幻影の書

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評判

幻影の書の評価:

4.43/5点 レビュー 35件。 B ランク

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平均点4.43pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全72件 21〜40 2/4ページ
No.52
(4pt)

なんだか似ている?

読み終わった後、長い夢から覚めた感じがした。
その感じは、『ノルウェイの森』の読後感に似ていた。
何となく似ているところ、ありませんか?
(例えば、主人公が飛行機が苦手なところとか...)
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.51
(4pt)

なんだか似ている?

読み終わった後、長い夢から覚めた感じがした。
その感じは、『ノルウェイの森』の読後感に似ていた。
何となく似ているところ、ありませんか?
(例えば、主人公が飛行機が苦手なところとか...)
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.50
(4pt)

ストーリーに加えて独特のペースと文体

アメリカの現代小説は、食わず嫌いでした。若いころにアーサーヘイリーは幾つか読みましたがすっかりのご無沙汰でした。 書評欄であまりにも好評だったので購入して読み始めたところをその質量のボリューム感に圧倒されました。 評者は読むスピードは相当と自負していますが、この小説を読み終えるのに丸5日かかりました。 読むのに難渋したのではなく文章表現が繊細で、また訳もこなれていて十分に味わいながら読んだからです。家族を飛行機事故で失った大学教授が、ふとしたことから無声映画の俳優の失踪にかかわり、幻影のようなストーリーを見て行くのです。 そして最後は、締めくくりの悲劇が。 そしてそれを超克してゆくだろうという期待感を読者に持たせて終わります。 なかなか深い小説で、少し敷居が高いと最初は感じましたが、読了した後は充実感で心が満たされました。 小説でこのような思いを持ったのは久方振りでした。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.49
(4pt)

ストーリーに加えて独特のペースと文体

アメリカの現代小説は、食わず嫌いでした。若いころにアーサーヘイリーは幾つか読みましたがすっかりのご無沙汰でした。 書評欄であまりにも好評だったので購入して読み始めたところをその質量のボリューム感に圧倒されました。 評者は読むスピードは相当と自負していますが、この小説を読み終えるのに丸5日かかりました。 読むのに難渋したのではなく文章表現が繊細で、また訳もこなれていて十分に味わいながら読んだからです。家族を飛行機事故で失った大学教授が、ふとしたことから無声映画の俳優の失踪にかかわり、幻影のようなストーリーを見て行くのです。 そして最後は、締めくくりの悲劇が。 そしてそれを超克してゆくだろうという期待感を読者に持たせて終わります。 なかなか深い小説で、少し敷居が高いと最初は感じましたが、読了した後は充実感で心が満たされました。 小説でこのような思いを持ったのは久方振りでした。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.48
(5pt)

まさにイリュージョン

本書の評価にストーリーテリングの巧みさが挙げられていますが、読者をぐいぐい引っ張っていく、というよりは、様々な対比、劇中劇、時間/空間の移動などなどの技巧が、読者をストレスなく次のステージへ連れて行ってくれる、という感じでしょうか。
小説というのはいろんな読み方、楽しみ方ができるもののほうがおもしろいですよね。本書は本の話であり、映画の話であり、絶望の話であり、回復の話であり、孤独の話であり、関係の話であり、現実にありえる話であり、幻影でしかない話であり・・・。タネも仕掛けも十分な、それでいて騙された感のないイリュージョン。
オースターの最高傑作かどうかは読み手の趣味でしょうが、傑作であることには間違いなく、なんといっても最後の1行には不覚にも(?)涙してしまいそうでした。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.47
(5pt)

まさにイリュージョン

本書の評価にストーリーテリングの巧みさが挙げられていますが、読者をぐいぐい引っ張っていく、というよりは、様々な対比、劇中劇、時間/空間の移動などなどの技巧が、読者をストレスなく次のステージへ連れて行ってくれる、という感じでしょうか。
小説というのはいろんな読み方、楽しみ方ができるもののほうがおもしろいですよね。本書は本の話であり、映画の話であり、絶望の話であり、回復の話であり、孤独の話であり、関係の話であり、現実にありえる話であり、幻影でしかない話であり・・・。タネも仕掛けも十分な、それでいて騙された感のないイリュージョン。
オースターの最高傑作かどうかは読み手の趣味でしょうが、傑作であることには間違いなく、なんといっても最後の1行には不覚にも(?)涙してしまいそうでした。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.46
(4pt)

ラストが胸に迫る秀逸なストーリー

ポール・オースターは長く著名なのにさほど読んでいない。だが、オーソドックスに面白い純文学を探している過程で『ムーン・パレス』を発見し、そのストーリーテリングに感銘し、著者の新たな代表作と名高い本作を手にとった。結論からいうと、僕はこの小説のラストに救われた。〜著者の奔放な創造性が見事なストーリー・テリングによって語られ、最後まで創造力は枯渇することなく面白い。そして、その過程で語られる主人公の孤独と絶望。そこからの再生のテーマを本作は見事に具象化している。ネタバレは避けたいので内容には触れないが、ラストが近づくにつれポール・オースターのストーリテリングはどんでん返しのように希望が断たれてゆくある登場人物の行為を描く。そして主人公と恋に落ちた女性は命を自ら立つ。だが、そこからの再生への更なるどんでん返しのパワフルさは圧巻だ。かなり疲れている時に読んだためもあるが、ラストの希望は僕の胸にせまり、爽やかな一陣の風に吹かれたように人生を肯定された。孤独とそこからの再生を物語る本作をぜひ多くの人に一読をお勧めする。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.45
(4pt)

ラストが胸に迫る秀逸なストーリー

ポール・オースターは長く著名なのにさほど読んでいない。だが、オーソドックスに面白い純文学を探している過程で『ムーン・パレス』を発見し、そのストーリーテリングに感銘し、著者の新たな代表作と名高い本作を手にとった。結論からいうと、僕はこの小説のラストに救われた。〜著者の奔放な創造性が見事なストーリー・テリングによって語られ、最後まで創造力は枯渇することなく面白い。そして、その過程で語られる主人公の孤独と絶望。そこからの再生のテーマを本作は見事に具象化している。ネタバレは避けたいので内容には触れないが、ラストが近づくにつれポール・オースターのストーリテリングはどんでん返しのように希望が断たれてゆくある登場人物の行為を描く。そして主人公と恋に落ちた女性は命を自ら立つ。だが、そこからの再生への更なるどんでん返しのパワフルさは圧巻だ。かなり疲れている時に読んだためもあるが、ラストの希望は僕の胸にせまり、爽やかな一陣の風に吹かれたように人生を肯定された。孤独とそこからの再生を物語る本作をぜひ多くの人に一読をお勧めする。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.44
(5pt)

絶望的なまでの喪失感から立ち直るため唯一大事なのは,何かをやりつづけることである

最愛の妻子を飛行機事故で失い,どうしようもなく圧倒的なまでの絶望感の中にあった「私」を救った一本の映画。
 それは,ほぼ60年前から消息不明で誰もが死んだものと思っているサイレント映画俳優兼監督ヘクター・マンの短編喜劇。
 実はまだどん底まで墜ちていないことを悟らせてくれたこの喜劇俳優の作品が,多額の保険金と損害金によって金と時間だけはいくらでもあった「私」の研究対象となる。
 とにかくやることが見つかった「私」にとって重要なことは,やり続けること,最後までやりとおすこと。
 これは確かにそのとおりだと思う。
 絶望感にうちのめされると何もしたくなくなるものだが,何もしないでいると余計に辛さが深くなる一方だ。仕事でも何でも良いからとにかく何かに取り組む。一心不乱に取り組む。これが絶望感から立ち直る唯一の方法なのかも知れない。
 「私」はついにヘクター・マンのサイレント映画についての詳細な研究本を完成させ世に出す。
 そんな私のもとに届いた一通の手紙。
 それは,死んだと思っていたヘクター・マンからの招待状だった。

 本作の素晴らしさは,「私」自身の再生の物語と,ヘクター・マンの再生の物語が非常にうまく融合されているのみに止まらず,ヘクター・マンが制作した映画のストーリーまでが全体の物語と融合するという三重構造になっていて,それがぐいぐいと作を読まずにおれない面白さになっている点にあると思います。
 オースターの作品は,ここ最近読んでなかったのですが,久しぶりに他の作品も読んでみようかと思わせる充実した作品でした。

幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.43
(5pt)

絶望的なまでの喪失感から立ち直るため唯一大事なのは,何かをやりつづけることである

最愛の妻子を飛行機事故で失い,どうしようもなく圧倒的なまでの絶望感の中にあった「私」を救った一本の映画。
 それは,ほぼ60年前から消息不明で誰もが死んだものと思っているサイレント映画俳優兼監督ヘクター・マンの短編喜劇。
 実はまだどん底まで墜ちていないことを悟らせてくれたこの喜劇俳優の作品が,多額の保険金と損害金によって金と時間だけはいくらでもあった「私」の研究対象となる。
 とにかくやることが見つかった「私」にとって重要なことは,やり続けること,最後までやりとおすこと。
 これは確かにそのとおりだと思う。
 絶望感にうちのめされると何もしたくなくなるものだが,何もしないでいると余計に辛さが深くなる一方だ。仕事でも何でも良いからとにかく何かに取り組む。一心不乱に取り組む。これが絶望感から立ち直る唯一の方法なのかも知れない。
 「私」はついにヘクター・マンのサイレント映画についての詳細な研究本を完成させ世に出す。
 そんな私のもとに届いた一通の手紙。
 それは,死んだと思っていたヘクター・マンからの招待状だった。

 本作の素晴らしさは,「私」自身の再生の物語と,ヘクター・マンの再生の物語が非常にうまく融合されているのみに止まらず,ヘクター・マンが制作した映画のストーリーまでが全体の物語と融合するという三重構造になっていて,それがぐいぐいと作を読まずにおれない面白さになっている点にあると思います。
 オースターの作品は,ここ最近読んでなかったのですが,久しぶりに他の作品も読んでみようかと思わせる充実した作品でした。

幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.42
(5pt)

自ら出口を塞ぐ生き方が生む濃密な幻影のリアリティ

オースターの小説は個人的嗜好からすると初期作品のほうが好みだと思い、新刊出版ごとに飛びつくのはとうに止めていたので、この作品は最近はじめて読みました。

演技はしても声を聞かせない無声映画の俳優としてトーキーの誕生とともに姿を消す男。死後出版されるはずの回想録を生前に切り売りしなければならなかったナポレオン時代の実在の作家。他人の観賞に供する意図のなく製作された映画の細かな内容説明。これらすべてを含む、出版の希望を断たれた書きかけの伝記--モチーフというにはリアリティありすぎるこれらのエピソードが繰り返され、まさに、森の中で誰にも聞かれず木が倒れたかのように人が傷を負い、そこからの昇華を求めて苦悩する姿が描かれます。

出口がない、のではない。この出口は通っていい出口ではない、と判断して、自らどんどん出口をふさいでゆくような生き方をする登場人物たち。
オースターの他の最近作品ではそうした人物像に十分共感できずにいたのですが、この作品のこれでもか、というような圧倒的な状況の積み重ねの前には、その違和感も消えてしまいます。かわりに残ったのは、出口を塞いだ結果すべてが幻影となってしまう、そんな濃密なリアリティも存在するんだ、という深い感懐です。傑作でした。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.41
(5pt)

自ら出口を塞ぐ生き方が生む濃密な幻影のリアリティ

オースターの小説は個人的嗜好からすると初期作品のほうが好みだと思い、新刊出版ごとに飛びつくのはとうに止めていたので、この作品は最近はじめて読みました。

演技はしても声を聞かせない無声映画の俳優としてトーキーの誕生とともに姿を消す男。死後出版されるはずの回想録を生前に切り売りしなければならなかったナポレオン時代の実在の作家。他人の観賞に供する意図のなく製作された映画の細かな内容説明。これらすべてを含む、出版の希望を断たれた書きかけの伝記--モチーフというにはリアリティありすぎるこれらのエピソードが繰り返され、まさに、森の中で誰にも聞かれず木が倒れたかのように人が傷を負い、そこからの昇華を求めて苦悩する姿が描かれます。

出口がない、のではない。この出口は通っていい出口ではない、と判断して、自らどんどん出口をふさいでゆくような生き方をする登場人物たち。
オースターの他の最近作品ではそうした人物像に十分共感できずにいたのですが、この作品のこれでもか、というような圧倒的な状況の積み重ねの前には、その違和感も消えてしまいます。かわりに残ったのは、出口を塞いだ結果すべてが幻影となってしまう、そんな濃密なリアリティも存在するんだ、という深い感懐です。傑作でした。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.40
(5pt)

想定外の質感

「幻影の書」(ポール・オースター:柴田元幸 訳)を読んだ。「幽霊たち」以来20年ぶりに読むP・オースターなので、すごく硬質で尖鋭的なものを想定していた。が、どちらかというとドロリとした質感に違和感を覚える。フリーダの妄執の本質を私は読み取れずにいるが、ものすごく面白い物語である。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.39
(5pt)

想定外の質感

「幻影の書」(ポール・オースター:柴田元幸 訳)を読んだ。「幽霊たち」以来20年ぶりに読むP・オースターなので、すごく硬質で尖鋭的なものを想定していた。が、どちらかというとドロリとした質感に違和感を覚える。フリーダの妄執の本質を私は読み取れずにいるが、ものすごく面白い物語である。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.38
(2pt)

良くも悪くも散文的

題名と装丁に惹かれて購入したが特に面白くは無かった。
翻訳は非常に上手く、唸らせるものがあると思う。ただし私にとってはストーリーが決定的につまらなかったし、
特にセックス描写全般に関して、パウロ・コエーリョの11分間を読んだときのような鼻白んだものを感じた。
ストーリー上の不満点もそこにあるご都合主義(と私が感じたもの)によるが、ネタバレになるので差し控える。
11分間も高評価レビューの多い作品であり、案外このテイストが好きな人は多くてそういう人たちにとっては面白いのかもしれないと思う。

久々にジャケ買いで失敗したと感じた。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.37
(2pt)

良くも悪くも散文的

題名と装丁に惹かれて購入したが特に面白くは無かった。
翻訳は非常に上手く、唸らせるものがあると思う。ただし私にとってはストーリーが決定的につまらなかったし、
特にセックス描写全般に関して、パウロ・コエーリョの11分間を読んだときのような鼻白んだものを感じた。
ストーリー上の不満点もそこにあるご都合主義(と私が感じたもの)によるが、ネタバレになるので差し控える。
11分間も高評価レビューの多い作品であり、案外このテイストが好きな人は多くてそういう人たちにとっては面白いのかもしれないと思う。

久々にジャケ買いで失敗したと感じた。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.36
(5pt)

圧巻のストーリーテリング

次のページで何が起こるのか気になって、一気に読めました。

著書の過去の作品によくあった、内省的な方向へは進まず(そこがこの著者の良さなのでしょうが)、
孤独、静謐さを保ちながら実際的な物語が展開していきます。

ちゃんとしたオチも与えられて、単純に物語としてはオースターの最高の物だと思います。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.35
(5pt)

圧巻のストーリーテリング

次のページで何が起こるのか気になって、一気に読めました。

著書の過去の作品によくあった、内省的な方向へは進まず(そこがこの著者の良さなのでしょうが)、
孤独、静謐さを保ちながら実際的な物語が展開していきます。

ちゃんとしたオチも与えられて、単純に物語としてはオースターの最高の物だと思います。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145
No.34
(4pt)

「The Inner Life of Martin Frost」と本書について

本書の後半に出てくる「The Inner Life of Martin Frost」は本書執筆後に、オースター自身による監督で映画化されている。(米国でDVDが出ているほか、シナリオも出版済。)映画のストーリー自体は本書で紹介されている内容が前半でその後に(本書では触れられていない)後半のストーリーが続いているが、著者お得意の「書くこと」を巡る素敵なおとぎ話に纏まっていた。

 このMartin Frostを巡る物語は当初から短編映画シナリオとして執筆されており、実は本書の創作よりも歴史は古い。オースターは複数のアイデアを何年も練りながら作品を熟成させる作家だが、本書の場合は最初にある程度完成されていたMartin Frostの物語をリサイクルしながら後半が仕立てられているため、少しその接続部の溶接箇所にささくれがあったように思う。素敵な話ではあるのだが、この小説内に別ストーリーとして挿入させるには、少し冗長な気がするのだ。(そこが気になったので星一つを減らしました。)

 本書は「読むこと」「書くこと」に対する愛情を一貫して書き続けたオースターが、90年代以来深く関わってきた「映画」への愛情を軸に据えて書いたおとぎ話です。そういう意味では、オースターが本書以降も「読むこと」「書くこと」に関する作品を書き続けていることを考えると、「代表作」とは言い難い作品ではあります。なので私も「最高傑作」とこの小説を評するのには賛成ではありませんが、よくできた小説であることには変わりありません。
幻影の書 Amazon書評・レビュー: 幻影の書より
4105217127
No.33
(4pt)

「The Inner Life of Martin Frost」と本書について

本書の後半に出てくる「The Inner Life of Martin Frost」は本書執筆後に、オースター自身による監督で映画化されている。(米国でDVDが出ているほか、シナリオも出版済。)映画のストーリー自体は本書で紹介されている内容が前半でその後に(本書では触れられていない)後半のストーリーが続いているが、著者お得意の「書くこと」を巡る素敵なおとぎ話に纏まっていた。

 このMartin Frostを巡る物語は当初から短編映画シナリオとして執筆されており、実は本書の創作よりも歴史は古い。オースターは複数のアイデアを何年も練りながら作品を熟成させる作家だが、本書の場合は最初にある程度完成されていたMartin Frostの物語をリサイクルしながら後半が仕立てられているため、少しその接続部の溶接箇所にささくれがあったように思う。素敵な話ではあるのだが、この小説内に別ストーリーとして挿入させるには、少し冗長な気がするのだ。(そこが気になったので星一つを減らしました。)

 本書は「読むこと」「書くこと」に対する愛情を一貫して書き続けたオースターが、90年代以来深く関わってきた「映画」への愛情を軸に据えて書いたおとぎ話です。そういう意味では、オースターが本書以降も「読むこと」「書くこと」に関する作品を書き続けていることを考えると、「代表作」とは言い難い作品ではあります。なので私も「最高傑作」とこの小説を評するのには賛成ではありませんが、よくできた小説であることには変わりありません。
幻影の書 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 幻影の書 (新潮文庫)より
4102451145