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わが女学生時代の罪ほか



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わが女学生時代の罪ほかの評価: 4.83/5点 レビュー 6件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.83pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(5pt)

今読んでも結構凄い、古典推理小説集

日本探偵小説全集 木々高太郎篇。収録作は短篇11篇と長篇2篇。

日本の探偵小説に心理的な物を持ち込んだそうで、しかもただ取り入れただけではなく、本職も精神等の病気の研究をしていたというだけあって、説得力のある作品が多いと思いました。

特に長篇2篇、「折蘆」と「わが女学生時代の罪」は今読んでも読み応えがあり、且つ多少の瑕疵があっても今の視点で読んでもなかなか良く出来ていると思わせる作品だと思いました。

探偵小説という名前から推理小説という名前に代わったのもこの人の提唱による物だそうで、それには賛否がありますが、色々と功績があったのだなぁと思いました。

個人的には夢野久作や小栗虫太郎の巻よりも読み応えがあって、再読する気になりました。いつか折りをみて再読したいと思います。

今読んでも結構凄い、古典推理小説集。是非ご一読を。
日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)より
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No.5:
(5pt)

直木賞作家がこだわりぬいて選んだ不世出の天才の傑作群

この全集は、今や知らぬものとてない北村薫大先生が編集したもの、ときけば当然一筋縄ではいかないわけですが、中でも木々高太郎はその昔文春文庫から出た「マイ・ベストミステリー」にて三名の現役ミステリ作家から作品を挙げられるほどの天才です。(もちろん北村先生も挙げています!)ここでは、あえて豪華版として出た横溝正史の賛つきの本を収録していることが値打ちとなっています。あまりにも有名な直木賞受賞作の長編ではなく、こうした作品を配することでこの作家の早すぎた天才がよくわかる一冊に。作家冥利につきる理想的な紹介っぷりではないでしょうか。すっかり木々さんのファンになり、昔出た青い表紙の全集まで求めてしまいました。
日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)より
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No.4:
(5pt)

探偵・推理小説の歴史の中に不遇という名で塗り込められた木々高太郎の真髄を知る1冊。しかし2冊目が続かない。

木々高太郎の神髄を知る上では、入手しやすい唯一の、長・短編集。「網膜脈視症」で、舌を噛みそうな題名だなとトボけているような初見の読者は度肝を抜かれる。戦前の作としては内容も描写もヤバすぎる「睡り人形」は、木々高太郎の医学的なアプローチによる筆が、凡百のエログロ作品を引き離して完全勝利。「文学少女」では、木々高太郎自身が、「これって探偵小説なの?」と思う読者にこれでもかとゆさぶりをかけ、探偵小説とは何か?という思索に生涯をかけた木々高太郎の信念を垣間見た気がする。

戦前作家の中ではすでに、内容が古びて読むに堪えないものも少なくないが、木々高太郎の探偵小説作品は、その中で、いま読んでも間違いなく面白い部類に入る。ロシアの高名な学者・パブロフの弟子であり、帰国後は、海野十三の誘いで、大脳生理学者との二足のわらじで、探偵小説を書くようになった。医学、精神分析の知識を十二分を作品内に発揮した、戦前の黄金時代後期の主力の一人。昭和12年に直木賞を受賞。甲賀三郎や江戸川乱歩と探偵小説のあり方についての論争はとくに有名。

木々「すぐれた探偵小説は、芸術作品になりうる」乱歩「不可能とまではいわないが、相当に困難であろう」

戦後においては、残念ながら、本業である医学者の仕事も多忙になったのか、小説創作への意欲を徐々に減退。理想が作品に伴っておらず、また作品も探偵小説としての面白さとしてはイマイチ・・・という評価も少なくない中で、探偵小説芸術論という自分の説を、自分の作品で証明できなかったことは、痛恨の極みであっただろう。その実現であったのだろう、「美の悲劇」「智の悲劇」「真の悲劇」「善の悲劇」という4つの作品の執筆が予定されていたが、第1作「美の悲劇」の半ばで中絶し、ほとんど実現しなかった。
 
【たとえ私の理想が破れ、探偵小説文壇から追われたとしても、私の仕事が、新人に刺激を与えるのならそれでいい】
 
その新人の一人・・・推理小説の大家・松本清張のデビューのきっかけをつくり、探偵小説の時代から、推理小説という新しい時代の道筋をつくった立役者こそ木々高太郎。【推理小説】ということばの命名者も、一説には、木々高太郎と言われている。いまは残念ながら、「忘れられた作家」的存在であり、木々作品に触れることができる文庫本なども、かなり限られてきてしまっている。この本を手に取って、「面白そうだな」と思った読者に勧める2冊目が見当たらないのだ。現行で入手しやすいのは近刊の長編「三面鏡の恐怖」河出文庫 のみ。

入手は多少困難になるが、古本などでは
「光とその影/決闘」(講談社文庫大衆文学館)は2冊目として必ず押さえたい。
「網膜脈視症」春陽文庫、「人生の阿呆」創元推理文庫(直木賞受賞作だが評価は高くない)の2冊がある。

ある評者が、乱歩、正史、木々、清張の4人を推理小説の歴史の分水嶺、と評したが、木々だけが恐ろしく冷遇されている。私もまったく同感である。
日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)より
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No.3:
(5pt)

惹き付けられます

江戸川乱歩が絶賛した、「文学少女」を読みたくて購入。 まだ「網膜脈視症」ほか、冒頭部分の数編しか読んでいませんが、楽しませてもらっています。医者に探偵の真似ごとをさせているのは現代ミステリ-では日常茶飯事だが、主人公が持つ豊富な知識と深い洞察、そして何より著者の卓越したスト-リ-テリングが読む者の心を鷲づかみにする。こんなに古い作品なのに、医学を切り口に、ここまで上手くミステリを読ませるなんて感動しました。 レビュ-冒頭で乱歩のことを触れましたが、彼のデビュ-作「二銭銅貨」を初めて読んだ時と同じくらい、ワクワクさせてもらいました。木々高太郎のみならず、同時代の作家の作品を漁ってみようと思います。
日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)より
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No.2:
(4pt)

推理小説の生みの親

現在親しまれている「推理小説」という呼称を初めて使用したといわれている木々高太郎の作品集。

医学者らしく、精神分析の手法を小説に取り入れようとしているのが特徴です。

当時探偵小説界の重鎮であった甲賀三郎の「探偵小説非芸術論」と木々の「芸術論」との論争からも分かるように、探偵小説を文学としても高いレベルに到達させようという高い志を筆者は持っていたようです。

その姿勢は当時の探偵小説界としては異例の直木賞受賞からも伺えます。

現在の水準から見ると、推理小説とは呼べないようなものがあったり、上手く事件と内容が調和していないものも見受けられますが、彼の高い理想が後進の作家たちに与えたであろう影響は見逃せません。

歴史的な価値だけではなく、『文学少女』等の印象的な短編も含まれていますのでぜひ御一読を。
日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)より
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No.1:
(5pt)

素敵な時間を満喫しました。

なんて素晴らしい人間観察!

 はじめて読んだ木々高太郎作品一作目の『網膜脈視症』

 大心地先生の診察室に来た子供の症状(動物恐怖、神経症、エディプス・コンプレックス等)の、その病の向こう側にある事件を、見事な慧眼で分析された。

 悲しい別れが遭ったのが切ない・・・

『眠り人形』は《ねむり妻》と同じ事件でありますが、

犯人による告白書(ヒューマンドキュメント)でページが埋まり、とても濃い一篇となっております。

《ねむり妻》では、事件の外周(刑事の捜査、登場人物の動き)を窺えるので、併せて読むとより作品が愉しめると思います。

 なんといっても『文学少女』は忘れられません。

 苛酷な運命に翻弄されながら、ただ純粋に文学を愛したミヤの姿が。

 ミステリィよりも、文学的な薫りが漂う作品です。

 あのラストはドキッとくるほどだった・・・ 

 『バラのトゲ』は、大心地先生の講義を受けてるような感じで、

 読みながら実習学生の一人になったみたいでした。

 人間心理がいかに複雑か、思い知らされました。

 この木々高太郎集では、大心地先生の分析の巧さに脱帽しますが、

そんな先生でも、最後の最後で、

 『人間と人間との関係の、いかにもむずかしいこと』

と説いている。

 ほんとですね。

  人間って、こんなに複雑で、難しくて・・・

 もっと紹介したい作品がありますが、このへんで割愛します。

 

 素晴らしい小説をありがとうございました。

 

日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:日本探偵小説全集〈7〉木々高太郎集 (創元推理文庫)より
4488400078

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