悪人

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評判

悪人の評価:

4.01/5点 レビュー 407件。 B ランク

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平均点4.01pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全326件 101〜120 6/17ページ
No.226
(5pt)

【ネタバレ】世界中の全員が敵になっても私はあなたの味方

やや中だるみ感はありましたが、最後に一気に話がまとまり、読後は色んな思いや余韻が強烈に残りました。色んなメッセージが詰まっていますが、1番感じ取ったのは「『世界中の全員が敵になったとしても私だけは永遠にあなたの味方でいる』という使い古されたこの大切な感情が現代社会において軽んじられている」ということでした。それを色んな登場人物の感情の揺れ等であらゆる角度から巧みに表現をされていたように思います。
その観点から本のタイトル「悪人」とは?祐一は殺人者で世間からみれば悪人だが、「あなたは私が守る」と言った光代から見れば世間が敵=悪人、さらに無根拠に世間を先導するマスコミなんかは極悪人。でも世間的には光代も悪人から善人に代わる。佳男から見れば世間で許されている増尾が第一悪党。じゃあ佳乃は?祐一の母は?警察に通報したばあさんは?
結局人の善悪なんて表裏一体で、悪人だけど善人の人もいるし、善人ぶった悪人もいる。どこかで歯車が狂って極悪人になる可能性は誰にもあり、ある主観で見れば今も全員が誰かの悪人なのでしょう。
そんな善悪の議論をすることよりも、自分の大切な物を命がけで自分の人生を掛けて守る強さを持つこと、悪人にならないことよりも大切なものを守ろうとすることが本当の正義なのではないか。そう感じさせてくれました。(殺人を肯定する訳ではありませんが。)
佳男の「あんた、大切な人はおるね?」の下りは心に刺さりました。
光代が最後につぶやいたセリフは心が震え涙がでました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.225
(4pt)

引き込まれました

単純な私は、読めば読むほど引き込まれました。

記憶力が弱い私は登場人物が増えていくことに戸惑いましたが、それぞれの人物像がうまく描写され、まるで映像を見るように想像できました。

出会い系で出会った女を殺し、出会い系で出会った女と逃げる、こう書いてしまうとそれだけの小説?という感じですが、心理描写もうまく引き込まれました。
例えば、増尾が佳乃を暗闇の峠に置き去りにする場面でも、こういう女っていそう、そしてこういう女にムカつく男もいそう、なんかわかるような…と。

祐一は老夫婦と暮らし、唯一の趣味の車も年寄りの送迎に使い、不器用で真っ直ぐで…。
あまり何も考えていないような印象でしたが、そうではなかった。

ラストでは、悪人を装い愛する人を救おうとするという点で、東野圭吾の「容疑者Xの献身」を思い出しました。
しかし、この小説のラストは悲しすぎました。
その愛する人が、装った「悪人」を真に受けてしまうなんて。
そして確かにあった「愛」を、「舞い上がっていた」だけだと思い込んでしまうなんて。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.224
(4pt)

「作者は何を描きたかったのか ?」という問いに充分に応えた力作

全く予備知識なしに本作を手に採ったのだが、読み応えのある作品だった。実際に起こった事件をモデルにして、小説として再構成したかと思う程のリアリティを持って読む者に迫って来る。作者の出身地が関係しているためか、特に物語の舞台となる長崎・佐賀周辺の地理・風物の描写の木目細やかさはハンパではなく、読んでいて眼前に情景が浮かび上がって来るようである。

また、登場人物達の生い立ちや人生観に関する洞察も深い。主人公やそれに関わる2人の女性だけではなく、殆ど全ての登場人物の造形に工夫が凝らされているのには感心した。男女間の愛憎、家族関係、生きて行く上での孤独感や希望、そして老人相手の詐欺商法まで、まさに現代社会のある縮図を切り取った様な感がある。その意味で、本作は事件(殺人, 逃避行)に纏わる人々の悲哀を描いた物というよりは、そうした社会の縮図を描くために事件の形を借りた物という印象を受けた。

題名の「悪人」から受ける印象とは裏腹に、静謐感に溢れた筆致も特徴的。上述した印象と重なるが、小説というよりは優れたドキュメンタリーを読んでいるかの様な感覚さえ覚えた。その骨格に対する肉付けの重厚味とそれを支える多角的視点の構成の巧みさとが本作の持ち味だと思う。作中の各章に付けられている表現を借りれば、「作者は何を描きたかったのか ?」という問いに充分に応えた力作だと思った。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.223
(5pt)

久しぶりに夢中になれた本

★5つをつけたいがためだけにレビューを投稿しています。
読み終えてしまった今、とても残念な気持ちです。毎晩これを読むのが
楽しみだったのに、その楽しみがなくなってしまったから。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.222
(4pt)

現代社会の切ない話

欲望や偏見等が溢れる現代社会で、純粋に生きていく事の難しさを感じさせてくれます。主人公祐一は、祖父母に育てられ貧しい家庭でそだった今時珍しい純粋で何にでも真っ直ぐな性格を持つ。そんな祐一や育ての親の祖母、房江が、世間の荒波に巻き込まれていく様子、その状況を克服しようとする様は、健気であり勇気を与えてくれる。本当の意味での悪人とは何だろうか。世間のそれとは実際は違う事を考えさせる。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.221
(4pt)

ずらし方が面白い

枚数が多い作品なので、とにかく作りが丁寧で、読みはじめてすぐに好印象を受けた。前半(上巻)はフーダニット小説としても読めて、祐一が本当に殺人犯なのか? という展開を見せる。対比すれば後半はホワイダニット構成で、複数視点で主人公やその周辺家族の置かれた状況が描かれる。特に秀逸なのは息子(祐一)が自分(母親)に金をせびると愚痴る母親のインタビュー描写で、この時点では母親に対する接し方がわからない(甘えている)祐一とそれが理解できない母親との対比が鮮やかなのだが、後に別の視点で同じ行為が語られて意味が変わってくる。その辺りのずらし方が面白い。全体を要約すれば複数の(場合によっては意識されない)悪意が悪人(この場合は殺人犯)を作り上げる話となるのだが、吉田修一にしては珍しく主人公が自己を語っているにもかかわらず、その本当の胸中がわからないところがカズオ・イシグロ風ともいえる。ラストの光代の訴えが耳に残る。
悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.220
(5pt)

僕はなぜこんなにも切ないのだろう?

すさまじいドライブ感。寝食を忘れて読み耽った本は久しぶりだ。興奮した。
人間の言うことは、何もかもが嘘であり、本当でもあるのだろう、と僕はこの本を読んで思う。虚は実であり、実は虚であるのだ、と。真相は“薮の中”ではなく“玉虫色”であり、もしかしたら人間の存在そのものが玉虫色なのかもしれない。
だが、現代社会の機構がそれを許さない。善か悪か、白か黒か、勝か負か、正か邪か、賢か愚か、有か無か……明快な二元論によって成り立っている(ことになっている)のが近代的な文明社会であり、それこそが人類の救済措置になる、と、そんなコンセンサスがある。しかし、果たしてそうだろうか。ならば、僕はなぜこんなにも切ないのだろう? この物語は閉じてはいない、いや、終わってもいなければ、始まってさえいないのではないか、とも思う。切なさのスパイラルの中で、僕はラスト近くでどうしても涙を堪えられなかった。“負け組”の姿が、そこではなんと力強く美しかったことか!
全編にあふれる福岡、佐賀、長崎の九州弁が心に響く。方言がいい、と思わせてくれる小説にめぐり会えることは、滅多にない。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.219
(5pt)

原作も◎ 涙がとまりませんでした。

原作より先に、映画を鑑賞。映画も、痛く、切なく、それでいて、殺人までいかないにしても、今でも街のどこかで同じようなことが起きているのかもしれないリアリティを感じ、最高な作品でした。原作を後に読みましたが、映画同様、涙が止まらず、素晴らしい作品だと思いました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.218
(5pt)

ガツンとやられました

この作品は、殺人事件が描かれているけれど
ミステリーやサスペンスというより

寂しさ、悲しさ、欲、見栄などの

人の心が、よく描かれている芥川賞作家さんらしい作品だと思う。

とはいうものの、著者の吉田修一さんの描いた作品としては
今までとは少し系統が違う感じに感じられる。

冒頭の被害者「佳乃」の視点の部分では
見栄、欲といったものや、身勝手さなど
読んでいる人に、被害者であるものの「嫌な女」という印象を与え

その先の加害者「祐一」視点では
寂しく、同情も沸き
悲しいぐらいの優しさも感じさせられる。

だからこそ、事件の起こりに
やるせない悲しさがあり

「本当の悪人は?」

と考えながら読み進めてしまう。

だが、それだけでは無い。
最後にガツンとやられる。

この部分を、最初は
大きな優しさや、愛なんだと思い

あまりに切なくて涙した。

けれど、余韻に浸ったしばらくのちに

本当に祐一は悪人では無いのだろうか?と疑問が出て
いまだに答えが出ていない。

殺人という行為を除いてみても

「何か」

あるような気がして引っかかってしまう。

もちろん、殺人が「悪」であるのは当たり前のことで

被害者、佳乃が嫌な人間で
加害者の祐一が、同情すべき境遇だからといって

それが和らぐものでは無い。

それとは別に、光代とのからみで
「悪人」なのではと、色々と考えさせられる・・・

それだけ、この作品は深く
グッとくるものだった。

映画版だけを見た方は、小説の最後の部分だけでも読んだら
より「ガツン」とやられると思います。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.217
(5pt)

感動した

題材は安っぽい2時間サスペンスにありがちな事件を
あつかってるんだけど・・・
それを見事に文学にまで昇華させた作品と思う。
秀逸。
この作家の力量に感動した。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.216
(4pt)

ラストは涙が止まりませんでした

主人公の不器用な生き方、人には見えない優しさに心が揺さぶられました。

母の心に「憎しみ」を刻ませることで、彼女を救おうとする姿、
光代を救うために、自ら「悪」を演じる姿、

彼の献身とも言えるその愛情に、涙が止まりませんでした。

彼は本当に『悪』なのか?
正義とはなんなのだろうか?

主人公の悲しく、切ない生き方に心が締め付けられる、けれど読んだあと不思議な余韻を残す、そんな作品だと思います。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.215
(4pt)

なかなかでした。

好みの作品でした。

ネタバレになると良くないので詳しくは書けませんが、人を愛するだけでなく、人からの愛に気付ける人になりたいと思いました。
終わりは切なかったけれど、切ないからこそ余韻が残ります。

ただ、出会い系に嫌悪感を持っている方は感情移入しにくいと思います。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.214
(4pt)

真の悪人は,殺人者である。

本当の悪人とは,誰なのか,という問いが本書のテーマである。
 読み終わったとき,清水以上に,石橋,増尾や悪徳商法の堤下が悪人だと思うだろう。
 しかし,この小説の構造から離れて冷静に考えれば,真の悪人は,殺人を犯した清水であることに間違いはないだろう。著者は,殺人を犯した人間には,時には同情すべき点があって,その殺人者以上に,悪人がいると主張したいのだろうか。もしも,この小説の読後に,殺人犯清水は,本当の悪人ではなく,他に「真の悪人」がいると思ってしまうのは,それだけ殺人というものが,我々の世界からかけ離れたところにあるからだ。殺された石橋佳乃は,確かに憎たらしい女性だったのかもしれない。けれども,彼女には,家族がいたはずだ。そして,殺人犯清水にも家族がいる。清水は,自分の思い通りにならない世界になんらかの抵抗をしたかったかもしれない。ただし,それは,矮小な人間の自分勝手の考えと行動にすぎなかった。その殺人によって,家族は崩壊してしまった。それこそ,清水の犯した殺人がもたらした「悪」ではないのだろうか。
 けれども,本書は,純粋に小説と読めば,おもしろい作品だと思う。救いがない物語といえば,そうかもしれないが,一度,「悪」というものを考える良いきっかけになる小説だと思う。

悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.213
(5pt)

タイトルに裏切られた、心に響く傑作。

果たしてどんな「悪」が描かれているのか?
隷書体で書かれたタイトル名が強烈さを暗示。
先入観を逆手にとって、読者を引き込む。

しかし、・・・読前イメージとは全く違う内容が
明らかになる。

地方都市の閉塞感から生まれる孤独と絶望。

どうにもならない境遇と鎖に繋がれた現実。

真面目に生き続けることの美徳と背反。

対岸の火事だと考える人間の身勝手さ。

現代の恋愛市場における病巣。

不器用で普遍的な血縁愛と皮肉。

素朴で素直でありながら、それ故生まれる
優しすぎる登場人物の犯罪。

現代の地方都市の現実や若者が抱える恋愛事情、幸福感に
ついて、なんとなくイメージは湧いてはいたけど、
それを的確に、凄みある人物描写で書きあげた秀作。

すべての登場人物のキャラが立っていて、重く切ない
心情が強烈にスパークし、科白の重厚感も白眉だ。

「生まれて初めて人の匂いがした」
「欲しゅうもない金、せびるの、つらかぁ」
「ばあさんが悪かわけじゃなか」
「そうやってずっと、人のこと、笑って生きていけばよか」
「これまで必死に生きてきたとぞ」
「どっちも被害者にはなれんたい」
「どんなに俺が言い張っても、誰も信じてくれんような気がしました」

表面的で非現実的な設定で、ムリヤリ盛り上げようとする、
最近の似非ベストセラーに対するアンチテーゼか?

善悪と合法・違法の狭間で、読者に「悪」というモノの
指標を考えさせる命題提示も素晴らしい。

「心の裕福さ」の価値と、それだけで生きていけるのか
を考えさせられる。

概して、フィクションでありながら、現実世界の
心闇ともがきながら葛藤する人物の機微を
うまく表現した至高作品であった。

映画をご覧になって、光代と祐一の心の繋がり方に
疑問を持った方は、ぜひ小説を読んでください。

映画では時間的制約で感じられなかった、二人の
孤独と、かけがえのない存在としての宿命に、
納得できると思います。

祐一が出所した際、光代が迎えに行く場面を想像すると、
今作の切なさ、人間の業といったモノが味わえると思います。


悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.212
(4pt)

被害者と加害者の入れ替わる瞬間

本当の悪とは何だろうかと深く考えさせられました。

人は誰でも「幸せになりたい」と思って生きている。

そのために誰もが見栄をはったり、日々、小さな嘘や小さな裏切りを重ねている。

ただそれが殺人事件へと変わった時に物語は大きく入れ替わる。

いわゆる一線を超えてしまうってことですが・・・。

ちょっとむしゃくしゃしてたり、つい、カッとなってしまったり、きっかけは些細な事かもしれない。

一つ言えるのは、すべてが「さみしさ」がもたらしたものの一つだという事。

さみしい気持ちにはつけいるすきがある。

読み進んでいくうちに殺人を犯した主人公祐一と殺された被害者である佳乃との立場が入れ替わる瞬間がある。
被害者が実は加害者で加害者こそが被害者なのではないかと・・・・。

「悪人」とははたして誰の事を指すのか?

見栄っ張りでひたすらどん欲な被害者佳乃、
そんな娘を信じて真面目一筋で生きて来た父、
裕福な家庭に生まれ育ち、やりたい放題生きて来た第一容疑者の増尾、
対照的に両親の愛情にも、めぐまれた環境にも容姿以外「持たなすぎた」主人公祐一、
ひいては、貧しいなかで贅沢もせず、祐一を育て上げた祖母の房枝、
その祐一が起こした事件によりマスコミや周囲に苦しめられる事になり二次的被害者とも言える
その祖母を食い物にする悪徳業者。

同情しながらも今一つ腑に落ちなかった心を閉ざしたままの祐一の性格や行動・・・。

祐一が光代に出会う事で一気に共感へと変わる。

もっと早く二人が出会っていればこんな事にはならなかったのにと誰もが思うだろう。

誰もが幸せになりたいと願う。
誰しもが幸せになる権利がある。

特に真面目に日々生きている素朴な人々の明日を私達は願わずにいられない。

最愛の娘を失っての夫婦の再出発や

無愛想なバスの運転手が追いつめられた主人公の祖母房江に投げかけるエールの言葉、

その祖母を元気にするたった一枚のスカーフ。

この物語はそんな人々の小さな希望をうまく書き出していたと思います。
悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.211
(4pt)

そんなに悪人とは思えない

映画化よりかなり前に読みました。映画はまだ見てません。

殺人を犯した青年は恵まれない境遇で育ち、衝動的に女性を殺しますが、
悪人というイメージは全くありませんでした。
どちらかというと殺された女性を含め、周りの人間の方が悪いような・・・

作品としては映画化されるだけあって、良い小説です。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.210
(5pt)

ノンフィクションの味わい

以前に読んだ2つの作品で、この作家さんはメロドラマの人だと決めつけて、
「悪人」も気になりつつ避けていましたが、勧めてくれる人がいて読んでみました。
想像とはまったく違って、読みはじめはノンフィクション小説の雰囲気ですね。
たんたんと事実が語られていき、登場人物の一人一人がくっきりと浮かび上がっていく。
作品世界にぐいぐい引き寄せられました。
なぜその人がそんなことをしたか、という背景をきちん、きちんと描いていっているので、
ものすごく納得して読めました。なんだ、こいつ、みたいな人物がいない。
最後はすべてをここまできれいにまとめなくてもいいんじゃないかなと思いましたが、
とにかく読み応えは充分でした。
なんといっても、登場人物たちの使う方言や、地方の情景の描写が作品世界にあっていて、
そこが味わい深く、素晴らしくよかったです。
ボリューム的に上下巻にしなくてもいいかなとは思いましたがw
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.209
(4pt)

悪人とはいったい誰?

悪人とはいったい誰なのでしょうか。
悪事を働く人でしょうか。心のよくない人でしょうか。悪人はずっと悪人でしょうか。誰にとっても悪人でしょうか。何で量るのでしょうか。誰が決めるのでしょうか。主観でしょうか。
私は悪人でしょうか。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.208
(4pt)

無題

結局「悪人」とは一体全体何なのか…
というのがテーマなんだろうか。みんな誰しもが悪人になりえるだろうというのが伝わってくる。結局その時の状況々でついてくるものは変わってくるし、その行動がいい方に転ぶか、悪い方に転ぶかも十人十色で考えさせるものがある。結局、この人にとって「悪人」と、この人にとっては「いいひと」でほんとのとこわからない。
結局は運なんじゃないでしょうかね。「もし」、とか「たら」とか使えばキリないでしょうけど、もしあそこで佳乃がベラベラ喋らなくてとか、もしあそこで運悪くバンパーに手を挟まなかったらとか。
最悪の真相心理と状況で人ってどう転ぶかわからないですね。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.207
(5pt)

「悪人」とは誰か?

言い方は非常に悪くなりますが、殺害された人が一人とその後の犯人の逃亡劇ですから、ドラマ的な要素は少ないのですね。これが、地域や季節などの状況の描写、例えば、冒頭の事件現場の描写、人や車の往来のない山の峠道の描写の1,600字程度を費やすことで、映像が立ち上がるような感覚をもつことができます。

 人の心情はモノに色濃くでます。それは、お正月のおせちの重箱のなかの真っ赤なエビに、また、洋服を何年も買った覚えがないおばあさんの久しぶりに買ったセールで3,800円のオレンジ色の明るいスカーフに現れます。

 また、被害者の心情と、状況が絶妙だなぁ、と思います。若い女性の同年代の仲の良い女性に対する相手への考え方、本人はそれほど派手ではないが、生活の状況を飾り立てるような自分の見せ方、地方都市の若さを閉じ込めるような息苦しさが伝わってきます。

 少し本文の引用を。被害者の父親が、事件現場に被害者を導いた男に接触する場面での言葉

 「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」

 これがでてきたときに、すべてがハラハラと解けるように判った気がするんですね。つまり、人を3つに分類すると、誠実に生き大切なものを持つ人間と、誠実に生きているがまだ大切なものを持ったことがない人間と、大切なものを持たない人間。

 事件は、大切なものをまだ持たない人間が起こしたもので、周りの大切なものを持った人間は、大切なものを持たない人間の持たないが故の言動に心を痛め、大切なものをまだ持たない人間が大切なものを見つける過程である、と集約できるのではないかということです。

 そうすると、大切なものがない人間の言動が、それが本人が誠実に生きていたとしても、例えば、テレビのコメンテータの全く当事者たり得ないが故の言葉、ネットでの無名性に守られた中傷のような言葉、近所や周りの人間の当事者でありえるにもかかわらずただの迷惑であるとするような言葉や視線に「悪人」が宿るのではないか、と思えてきます。つまり、加害者や、軽薄であるため嫌悪感を感じる人間から、相対する人間に「悪人」を反転させている感覚をもたせる、その感覚に心を痛めるわけです。

 ただし、実際には、もうすでに「悪人」たり得る、もしくは、既に「悪人」であるのにもかかわらず、そのときには、心を痛めない現実を認識することができるのです。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X