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渇水都市
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渇水都市の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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江上さんと言えば、銀行や金融関係の内部情報に精通し(当たり前ですが)、その中で展開する人間関係の描写がフィクションにしてもノンフィクションにしても実に生き生きと、あるいは生々しく紡がれています。 今回の作品は、「水」という人間の生活に必須な物質であり、安全保障上や戦略的物資としても重要な題材として物語を展開していく。 奇想天外な部分もあるが、現実問題として「水」を取り巻く世界の環境はすでに経済として捉えられ、水を征服するものが世界を支配する可能性すら示唆されている。だから水源や水源涵養林、さらには森林が投資や投機の対象になっているのだろう。 江上さんはそんな現況を捉えながら、近未来を見据えて、水をめぐる紛争を東京のある地域で起こる水不足と原因不明な疾患という文脈のなかで権力と対峙する勢力を主人公を設定して展開する。 人間の生命の根源を成す「水」それを取り巻く人間の欲望、権力、愛情、そこに読者は何を読みとるのか、それが江上さんの投げかけた問いなのだろうか。 | ||||
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2050年には、中国が世界第一の経済大国になっているだろう。 これは、エコノミストや投資専門家の多くが指摘する未来予測である。 この小説の時代は2040年。場所は、仮空の北東京市。「官から民へ」の流れに従い、民営化された水道事業をフランスのWE社が牛耳ろうとしている。WE社は、あこぎな手段を使って、水道事業の世界制覇を着々と進めつつある。 その頂点に君臨するのが、ワンという中国人だ。この設定も、中国人が世界経済の支配者になっていることを示唆している。 物語は、青斑病という謎の病いがはびこる中、海原剛士が死魚の調査に赴いたダム湖で渦にまきこまれ、「水の国」に到達する。そこで彼は、思いもかけない身分を告げられ、新たな世界が回り始める……。 卓抜な設定、ツイストの効いたプロット、ロマンに満ちた登場人物の行動が魅力的だ。随所に経済問題や水事業に関する作者の創見が散りばめられていて、興味深い。 この小説は近未来SFという見方もできるが、私はむしろミステリアスファンタジーとして読んだ。モーツァルトのオペラ「魔笛」を連想するからだ。 深刻なことを決して深刻ぶらずに、さらりとファンタジーの様に楽しませる。それでいてサプライズに満ちている。ここに、江上氏ならでは、周到なレトリックがある。考えぬかれたすばらしい小説だと思う。 巻をおいて、ふと冷静になったとき、これからの時代、水を大切にしなければいけないと思うのは、私だけではあるまい。 | ||||
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金融・経済小説で有名な著者の新境地開拓の作品です。 これまで江上作品を読んでいる人でも 何も知らずに読むと驚くかもしれない近未来SF小説。 江上作品には必ずと言っていいほど著者の実体験からくる 核心の一言が散りばめられていますが、それは今回も健在です。 ふとしたキッカケから大きな使命を担い、期待を一身に背負うことになる主人公。 ----------------------------- 人生には、他人から本当に信頼され、あなたについていくといわれる事態が、 一度や二度はあるに違いない。その時、逃げ出してしまえばそれっきりだ。 しかしその信頼を受けとめたら、違う人生が開けるのだ。 どんな結末になろうとも、自分は自分の役割を果たし、 人々の信頼に応えたと自信を持って言い切りたい。それさえできれば満足だ。 ----------------------------- この主人公の一言を読むと、 著者自身が銀行員時代に大事件の渦中にいたにも関わらず、 困難から逃げずに突き進んできた信念を感じます。 江上剛の挑戦を感じる本作、お薦めです。 | ||||
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