日の名残り

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日の名残りの評価:

4.45/5点 レビュー 402件。 A ランク

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平均点4.45pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全911件 861〜880 44/46ページ
No.51
(4pt)

人生の名残り

タイトルは秀逸です。
映画は数回観て、いつか、必ず、原作を読もうと
思っていました。今回やっと文庫を手にすることに。

さて、先に映画があって、後から原作という順番なので、
読んでいても、どうしても映画のシーンが頭に浮かびます。
アンソニー・ホプキンス演じる、執事スティーブンスの
映像抜くにして、この原作は読めないという私の事情。

それにしても、映画は映画のよさ。
小説は小説の味わい、といったところ。

小説では、休暇をもらった執事がフォードで六日間の
旅に出て、昔の女中頭に再開する旅に出るという設定で、
その間に過去を懐かしみ、旅で出会った風景や人々を
描くという設定。

全体を通して、「大英帝国の興亡」といった時代背景を、
いち執事の独白と人生の様々なエピソードから構成すると
いう、一見地味、しかし、読むと、なんと味わい深い話か、
と深い感動を覚えずにはいられない、珍しい作品です。

人生いろいろあるけれども、すべてはみな、懐かしい思い出。
そんなことを、ダーリントン・ホールという、狭い空間で繰り広げられた
時代のヒダに立ち会った裏方から告白するという巧みな技によって、
影絵のような時代の流れを、万物は流転す、といわんばかりの
比喩で落日を描く、佳作です。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.50
(4pt)

カズオイシグロ☆日の名残り

カズオイシグロはたぶんほぼ全作品読んだと思う。テーマとしては「浮世の画家」と同じだ。終戦後の日本を舞台とした「浮世の画家」の方が後の感じがするが、実は「日の名残り」の方が後だ。戦争の「悪者」側に付いた父/主人を持った子/執事が違いである。カズオイシグロのすごいところは、自分が体験したことでもないのに細かい心のヒダまで描くことのできる想像力を持っているという所だと思う。この作品も読み進めるうちに細かい執事の回想から次第に話の全容が浮かび上がってくる。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.49
(5pt)

イギリスを旅しながらじっくり読みたい本

主人公の一人称で物語が進んでいく。
彼の人生で初めてかも知れない私用の一人旅。(それにも以前働いていた有能な女中頭を迎えに行くという言い訳を考えて)
旅の中で回想し「品性とは」「偉大な執事とは」と自問する。
やはり執事であった自分の父親のその誇りに思う執務と晩年の姿、そして職務に徹して看取れなかった彼の死。
時代の流れに呑み込まれてゆく前の主(あるじ)であるダーリントン卿に対する忠誠心と尊敬と愛情。
英国の激動の中心にいたという自負と、滑稽なほど忠実に脇役に徹して仕えるその職務に対する矜持。
辞めてしまった女中頭のミス・ケントンの想いにも自分の気持ちにも気づく事すらおこがましいとでもいうような不器用な自己抑制の効いた感情表現。
(心の中ではミスケントンと言っているのに本人との会話ではミセス・ベンと言っているのがかわいい)
新しい米国人の主ファラディ様に合わせる為ジョークの練習をする所も微笑ましい。
旅の途中で会う人々との触れ合い。
ラストの夕日を見ながら物思う場面が秀逸。
物静かで慇懃なクイーンズイングリッシュのナレーションを聴いてるような読後感。
映画もぜひ見てみたい。
そして美しい英語表現といわれるカズオ・イシグロの原書で読んでみたい。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.48
(5pt)

イギリスを旅しながらじっくり読みたい本

主人公の一人称で物語が進んでいく。
彼の人生で初めてかも知れない私用の一人旅。(それにも以前働いていた有能な女中頭を迎えに行くという言い訳を考えて)
旅の中で回想し「品性とは」「偉大な執事とは」と自問する。
やはり執事であった自分の父親のその誇りに思う執務と晩年の姿、そして職務に徹して看取れなかった彼の死。
時代の流れに呑み込まれてゆく前の主(あるじ)であるダーリントン卿に対する忠誠心と尊敬と愛情。
英国の激動の中心にいたという自負と、滑稽なほど忠実に脇役に徹して仕えるその職務に対する矜持。
辞めてしまった女中頭のミス・ケントンの想いにも自分の気持ちにも気づく事すらおこがましいとでもいうような不器用な自己抑制の効いた感情表現。
(心の中ではミスケントンと言っているのに本人との会話ではミセス・ベンと言っているのがかわいい)
新しい米国人の主ファラディ様に合わせる為ジョークの練習をする所も微笑ましい。
旅の途中で会う人々との触れ合い。
ラストの夕日を見ながら物思う場面が秀逸。
物静かで慇懃なクイーンズイングリッシュのナレーションを聴いてるような読後感。
映画もぜひ見てみたい。
そして美しい英語表現といわれるカズオ・イシグロの原書で読んでみたい。
日の名残り Amazon書評・レビュー: 日の名残りより
4120019470
No.47
(5pt)

イギリスを旅しながらじっくり読みたい本

主人公の一人称で物語が進んでいく。
彼の人生で初めてかも知れない私用の一人旅。(それにも以前働いていた有能な女中頭を迎えに行くという言い訳を考えて)
旅の中で回想し「品性とは」「偉大な執事とは」と自問する。
やはり執事であった自分の父親のその誇りに思う執務と晩年の姿、そして職務に徹して看取れなかった彼の死。
時代の流れに呑み込まれてゆく前の主(あるじ)であるダーリントン卿に対する忠誠心と尊敬と愛情。
英国の激動の中心にいたという自負と、滑稽なほど忠実に脇役に徹して仕えるその職務に対する矜持。
辞めてしまった女中頭のミス・ケントンの想いにも自分の気持ちにも気づく事すらおこがましいとでもいうような不器用な自己抑制の効いた感情表現。
(心の中ではミスケントンと言っているのに本人との会話ではミセス・ベンと言っているのがかわいい)
新しい米国人の主ファラディ様に合わせる為ジョークの練習をする所も微笑ましい。
旅の途中で会う人々との触れ合い。
ラストの夕日を見ながら物思う場面が秀逸。
物静かで慇懃なクイーンズイングリッシュのナレーションを聴いてるような読後感。
映画もぜひ見てみたい。
そして美しい英語表現といわれるカズオ・イシグロの原書で読んでみたい。
日の名残り (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (中公文庫)より
4122020638
No.46
(5pt)

本物

内容に力があり、文に芸があります。
平易な運び、静かな展開でありながら、
次第に持ち重りがして、しっかり読者を動かしていきます。

人生の限りある時間を、もし読書に割くとしたら、こういうものを読みたい。
文学ファンのひとりとして、こういう作品が著され、翻訳されていることは、僥倖と感じました。

どの世代の方も、それぞれに感慨を持たれるでしょうし、
後に読み返せば、また別な見え方で立ち現れてきそうです。
読み返しに耐える奥行きをもつ作品だと思います。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.45
(5pt)

夕暮れ時に読むのが一番。

カズオ・イシグロの『日の名残り』を手にしたのは、10年以上前の大学時代だった。当時は、全然読む気になれず、10年以上積読しっぱなしだったが、2011年に『わたしを離さないで』が映画公開されたことがきっかけで、原作であるNever let me goを小説とオーディオブックで聴いてみた。実際に聴いて、読んでみて、かなり衝撃を受け、感動した。それで、積読しておいた『日の名残り』を再び読んでみようと思った。

この小説は、1950年代のイギリスが舞台。有名貴族に長年仕えてきた執事が、雇用主の死により、豪邸がアメリカ人実業家の手に渡り、主人をイギリス貴族からアメリカ人に代わったところから始まる。物語の大半は、執事の独り言と回想で、「品格」とは何か、について熱く語っている。心の葛藤まで独り言で話している(考えている)ことが文字となっているので、なんだか、すごく面白く、読んでいて笑ってしまうこともあった。

主人公の執事が、アメリカ人の雇用主から人生で一度も取ったことのない休暇をもらい、かつての同僚であり思いを寄せる女性のもとに自動車旅行へ出かける旅が中心。その旅と同時にかつての主人である貴族についての回想が繰り広げられる。そして、あらゆる思い出が一度に甦っていく。どんどん読み進められるほど、はまってしまった。

読んでいて思ったのは、封建主義の下の人々がどんな心理なのかが、読んでいて手に取るようにわかるような気がした。主人のために自分のすべてを捧げる文化は、日本にもあるので、多分、日本のサラリーマンには、すごく共感するところがあるかもしれない。ただ封建的と言っても、ネガティブな雰囲気ではなく、貴族には「ノーブレス・オブリージュ」という貴族の義務があり、「品格」があるというニュアンスで。

カズオ・イシグロの小説は、日本人にとって非常に馴染み深い印象を受けるとよく言われている。日本人の感性と似ているとも言われている。これは、多分、日本の文学が、イギリスの文学に似ているからかもしれない。カズオ・イシグロは、「間」をうまく描いていると思う。その絶妙の「間」が日本人の感性と合うのかもしれない。

ちなみに小説のタイトルの「日の名残り」とは、夕暮れのことで、主人公スティーブンスが旅の終わりに出会う、かつて執事であった老人との話に凝縮されている。一日で一番好きな時間は、夕暮れ時だ、というもの。過去の思い出ばかりの年老いたスティーブンスが、残りの日々が人生で一番すばらしいものだ、ということを自分自身で気づき、気持ちを切り替えてアメリカ人の主人に再びお仕えしようとするところで、小説は終わる。

最後に、なんとなく感じた印象としては、カズオ・イシグロは、『日の名残り』の中で、かつての大国であったイギリスが斜陽の真っ只中であることを執事スティーブンスの人生になぞらえているようにも感じた。かつての栄光と現実の中で、カズオ・イシグロは、夕暮れ時が一番良いものだ、と自分自身を納得させようとしているかのようだった。イギリスで最も権威のあるブッカー賞を獲得したのもうなずける作品だ。

この小説は、アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソン主演で映画化されているので、ぜひ観てみたい。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.44
(5pt)

岡田信行です

もっと勉強していれば良かったです

主人公に影響されて 形だけでも真似したいです

こんな雰囲気の映画をもっと探します

後で買って ゆっくり英語の勉強します
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.43
(5pt)

人の気持ちが分からないすべての人のための小説

さすがに代表作だけあって本当に素晴らしい作品でした。

・読んでる恋愛小説をミス・ケントンにからかわれるところ

・自分の父親にダメ出しするところ

・ユダヤ人召使いをクビにするところ

・落ち込んでるミス・ケントンをさらに落ち込ませてしまうところ(しかも悪気なく)

・最後のプチ告白のシーン

いくつもの情景があざやかなイメージとともに思い出されます。

まるで本当にそれを体験したかのように。
つまり、読者の体験と共鳴させるほどの筆力があるということなのでしょう。

ワタクシ思いますに、本当に優れたものというのはいつも何かを思い出させるような気がします。 ほんとの駄作は何もインスパイアーしない。

執事の仕事に意味があるかどうかは主人の行動にかかってる

とかいうテーマもあるみたいですが、

僕にとっては執事とミス・ケントンとのすれ違い、もっというと主人公の鈍感さ、気づかいの出来なさがひたすら悲しい作品でした。

というのも当然僕に人の心が分からないからですが。

いわば召使いロボットの悲しみというか。

いつになったら人間になれるのかなってなブルーですね。

まあそれはともあれ、不可避の要因が重なって重大な危機に陥ってしまう悲劇性、そこはかとない喜劇(若い貴族に結婚初夜のことを教えるハメになるところ)、美しい邸宅の情景が渾然一体となって一大交響曲が奏でられていると思います。

たぶんこのレベルだと好き嫌いを超越してるんだと思う。

っていうか、繰り返しになるけど、この作品のキモは、

愛する人とのすれちがい、

相手の気持ちはもちろん自分の気持ちにさえ鈍感な人間の悲しみ

だと思う。

早く人の気持ちが分かるようになりましょう。

すでに分かってるひとは別ですが
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.42
(5pt)

読み終わりたくない・・・・

老執事の「旅」が終わりに近づく・・・・・ということは、スティーブンスとミス・ケントンとの再会が近づくということであり、我々読者もその現場に立ち会えるということだ。と、同時に、スティーブンスとのこの旅を導いてくれたこの物語との別れということにもなる。

 残り少なくなるページをこれほどいとおしく思う本というものはそうそう沢山あるものではない。私にとってこの本は、そうした数少ない本の一冊になるだろう。

 土屋政雄の上品な翻訳が素晴らしく、見事だ。

 既に多くの好評価を得ている本書であるので、まずは、読んでいただきたいというのが正直な気持ちである。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.41
(5pt)

抑制が生み出す美

「私」と一人称で語られるこの小説における語り手であるスティーブンスは、極めて高い職業意識を持った執事としてダーリントン卿に仕えることに人生を捧げてきた。

新しいアメリカ人主人から短い休暇を得た彼は、イギリスの美しい田園地方を旅し、ダーリントン卿に仕えていたかつての日々に思いを馳せる。ダーリントン卿への敬慕、偉大な執事であった父、そして、共にダーリントン・ホールで仕事をした女中頭、ミス・ケントン…。

品格(dignity)ある執事であろうと、人生を職務に捧げ、忠実に卿に仕えてきたスティーブンス。老年の域に達した彼の回想には、執事としての尊厳とともに、執事として自己を抑制してきた者の哀しみが宿る。彼の見出した希望とは…。

土屋政雄さんの翻訳も本当に素晴らしいです。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.40
(5pt)

日系イギリス人(長崎生まれ)

NHKテレビ3か月トピック英会話 2010 11―聴く読むわかる!英文学の名作名場面
で紹介がありました。

ブッカー賞を受賞との事。

最初に取り上げた文は
Stevens, are you all right?
で,重要表現とのこと。

名場面は
When I was young, I used to keep all sorts of tropical fish in a tank.
Quite a little aquarium it was.
I say, Stevens, are you all right?
I smiled again.
Quite all right, thank you sir.
とのこと。

読むきっかけができました。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.39
(5pt)

すばらしい余韻

十数年ぶりにバトラーである主人公スティーブンスの述懐を再読。「日の名残り」の題名のとおり、読後の心をひたひたと埋めていくのは、豪華な夕焼けのあとの、黒ずみ色あせ、しかし芯にはいくらかまだ熱が残る残照と、その陰にある人の姿。日が落ちいつか闇夜になろうとも、人の世は人を静かに朽ちさせてはくれない。全身全霊で職務を全うし生きる、主人公の今の心の軽みとしなやかさが、尊く、そして切なく懐かしい。目の前の事柄を丁寧に行い生きることが、どれほど美しく多様であることか。若い熱意や日の輝きばかりが美しいのではない。すばらしい余韻です。生涯の書物の一冊。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.38
(5pt)

驚嘆するほかない

カズオ・イシグロが長編第3作目として、30代半ばでこの小説を書いたことは、驚嘆するほかありません。
いったいどんなものを読み、どんな経験を積み、どんな世界を自己の中に構築していけばこんな小説が書けるのでしょうか。
他のレヴュアーの方も書いておられましたが、これが世界文学のレベルというものなのでしょうか。
面白さ、美しさ、豊かさ、深さにおいて、そこらの三文小説との差には愕然とするものがあります。

作者は、お金では買えない、人間にとって最も大切なもののひとつであるところの「pride」を軸に、この完璧な回想記を書ききっています。
登場人物は皆完全に作者の手中にあり、神のごとき手際で彼らを動かし語らせています。
しかしそれらのすべてが、スティーブンスの口から、スティーブンスという人間のフィルターをとおして語られるため、
不確実性という紗をかけられた物語をどう受け取るか、読者にゆだねられることになります。その構成は見事というほかありません。

この奇跡のような小説が生まれる過程で、作者は、どのように着想を得、構想を練り、いったい何度書きなおすのだろう。
編集者に渡るまで、どんな肉付けがされ、どんな言葉をつけたし、どんな言葉を抑制したのか。
一作ごとに作者がどれほどの心血を注いでいるかは、その寡作ぶりをみれば明らかです。
そうやって生み出された小説は、一部の文学愛好者だけではなく、物語を愛するすべての人たちの心に届きます。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.37
(5pt)

上質な小説!しかし…

レビューでの評価が高いですが、私もやはり★五つです。 イシグロの作品は、初めて手にとりましたが、表現豊かで、人間の細かな感情も丁寧に書き込んでおり、読んでいて安心感がありました。 この作品は、ある程度年齢を経てきた方には非常に共感するものがあり、穏やかな気持ちで読了できることと思います。 生きるとは何か、日々とは何か、自分というものをどう捉えたらよいのか、など、答えはなく人それぞれでしょうけれども、本書にはある一人の執事の人生を通して、それらが穏やかにそっと書かれています。 しかし…訳者のあとがきが最低です。 素晴らしい感動を小説からもらい、それにひたりながらシメとして私はあとがき又は解説を読むのを楽しみにしているのですが、本書もそのようにして読みましたら、本当に嫌な気持ちになりました。小説のよさが台なしです。 私はこの訳者に詳しくありませんが、品格を疑いました。 こんなに素晴らしい小説を訳し、訳された文章に関しても申し分ないのに、何故そのようなことを書くのですか? 下らない、としか言いようがないことばかりです。特に、イシグロのミスを論うなんて信じられません。作家と訳者の間でのやりとりで、既に記述が変更されたのですから、完成された小説を前にして作家のボロを露呈させることに何の意味がありますか? 内容が素晴らしかっただけに、非常に腹立たしく、残念です。 このレビューを見た方、どうぞ訳者あとがきは読まずにいて下さい。感動したあとを踏みにじられますよ。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.36
(5pt)

失われつつある伝統的な英国を抒情豊かに描いたブッカー賞受賞作

本書は、現代英国文学界を代表するカズオ・イシグロの、英語圏で最高の権威を持つ文学賞「ブッカー賞」’89年度受賞作。アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソンらが出演した映画にもなっている。

かつて政界の名士であるダーリントン卿のもとで自他共に名執事として許していた‘私’ことスティーブンスは、1956年の夏、新しい主人であるアメリカ人の富豪ファラディの好意で、ひとり自動車旅行に出かける。‘私’は昔の同僚で女中頭のミス・ケントンとの再会に胸膨らませながら、イギリスのすばらしい田園風景の中を西へ向かう。

旅の途中、‘私’の内によぎるのは、長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、ふたつの世界大戦の間に邸内でも催された外交会議の数々、そしてそんな中での自分の執事としての仕事ぶりだった。

本書は、慇懃丁寧ともいえる人生の黄昏を迎えた‘私’の述懐というスタイルで、じつに温和に、優しく、静かに語られるのだが、そこには、第二次大戦後、対ナチ協力者として葬り去られ、不名誉をもって亡くなったダーリントン卿や、いまやアメリカ人の富豪の所有するところとなってしまい、使用人も数えるほどしかいなくなった、由緒あるダーリントン・ホールなどに象徴される、今はその光を失った「古き善き大英帝国」の栄光に対する哀惜の心がうかがえる。

最期のシーンで、ミス・ケントンとの再会ののち、‘私’は涙しながら、新しい主人に対してアメリカ流のジョークの練習をしようと思い立つ。

本書は、失われつつある伝統的な英国が、執事である‘私’の述懐で抒情的に描かれた、心にしみる名作である。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.35
(5pt)

なるほど執事か!

執事ときたか。なるほど、これほどイギリス的な存在もあるまい。ミスター・スティーブンスの滅私奉公ぶりと職業的矜持が気高く語られる前半部。なるほどねえ、とふむふむ頷きながら読んだ。父子二代の執事とは!老いた父の最期は、静かな緊張感のある一幕だった。
 後半の、見方を変えてカメラを少し引いたような描き方で、スティーブンスの石部金吉ぶりが描かれる。女心が分からなすぎるだろう!というか、自分の気持ちを自分でごまかしているだけじゃん!コミカルな部分と読むことも出来るし、スティーブンスの偏屈石頭ぶりにカチンときながら読むことも出来る。
 終盤、ダーリントン卿とナチス・ドイツの関係が明確に語られることによって、スティーブンスの独白がすべて自分への言い訳だったことがはっきりする。私の人生は無駄だったのか?私の人生はすべて過ちだったのか?自分で自分に、いや、そうではなかったはずだ…と彼は独白し続け、疲れ果てたのだ。
 ミス・ケントン=ミセス・ベンに心からの祝福を述べて別れ、スティーブンスは静かに海を見る。もう心残りもないではないか。スティーブンス、寂しさと空白の中にあるその心の軽さ、それこそが自由なのだ。イギリスの若者たちが命をかけて守った自由なのだ。結果として一時は間違った力に荷担したとはいえ、一所懸命生きたからこそ、スティーブンス、その自由を楽しむ権利が君にはあるのだ。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.34
(5pt)

映画版は観ていたのですが

あの映画からは、原作がまさかこんなに笑える部分のある小説だとは想像できませんでした。
イギリス流ユーモア。ちょっと意地が悪くて、でも私はそんな意地の悪さが大好き。

いやー、おもしろい。

しかしながら、30そこそこでこんなに痛みのある作品を書いてしまうのだから、やっぱりこの人は天才なんだなぁと思う。物書きとしても、人間観察家としても。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.33
(5pt)

英国の小説

作者名がカタカナだったので、日系二世か日本人が英語で書いた小説かなと思って、手に取って見た。作者は五歳のとき英国に渡っているから、英国の言葉、文化のなかで育っているのだろう。本作品でブッカー賞(英国最高の文学賞)を受賞している。思考や感性や生活習慣も英国に適応していることが窺われる。日本的な面がないかと読んでみると、語りの調子が日本的な気がしたが、読みやすくするための訳者の熟達した技なのかもしれない。大雑把な推測であるが、英国貴族の生活を執事が語るという手法は平安時代の宮廷生活を女官が物語るのに似ているのではないかとも思った。
 この物語は日本のものとは違って英国流のユーモアがある。余裕(遊び)があるから解釈の幅が広い。仕事と理想(空理)に生きる男(執事)が現実において女性(女中頭)の心理を理解出来ない滑稽譚と見ることもできるだろう。私はその滑稽さは好ましく、共感出来た。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037
No.32
(5pt)

水になりながら読む

非常に静かで体感的な文章だと思う。
陳腐な表現になるが、この作品に限らず
どの作品にも「透明な悲しみ」様のものが
最初から最後まで、静かにヒスノイズのごとく流れている。
なんというのか、この人の文章を読んでいると
さまざまに流れている冷たい水の特性そのものを味わっている感覚になる。
それを見ていて、見ている側がそのものになっていくようだ。
動いている洗濯機をなんとなく見ていてトランスに入っていくみたいに。

こういう文章を味わう読書ができる作家との出逢いは非常に稀で、
個人的には成人してからは5,6人程度。
しかも、洋の東西を問わずカズオイシグロの文章の玲瓏さは極上である。

原文でも同じ感覚を得られるだろうかと原書も並行して読んでみた。
日本語でかんじたままにかなり近い独特の文章世界を感じる。
彼の文章の持つ質感を極力壊さない形で日本語に移していく
翻訳者の方の力量もすごいなと同時に思う。

こういう事を書いて、この作品のレビューとしてなりたつかどうかは別として、
この作家との初めての出逢いがこの作品だった。
そして、この作品からカズオイシグロを読み始めたのは
大正解だったと思うので書いた。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 日の名残り (ハヤカワepi文庫)より
4151200037