色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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評判

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価:

3.41/5点 レビュー 1,022件。 B ランク

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平均点3.41pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全562件 421〜440 22/29ページ
No.142
(4pt)

駅はほとんどが通過点でしかない

突然起こった納得のいかない出来事。それが主人公・多崎つくるのその後を大きく決定づけた。
これは彼がその出来事に立ち向かい、消化していくお話。
テーマもシンプルで読みやすかったです。
静かで、つくるの喪失感も共感しやすいものだっただけに心にしみいります。

つくるは昔から駅が好きで、大人になり駅の設計の仕事をしている。
駅というものはは終着駅でない限り、ほとんどが通過点。
これまではみんなまるで駅を通過するようにつくるの元を通過していった。
でも、あの人だけはここを終着駅にしてほしい。
最後はもどかしい終わり方だっただけに、そう願わずにいられない。
つくるは自分だけが持ってないものを気にしすぎて、自分が持っているもののかけがえのなさに目が向いていなかった。
この巡礼は自分自身を見つける旅でもあったのかもしれない。
きっと大丈夫、あなたにはあなたの色がある。今はつくるにそう言葉をかけてあげたい。

静けさと孤独感に耐えられない人もいるでしょう。退屈に感じる人もいるでしょう。
変にベストセラーになってしまったことが評価を下げている気がしてもったいない。
これは本来、こんな売れ方をするべき本ではないのだと思うのですが・・・。
なんだか村上さんが気の毒に思えるのは私だけでしょうか?
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.141
(5pt)

すごい

同じテーマを繰り返しながらその内容を深めていく彼の作品も、とうとうここまで表現するようになったかとひたすら関心。1Q84がなぜあんなに売れたかは謎だが、今作こそより多くの人に読まれるべきなんじゃないかと愚考する次第。人間、人生というものをこんな平易な文章でここまで掘り下げて描けるというのは驚き以外の何者でもない。心が震えました。
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4163821104
No.140
(5pt)

読みやすい作品です。

村上作品はほとんど読んでいます。
文体はとてもやさしくきれいで、あまり難解なところはなく、すらすら読めます。
登場人物も村上作品の中では庶民的、というか、親しみやすい人物ばかり。

ただコアな村上ファンにとっては物足りないところもあるかもしれません。
確かにテーマや構成は以前にも似たような作品があり、繰り返しのように思えるかもしれません。

それでも、わたしは読んでよかったなぁと思います。
終盤はどうしても311の震災を連想せずにいられませんでした。
生き残った者達はそれぞれの持ち場で生きていくしかない・・・

「駅」という「メタファー」がとてもすてきでした。
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4163821104
No.139
(4pt)

多崎つくるは身近にいる

多崎つくるはきっと身近にいる。個性的なアカもシロもクロもアオも灰田も私たちのなかの誰かなのである。もしかすると自分かもしれない。ページを繰るうちに登場人物のひとりひとりと同化または異化していく。この物語によって別の人生を経験することが出来た。私は村上春樹の熱心な読者ではなかったが次回作が楽しみになった。
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4163821104
No.138
(5pt)

珍しくストレートなメッセージ

大学生の頃からかれこれ15年ぐらい村上作品を読んでいます。
彼の作品の中では比較的読みやすい方に分類されるのではないでしょうか?

わたしたちは誰もが多かれ少なかれ、つくるくんのような、誰かに傷つけられたままの心を引きずっていて、それでもなお人と繋がることでしかその傷を癒すことはできません。
つくるくんは幸い、さらに出会ったことでその傷に気づくことができて彼なりにそれを受け入れるところまでできました。
さらを愛しているって最後に電話で告白するところがすごく感動したし、勇気をもらいました。

村上春樹の作品によく出てくる魅力的な中年の女性みたいになれたらいいなって、読むたびにいつも思います。カフカの佐伯さんとか。
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4163821104
No.137
(5pt)

ミステリーじゃないかんね

文章が平易で読みやすい。謎解きのようで引き込まれた。でも、でも、伏線が回収されていない。謎が投げっぱなし。なんだ、これは、時間の無駄だった!! これは、「純文学」です。伝えたいことをそのまま書いたら「純文学」にならんです。個々の見解を超えた古来からのルールです。「好み」の問題と分けて考えましょう。参考書や解説書と苦闘する覚悟、奥にある真に作家が伝えたいことを探す覚悟、難解な映画しかり。本来はくたびれる作業です。前作も本作も、「こんなに売れる」ということを、村上さんはどう考えているのか興味はあります。まああらゆる読まれ方も想定済みでしょうけど。私は、まずはほどほど泣いて楽しめました。この後出てくる解説書買ってまた楽しみます。
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4163821104
No.136
(5pt)

村上春樹の世界

結論から言うととても面白かったです。
村上春樹さんの小説ははじめて読みました。
文章力がものすごく冴えていると思いました。
現代活躍する作家の中では図抜けた存在ではないでしょうか。
とにかく文章が美しく、巧みなので、読むのが遅い自分でも感心しながらスラスラ読めました。
彼の昔の作品は読んだことがないので、比較できません。
ただ、才能を得た文学者は、自らに降り注ぐインスピレーションを文字に変換する預言者だと私は思っています。
その預言が読む者にとって光であることもあり、雨であることもあり・・・。
今回の作品は多くの方が酷評されていて、私もそれを踏まえてよみました。
私には素直に良い作品でしたし、フィンランドの明るい夜のようにピカピカの光を、そこにみせてもらいました。
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4163821104
No.135
(4pt)

いいんじゃない?

アマゾンのレビューが面白くて購入。
あまりにも多くの人が本書についてのレビューではなく、村上春樹個人についての感想を述べているのが興味深い。有名になるというのは大変なことなんだな、と改めて感じる。

まず、リアリティやファンタジー、勧善懲悪や問題解決、そういったものの完全性を求めるなら、本書ははっきり言って読まないほうがいい。

本書の内容については、著者がすでに発表している小説と同じようなモチーフであることは疑いもないと思う。喪失感、孤独、愛とか。
今回はその喪失感や孤独の根源が、かつて存在した複数の友人との共同体により構成された「友情」に起因しているのが、目新しい部分。
主人公は、喪失感や孤独を和らげる方法として、その起因しているものから出来る限り距離をおくことで直視せず、また殻に閉じこもってきたが、
ある女性との関係の中、過去から目を背けるのではなく、自分の目で過去を確認し、それとともに自分の今を肯定する力を持つという物語。

同じような物語は今までもたくさんあるだろうし、特に目新しいこともないと思うけど、
人が人として生きていくためには、自分の過去をなかったコトにすることはできないし、自分と関係する他者をなかったコトにすることもできない、
という、すごく普遍的なテーマであるがために、同じような物語だと感じてしまうのかもしれない。

ただ、本書が個人的に優れていると思うのは、
同じようなモチーフの物語であっても、その幹と枝葉の構成がとてもスッキリとまとまっており、
枝葉に当たる部分もすごく興味を惹かれる要素がたくさんある、ということだ。

枝葉の部分に発生する物語は、興味を惹かれるのにとても曖昧になっており、
また、幹の部分の物語も結局は曖昧な状況で終了しているため、
読む人によってはすごくフラストレーションを感じるというのもよく分かるが、
結局は存在し行動し経験したことが人間を構成し、その行動や経験が次の行動や経験につながるものであり、
物語に書かれていないものは、読み手側が自身の経験から生み出される想像力に従って勝手に思いを巡らせればいい、
と割り切れるタイプの読者に向けた小説だと思う。

最後にすごくパーソナルな感想「繋がりは断ち切れないし、痛みは感じなければいけない。痛みを感じることで繋がりを感じることもある」
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.134
(5pt)

「身近」で「現実的」な、自分の物語。

<一部ネタバレです>
村上春樹の数ある本のなかで、この本はとても「自分の話」だ、という気持ちになりました。
どちらかというと、僕にとって彼の作品は、主人公やその境遇に、あまり共感しないというか、身近に感じないケースが多い。
でも、それがマイナスなんではなくて、それはそれで面白い事が多いのだが。

だが、この本は、数少ない「自分の話」のように感じた。いや、間違いなく「自分の話」なんだ。

多崎つくるほどの、強烈な体験はないかもしれないし、境遇もかなり違うといえば違う。
でも、基本的な人生における、悩みや苦しみ、そして喜びは、とても重なると思う。
とても「身近」な話として。とても「現実的」な話として。

高校時代の、貴重で大切な友人たちとの、残酷な断絶。
そして16年後の再会という巡礼の旅。

思い浮かべる人は僕だけじゃないかもしれないが、
ジム・ジャームッシュ監督の「ブロークン・フラワーズ」が脳裏をよぎる。
中年男が、若かった頃の遊び女友達を、一人一人訪ね歩くちょっと楽しい異色ロードムービーだが、
友人がそのリストや地図を用意してくれるところなんか、まったく同じだったりする(笑)
とても好きな映画だけど、村上春樹がマネしてイヤな感じ、などとはまったく思いませんが。
そもそもマネしたのかどうかもわからないけど。

ラスト近くでの多崎つくるの到達点の1つ
「人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついている… …それが真の調和の根底にあるものなのだ」
そしてラストの想い
「僕らはあのころ何かを強く信じていた… …そんな思いがそのまま虚しくどこかに消えてしまうことはない」

カラマーゾフのエピローグのラストのような、あるいはブルーハーツのヒロトのような…。と単純に例えるのは良くないような気もする。

僕は多崎つくるの年よりさらに上になってしまったが、
この想いは、とても深くゆっくりと、自分の心にしみ込んできます。

人生の中での、自分の苦しみ、他者の苦しみ、他者への許し、そしてかつてあった希望のような美しい光。

とても丁寧に書かれた、現実的な人生の本だと思います。
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4163821104
No.133
(5pt)

村上春樹のすごみ

人生には2つの位相がある。1つ目は「生まれて、生きて、死ぬ。」それだけだと言う人もいる。
そして2つ目の位相は「友達と喧嘩した」「恋人と別れた」「仕事をして評価された」
「自分じゃない誰かが死んだ」などの日常にあふれる事件や事柄とともに感じる位相。
だいたいの人は、こちらの位相を生きている。

どちらも人生の姿だし、どちらも真実だ。

村上春樹の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、簡単にいうと、
主人公の多崎つくるがその狭間を生きる物語だ。

ストーリーとしては、彼がインタビューで「短編小説を書こうとした」というだけあって、
すごくシンプルだ。ひとりの男が己れの過去を紐解くために東京、名古屋、フィンランドを旅する。
過去に理由も分からず強引に関係を終えさせられた(作中では、切られたと表現している)
自分の友人を尋ね歩き、その理由を聞きにいく。その過程で当然、主人公は過去の自分と対面する。
そして、それを聞き終えたとき、はたして自分にどんな変化が起こるかを夢想する。
一遍のロードムービーのように読者は主人公とともに短い旅をすることになる。
その旅が気持ちいいかどうかは分からないが、旅に出て初めて得られる、
俯瞰で己の人生を見る感覚は、後半の読みどころでもある。

村上春樹の筆致の凄みは、その日常にあてる光の強烈な眩しさにある。
何か事件が起こっているとはいえないこの物語だが、私たちが普段見過ごしている
細やかな出来事や感情を無視せずに描く。
結局のところ人の個性を描くことは、それをちょっと好きか嫌いか、
それをちょっとしたいかしたくないか、……そんなちょっとしたことで表れる。
その積み重ねが人生という大絵巻になるのだとしたら、ちょっと面白い。

村上春樹は一つの位相を綿密に書くことで、もう一つの位相を読者に感じさせる
ことのできる稀有な作家だ。
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4163821104
No.132
(4pt)

村上春樹をめぐる余剰な身体をめぐる物語。

村上春樹をめぐる欠落した身体、そして余剰な身体をめぐる物語。
『風の歌を訊け』には、欠落した身体の象徴として「小指のない女の子」が現れ、このたびの新作『色彩のない多崎つくると巡礼の年』においては、過剰な身体として「6本指」の逸話が登場する。そのどちらも自然ではなく、奇形である。しかし存在しない小指ではなく、切断できるし、また優性遺伝でもある奇形である。その欠落でない不具に関する物語が、主要なテーマである。たいていの場合は、機能しない段階で親が切除する指である。

その6本の「指」に呼応するように、ちょうど登場人物が、高校時代の時間面にアオ、アカ、シロ、クロ、そして「つくる」の5人。そこに大学時代には「灰田」、三十六歳の現在に「緑川」という別の時間面に登場する2人が現れる。

ぜひ6本指に着目して読んでみてください。
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4163821104
No.131
(5pt)

村上ワールドだね

一般的に東日本大震災や原発事故と結び付け解釈する向きが多い。決して間違いとは思わないけれど、描かれている世界は、別にこじつけなくても人生を歩む過程である意味誰もが経験する普遍的なものではないだろうか。せつなくて、嬉しくて、涙が滲み出てきた。
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4163821104
No.130
(4pt)

一読した感想(ネタバレあります)

*ネタバレ注意!*
 私は、村上春樹の本をほぼ読んでいます。そして、今41歳ですが、風の歌を聴けを高校か大学時代に読んで以来、新刊はわりとすぐに買って読んできました。(ノルウェーの森と1Q84は、少し経ってから読みました)子供二人を出産してからはほぼ読書する時間は皆無に近いのですが、今回、夫に寝かしつけを頼み、土曜の午後から夜にかけて一読しました。途中子供のお迎え、病院、ご飯の支度で中断しましたが。
 まず、やはり村上さんはすごいなあと思いました。こうも一気に読み進められる、そしてぐいぐいと物語に引っぱりこむ力はさすがだなと思いました。
*ここよりネタバレあります.まだ読んでない方は、気をつけてください!*
 そして私自身は、きっと今、沙羅さんに近いタイプだと思うので、沙羅さんがでてきて、気になる部分を解決しようともっていってくれたことは、良かったなあと思う反面、他の3人の友達が、どうして誰も16年もそのことをつくる君に知らせようとしなかったのかが、うまく理解できないような気がします。また灰田君が、突然つくるの前から姿を消してしまった事にも何だか腑に落ちない思いを今、改めて考えてみると考えさせられます。でも、だからこそ、そういう疑問点みたいなことが、読者に考えさせるきっかけみたいなものを与えてくれるのだろうか。
 そして灰田君のお父さんのお話もかなり印象的で興味深かったです。そして六本指の話もかなり気になりました。(夫の足の指が六本あるので。現実的には、骨が六本と言った方が正しいかな。)
 駅についての描写の部分は、わりとはしょってしまったので、また読み返したいなあと思います。茂木さんがツイートしていた”特急列車が消えちゃった”という部分がわからなかったので、また再読したいと思っています。
 ただ、他の方のレビューにも書いておられるように性描写みたいな部分が多々出てくるのでなんだかむやみにおすすめできないところが寂しいかなと思ったりもします。
 でもやはり基本的に村上さんの文章の質感みたいな物が私は好きなんだろうと思います。


色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.129
(5pt)

何故表題に「多崎つくる」という人名が入らなければならなかったのか

何故表題に「多崎つくる」という人名が入らなければならなかったのか。
その問いにこそ、この物語の肝はあります。

東京と名古屋、無色と有色、そして匿名と実名。
物語で提示されるこれらの対比は、多崎つくると色のついた人間、というそれと重なります。
著者の作品の特徴として、高い匿名性が挙げられると思いますが、
本作の主人公・多崎つくるは自分のその匿名性にこそ悩み、もがきます。

本作が扱っている問題は、著者の作家性のそれと通じているように思えて、
興味深く読むことが出来ました。
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4163821104
No.128
(4pt)

another side of「ノルウェイの森」

今回の小説は、「ノルウェイの森」と同じようなテーマで、そこには姿や形をかけた直子やミドリやレイコが登場している。個人的に「ノルウェイの森」が好きなので、同じようなテイストを持つこの作品も好きである。
ただ残念なのはラストである。真相がきちんとあかされていないため、?が、ずっと頭に残るのである。読み終わった後に、ずっと真相を考えてしまった。
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4163821104
No.127
(5pt)

共感する村上春樹

村上春樹は、これまで登場人物に距離を置いて他人事のように淡々と描いてきましたが、この作品では人物を愛して深い共感を示しているように思います。それが意外でした。
文章は淀みなく流れ、行間からは透き通った青または白のイメージをうけました。
表紙のデザインとは少し違うかな。

ストーリーは往年のトレンディドラマや、いくえみ陵のコミックを思わせるありがちなものですが、村上文学として高く昇華されています。
とても良かった。

前作1Q84は、書き尽くした末の未完成作品という印象があり、収集がつかず長すぎて正直退屈しましたが、今回は面白くて一気に読みました。

リストの「巡礼の年」については、ストーリーを理解するヒントになります。
「ペトラルカのソネット104番」の流れるシーンが全体のクライマックスであると思いました。
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4163821104
No.126
(5pt)

自己と自我

村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という奇妙なタイトルの小説が売れている。すでに100万部を超えたとメディアは伝えている。この本に触れる前に、前作の長編小説『1Q84』を思い出してもらいたい。
 『1Q84』は青豆と天吾という二人の男女の名前と、青豆が渋滞する首都高速道路でタクシーから下車し非常階段を降りていくという三つのコンセプトから書き始めたと春樹はインタビューで答えている。そのタクシーの運転手がかけていた音楽がヤナーチェクのシンフォニエッタという曲だ。現実のタクシー運転手がクラシックのマイナーな曲であるシンフォニエッタを聴いているとは考えられない。春樹はこうやって読者を不思議な世界に引き摺り込んでいく。
 青豆が迷い込んだ世界は近過去の1Q84だった。そこは現実の1984年とは少しだけ違っているところだ。あることをきっかけに違う道を選択し、人々はあるべきでなかった世界に入ってしまう。そうだ。2011年3月11日の大地震を経験し、日本人全員が少しだけ違う価値観の世界の道に入り込んだように。あの大地震を経験し、人生が異なってしまった人は少なくないだろう。でも、後戻りはできない。
 『1Q84』は幼少のころ暴力を被り心に傷を負った者の復活の物語としてぼくは読んだのだった。
 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に話を戻そう。
 色彩を持たないという意味は当初、ほとんどの登場人物の苗字に色がついているが、主人公の多崎つくるだけが色がついていないことだ。多崎つくるは自分自身何の変哲もない、カラフルでもない、つまらない人間だと思っている。しかし、それは彼がそう思い込んでいるだけで、周りの人々はつくるを色彩がないと口では言うが、心では不可欠な人間だと尊敬さえしていたのである。この平行線は最後まで交わることはなかった。つくるが気づくことはなかった。これは読者への問いかけでもある。つくるは色彩がない人間かどうか。色彩があるとはいったいどんな意味なのかと。
 「巡礼の年」は、フランツ・リストのピアノ独奏曲集からの引用だ。リストが訪れたスイス、イタリア、ヴェネツィア、ナポリの地の印象や経験を表現したものである。その中の第1年スイスの第8曲<ル・マル・デュ・ペイ(郷愁)>という美しいピアノ曲がその小説の謎を解くひとつの鍵だ。この作品はオベルマンが友人に宛てた手紙で綴っている望郷の念「自分の唯一の死に場所こそアルプスである」を表現したものである。登場人物のシロこと白根柚木という女性と灰田という男性が心から愛していた曲である。シロは絞殺され、灰田は突然主人公の前から消える。アルプスとはこの小説で何を意味しているのか。それを特定することはできないが、生きるために非常に大切なものであるとは分かる。
 主人公のつくるは仲の良かった友人とのちょっとした行き違いから、自殺一歩手前まで追い込まれてしまう。彼は何も悪いことをやっていないが、宿命として悪霊に憑りつかれたような苦しみを味わわされることになる。分岐点で右の道に行けば、別の世界に辿り着いていたはずだ。失われたもうひとつの世界はどこかに存在する。世界は多重構造になっているからだ。
 つくるは巡礼によって、自殺に追い込まれそうになった謎を解き明かしていく。それは完全に解明されることはないが傷の痛みが幾分和らいでいく。人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。そう悟るまで成長する。
 すべてが時の流れに消えてしまったわけじゃないんだ。では、その残されたものとはいったい何なのだろうか。それはぼくの解釈では、『自己』だ。高度消費社会で自我という欲望が肯定され、膨張して自己を食い破って出てきた。それが現代人の悩みの源泉である。自我を落ち着かせ、自己の枠に戻さなければならない。それは失ってしまったけれども人生に大切なものがあり、もうひとつの世界に踏みとどまっていると思うことでかろうじて護られるのである。自我は常に自分を正当化するから注意しなければならない。
 我々は難しい時代に生きていると考えされたのだった。
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4163821104
No.125
(4pt)

孤独への対処法

「海辺のカフカ」の舞台となった四国は、八十八か所の巡礼地・お遍路さん、として有名です。
今回は、名古屋とフィンランドへ巡礼する旅でした。
生まれ育った、独特な濃い文化の地方都市へ住み続ける男友達。
知り合いの全くいない海外へ移り出て行った女友達。

名古屋といえば旅行記「地球のはぐれ方」で、一番最初に取り上げられた場所。
とても強い印象が村上さんに残ったようです。
「名古屋の青少年は、この街にいたらわりに孤独なんじゃないのかな」
「(名古屋の人は)出たら出っぱなし、居たら居っぱなし」
「グローバリズム対名古屋ファンダリズム」と、述べています。

自宅へ帰った後、友人へ電話をしたら、相手から、突然、絶交されてしまう。
中央公論社に対して書いた村上さんの自筆原稿が流失した事件。
村上さんと亡くなった編集者・安原さんとの友人関係を思い出しました。

「東京奇譚集・品川猿」では、ホンダの女性販売員が登場しました。
ここでは、レクサスの中堅販売員が好意的に描かれています。
トヨタ関係者にとっては、理想的な宣伝文章となっています。

組織で働いた経験の無い村上さんが、研修を取り上げていたのは、意外でした。
読んでいて、研修を受けた時に感じた不快感が、強くよみがえってきました。
平均的な社会人は、研修に対して、どのような思い出を持っているのだろう。

学生は成人する過程で、人間関係の優先順位が変わっていきます。
最初に男友達を切り捨て、次に女友達を捨て去り、結婚をして家族を作り生き延びる。
精神を病んでしまった友人を、長く助け続ける難しさ。
最近も芸能界で、矢部浩之さんは病んだ岡村隆史さんを支えながら結婚をされた一方で、
矢部さんと同じ年齢の中島知子さんは、必死になって人間関係を壊し続けています。

沙羅の魅力を感じるために、沙羅の過去についての物語を、もう少し書いて欲しかったです。
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4163821104
No.124
(4pt)

細部に沸き立つ描写の妙味

村上さんの小説が好きで,今まで出版されたほとんど
すべての小説を読んできました。いくつかのものは数度
読み返しました。村上さんの小説は,私にとっては物語を
楽しむというよりは,小説の表現技術を味わうという
ほうが近いです。そういう意味では極端なことを言うと,
主人公に何か意味ありげな問題が起きて,彼がそれを
解決するために旅に出て,とりあえず一定の結論らしきもの
を手に入れて帰ってくるという,そういう物語の定型さえ
あれば,その物語がどのような応用を得ようともかまわない
のです。彼の小説を読んでいるときには,プロットを
楽しむというのではなく,そこにある言葉と言葉が見せて
くれる不思議で魅力的な空間を楽しんでいます。
今回の小説も,随所に技巧的な極みとその技巧が描き出す,
具体的で幻想的な世界が広がっており,ゆっくり,じっ
くり,丁寧に読ませていただきました。

ただそうは言うものの,小説の内容について,実はやや
不満な面もあります。それは沙羅の存在です。
私は読んでいて,つくるがこの女性に心引かれる理由が
どうしてもわかりませんでした。この物語を先に進めて
いく上で沙羅が重要な役割を担っていることは疑いも
ありませんが,つくるが死の淵をさまよって,そこから
生還し,人間的に大きく変化した末に愛し始める女性
として,とてもふさわしい女性には見えませんでした。
そのような魅力を感じさせる女性としてきちんと描か
れているようには(クロやシロに関する描写に比べて)
思えませんでした。私には沙羅がつくるにとっての実の姉か,
クラス担任の教師のように見えただけでした。この点が,
「行って帰ってくる」という物語の定型における「帰って
くる」部分の動機の弱さにつながっているように感じました。

ですが,この小説は,そうしたいくつかの短所をも乗り越える
ほど,細部に沸き立つ魅力を具えており,やはり読んでよかったな,
彼の小説を同時代に読めて幸せだな,とそう感じさせてくれました。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.123
(5pt)

いいじゃん

普通にいいと思う。
エンタテイメント作家じゃないのだから、デフォルメした人物が登場したり事件が続発する本ばかりじゃなくてもよいでしょう。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 Amazon書評・レビュー: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104