわからないが、後半に入って一気にマジックが発動する。
「冷たい水の羊」(『新潮』2005年11月号)
 デビュー作。中学生のいじめられっ子の話。十年掛けて書いたというが前半三分の二の語りはほぼ一気に書いたのだろう。その先、視点が巡る。顔に後を残さないように殴るとか、制服を脱がせてから冷水の入ったドラム缶に入れて小水を掛けるとか、気を遣ったいじめ描写が面白い。いじめる側の心理が入っているので重層的だが、以降の作品では、視点を移して描写しなくても、それが読み取れるように構成されているので、成長を感じる。ラスト付近の雪の赤さが印象的だが、ナイフが使われなかった(エンタメとは決別しているから)から受賞となったのだろう。
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No.6:
(3pt)

ギリギリくる

目を見張る展開とか深い考察とか新しい表現などは特になく、
さらっと読んでしまったのですが、後からギリギリきます。
自己投影できる部分がなかったので、昔の自分を思い出して
色々考えているうちに鬱になってしまうという自虐装置のようでした。
私は「図書準備室」よりも「冷たい水の羊」の方がギリギリ度が高くて好きです。
ただ、読んでいるとどうしてもあの受賞会見を思い出してしまい、
あの人が、ふーん、そうなんだーみたいな下種な読み方をしてしまった事を
深くお詫びしたいと思います。
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No.5:
(5pt)

「光」と「影」を見据える作家の戦い

芥川賞をとった「共喰い」よりも、まず「冷たい夜の羊」を読みたかった。
この作品は田中氏の処女作である、ということは、
氏はこの作品を書くために30年余をかけているということでもある。
そういった意味では、一つの集大成的な作品であるといえるだろう。
これを書くために、田中氏は作家になったのではないかと思わせる
強い力を持った作品だ。
主人公は、読むのがつらくなるような残酷ないじめを同級生から受け続ける。
彼の内面をひたすら淡々と抉り出すような描写が、
地方都市の街の美しい風景描写を背景に描かれてゆく。
透明感ある精緻な文章は古典的なほどに端正である。
この「冷たい夜の羊」は、カップリングされている「図書準備室」と表裏をなしているようだ。
いうまでもなく、「図書準備室」の主人公は「冷たい夜の羊」の主人公であり
それはいじめの加害者の同級生の姿でもある。
日本の社会における輝かしい「父性」や「男性」の「光」の部分。
主人公たちにはその「影」の部分が濃く見えすぎている。
だからこそ、「光」の中に交わることができず社会からはじき出されてしまっている。
その「影」との戦い、それこそが
田中氏の「書く」という行為そのものなのではないかと感じた。
まさに、田中氏の原点でもあり、記念碑となる作品ではないかと思う。
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No.4:
(3pt)

内容については論評できないけど、文体について

少し書いておきます。
エンタメ系の本ばかり読んでいましたので、非常に読みづらいです。
速読が私のスタイルなんですが、この人の文章は斜め読みができません。
ですから内容については、ほとんどわかりませんでした。
じっくりと読むことを強制する文体です。
本にじっくり向き合いたい人にはお勧めかもしれません。
比喩とかは下手ですね。
それと冷たい水の中の方なんですが、新人賞に合格したというわりには、視点が一定してません。なぜ合格できたのか不思議な気がします。
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No.3:
(5pt)

おもしろかったです。

いろんなところで「いいわけ小説」「いいわけ小説」と言われている、表題作「図書準備室」。

あたしには、「いいわけ」でなく、作者の強烈な言いたいことが本気で書いてあるように思えました。
「なんで働かないの?」という伯母の質問を必死に思考した結果の作品だと思いました。
作者のプロフィールを見てみれば、高校卒業後、一度も働いたことがないとのこと。
きっと「なんで働かないの?」という問いを腐るほどされ、それについて、考え抜き、この小説を書いたんだとあたしは思いました。

なので、「なんで働かないの?」と言われ、辟易している方や
働かない人の周辺で「なんであいつは働かないんだ」とむかむかしている人にとって大変意味ある小説だと思います。

以下、内容の勝手な解釈です。

表題作は、じんめり暗くて、「死」を出していて、それでいてちょっとユーモアがあるところが、太宰みたいだと思いました。

「いいわけ」は、
「他人の目に肘鉄をくらわしておいて謝らなかったことがずっと以前にあったから、自分の目が痛むようになったという話」から始まり、
「先生に挨拶しなかったから、今もふらふらしているという話」で終わります。

その挨拶しなかった先生はひどいリンチを戦時中にした過去をもっているのですが、
その先生のリンチの話は強烈で、この話の核になっているように思います。
(だから、その話を聞く「図書準備室」がタイトルなのではと思いました。)

その残酷なリンチを戦時中「正しいこと」として、先生はし、
でも、戦後、そのリンチは「悪いこと」になりました。
リンチのシーンは読むに耐え難いほどむごたらしく描かれていますが、
でも、それほどのことでも「正しい」とする時代があったということを表現している狙いだとも解釈できます。
リンチを「正しい」か「悪い」かを先生と主人公が話し、
その話の中で、戦争自体が悪かったのか良かったのかも曖昧になっていきます。

今、正しいことが、情勢が変われば悪いことになる。
正しいとする理由は後付けでしかない。
「他人の目に肘鉄をくらわしておいて謝らなかったことがずっと以前にあったから、自分の目が痛むようになった」
「先生に挨拶しなかったから、今もふらふらしている」
原因と結果がムチャクチャに書かれているのはそのことが言いたかったのではないかと思います。

「いいわけ」から読み取れるのは、そんなことです。

そこで最初の「なんで働かないの?」という叔母の質問が甦ります。

今、正しいことが、情勢が変われば悪いことになる。
正しいとする理由は後付けでしかない。

そう考えたら、叔母の質問自体が無意味になっていきます。
「なんで働かなければいけない理由があるのか?」
「なんで働いていないことに理由が必要なのか?」
「もし、理由があったとしても、その理由は曖昧なものでしかないのではないか?」

でも、人間生きていかなくてはならないので、「どうするの?」と、従兄の娘に聞かれるのだと思います。
答えは、ユニークなものでした。

以上、勝手な解釈をする余地がある物語で、考える楽しみをくれました。

「冷たい水の羊」は、いじめについて、いじめる側いじめられる側周辺の側から多角的に考え抜かれて書かれていて、ラストの「待ってて」にいじめがあってもそれでも生きる救いが見えてちょっと感動しました。
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No.2:
(3pt)

総合評価として

芥川賞候補作にもなった表題作『図書準備室』、そして新潮新人賞受賞の

デビュー作『冷たい水の羊』の二つが収録されたこの本自体の総合評価と

しては☆3つですが、表題作の『図書準備室』だけだったら☆5つです。

『冷たい水の羊』だけの評価だと☆2つでしょうか。

『図書準備室』は第136回芥川賞候補になりましたが、まったく相手に

されず落選しました。この作品を評価し、推した選考委員は池澤夏樹さん

ただ一人だけでした。山田詠美さんも読み始めた最初の感触では「推して

もいいかな」と思ったそうですが、鶏小屋のエピソード以降を評価するこ

とができないとしていましたが、僕にはそれだけ魅力的な作品だったから

そういう意見も出たのではないかと思います。

この『図書準備室』という小説は、徹底的に主人公の「言い訳」によって

成り立っている小説です。喋る、喋る、最初から最後まで延々と主人公は

あーだこーだと喋り続けます。しかもその内容が凄まじい。これはぜひ読

んでください。本当に凄まじいですから。

そして、最後に置かれている脱力系のオチ。饒舌文体で衝撃的なエピソード

が並べられる中で最後の最後に訪れるオチには笑わせられました。読んでいる

途中はそこまで評価していませんでしたが、読み終わってからは最高に面白い

小説だと思うに至りました。いやあ、あのオチはいいなぁ。でも、このオチ

がなんなのか知っただけでは面白くないんです。あーだこーだと主人公の饒舌

な「言い訳」に付き合ってこそ最後の最後で脱力と笑いをもたらしてくれます。

この小説に芥川賞をとってほしかったですね。

もう一つの収録作『冷たい水の羊』は、作者の新潮新人賞を受賞したデビュー

作です。空気感だけで言えば『図書準備室』に通じるところもありますが、

全体としてはあまり面白くありません。ただ、この作品を読んでから『図書

準備室』を読むと、あきらかなレベルアップを感じることかできて、興味深い

です。

田中慎弥さんには期待です。
図書準備室 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:図書準備室 (新潮文庫)より
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No.1:
(4pt)

馬鹿にしていると意外に手ごわい

引きこもりである主人公の独白が冗長に続く序盤は、もっと巧く書けるんじゃないかと思えるし、変なところで脱線する文脈も効果的とは思えず、併録「冷たい水の羊」よりは評価が落ちると思っていたが、終盤にかけては筆者の非凡な文章に圧倒されることになる。だてに芥川賞候補ではないと云う手ごたえを最後に漸く得ることが出来た。

図書準備室 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:図書準備室 (新潮文庫)より
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