色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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評判

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価:

3.41/5点 レビュー 1,022件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.41pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全562件 521〜540 27/29ページ
No.42
(5pt)

やはりすごい

はじめて村上春樹の世界観に触れて、面白くときにヒリヒリと傷むような感じがして揺り動かされた。
そして、次の新しい小説はもう用意されていると思えてならない。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.41
(4pt)

物語的な面白さよりも著者が何を言いたいのかを読み取るための作品

一通り読んでみてやはり著者村上春樹のストーリーテラーとしてのレベルの高さ、センスの高さを感じ取ることができます。色を持つ4人とそれに関わる多崎つくるの物語は、どこかしら不思議な点を感じさせます。そして誰にでも訪れるであろう人間関係の不和とそこからの復帰が今回の主要テーマで、読む人を選ぶ趣はあるものの、やはり著者の人間観察の鋭さと、根底を流れる精神の奥深さを感じさせます。今回の作品は物語的な面白さを追求したというよりは、何が言いたいのかに重きを置いた作品であるといえる、とそう思います。その点を探りながら読んでみると、著者の考え、言いたいことが理解できるのではないでしょうか。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.40
(4pt)

透明な水

名古屋。物が豊かで、変化はなく、とても壮大な退屈な街。私も住んで居ましたが、地元の人にとっては、何でもある、私にとっては何もない街でした。そこに留まった彼らには、色彩はあったが、色彩時間なかったのではないか。街のネオン、看板は色彩だ。しかし、看板やネオンは平面で、ここに出てくる登場人物はできる限り奥行きなく描かれている。クロとの再会のシーンは、ゆらぎや甘さがある。だから、本の厚みもこれ以上はあってはいけない。あくまで表面的に。
出てくる音楽はリスト。アラウについて触れられているが、リヒテルは趣味じゃないのかな。特徴的なのはシベリウス。フィンランドが巡礼のクライマックスに選ばれている。
この本の理解に、シベリウスの次のような言葉が不可欠なのではないだろうか?
「皆さんが、色とりどりのカクテルを差し出すとき、私は透明な水を差し出しているのです」

現代音楽、技巧に満ちた楽曲の中で、シベリウスの音楽は20世紀のそれに聴こえない透明さがある。交響曲5、7。
あの震災以降、色を失った景色の中で、透明な水をまずは一杯、差し出したのではないでしょうか。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.39
(5pt)

技術的には最も洗練された村上春樹作品

「巡礼の年」というフレーズに惹かれ、『海辺のカフカ』以来、久々の購入です。 文体に引き込まれ、一気に読了しました。
読了直後の感想は

・技巧的には最高傑作であろう。

・脱線や物語に不要な虚飾が廃されている。

・春樹作品らしい、現在の主人公とパラレルな世界(一応今作は過去のエピソードということになってるが、過去作品と同じく心象風景的な側面のものと捉えた方が良いかもしれない)が挿入されて展開されるストーリー。
今作ではかなり早い段階で、現在の主人公の物語一本に収束する。その点に村上春樹自身の成長が感じた。

・『国境の南、太陽の西』で描こうしたテーマ。それにもう一度取り組んだ作品?

というものです。
他のレビューで書かれている程、不親切で投げっぱなしという印象は受けませんでした。
そのような疑問の答えや最終的な結末を暗示させる隠喩や象徴が作品中に散りばめられていますし それを探しながら、もう一度読むというのもまた楽しいのではないでしょうか?
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.38
(4pt)

魂の再生の物語

皆さん、読み終えるのが早いですね。
私は仕事の合間などに読んでいるので、まだ「2」を読み終えたところです。
ですので、まず、さわりのところまでの印象を書いておこうかと思います。

まず、表紙。
カラフルな鉛筆のような、煙突のようなものが並んでおり、タイトルの「色彩をもたない」とは逆になっているところが面白い。

で、書き出し。
本の帯に「ある日ふと思い立って、数行書き始め、どうなるかわからないまま半年書き続けた」とあるように、
出だしは主人公のいきなりの虚無宣言で始まるという、まるで漫画版のエヴァンゲリオンのような始まり方。
物語の冒頭が「死」から始まるという出発は、最終的に「生」へと転化されるであろうと予測でき、期待が高まる。

でも、最初の数行で、個人的な話で申し訳ないのですが、自分が書いた小説と同じ始まり方、語り口だったため、
妙にコミットされてしまった。

私の年齢も主人公とほぼ同じ。つまり同年代の心の空虚感が描かれている、と思った。
それなりに生活できる、物質的に豊かな団塊ジュニア世代は、ある種のマニュアル神話の中で幸福を追求する人生を求められる。
でも、そこには常に空っぽな自分を感じては来なかっただろうか?
たぶん、高校生ぐらいで何か熱狂的のなれるもの、信じられる安定した世界観を欲しがったはずだ。
しかしそれは、幻想でしかなく、逃避でしかないことに、社会に出ると気づかされる。

私は三十代を前にして、どうやら鬱になったらしい。
メンタルクリニックにも行かずに耐えていたので、長いこと苦しかったのだが、
昨年あたりから病院を進められ、確かに鬱だったということがわかった。
どうしてそんなところに落ちこんだかというと、どのように生きていいのかわからなくなったからだ。
正解が見えない。しかし、正解なんてないのだ。
だからとにかく試行錯誤してきたのだが、何か進むべき運命が、巨大な無意識の塊の奥から語りかけていることは感じていた。今、それがなんなのか、理解できるようになってきた。

この作品の主人公は自殺に失敗して、死のことばかり考えていた。
私も死のことばかり考えて、自殺に何度も失敗した経験があるので、その辛さや痛みはわかる。
そして、無為にならざるを得ない日々をすごさねばならなかった。しかし、その無為と思われる時間というものは
どうやら必要なのだと、最近河合隼雄氏の著作を何冊か読んでわかった。

河合隼雄氏は、すでに数十年前のインタビューでね四十代を前にして我々世代が危機に陥るだろうことを指摘している。
そして、今の我々は、自分の内的宇宙の存在ほ包含して、進まなくてはならないようだ。
この「2」までを読み終えてみて、なんだか河合隼雄氏の指摘した課題を村上春樹氏も感じているようだと思った。

読み終えたら、改めてまた追記として感想を書いてみるつもりだが、今のところ私は、この作品は読みやすく、優しい、
綺麗な文章だと思って評価している。
だだ、星をひとつ減らしたのは、それほど強いインパクトがあるテーマではなかったから。
やはり私は村上氏には、アフターダーク的な新たな試みを期待してしまうので。

でも、この作品、村上春樹さんにとっては、必要な過程のように思える。
何かの区切りのために、必要だったのではないだろうか、と感じられる。
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4163821104
No.37
(4pt)

深いというより淡い

どうにも長編となると無駄に力が入ってボロが出る、というのが村上春樹の印象なんですが。この規模の作品は面白いですね。

ただ、「巡礼」ってほどかな?とは思いました。かつての友人を順番に訪ねて一人一人昔の誤解を解いてるだけというか。

当時一人でグチグチ死ぬほど悩むんだったら、もっと行動起こすべきだったのでは?とか思ったり。まぁ、そこでアクティブにガンガン攻められないあたりが、村上春樹の奥ゆかしさなのかもしれませんが。

深いかと言われると疑問ですが、淡い感じはします。結末もはっきりしませんしね。
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4163821104
No.36
(5pt)

なぜ春樹作品が愛され、売れるのか

あくまで個人的な話…

村上春樹の作品は人を落ち込ませもするし、元気にもする。それは人の本質を描いているから。人の痛いところを余すところなく描いているから。人の欲望を包み隠さずえがいているから。そう思います。

主人公に名前がついたことで、より自分に身近なものと感じた。
数ある村上春樹作品の中でもよりリアリティーが感じられる作品。より人を落ち込ませ、より人を元気にする力をもった作品。

抽象が具体へ一歩進んだ、村上春樹らしくもあり、らしくなくもある作品。
私は大好きです。自分自信を見つめなおさせられ反省し、いきる活力をもらいました。
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4163821104
No.35
(4pt)

「LOVE STORY」です。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」とても長いタイトルで最初は、全然意味がわからなかった。しかし、今の自分にはとても良く理解できているし、こんな簡単なことだったのかと頭を悩ませていた。文章は解りやすくどんどん進んでいった。内容も一人の青年をとりまく周囲の友人関係の話で、興味深い物語だ。今回は、ネットで予約をして購入したから、販売当日から読むことができたが、そうでない人はどうなのだろうか?書店で手に入れることができたのだろうか。他の評価を見るとそんなに高くはないが、私的にはいい評価をつけたいと思います。主人公の多崎つくるの行動力そして過去をさかのぼって問題を知り解決することに感心した。その中から・・・・・・。
 「限定された目的は人生を簡素にする」
 「記憶を隠すことはできても、歴史を変えることはできない」
最後まで読んで解ったことがある。これはラブ・ストーリーだということだ。やはりいつ読んでもラブ・ストリーはいいものだ。この小説の評価は高い。とても解りやすくて優しい内容に対してそして飽きない文章に・・・・・・。
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4163821104
No.34
(4pt)

余白が少なくなった気がする

「雑文集」の中に『余白のある音楽は聴き飽きない』と題したエッセイが収録されていますが、今回の新作を読んで感じたのは「余白が少ないな」ということです。

以前の作品では、魅力的かつ謎めいたパーツと工具が読者の前に静かに差し出され、それを読者が心のおもむくまま組み立てていく密やかな楽しみのようなものがあったと思うのですが、今回の作品では読み手が手を出す間もなく作者の側で恣意的に組み立てられていくような感じがあった。
以前の作品にあった、静かな余白があまり感じられず、急きたてられるように物語は進んでいく窮屈さも感じました。
作者が饒舌になった分、登場人物の生き生きとした存在感が失われたような気もしました。

あくまで著者の以前の作品と比較しての感想です。
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No.33
(4pt)

やはり読ませる。でも。。

村上春樹 新作読了して

やはり感嘆すべき作家です。
想像する力と、緻密な言葉の積み重ねが
読み手のイメージを多層的に拡げ、
時にはユーモアと絶望が交響して、
読書する醍醐味を味わせてくれました。
もし私がもう少し青春時代に近ければ、
かなり胸が痛み、呼吸がつらくなってしまったかも知れません。
この人は「失い続けること」を意識させる名人です。
この厚さ、ポイントで1700円はちょっと高いかなと思いましたが
値打ちは十二分にあります。
ただ気になることもあります。
この人はファンは中国や韓国にも多いと聞きます。
作中の重要なタームの一つとして
「記憶に蓋をすることは出来る。でも歴史を隠すことは出来ない。」
という言葉が数度出てきます。
これが単に、個人の切実な経験に言及した、普遍的な人間感情として
書かれているのなら良いのですが(そう願っていますが)、
何か政治的なものを指向しているなら鼻持ちならない言葉であり、
また或るもくろみを持った「何か」に利用されかねない危惧を感じました。
さらに突っ込めば、それがどんなに当人にとって切実であり、
かけがえのない経験、記憶でも、それが個人のものである限り、
正確には「歴史」とは言いません。
でも、とにかく素晴らしい小説がまた読めて幸せでした。
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No.32
(5pt)

生きづらさを感じている若者へのエール

比較的理解しやすい表現で書かれた、若者の葛藤を描いた作品でした。
それは今の時代をもがきながら生きる日本の若い人たちに向けた村上春樹さんからのエール。
そのように私は受けとめました。

難解な文学作品など読む余裕もない、もしくは読んだこともないような人たちにもちゃんとメッセージが届くように。
伝えたい相手にちゃんと伝わるように書かれているのだな、と勝手に解釈しつつ、読み終えました。
村上春樹さんの新刊発売というお祭り騒ぎにどんどん便乗して、読者の裾野が広がればいい。
この作品を必要としている人にまっすぐに届きますように。

今後の作品も楽しみです。
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4163821104
No.31
(5pt)

豊かな多様性と、明快な人物像

多崎つくるは、十六年掛けて、じっくり成長しました。。男2人は、あっさり描写されているのに対し、女性像は克明に描かれています。これが鍵かもしれない。置いてきたもの、手放せないもの、大事にしているもの、通じない思い、共感しながら読みました
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4163821104
No.30
(4pt)

あくまで一読だが、新鮮な感想を

本来一読した程度で感想を述べるのは、好きではないのですが、そうした感想も新鮮ゆえに、常連客の目の前に差し出すことも許されるのではないかと思い、投稿させてもらいます。ネタバレも一部含みます。

調和と不協和音、誰しもが一度は経験するはずのものですが、その経験を直視して、「暗い夜の海を泳ぎ切れるか」はまた別問題だと思います。人は時に、周囲と同じ行動をとることで、安心感を得ようとするし、また安心もします。高校生や大学生の中にはそういう人間は少なからずいるし、それが「美」とされる時さえある。
しかし、少し考えてみれば、24時間、誰かと同じ時間を過ごすことなどできない。当たり前の話です。
どうしても、流れる時間軸の中に、自分という存在と向き合う時間が生じる。そこで、はじめて、調和の世界から一歩這い出た自分が、「自分」を客観的に考察することができる。「東京」という場所で、調和だけの日々が続くのであるならば、どんなに楽でしょうか。繋がりがあるからこそ、そこに不協和音が生じることに不安が生じるのであって、感受性が人一倍強いシロはそれに耐えられなかったのではないかと思います(決して彼女が弱いということではない)。レイプされた被害者が、共同体の中でどのような立ち位置に置かれるのか、実際の被害者の方々の声を見聞すれば、想像することができます。優勢遺伝子が必ずしも社会に現れていないのと同じように、被害者もまた、社会で「存在しないもの」として扱われかねません。まるで、六本ある指を五本にして「整える」ように。

調和のない世界もなければ、不調和のない世界もない。
人は本気で人と向き合おうとすればするほど、えぐり取られるような苦しみとつらさ、寂しさを経験するものだと思います。常に一定の距離を持ち、誰とも、それが好意を寄せる女性であっても、心底繋がれない苦しさとはまた別のものかもしれない。本気で欲するからこそ、失うことの怖さを感じる。自分が失われてしまうのではないかと不安になる。しかし、その不安は、本気で欲した者にしか経験できない不安ではないでしょうか。
つくるは、沙羅を本気で「得よう」とする。それに沙羅も本気で「応えよう」とする。
結果ではなく、その二人の心の変化にこそ、悪魔に飲み込まれないようにするための、生への渇望が垣間見られると思いました。

私は、どちらかというと、つくる君のような人生なのかなと思います。どこかで、人から腹黒さを感じ取られ、男女問わず、心の底から人と付き合うことができずに生きています。自分では、努力しているつもりでも、どこかに「闇」を抱えているのかもしれません。本作品に自分自身を投影してしまったため、バイアスがかかり、評価を満点とすることはできません。しかし、一度でも「死」を本気で考えた者にしかわからない「闇」を村上春樹さんの筆力で描いた本作品は、自分を含め、人間関係に悩む人にとって、幾らか勇気付けてくれると思います。
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4163821104
No.29
(4pt)

秀作です。

村上春樹の一貫したテーマである「喪失と再生」が綺麗に無駄なく収まっている、非常に無駄のない秀作であり過去の作品の流れから外れることのないザ春樹的な作品。

1Q84で見られた過去の作品とは決別したような文体からいつもの文体に戻り、キャラクターの配置などにも過去の自身の作品へのオマージュが見られる。

最近の作品にみられるイニシエーション描写は控えめ。イニシエーションはやり過ぎるとリアリティがなくなるので個人的に今作くらいがちょうどよい。

謎を解き明かすのがテーマでなくどう向き合うかがテーマ。

一人の人間が、無くしてしまった、あるいは無くしていくことにどう対峙していくかが丁寧に記されている。喪失からの再生はノルウェイの森でも見られたが、そこから一歩も二歩も踏み込んだ段階まで描かれていてこれは今だから書けるといった感じか。

登場人物が象徴的に描かれていたのでイニシエーションの違和感もなく、春樹の目指す「物語」として過去の作品よりクオリティーの高いものになっている。反面、エンターテイメント性は著しく低い。

ハルキストの求める春樹語録、文体の心地よさより物語としての良さが勝っているので非常に素晴らしい作品だと思います。
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4163821104
No.28
(4pt)

始めは本当に期待したのですが

村上春樹の作品は、すべて読みました。今回も、Amazonさん、しっかり12日に届けてくださいよと祈りながら待ちわびていたような感じでした。(実際に12日に届きました)
しかし、実際に読んでみると、あまりいい出来でないような気がしました。おもしろいのは確かですが、村上春樹の作品としては、凡作以下かと。

今作は、ノルウェーの森のような作風であり、読んでいてもノルウェーの森と同様の感覚を抱きます。しかしながらノルウェーの森には、遠く及ばない気がします。ノルウェーににているがために、その粗が目立ちました。ノルウェーが星10なら、星5程度といった印象です。
その理由はシロ(非常に重要なキャラクターです。)に共感できないこと、そもそもシロについてあまりにも書き込まれていなさすぎです。無理があります。
人物描写についての不備はやはり、沙羅(非常に重要なキャラクターです。)にもあてはまります。こちらも非常にぼんやりとしたイメージしか浮かんできません。

春樹らしい素晴らしいところが本当にたくさんあり、序盤はノルウェーの森の以上の感動を与えてくれるかも、と期待しましたが、致命的な粗さが目立ちました。
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No.27
(4pt)

オールド・ハルキストとしては複雑(ネタバレ注意です)

1987年の暮れに偶然書店の店頭で『ノルウェイの森』上下巻を緑と赤の綺麗な装丁に惹かれて予備知識無しに買って帰り、その物語世界と文体に完膚なきまでに魅せられて以来のオールド・ハルキストです。ハルキストだからこその苦言を呈させていただくものです。 当時出版されていた全著者を一気に買って読んでわかったのは、大変失礼ながら村上春樹さんの著書は作品により、魅せられる読者が限定されるようだということ。羊シリーズは当時自分にはどうしてもその魅力を理解できませんでした。 それ以来25年余り、長編では『ダンス・・・』や『世界の終りと・・・』、短編集では『回転木馬のデッドヒート』、エッセイでは『もし僕らのことばがウィスキー・・・』など、素晴らしい著書の数々を長年に渡って楽しませていただきました。しかしながら、あの『ノルウェイ・・・』の神がかった凄さを超える作品に出会えまま四半世紀を過ごしてまいりました。『ノルウェイ』には、登場人物の全ての皆さんが、本当にそこに存在しているかのような神がかったリアリティがありました。 前作の1Q84も実は失礼ながら妻は読ませていただいたのですが、自分は手にとることができませんでした。 今回、久しぶりの長編ということで初版1刷を購入させていただき、読ませていただいたところ、久しぶりに接する『ノルウェイ・・・』のような失われた自分探しのストーリー。「もしかしたら『ノルウェイ・・・』を超える世界を体験させていただけるのではと、久しぶりに夢中でページを繰り始めました。 しかし・・・、私は悟りました。『ノルウェイ・・・』はひとつの奇蹟であって、あれを超える村上センセイの作品にはもはや出会えないのだという事を。 十分引き込まれる物語世界ではあったのですが、それぞれの登場人物の人物造形が、『ノルウェイ』ほど完璧ではなかった。紗羅は緑ほど魅力的に描かれていなかった、シロは直子ほどのリアリティを残念ながら感じられなかった。永沢さんやハツミさんやレイコさんのような素晴らしい魅力二に満ち溢れたバイプレイヤーも見当たらなかった。 しかも、未解決で残された疑問の残され方があまりにも杜撰ではないでしょうか。絞殺されたシロさんのこととか。 ハルキストの皆さんの多くには、『ノルウェイ』の再体験をずっと追い求めてきた方が多いのではと拝察致します。 村上春樹様の文体で展開される世界に魅力される永遠のファンとして、この作品にはあえて苦言を呈させていただくものです。
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No.26
(4pt)

希望はいつもうしなわれ、痛みによって目は覚まされる

一部の名古屋から上京してくたくたな生活を送っている村上春樹ファンにとっては―少なくとも私にとっては―サプライズな新作でした。
主人公たちの高校時代の描写で、名古屋弁喋ってないのは変だろって突っ込みは野暮なので、
というよりマトモに喋らせたら、彼らの輝ける神秘性が根こそぎ失われるのでナシってことでお願いします。
このお話にとっては、これといって特徴がない、保守的などこかの地方都市が、
主人公の光芒の地であればそれでよい、といったような意味合いしか欲されていません。
ナゴヤが深い謎とメタファーに満ちた魔法の地、なんてことがある訳ないのです。あってたまるかい。

いきなり冒頭から主人公がアグレッシブに死にかかっているところから始まります。
鬱な主人公はいつもの事なので、そのまま読み進めると、青春時代の苦しい過去の出来事を経て、
鉄道駅を作る会社に勤める、30代の独身貴族が出てくるわけです。やっぱりね。
物語は高校時代の、主人公含め男3人と女2人の、奇妙なほどに完璧で神々しい友情の思い出と、
それらをある一本の電話により、取り返しがつかないまでに全てごっそり失って、
現在の主人公が浮かない顔で東京をぼそぼそめそめそと、しかし例によって美味しそうな飯を食べながら、
地味に(そして浮世離れに)生活する様とが交錯して描かれていきます。
大学時代に主人公が出会った、物語性に満ちた預言者のような後輩の青年や、
生きものである人間が身体を精神と対話させるための、儀式的な美を込めたスポーツ描写も出てきます。
そして例によって、年上で官能的で理知的な女性と、スマートな肉体的お付き合いをしていて…なのですが、
主人公が動き出しそうな予感を感じて、ここまでにばら撒かれた謎が回収されそうかなーと本の厚みを確かめてみると、
もう結構進んでしまった事に気づくでしょう。
べつだん彼にご大層な謎なんてないのです。お話にも、仕掛けも謎もないのです。(星が4つなのは当初の期待の方向が違ったせい)

主人公は、内っかわに宿り続ける過去に、振り回され、痛めつけられ、対峙さえできず、
心底嫌になって、とうとう『未決』の箱にぶっこんだという大人風対処について、例の年上美女が、
あなたずっと箱の中にいるのよ、と女神の啓示を下されまして、
主人公はさいしょ恐る恐ると、やがてすさまじくアグレッシブに『未決』と向き合い、
あの失われた友情をほどいていこうと、かつての友にアプローチしていきます。そして不可解であったことが解明していくと、
それは残酷な事実として意味を成し、より深く頑迷な苦しみとなって主人公を戸惑わせ、後悔させ、内っかわを苛むのです。
外側から彼を見れば、いい年して何やってんの、としか見えません。お金にも女にも困っていないんでしょ、ふうん。
それでも彼の内っかわは、毎日禿鷹に臓物を食い千切られても闇夜が明ければ再生するプロメテウスのように、
繰り返し繰り返し傷つき、悪夢にうなされ、そしてまた性懲りもなく傷つくために目を覚まします。
彼は死ぬことができなかった。自らで終わらせることもできず、常に鮮明な痛みに巻き戻されながら頭は年を取り、生き続ける。
それはおそらくどこにでもいる、若い時に自殺を考えたことがある、30代のぱっとしない、人生うまくいかない日本人と(おおよそ)同じ。
他人に聞かせたらドン引きされるか説教されるかしそうな過去を持っている、ただそれだけの主人公。
しかし、プロメテウスは火を持ってきた男です。
つくるは駅を作る男です。文明の動脈を愛する人間です。
その情熱も、内っかわを焦がすはげしい痛みの一つであることを、忘れるはずはないのです。
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No.25
(5pt)

赤白黒青

庄司薫と言って憶えている人はもう少ないのかもしれません。7年も待って青の物語が出版されたときには心底失望したものです。物語を紡ぐ力がもうこの人には残っていないのだなと思いました。それからしばらくして「風の歌を聴け」そして「ノルウェイの森」で、その物語りの続きに出会った思いがしました。30年も前のあの思い込みは見当はずれではなかったと確信できました。
現代の魂への気遣い。ノーベル賞を受賞しようとしまいと私はこの小説が好きです。
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No.24
(5pt)

待った甲斐があった・・・

村上春樹という作家を、他と比較して語るほどの力量を僕は持ち合わせていないので、毎回単純に彼の新刊を楽しみにしている。
今回の作品も、村上ワールド全開とまではいかないまでも、レトリックや言い回し、受け答えの仕方、研ぎ澄まされた文体、どれをとっても彼一流のものだった。
確かに、答えは用意されていない。しかし、それは初めから何となく予感できたし、そうであってほしいとさえ思う。
人は、音楽に癒やしを求めることができる。耳に入ってくるのだ、美しいメロディが。第九の歌詞の意味はわからなくても、最終楽章でカタルシスに達する人はたくさんいる。
しかし、絵画はどうだろうか?美しいメロディを単純に許容できる脳が、絵画になると、意味を読み取ろうとしてはいないか?もちろん、アメリカの1800年代の風景画のように、荘厳な風景画は、ある意味敬虔な感覚を呼び起こさせる。単純にだ。
村上作品は、絵画を鑑賞するのに似ている。底では自分で意味を見つけていくほかはないのだ。解釈は見る人に委ねられているのだ。だから、死やメランコリィなどの灰色のイメージと登場人物の名前における色彩との対比もできるわけだ。喪失感や厭世観を超えたところにあるのは、やはりヒトへの愛だった。
待った甲斐がありました。この作品に出会えたことに感謝します。
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No.23
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そっと隣に置かれたもの

読み終わって「ノルウェイの森」の世界に引き込まれそうになった。
そっと隣に置かれたもののように感じてしまった。
誰かが理解し続けている不条理。
それでも守るべき者のために闘ってきた人の営みがあったのだろう。
一人のさりげない死がみんなの心をつなぐすべであることの悲しさが最後まで続く。
音楽に彩られたこの作品は透き通った湖のように深く静まりかえっている。
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