恋文の技術
評判
恋文の技術の評価:
4.32/5点 レビュー 116件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全194件 101〜120 6/10ページ
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恋文の技術の評価:
4.32/5点 レビュー 116件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
社会に出るのを先延ばしにしたいが為になんとなく大学院に進んだ彼は自分の専門分野にさしたる興味も持てず、
どんな仕事をしたいのかもわからず、将来について漠然とした不安を抱えています。
彼には意中の女性がいます。彼女は大学の同回生でしたが、主人公とは違いきっぱりと進路を決めて大学卒業後すぐに就職。
そんな彼女に引け目を感じ、彼はなかなか思いを伝えることができないでいます。
意中の女性、そして社会に対して彼の抱いている不安は「自分は彼女/彼等に必要とされるだけの価値のある人間なんだろうか?」というものです。
この小説は、そんな主人公が「意中の女性」以外の友人や先輩や家族といった面々に宛てて書散らした手紙、という形をとって進行します。
その量と内容のくだらなさ(爆笑もの)たるや凄まじく、書くことで自分の抱える不安をなんとか紛らわそうという強迫観念めいたものを感じてしまいます。
彼は手紙の中でコミカルに世間を罵り恋愛を呪ったかと思えば、自分のふがいなさを嘲笑してみせたりもします。
そして、肝心の彼女にはいつまでたっても手紙を出すことができません。
そんな中、文通相手のひとりである主人公の妹が指摘します。
「みんながお兄ちゃんの手紙にこたえて、手紙を書いてくれるっていうのは、とてもすごいことではありませんか。
それをお兄ちゃんはすごいことだと思わないんですか?ありがたいことだとわかってるんですか?」
唐突ですが、ブライアン・イーノの日記を本にまとめた [[ASIN:4891945532 ブライアン・イーノ A year] にこんなくだりがあります。
イーノ氏が旅行先のエジプトで、バスに乗っているときのこと。
「男の子が自転車に乗って猛スピードで併走し、繰り返し叫ぶ。 ”ぼくはここ” 人類の中心的かつ唯一のメッセージかもしれない。」
主人公がひたすら手紙を書きまくるのも、「ぼくはここ」と叫んでいるようなものなのでしょうか。
友人宛てのある手紙に、彼はこう書きます。
「ここにいる!守田一郎はここにいる!」
そしてそれに応えてくれる人がいる、それ自体がすごい事。
コミュニケーションの内容(そしてその価値)ではなく、コミュニケーション自体の喜びを描いたのがこの小説だ、とも言えるかもしれません。
内容や価値ではなく、まずつながろうとすること。
終盤、手紙に関してとても美しいイメージが登場します。
「・・・風船に結ばれて空に浮かぶ手紙こそ、究極の手紙だと思うようになりました。
伝えなければいけない用件なんか何も書いてない。ただなんとなく、相手とつながりたがっている言葉だけが、ポツンと空に浮かんでいる。
この世で一番美しい手紙というのは、そういうものではなかろうかと考えたのです」
森見氏はあとがきを読むかぎりでは携帯や電子メールにはあまり好意的な印象をもっていないみたいですが、
(そして自分もそういうものに対する苦手意識は強い方だったりするのですが)
それでもこの本を読んだあとでは、たとえばツイッターの何気ないつぶやきも
「ただなんとなく、相手とつながりたがっている言葉」
なんだと捉えることができる気も、またするのです。