色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価:

3.41/5点 レビュー 1,022件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.41pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全562件 481〜500 25/29ページ
No.82
(5pt)

良い作品

村上春樹の小説は全て読んでいるけど、
読んでいて「涙」が出たのは初めてです。

ネタばれしないように感想を書くのは難しいけれど、
個人的には好きな作品です。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.81
(4pt)

少数派

なぜこうも村上春樹の作品に惹かれるのだろうか。
ずっと理由をうまく言葉にできなかった。

ただただ好き、たまらなく。で、いいと思っていた。

今回、この作品を読んでいて、ふと思いついた言葉がある。

少数派。

多分、村上春樹も、私も、多崎つくるも、少数派の人間なんじゃないかな・・・。

少数派だけど、真面目に人に迷惑かけずに日々生きています。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.80
(4pt)

3.11をこえて

本作は3.11を経た「国境の南」ではないかと思いました。底流にあるのは「それでも生きていく」であり、「ノルウェイ」や「国境」ではうつむきがちだった生への肯定が、「多崎つくる」では顔を上げて受け入れていく姿勢に変わっているように感じます。ミステリのような合理的な謎解きはありませんが、誰の人生にもさまざまな形で起こりうることを、色彩を持った登場人物たちが提示していきます。沙羅はイタリア語の「知る」という言葉の未来形=多崎つくるを先導する役割‥‥というのはうがちすぎでしょうかね。「カフカ」や「1Q84」路線が苦手な人には、すっと入ってくる作品だと思います。そして未曾有の災害を経た日本人への応援でもあると思います。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.79
(5pt)

多崎つくるは色彩を持っている

村上春樹さんの作品では一番登場人物が多く、名前まで付けられているのがまず新鮮でした。 ネタバレになってしまうけれど、名字に色を付けるなんていうありがちな手法を取り入れたことも驚きでした。 相変わらず文章のリズムは読み易いですし、よく分からないけど想像できる面白い例えが満載です。村上春樹さんの世界描写はいつも通りに素晴らしく確立されています。 論理的に答えを求める読み方をすると、答えが書かれていない部分があるので納得できないかもしれないけれど、物語としては単純に素晴らしいなと感じました。 こんな小説は誰にだって書けるものじゃないと思う。 多崎つくるくんは無色ではなくて、本当は多色なんだなと読みながら感じました。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.78
(5pt)

新しい「喪失」と「再生」の物語

村上春樹のデビューから一貫したテーマである「喪失」と「再生」。
これに新たなラインナップが加わった。

われわれは、好むと好まざるに関係なく、ある種の行動規範の強制的な変更を強いられてきた。
古くは、第二次世界大戦の戦前と戦後。
70年代は、学生運動の理想と終焉。
80年代は、バブルの崩壊。
それらは、人間の性(さが)によるもので、われわれが責任を負うべきいたしかたない面があった。
次のステップに進むために、運命的に仕組まれたものと考えても納得できる。
しかし、今回の震災は、いかんともしがたい厳しい仕打ちである。

時代を切り拓くために、何かを捨て、もしくは失い、リニューアルすることは、われわれが常に歴史上行ってきた事柄なのかもしれない。
たしかに、個人のレベルでは、それが容易にできる人とそうでない人がいると思う。
しかしいずれにせよ、「過去に蓋をすることができても、歴史を変えることはできない」のだから、向き合って行かなくてはならないのだ。

これまでの作品での「喪失」は一人称の「喪失」であった。
きわめて個人的な、成長過程での喪失と「再生」である。
これが、三人称となると、普遍化する。
自分では訳も分からないままに、全てを失った人間が、どのように過去と向き合いながら「リニューアル」していくか。
そこに答えはないにしろ、一つの方法論を提示されたような気がする。
そう、「まず、駅をこしらえるのだ」。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.77
(4pt)

おもしろかたー

電車でバーベキューするところと、ガンダムに乗って宇宙に行くところがとくに面白かったです。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.76
(4pt)

魅力的な文章は健在!

村上春樹さんの作品では、ファンタジー色の強いものと、より現実感の強いものがあるように感じます。前者が『1Q84』や『世界の終わりと…』、後者が『ノルウェイの森』。本作は後者に属するように思いますし、読んでいて『国境の南、太陽の西』を思い出すところもありました。個人的には、前者の方が圧倒的に好きなんで、そういった意味では若干の期待外れではあったのですけれど、一気に読み進めさせられてしまう魅力は健在。出来たら、もっと短いサイクルで新作を発表していただきたい、というのが一ファンとして切なる願いです。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.75
(4pt)

ジョナサン・キャロルの「黒いカクテル」を思い出した。

読み始めてすぐに、
ジョナサン・キャロルの「黒いカクテル」を思い出しました。
「黒いカクテル」は、
  人の魂は神によって5つに分けられている
  5人が揃って完全体になると、色のある光を放つ
という設定のダークファンタジーで、悪意に満ちた作品です。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」と
「黒いカクテル」には、
  主人公は30代男性
  主要登場人物は男3人女2人の5人組
  高校時代の人間関係が彼らの人生に決定的な影響を及ぼしている
  人(あるいは5人1組の人)は色を持っている
などの共通点があります。

また、どちらの作品でも、
人間の指はなぜ5本なのかということを、
登場人物がことさら言及しているシーンがあり、
これも印象的でした。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.74
(4pt)

村上春樹が示した「絆」

発売前から異常に盛り上がっているので、もしアフターダークのような小説だったら、かなりバッシングを受けるだろう、と心配していたのだが、思ったより普通の小説なので胸をなでおろした。珍しく村上春樹は明確な主張を明示してるのに、この本に戸惑う人が多いようだ。
村上春樹の小説は料理的であり音楽的であると思う。レストランの客は美味しければいいのであって、新しい料理じゃないから怒る人はいない。またコンサートを聴きにきた人には感動する演奏すれば優れた音楽家であり、今迄にない曲を書けないから二流の音楽家だという事はない。音は昔からあっても音の響きは自分しか出せないものを作りたいとエッセイにあった。

この小説は東日本大震災で喧伝される事になった絆について書かれてると思う。表面的な繋がりでなく真の絆とは何かが書かれている気がする。それに同意出来るかどうかは別にして。
それにしても登場人物の家族の話が多くて驚いた。初期の頃は主人公の家族すら殆ど書かれてなかったのに。家族が隠れたテーマかもしれない。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.73
(4pt)

つくるは好きだ

32歳、女です。 
今回の新作の発売で印象深かったのは、世間のミーハーな人たちがぜんぜん食いついていなかったことです。前作の1Q84の時は、村上春樹作品を読んだこともないような人が、ベストセラーだからとか、ノーベル賞候補だからとか、すごく売れてるからとか、意味深な出版社の売り方が目立っていてとにかく買ってみたとか、とりあえず買っとけば知的ぶれるとかいう輩が多かったと思います。そういう人たちは、途中で読むのを放棄した人が大半ではないでしょうか? 読んでも理解できない人が大半だと思います。村上作品は大衆文学ではない。読み捨てされるような作品ではありません。
ファンにとっては、とても個人的で大切な作品です。
 だから今回の売り方は、とても好感をもてました。一気に読みましたが、孤独感、人と深くかかわることで得られるものや失ってしまったこと、色を持つということなど、読後も心の中に残っています。
つくるの孤独感の描写がよかったです。以前、心の闇という言葉を簡単に使われたくないと、春樹氏が言っていらっしゃったと思いますが、不気味な闇を感じました。これは心の闇なのでしょうか?
主人公はとても好きです。村上作品らしい主人公です。春樹氏に似ているのか? わたしに似ているところもあるのかもしれない。

もう少し深く人物のことが知りたかったかなと思います。心に迫るフレーズ、感動が欲しかった。けれど、この読後感こそ春樹作品の醍醐味かもしれない。
別に、春樹氏は、わかりやすい感動や、お涙ちょうだいを狙っているわけではないのだから。春樹氏が伝えたいこととはなんだろう。
もしかしたら、この作品にメッセージはないのかもしれない。春樹氏が生み出した作品は、確かに私の心をゆさぶり、話の世界へと連れていった。そして読んだ後も、今も考えている。
それでいいと思う。


色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.72
(5pt)

先入観を除けば、優れた小説と言える

『国境の南、太陽の西』や『ノルウェイの森』の路線に連なる、リアリズム小説で、おそらく『1Q84』で非リアリズム方向にかなり傾いた彼の意識を揺り戻すために書かれたような気もする。そういう意味では、初めて村上作品を読む人にとっては非常に読み易いかもしれないし、単純に感動して涙(過去作品で流し得る涙とは別種の)を流すような読者ありうる作品だろう。ただし、この本でファンになったところで『ねじ巻き鳥』で井戸に放り込まれて行き場を失うだろうが・・・。
確かに、初期4部作ファンも、ねじまき・世界の終わり・カフカ系統のファンも、期待を裏切られる形にはなるとは思うが、あくまでも小説は書かれた瞬間に小説家からは独立したものだとするのならば、この小説は優れた小説だと断言して良いと思う。
ただ、これだけ注目され、騒がれ、過去に大量の傑作があることによって、妙な先入観が入り、純粋に作品単体を評価できなくなっている読者は多いだろう。
しかし、少なくともこの小説で表現されていることは、3.11以降の日本、あるいはグローバル化・価値観が多様化し、混迷化する世界の中で我々自身の心に「駅(=ターミナル)」を「つくる」必要があるということだろう。少なくとも私はそう読んだ。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.71
(5pt)

仏教世界への挑戦

しかし、これは不吉な作品である。
「1Q84」をbook3まで読んだとき、私は何故か三島由紀夫の「豊饒の海」が連想されてならなかった。したがって、もしbook4が発売されるならば、それは聖書的世界に、さらに日本性を強く打ちこんだものになるだろうとも思った。
その予感は、ある意味当たったと言えると思う。
現代日本に生きる我々は、仏教とキリスト教に挟み撃ちされて生きている。
・・・しかし、春樹氏の場合、(出生のためなのか?)理由はよくわからないけれども、
この作品で、無意識に仏教世界への回帰を果たしているように思える。
そこにはもはや、現代文学が問題とするビルドゥンスクと言ったような問題は、存在しないかのようにすら思える。
ただ、人は人として、ものはものとして、性は性としてそこにあるだけなのだった。
もし、読者が赤、青、白、黒、そして沙羅の仏教的意味合いを解読できないのであれば、この作品の面白さはわからないだろうと思う。
この作品は、ミステリーとしては不十分と言うか破綻しているけれども、そもそも日本において、ミステリーとはなんぞや?とすら思わせる「怪談」なのである。
が、ただよくない予感がするのは、才能に疲れたピアニスト緑川が、「あと1か月の命だ」とはっきり予告するくだりと、最後に沙羅に去られた(?)主人公が死を思うシーンである。
この「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が、村上春樹のスワン・ソングとならないよう心から祈る。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.70
(4pt)

欠落の回復を目指す旅の物語

大作と大作の間の「箸休め」のような作品である。
ここではノモンハンも出てこないし、
カルト教団も出てこない。
16年という時間の経過は描かれるが、
月が二つある世界は描かれず、
基本はリアリスティックな物語である。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、
できが悪くはないが、傑作というわけでもない。

ここには「風の歌を聴け」から今に至る、
欠落の回復を目指す旅、というモチーフが踏襲されている。
構造のシンプルさといい、
初期作品に帰った、と言ったほうがいいかもしれない。
何度も書かれた旅。
今回の旅も含めて、それを「巡礼」という言葉で語り直している、
という印象を受けた。

この小説には、
古い村上春樹ファンにとって、
ホッとさせるモチーフが数多く描かれる。
既視感が多い、
とも言える。
またかよ、
と言いたいような気もする。
しかし、
だからダメだ、とは思えないのだ。

村上春樹自身はどう思っているのだろう。

自己模倣だとは思っていないだろうか。

[・・・]
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.69
(5pt)

おそらく最高傑作だろう

これまでの村上春樹の作品のなかで、最高傑作の1つだろうと思う。
読み進めながら、ときに『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥』を読んだときの印象が思い起こされる。それから『ダンスダンスダンス』も。
彼の小説を読みながら、胸が熱くなったり、涙がこぼれそうになったりしたことは
あまりなかったように思う。けれども、この本はそんな感情を起こさせる。
主題は、「人生に生きる意味はあるか」だと思う。
それに対して村上春樹は、作品を通して「イエス」と言っている。
私にはそう思える。
久しぶりに何度か読み直したい本に出合った。
蛇足:このページ数の小説は通常1500円の値付けだが、1700円をつけたところに出版業界の今後が少し見える。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.68
(4pt)

「心の整理がつかないまま放置されている思い出がある」大人へ

「心の整理がつかないまま放置されている思い出がある」人にオススメします!

主人公の多崎つくるは
仲の良い高校の友人4人からいきなり絶縁され傷ついた経験があり、
36歳になった現在、理由を確認するために、彼らを”巡礼する”物語です。
村上春樹はよく分からないと思っている方も多いかもしれませんが、
パラレルワールドや不思議な世界に向かわないので、とても読みやすい作品です。
私自身は海辺のカフカのような作品が好きなので☆を-1しました。

社会生活は問題ないものの、「心の整理がつかないまま放置されている思い出がある」ことは
決して遠い問題でなく、だからこそ、誰もが主人公の心に引き込ます。
そして、過去の友人と会い、心の整理をしていく過程を読み進めると、
今をがむしゃらに生きるだけでなく、時に立ち止まって対話することの重要さを感じます。
私自身、今だからこそ話せることがありそうな気がして、
読んだ後、意味もなく、高校時代の友達に電話してしまいました。

ちなみに、タイトルに入っている「巡礼の年」は
作品のモチーフに使われている、リストのピアノ曲のタイトルです。
とても旋律が美しい曲なので、本と併せて、オススメします☆
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.67
(5pt)

共感出来る点がいくつあるか

村上春樹作品は20年程前に初めて読み(その際、私は19歳で2つ年上のガールフレンドから羊をめぐる冒険を進められ、貸してもらったのが始まりでした。)以来、全ての作品を読ませていただいています。

今回の作品もそうですが、過去の作品も含めて言えること。それはどれだけ共感出来る(自分と重ね合わせる)部分があるかにより随分と作品のニュアンスが変化し、言葉の読み取り方、感じ方が変わってくると言うことです。

今回の作品に関して評価が分かれている様ですが、『つまらない、駄作』と思われた方は恐らくある意味で平穏無事な生活(それをつまらない人生とまでは言いませんが)を送られている幸福な方々なのだと感じます。

この作品の中に自分の分身である部分を見付け、過去や未来の自分(主に過去との対比になると思いますが)と重ね合わせながら読んで行けた方の評価は自ずと高評価になるのは当然だと思います。私を含め、その方々が波乱万丈で不幸な人生を送っているかと言われれば、それはそのポイントによって感じ方は変わりますよね。

一度読んだ作品を5年後、10年後にもう一度読んでみると評価は変化します。それは村上春樹作品ではないどの小説にも起こり得ますが、この作品は特にその色が濃いのだと皆様の評価を拝見し、面白く感じました。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.66
(4pt)

good, but...

他の方が仰っているように、ある意味村上氏のこれまでの仕事のラップアップみたいな感じを抱きます。最近の長編化傾向に若干面倒さを感じていたところですし、私は好感持ちました。他方、大事な人を失い、再度生きることを立て直すという、青春期的で明確な喪失感と再生の物語だけではなく、高村薫氏的な、中年が磨り減っていく喪失感や、再生もへったくれもない袋小路感を、この村上氏が書き始めたらどんな作品になるのだろうという期待も、読者になって25年、そろそろしてしまいます。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.65
(4pt)

これまでのモチ−フの集大成

真空とはなにもない状態ではなく、その物理系の最低エネルギー状態として定義される。たとえば電子と陽電子が生成と消滅を繰り返している状態。村上春樹の小説の主人公はいつも真空をかかえて登場します。からっぽに見える人格は真空よりもエネルギ−準位の高いどんな外界のエネルギ−も吸収してしまう。自分では気づかず人々の尖った余計なものを吸収する、人々になにか安心感を与える、ように登場してくる。今回の主人公「つくる」もその一人である。そして、真空が壊れて別のなにかに満たされることができるかどうか、という甦生の物語である。「色彩を持たない、多崎つくると、彼の巡礼の年」。
  いつものように、スリリングな暗喩の数々がはじめから炸裂している。「壁にもたれて死について、あるいは生の欠落について思いを巡らせた。彼の前には暗い闇が大きく口を開け、地球の芯にまでまっすぐ通じていた。・・聞こえるのは鼓膜を圧迫する深い沈黙たった。」 なにかが真空の中にしのびよりそのエネルギ−バランスを壊し始めた。
  真空の別名でしょうか、深くて遠い疎外感、を補強するための挿話がこの小説でも語られる。人々のもつ色を見分ける能力をもつ人たち、昔主人公の友人だった人たちの現在、娯楽映画MATRIXの有名な言葉のパロディ。"Welcome to the real world"、リアルワ−ルド、リアルライフとはなにか?
  この小説を引っ張る音楽は今回はリストの巡礼の年第一年スイス。前作で小説のリズムを刻んだヤナ−チェクのシンフォニエッタは小説1Q84の販売とともに店頭からCDが消えたという。今回もそうでしょう。ベルマン演奏。
  P343、「あるとき」は「あのとき」の誤植ではないでしようか? そうならば クライマッスでの一文字の誤植は興ざめ。総じて、村上春樹のこれまでのモチ−フの集大成です。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.64
(4pt)

村上春樹の新作長編小説

主人公である多崎つくるが、人生のある一点を経てから、「自分の本当の気持ち」に蓋をして生きるようになる。蓋をしている間は、主人公自身、そのことに気付かない。 しかし、ある女性との出会いをきっかけに、蓋をしている自分の姿に気が付いた。 そうして彼の「巡礼の旅」が始まる。旅に出るのは、主人公自身が望み選んだことだ。旅の行く先は、ネタバレになるので本書を読んで確かめてほしい。後悔はしないはずである。いや、しないでほしいというのがレビュアーの希望だ。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.63
(5pt)

非常に感情移入して息をつめるようにして読みました。

この作家の、人と人との繋がり方、男女の繋がり方が
自分自身には極めてリアルで、苦しいような感情に流されるように
読みました。
個人個人の生は、かけがいのないものであるけれど、
絶対的な孤独を抱えながら繋がろうとするそのこと自体から、
人生や世界とのかかわりの真実が現れてくると感じました。
大文字の言葉から小文字を見るのではなく、
小文字の生きていく軌跡から大文字の真実を浮かび上がらせていく。

恋愛をするとき、男性はこのように行動し、女性はこのように言葉を選び行動する。
そのリアルさにどんな恋愛小説よりも震撼した。

この作家は、やはり只者ではない。
唯一の存在である。

ドストエフスキーのような作品を書きたいというその思いが、
この時代とシンクロして、朧に形を現していく。

スリリングな作家と作品である。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104