最後の命

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最後の命の評価:

3.88/5点 レビュー 17件。 D ランク

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全34件 21〜34 2/2ページ
No.14
(5pt)

性への衝動

この「最後の命」は、中村文則さんが「土の中の子供」を書いた後に、ずいぶんと時間をかけて書き上げた五冊目の小説である。
この小説に至るまで、中村さんは最初の三冊で、人を殺してしまうまでに行き着いてしまう人間の思考を執拗に書き、「土の中の子供」では世間から黙殺され、暴力の中でそれでも生きようともがく人間の悲痛な生命力を描き、日常の中では埋もれてしまうような人の心の暗部にスポットを当ててきた。その中に、今回の小説のテーマでもある「性への衝動」は既に見え隠れしていたが、今作品では真正面から向き合うことになる。
この「性への衝動」、つまりセックスのなかに潜む暴力性は私たちの周りに当たり前に潜んでいる。そして、それが強姦という形を成すことは、実は日常的に起きている。性犯罪は、無くなることがない。なぜ、それは起きてしまうのか。

新たな生命を宿すために、男女はどうしても交わらなければならず、そのために人は成長とともに性欲を身内に抱くことになる。
その性欲が恋愛の中で生まれるとき、人はそれを愛情から生まれる行為として納得し、うまく処理することができるが、そういう形で処理できない性欲は、どのように解消すればよいのだろうか。
特に男性における性欲は、支配欲や破壊欲と一緒になって、相手の意思を無視して、いやむしろ嫌がる相手を犯すことに興奮を覚え、それは女から見れば単なる暴力とし現れることがある。
この小説に出てくる冴木、そして主人公は、この己の性欲の暴力性に、子供のとき集団強姦事件に巻き込まれたことがきっかけで向き合うこととなり、その存在に苦しみ、冴木はそれを増大させ欲望を現実の世界で解消しようとして行動し、主人公はそれを軽蔑して自分の単純な欲望すら嫌悪し、それを内包する世界の存在を嫌悪し、潔癖症や強迫症に悩まされる。

この「性への衝動」は、なぜに存在するのだろうか。
性欲は子供を産むため、愛を確かめるためならそれは是とされ、強姦に向かえばそれは否とされる。
欲望とは人が生きていくために必要なものなのだが、その善悪は紙一重の表裏一体のものである。
中村文則作品には、常にこの「性への衝動」が悪の一つとして描かれ、それと向き合う人間の苦悩が描かれている。
私は中村さんの新作である「教団X」が、なぜ執拗に生々しい性描写をするのか、なぜそこまでセックスに拘るのかわからなかったが、この「最後の命」を読んでやっと理解できたように思う。それは性の問題は、人類のひとつの大きな課題だからだ。

人間以外で、常に発情している動物はいるのだろうか。
他の動物には発情期という期間があって、それ以外で交尾することはほとんどないのではないか。
つまり動物は子孫を残すために、危険を冒して交尾を行っている。快楽のために行っているわけではない。でも人間は快楽のためにセックスすることがあるのだ。そしてその快楽はときに悪しきものへと姿を変えるのだ。そのような衝動を、なぜ人は抱えて生きなくてはならないのだろうか。

「最後の命」では、この欲望の前で人々は死という形をとる。
強姦の犠牲となって死ぬ者、その罰を与えられたかのように見捨てられて死ぬ者、そしてその衝動に耐えられなくなって死ぬ者。
主人公も、常に死を意識して生きている。
この衝動は殺さなければならないもの、許されないもの、そういう理性の前で欲望は、快楽は死を求める。

このような小説を性的異常者の話だと切り捨てることは簡単である。でも、実際にはそんなに簡単なものではない。
現に、毎日性犯罪は起きているのだから。いくら法で縛っても、罪に罰を与えても、なくならないのだから。
これは、人類が背負っているひとつの十字架なのだ。

この小説の中に、その衝動を克服するための正解などない。ただ、それを背負って生きていくことへの決意があるだけだ。
「最後の命」とは、小説の中の登場人物としては香里に当たるのだろうか。でも、私には、命という厄介なものを生きていく決意表明に思える。
そして中村文則さんは、今でもこの問題を小説で書き続けている。書き続けるしかない。そういうことと、真面目に向き合っている小説があっても私はいいと思う。むしろ、あるべきだろう。
最後の命 Amazon書評・レビュー: 最後の命より
4062139596
No.13
(5pt)

性への衝動

この「最後の命」は、中村文則さんが「土の中の子供」を書いた後に、ずいぶんと時間をかけて書き上げた五冊目の小説である。
この小説に至るまで、中村さんは最初の三冊で、人を殺してしまうまでに行き着いてしまう人間の思考を執拗に書き、「土の中の子供」では世間から黙殺され、暴力の中でそれでも生きようともがく人間の悲痛な生命力を描き、日常の中では埋もれてしまうような人の心の暗部にスポットを当ててきた。その中に、今回の小説のテーマでもある「性への衝動」は既に見え隠れしていたが、今作品では真正面から向き合うことになる。
この「性への衝動」、つまりセックスのなかに潜む暴力性は私たちの周りに当たり前に潜んでいる。そして、それが強姦という形を成すことは、実は日常的に起きている。性犯罪は、無くなることがない。なぜ、それは起きてしまうのか。

新たな生命を宿すために、男女はどうしても交わらなければならず、そのために人は成長とともに性欲を身内に抱くことになる。
その性欲が恋愛の中で生まれるとき、人はそれを愛情から生まれる行為として納得し、うまく処理することができるが、そういう形で処理できない性欲は、どのように解消すればよいのだろうか。
特に男性における性欲は、支配欲や破壊欲と一緒になって、相手の意思を無視して、いやむしろ嫌がる相手を犯すことに興奮を覚え、それは女から見れば単なる暴力とし現れることがある。
この小説に出てくる冴木、そして主人公は、この己の性欲の暴力性に、子供のとき集団強姦事件に巻き込まれたことがきっかけで向き合うこととなり、その存在に苦しみ、冴木はそれを増大させ欲望を現実の世界で解消しようとして行動し、主人公はそれを軽蔑して自分の単純な欲望すら嫌悪し、それを内包する世界の存在を嫌悪し、潔癖症や強迫症に悩まされる。

この「性への衝動」は、なぜに存在するのだろうか。
性欲は子供を産むため、愛を確かめるためならそれは是とされ、強姦に向かえばそれは否とされる。
欲望とは人が生きていくために必要なものなのだが、その善悪は紙一重の表裏一体のものである。
中村文則作品には、常にこの「性への衝動」が悪の一つとして描かれ、それと向き合う人間の苦悩が描かれている。
私は中村さんの新作である「教団X」が、なぜ執拗に生々しい性描写をするのか、なぜそこまでセックスに拘るのかわからなかったが、この「最後の命」を読んでやっと理解できたように思う。それは性の問題は、人類のひとつの大きな課題だからだ。

人間以外で、常に発情している動物はいるのだろうか。
他の動物には発情期という期間があって、それ以外で交尾することはほとんどないのではないか。
つまり動物は子孫を残すために、危険を冒して交尾を行っている。快楽のために行っているわけではない。でも人間は快楽のためにセックスすることがあるのだ。そしてその快楽はときに悪しきものへと姿を変えるのだ。そのような衝動を、なぜ人は抱えて生きなくてはならないのだろうか。

「最後の命」では、この欲望の前で人々は死という形をとる。
強姦の犠牲となって死ぬ者、その罰を与えられたかのように見捨てられて死ぬ者、そしてその衝動に耐えられなくなって死ぬ者。
主人公も、常に死を意識して生きている。
この衝動は殺さなければならないもの、許されないもの、そういう理性の前で欲望は、快楽は死を求める。

このような小説を性的異常者の話だと切り捨てることは簡単である。でも、実際にはそんなに簡単なものではない。
現に、毎日性犯罪は起きているのだから。いくら法で縛っても、罪に罰を与えても、なくならないのだから。
これは、人類が背負っているひとつの十字架なのだ。

この小説の中に、その衝動を克服するための正解などない。ただ、それを背負って生きていくことへの決意があるだけだ。
「最後の命」とは、小説の中の登場人物としては香里に当たるのだろうか。でも、私には、命という厄介なものを生きていく決意表明に思える。
そして中村文則さんは、今でもこの問題を小説で書き続けている。書き続けるしかない。そういうことと、真面目に向き合っている小説があっても私はいいと思う。むしろ、あるべきだろう。
最後の命 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 最後の命 (講談社文庫)より
4062767023
No.12
(3pt)

好き嫌い分かれる

性的な描写が多いので、好き嫌い分かれる作品だと思います。少年の傷が重く読後感は暗いです。
最後の命 Amazon書評・レビュー: 最後の命より
4062139596
No.11
(3pt)

好き嫌い分かれる

性的な描写が多いので、好き嫌い分かれる作品だと思います。少年の傷が重く読後感は暗いです。
最後の命 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 最後の命 (講談社文庫)より
4062767023
No.10
(3pt)

異常性欲者は生きていて良いのか否か、作者も私たちも、よく分からない

こちらが7年も先に出版されているのですが、2015年に出版されたサカキバラセイトの書いた私小説を読んだあとにこれを読みましたので、レイプ魔の友人の異常性欲の告白が、サカキバラの心理にとても似ていると思いました。

恐ろしい性的衝動が生まれる様子、それを抑える困難さ、そして蝕まれて自他を傷つけてしまう人生。
このリアリズムは怖いです。
最後の命 Amazon書評・レビュー: 最後の命より
4062139596
No.9
(3pt)

異常性欲者は生きていて良いのか否か、作者も私たちも、よく分からない

こちらが7年も先に出版されているのですが、2015年に出版されたサカキバラセイトの書いた私小説を読んだあとにこれを読みましたので、レイプ魔の友人の異常性欲の告白が、サカキバラの心理にとても似ていると思いました。

恐ろしい性的衝動が生まれる様子、それを抑える困難さ、そして蝕まれて自他を傷つけてしまう人生。
このリアリズムは怖いです。
最後の命 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 最後の命 (講談社文庫)より
4062767023
No.8
(5pt)

その言葉を必要とする人に

「掏摸」「遮光」を読んで、三冊目に読んだ本です。
三冊とも、私をとらえたのは、世界を見つめる視線でした。
繊細で、優しくて、切実で、危うい。
作者の視線はいつも、さまざまな理由で
社会から必要とされない人々に向けられている。
作家という(社会的に認められている)立場から、
そういう低いところを見ているにも関わらず、
私は視線の高さをまったく感じなかった。

たぶん、この視線によりそう感覚をもつ人は、私も含めて、
そう多くはない。とても少ないかもしれない。
でも、作者が送るサインはそういう人に必ず届くと思う。
この完璧な集団社会の中で、毎日まともなふりをして、
バレないように必死でコントロールしながら生きている人たちに。
「なぜ、こんな人間になってしまったんだろう」
「死んだほうが世の中のためなんじゃないか」
と、一度でも生死をかけて問うたことがある人たちに。
まともな社会の一員なら、決して口に出して言ったり、
考えたりしてはいけないことを、堂々と書くことで。

文学がなぜ自分に必要なのか、あらためてわかった気がする。
最後の命 Amazon書評・レビュー: 最後の命より
4062139596
No.7
(5pt)

その言葉を必要とする人に

「掏摸」「遮光」を読んで、三冊目に読んだ本です。
三冊とも、私をとらえたのは、世界を見つめる視線でした。
繊細で、優しくて、切実で、危うい。
作者の視線はいつも、さまざまな理由で
社会から必要とされない人々に向けられている。
作家という(社会的に認められている)立場から、
そういう低いところを見ているにも関わらず、
私は視線の高さをまったく感じなかった。

たぶん、この視線によりそう感覚をもつ人は、私も含めて、
そう多くはない。とても少ないかもしれない。
でも、作者が送るサインはそういう人に必ず届くと思う。
この完璧な集団社会の中で、毎日まともなふりをして、
バレないように必死でコントロールしながら生きている人たちに。
「なぜ、こんな人間になってしまったんだろう」
「死んだほうが世の中のためなんじゃないか」
と、一度でも生死をかけて問うたことがある人たちに。
まともな社会の一員なら、決して口に出して言ったり、
考えたりしてはいけないことを、堂々と書くことで。

文学がなぜ自分に必要なのか、あらためてわかった気がする。
最後の命 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 最後の命 (講談社文庫)より
4062767023
No.6
(2pt)

あまり覚えていない。。

読み終えて1か月ぐらいたちました。

レビューを書くにあたって、内容が思い出せない。
ってことは、普通でした。
最後の命 Amazon書評・レビュー: 最後の命より
4062139596
No.5
(2pt)

あまり覚えていない。。

読み終えて1か月ぐらいたちました。

レビューを書くにあたって、内容が思い出せない。
ってことは、普通でした。
最後の命 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 最後の命 (講談社文庫)より
4062767023
No.4
(3pt)

解説はひどいけれど作品は悪くない

私は、一種の文学的ミステリーとして読みました。目一杯がんばって書いた作者の情熱が、ひしひしと字面から伝わってきた。ドストエフスキーや三島などの観念小説からの影響が濃厚に感じられますが、いささか青臭い。作者の理窟は、わかりやすいけど幼なすぎるのではないかしら。一人称の制約はあるものの、社会的な視野の偏狭さが気にかかる。しかし、ひと息に読ませる力がある書き手であることは間違いない。

《売れる小説を書いて、人生を謳歌してくれよ。俺の分までさ。》

 蛇足ながら、文庫版の解説はひどい。読みが浅いし、ふざけているのはいただけない。最近は文芸評論家も人材難のようですね。これでは、作者があまりにお気の毒。
最後の命 Amazon書評・レビュー: 最後の命より
4062139596
No.3
(3pt)

解説はひどいけれど作品は悪くない

私は、一種の文学的ミステリーとして読みました。目一杯がんばって書いた作者の情熱が、ひしひしと字面から伝わってきた。ドストエフスキーや三島などの観念小説からの影響が濃厚に感じられますが、いささか青臭い。作者の理窟は、わかりやすいけど幼なすぎるのではないかしら。一人称の制約はあるものの、社会的な視野の偏狭さが気にかかる。しかし、ひと息に読ませる力がある書き手であることは間違いない。

《売れる小説を書いて、人生を謳歌してくれよ。俺の分までさ。》

 蛇足ながら、文庫版の解説はひどい。読みが浅いし、ふざけているのはいただけない。最近は文芸評論家も人材難のようですね。これでは、作者があまりにお気の毒。
最後の命 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 最後の命 (講談社文庫)より
4062767023
No.2
(2pt)

冷静な分析。

文章に緊迫感はあるが、主人公2人の延々と続く自己分析には、共感することはあまりなかった。
幼い子供時代、混沌とした思春期、成人してからの精神の混濁、各時代時代の回顧がとても理路整然としていて、冷静な大人が書いた物語としか感じられなかった点が残念である。
最後の命 Amazon書評・レビュー: 最後の命より
4062139596
No.1
(2pt)

冷静な分析。

文章に緊迫感はあるが、主人公2人の延々と続く自己分析には、共感することはあまりなかった。
幼い子供時代、混沌とした思春期、成人してからの精神の混濁、各時代時代の回顧がとても理路整然としていて、冷静な大人が書いた物語としか感じられなかった点が残念である。
最後の命 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 最後の命 (講談社文庫)より
4062767023