楽園への道

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楽園への道の評価:

4.81/5点 レビュー 26件。 A ランク

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平均点4.81pt

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全31件 21〜31 2/2ページ
No.11
(5pt)

読む者の価値観、生き方を揺さぶりかけてくる傑作

19世紀前半のフランスでは、女性はまだ男性の従属的・隷属的
存在であり、そこから逸脱してはならず、自由はなかった。
そんな時代に生きたフローラ・トリスタンは、男女平等、
労働者層の立場の改善を求めて立ち上がる。DV夫を見捨てて、
子供を結果放置して。

ポール・ゴーギャンは船乗り、海兵としてマッチョな生き方をしていたが、
一方でブルジョワな生活を夢見ていた。
ブルジョワ階級に成り上がるため、母を愛人としていた人物に紹介されて、
株式仲買人となって成功を収め、ブルジョワになるけれど、
それまで無縁だった絵画の世界に(きっかけは同じ職場の絵画を
趣味としていた友人とマネの『オランピア』)足を踏み入れていく。
そうして、19世紀の西洋美術(文化)の頽廃ぶりに違和感を
覚えたゴーギャンは、フランス各地(ゴッホと共同生活をしたアルルとか)、
果てはタヒチ、マルキーズ諸島まで行き、原始的芸術を追求する。

フローラの物語を奇数章で、ゴーギャン(フローラの孫)の物語を偶数章で、
3人称主体、時に2人称交じりで語る並列構造。

二人は不完全な現実世界を改め、完全なる世界(楽園)を
求めているのだけれど、女性解放を望むフローラ、タヒチの
原住民たちの文化・価値観(10代前半で結婚し子供を産んだり、
学校教育に対する無関心ぶり)を尊重し、そこに西洋の文化・価値観を
持ち込むことに抵抗を感じるフローラの孫ゴーギャン、
と色んなところで対比構造になっていて、読む者の価値観、
生き方をガンガンに揺さぶりかけてくる。

歴史で解明されていない、二人の人生の謎の部分を埋めたリョサの想像力と
筆致に脱帽。

ところで、ペルー大統領に立候補したこともあるバルガス・リョサは、
フローラ・トリスタンとポール・ゴーギャンの亡くなった年齢を
超えているわけだけれど、書きながら、何を思ったのか・・・・・・
なんて想像してみるのも楽しいかもしれない
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.10
(5pt)

楽園に着くことはできたのか

印象派の画家ポールゴーギャンとその祖母「スカートをはいた煽動者」=空想的社会主義者で、組合を作ろう!と、単身フランス中を旅して行く=フローラ、60年を隔てて強烈な個性を持つ二人の人生が交互に語られる。フローラの現在の「旅」が語られながら彼女の過去に遡り、ページが進むにつれてだんだん二人の人生がシンクロしていくようだ。思いついて家系図を作って読んでみた。超越者のような「語り」の視点が興味深い。おもしろい。読んで後悔はしませんよ!
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.9
(5pt)

作品は非常に面白い。

バルガス・リョサの作品自体は非常に面白く、翻訳も読みやすくて秀逸です。しかし文学全集としては少々安直な作り。最後に訳者による簡単な解説と年譜等が載っているのみで、図版もほとんどなく、注も一切なし。これなら本の値段の方をもう少し考慮して欲しかったな、河出さん。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.8
(5pt)

「楽園遊び」のかなしみ

バルガス=リョサはペルー生まれの作家。
本書は、池上夏樹が個人編集した世界文学全集の2冊目に選ばれている。

パリをはなれ、楽園をもとめてはるかタヒチへ移り住んだ画家、ポール・ゴーギャン。
その祖母で、今でいう社会主義者の先駆となったフローラ・トリスタン。
ふたりの人生のクライマックスが、いくつかの章にわかれ、交互に語られる。
ゴーギャンはタヒチへ渡り、パリに戻り、ふたたび海を渡ってさらに奥地のマルキーズ諸島へ。
フローラは何かにとりつかれたようにフランスの町から町へ、労働組合の必要を説く演説をして回る。
並行する語りが交わることはないけれど、ふたつの物語は思わぬ地点で呼びかけあい、響きあい、次第にあるひとつのリズムを刻みはじめる。

その「リズム」に大きく影響しているのが、独特の文体。
いま、日本や欧米で書かれる小説のほとんどは、一人称もしくは三人称で語られるけれど、「楽園への道」は二人称、作家がゴーギャンやフローラに語りかけるかたちをとっている。
解説によると、著者は騎士道小説(「ドン・キホーテ」はそのパロディで有名)に影響を受けてこの文体を選択しているらしい。
ともあれ二人称の文体で、説教がましくならず小説を最後まで引っ張っていくには、高度な技術とセンスを要する。日本語でも、スペイン語でも同じだろう。
その上、最後まで途切れないすさまじい吸引力と、全体性。綿密で根気づよい取材にもとづく、圧倒的なリアリティ。
この作家にとって小説はただの娯楽でなく、政治であり、命がけの事業なのだろう。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.7
(5pt)

楽園はどこにある

打ちのめされました。
うたい文句の「ポール・ゴーギャンと彼の祖母のたたかい」に何の疑いもなく読んでゆきました。南の島に渡ったポール、そしてフランスで戦う祖母。
彼らは強い。たぶん、我々日本人が彼らのメンタリティに敵うかどうかすらわからないほどに強い。
本書が21世紀になってから書かれた本だと知ったときはもっと打ちのめされた。こんな素晴らしい小説が60代のバルガス=リョサが書いたなんて。
タイトルこそ「楽園への道」(原題の直訳ではありません。念のため)ですが、果たして主人公二人に「楽園」はやってくるのか、まったくわからない。それだけならまだいい。フローラ・トリスタン(ゴーギャンの祖母)は、「楽園」もくそもなく、戦いながら若くして死んでしまった。ポール・ゴーギャンには、ひょっとしたら、「楽園」を感じられたかもしれないが。
私は、フローラ・トリスタンの報われない戦いと虚しい死に、徹底的に打ちのめされた。まさしく「正直者は馬鹿をみる」(フランスにこのようなことわざがあるかどうかはわかりませんが)がごとき死。
マリオ・バルガス=リョサはどこまでもクールだ。ゴーギャンの南の島での生活も、フローラの犬死がごとき生涯も、クールな視線で描いている。それがゆえ、私は徹底的に打ちのめされた。ペルー生まれの(60代の)バルガス=リョサにとっては、彼自身が経験したであろう、厳しい現実を、ただ書いただけなのである。
19世紀のフランスでも、やはり女性差別はあった。それを上っ面だけ書くのではなく、個人のたたかいとして、バルガス=リョサは書ききった。まるで19世紀のフランスに転生して、フローラにのりうつったがごとく。素晴らしい。
ゴーギャンの生涯だってそうだ。ゴーギャンは本を残したが、ただそれを読んだだけ、とは思えないほど、緻密な描写である。
絶対に購入して読んで、損をすることはない。そして打ちのめされて欲しい。かつて、クラッシュのヴォーカル、ジョー・ストラマーが言ったように、「今ある自由は、これまで人々が戦って得た自由なんだ。それを知らない奴が多すぎる」と、感じて欲しい。

蛇足:嘆かわしいことに、バルガス=リョサの傑作「都会と犬ども」は品切れ状態。面白いのになあ。本書を楽しめた方にならお勧め。図書館で借りてきて読みましょう。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.6
(5pt)

「文学全集」なのに、読みやすくおもしろい!

家族を捨ててタヒチへ渡り、少女との淫行を重ね、キリスト教を批判し、芸術作品を書いたゴーギャン。
夫を捨てて(当時はそれだけで罪)、女性解放運動、労働組合組織という運動に身を投じる(当時はキリスト教会を超える集団をつくろうとしただけで罪)フローラ・トリスタン。彼らは孫と祖々母の関係である。
彼らに共通しているのは、「まわりの空気を読めないこと」−反社会性といった方がいいかな−。しかし、どちらもそうだが、彼らの足跡は燦然と輝く。「彼らにとって大切なものは、祖国ではなく人類だった。彼らにとって正義と自由は単にフランス人のためのものではなく、人類のためだった」 彼らの考えは当時の習慣にとらわれず、普遍的だった。だから、苦悩も大きい。
文学として思いテーマを描きながらも、場面展開がはやくストーリーもしっかりしている、質のよい映画を見ているような感覚になる。リサーチのために、タヒチにも行っているようで、タヒチ文化の描写も詳しい。人物描写もすばらしい−ときどきでる二人称がひきたててくれる−。歴史小説として読んでも質が高い(大半はフィクションらしいが)。

「文学全集」の固いイメージにとらわれず、エンターテイメント性の高い小説として軽い気持ちで読むことができました。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.5
(5pt)

旅をした気分

とにかく面白かったです。
個人的にはガルシア=マルケスの「百年の孤独」より、こちらの方が断然好きです。
ゴーギャンとフローラ・トリスタンの夢見る楽園は、全く別の種類ですが、
どちらも自分の人生に情熱を持って生きていたんだと実感できました。
フローラ・トリスタンのエピソードは、歴史の重みを感じ、
ゴーギャンのタヒチやマルキーズ諸島のエピソードで、旅をしている気分も味わえました。
久々のヒットです。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.4
(5pt)

「いいえ、楽園は次の角ですよ」

フローラ・トリスタン(祖母)とポール・ゴーギャン(孫)の二人の話が、交互に語られる形式で物語は進行します。語りは、時々、親しみを込めて二人に呼びかけます。

「スカートをはいた扇動者」フローラ・トリスタンと「芸術の殉教者」ポール・ゴーギャンに血の繋がりがあるとは、初めて知りました。

この物語を一言で語る言葉があります。
「ここは楽園ですか」
「いいえ、楽園は次の角ですよ」

二人は、共に「楽園」を求めて精力的な生き方をしたのでしょう。家族も捨て、身体の不調にも耐えて。
トリスタンは、人間社会に「ユートピア」を求めて、ゴーギャンは、生命力に満ちた豊かな芸術の追求の先に「楽園」を求めて、一途に生きて行きます。

この二人の純粋さに驚かされます。
普通に生きれば、二人とも豊かな生活が保障されていたでしょう。
それなのに、周りの環境や人間関係をすべて捨ててまで求めた「楽園」は、決してたどり着ける場所ではなかったものです。それを承知で求め続けた二人の壮絶な生き方に敬意を表します。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.3
(5pt)

面白い

印象派の退廃的画家ポール・ゴーギャンと彼の祖母で労働運動家のトリスタンの晩年を描いたとても面白い小説。事前に内容を知らずに読み出せばもっと刺激的でショックが大きかったのではないかと思わせる。500ページ近くになる翻訳を圧倒的な筆力とこなれた日本語訳で一気に読ませてしまう。歴史的事実を踏まえつつ、作者の想像力が充分に発揮されたノン・フィクション小説なのだろう。
 本邦初訳ということだが、作者はあの落ちこぼれ日系大統領フジモリと大統領選挙を争った現地では超有名人であるということもまた興味深い。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.2
(5pt)

作家の想像力に感服

バルガス=リョサというと、ペルーの大統領選をフジモリ氏と戦ったことで日本では有名になったが(もちろんリョサ氏は落選)、文学の世界ではノーベル文学賞さえ射程圏におさめる大御所、大看板です。
本書はゴーギャンと、日本では無名だがその祖母トリスタンを素材にしていて、それだけでも興味深いが、作者の尋常ならざる想像力とあいまって、読書の楽しみを満喫させてくれる作品になっています。世界文学全集のラインナップに入れるには、評価が定まっていないというか、作品が新しすぎるのでは、という懸念もあったが、読んで納得。面白かった!
星を減らすほどではないけれど、若い読者や海外作品に慣れていない読者のためには、もっと語注があってもよかったろうし、主な登場人物の紹介や作品舞台の地図など、文学全集としては定番のサービスがあってもよかったのでは?
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427
No.1
(5pt)

何も知らずに読みたかった

この本は、晩年タヒチで隠遁生活を送った印象派画家ポール・ゴーギャンとその祖母で労働運動活動家のフローラ・トリスタンの晩年を描いたものである。こういう事実は、読む前からパンフ等で知らされていた。でも、そのようなこの本の内容を知らずに読んだらもっと新鮮な驚きとショックを感じたのではないだろうか。しかし、それでも本邦初訳とはいえ田村さと子の訳がすばらしいので、ぐいぐいと読ませてしまう。500ページ近くの大作を1日で読み終えてしまった。目次が書いてある小説というのも全くないことではないが、まあ、珍しい。この目次もなくてよかったと思うが、なければ読者は過去と現在、各章の中でさらに設定された過去と現在が混沌としてくるので、これは作者のサービスかもしれない。
 解説で、訳者本人が述べているように「騎士道小説の手法」を取り入れたものであるらしいが、文中、作者の言葉として、「おまえ」とフローラとゴーギャンに対して2人称で呼びかけているが、もう少し工夫した翻訳はなかったものだろうか。
 大胆な言葉・下半身言葉が頻繁に出てくるが、それにしてもタヒチでのゴーギャンはなんでまた、こんなにも14歳少女が好きなのでしょうか。とにかく、とても面白い小説である。
楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) Amazon書評・レビュー: 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)より
4309709427