インディヴィジュアル・プロジェクション

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評判

インディヴィジュアル・プロジェクションの評価:

3.66/5点 レビュー 41件。 D ランク

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平均点3.66pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全48件 21〜40 2/3ページ
No.28
(4pt)

阿部和重全開

日記形式で書かれた小説に限らず、誰かの視点でその小説が書かれている場合その視点や思考は主観に過ぎず、そこにおける客観性というものを読者は「他者の言動」のみからしか判断することができない。では、その他者が真実を述べていなかったらどうなるのか。自分を騙そうとしているとしたらどうなのか。あるいは。……。
膨大な伏線とほとんど解決されないまま終わるそれら(かなり集中して読んでいたせいで少し泣けた)、もしくは無数の解釈が可能なそれら。そしてラスト。
読み終わった瞬間は消化不良な想いがじわじわと湧くけれど、東浩紀の解説によってその想い以上に驚嘆が広がる。阿部和重が好きならオススメ。自分が理解できていないのに言うのはなんだけど、芥川賞受賞作の「グランド・フィナーレ」よりはこちらの方を強く勧めます。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.27
(4pt)

阿部和重全開

日記形式で書かれた小説に限らず、誰かの視点でその小説が書かれている場合その視点や思考は主観に過ぎず、そこにおける客観性というものを読者は「他者の言動」のみからしか判断することができない。では、その他者が真実を述べていなかったらどうなるのか。自分を騙そうとしているとしたらどうなのか。あるいは。……。
膨大な伏線とほとんど解決されないまま終わるそれら(かなり集中して読んでいたせいで少し泣けた)、もしくは無数の解釈が可能なそれら。そしてラスト。
読み終わった瞬間は消化不良な想いがじわじわと湧くけれど、東浩紀の解説によってその想い以上に驚嘆が広がる。阿部和重が好きならオススメ。自分が理解できていないのに言うのはなんだけど、芥川賞受賞作の「グランド・フィナーレ」よりはこちらの方を強く勧めます。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.26
(4pt)

巡る阿部ワールド

 ただ、この作品が 面白いのか、面白くないのか、それだけを気にしているあなたに僕が言うとするならば、この作品は 面白い。がしかし、阿部和重の本をまだ読んだことがない人にとっては、内容はともかくとして、書き方がハードな文体である為に、読みにくいかもしれない、ということは頭に入れておいてほしい。
 もう少し、この作品の詳細を言うあなたに。この作品は旧友との間での心理戦が繰り広げられ、スリルのある作品だと僕は思っている。だが阿部和重は、書き方が固く厳しく、その分、読むスピードが落ちる。そう言った意味で、展開が遅い(逆に阿部ワールドを体感できる)。その中で、こういったスリルのある作品を書ける阿部にはかなり感動させられてしまった。シメも阿部らしい終わりで、この作品を読めば、阿部和重を知ることが出来ると僕は思う。
 かなり詳細を知りたいあなたに僕がレビューを書くとするなら、少し話の内容を説明することになる。それに加え、阿部和重の他の作品を読まないと僕が記述する内容が分からなくなってしまいかねない。
 文体はあくまでも"阿部和重"なわけだが、このインディヴィジュアル・プロジェクションの以後に発刊された、『シンセミア』、『グランド・フィナーレ』、『プラスティック・ソウル』と比較すると、ストーリーのプロットの組み方がかなり異なってくる。
 インディビジュアル・プロジェクションやニッポンニアニッポンといった作品は『一つの目的』を通してストーリーが発展していくのだ。それに比べると、グランド・フィナーレ等はコレといった目的もなく、ストーリーの展開も地味で(しかし面白い)、リアリティが追及されている様に見える。
 そこが、阿部和重の前後の作品の違いだと思われる。
 この作品の素晴らしいところは、一つの目的(心理戦をこなしていく)へ向かう過程での面白みが存分に書かれていて、ストーリーが巡るに巡る。グランド・フィナーレ等を先に読んだ方々には、こういう"阿部和重"があることを是非とも知ってほしい。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.25
(4pt)

巡る阿部ワールド

 ただ、この作品が 面白いのか、面白くないのか、それだけを気にしているあなたに僕が言うとするならば、この作品は 面白い。がしかし、阿部和重の本をまだ読んだことがない人にとっては、内容はともかくとして、書き方がハードな文体である為に、読みにくいかもしれない、ということは頭に入れておいてほしい。
 もう少し、この作品の詳細を言うあなたに。この作品は旧友との間での心理戦が繰り広げられ、スリルのある作品だと僕は思っている。だが阿部和重は、書き方が固く厳しく、その分、読むスピードが落ちる。そう言った意味で、展開が遅い(逆に阿部ワールドを体感できる)。その中で、こういったスリルのある作品を書ける阿部にはかなり感動させられてしまった。シメも阿部らしい終わりで、この作品を読めば、阿部和重を知ることが出来ると僕は思う。
 かなり詳細を知りたいあなたに僕がレビューを書くとするなら、少し話の内容を説明することになる。それに加え、阿部和重の他の作品を読まないと僕が記述する内容が分からなくなってしまいかねない。
 文体はあくまでも"阿部和重"なわけだが、このインディヴィジュアル・プロジェクションの以後に発刊された、『シンセミア』、『グランド・フィナーレ』、『プラスティック・ソウル』と比較すると、ストーリーのプロットの組み方がかなり異なってくる。
 インディビジュアル・プロジェクションやニッポンニアニッポンといった作品は『一つの目的』を通してストーリーが発展していくのだ。それに比べると、グランド・フィナーレ等はコレといった目的もなく、ストーリーの展開も地味で(しかし面白い)、リアリティが追及されている様に見える。
 そこが、阿部和重の前後の作品の違いだと思われる。
 この作品の素晴らしいところは、一つの目的(心理戦をこなしていく)へ向かう過程での面白みが存分に書かれていて、ストーリーが巡るに巡る。グランド・フィナーレ等を先に読んだ方々には、こういう"阿部和重"があることを是非とも知ってほしい。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.24
(4pt)

多角的に読めます。

はじめて読んだのは大学3回生。
「スリラーとノワールが融合した扇情的な語り口調だな」と思っていた。
社会人になって再読してみると、ポストモダンをモデル化するために「小説」というツールを用いたのではないか、
と疑いたくなる表現が散見されて面白かった。
阿部和重作品はフレームワークを理解できないひと(あるいは現代思想に興味のないひと?)を拒絶する傾向が強い気がする。『IP』はそのなかでも「ヘンテコなハードボイルド小説」として異彩を放っている。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.23
(4pt)

多角的に読めます。

はじめて読んだのは大学3回生。
「スリラーとノワールが融合した扇情的な語り口調だな」と思っていた。
社会人になって再読してみると、ポストモダンをモデル化するために「小説」というツールを用いたのではないか、
と疑いたくなる表現が散見されて面白かった。
阿部和重作品はフレームワークを理解できないひと(あるいは現代思想に興味のないひと?)を拒絶する傾向が強い気がする。『IP』はそのなかでも「ヘンテコなハードボイルド小説」として異彩を放っている。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.22
(4pt)

文庫本を買って解説読んだ方がいい(難しい本ではないけど)

映画学校の通っていた塾生達が、行きがかり上関わっていくヤクザとの抗争。乱れ錯綜する記憶、人物。主人公の混乱ぶりにこちらまで巻き込まれて、真実の境目がわからなくなっていく。日記調の文体に乗るようにサクサク読める。スピード感がある。一番関心したのが、映画学校生徒だった主人公達が抗争に巻き込まれていくまで裏社会に染まっていくきっかけ部分。マサキという怪しげなオヤジからスパイの指導を受けるのがきっかけなのだけれど、そのオヤジも最初からスパイに精通していたのではなく、最初はただの武道を教えるおっさんだったのが、映画学校の取材を受けるうちに次第次第に気が大きくなっていき、そこに取材する側も巻き込まれ、引き込まれていつからかスパイの指導を受けることに・・・って部分。共同体が知らずに生む狂気のようなリアリティがあった。後半の錯乱もそのリアリティがあればこそ引っ張れたのではないかとすら思った。「渋谷」「暴力」みたいなステレオタイプな展開に最初はどこか冷めた思いがあったが、読むうちに引き込まれる。普通におもしろい。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.21
(4pt)

文庫本を買って解説読んだ方がいい(難しい本ではないけど)

映画学校の通っていた塾生達が、行きがかり上関わっていくヤクザとの抗争。乱れ錯綜する記憶、人物。主人公の混乱ぶりにこちらまで巻き込まれて、真実の境目がわからなくなっていく。日記調の文体に乗るようにサクサク読める。スピード感がある。一番関心したのが、映画学校生徒だった主人公達が抗争に巻き込まれていくまで裏社会に染まっていくきっかけ部分。マサキという怪しげなオヤジからスパイの指導を受けるのがきっかけなのだけれど、そのオヤジも最初からスパイに精通していたのではなく、最初はただの武道を教えるおっさんだったのが、映画学校の取材を受けるうちに次第次第に気が大きくなっていき、そこに取材する側も巻き込まれ、引き込まれていつからかスパイの指導を受けることに・・・って部分。共同体が知らずに生む狂気のようなリアリティがあった。後半の錯乱もそのリアリティがあればこそ引っ張れたのではないかとすら思った。「渋谷」「暴力」みたいなステレオタイプな展開に最初はどこか冷めた思いがあったが、読むうちに引き込まれる。普通におもしろい。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.20
(5pt)

時代が回転する小説

友人がこの本を読んだというので感想を聞くと、この一言。「B級小説だね」最初、ムッとしたのだけれど、しばらく後に「言いえて妙である」と腑に落ちた。そう、この作品はまぎれもなくB級なテイストを思う存分漂わせた小説である。スリリングにストーリーは展開してゆきながら、最終的には文学たりえているのだ。その鍵はもしかしたら、文中に登場する「フリオ・イグレシアス」にあるのかもしれない。冒頭と最後で象徴的に登場するフリオ。なぜ、フリオっ? てところが文学。そして、表紙も当時は大胆で奇抜で新しかった。「インディヴィジュアル・プロジェクション」というタイトルが英語なのも、今までにほとんど例がなかったらしい。阿部和重の輝かしい出世作。J文学はここから始まった。時代が回転する小説がコレだ!
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.19
(5pt)

時代が回転する小説

友人がこの本を読んだというので感想を聞くと、この一言。「B級小説だね」最初、ムッとしたのだけれど、しばらく後に「言いえて妙である」と腑に落ちた。そう、この作品はまぎれもなくB級なテイストを思う存分漂わせた小説である。スリリングにストーリーは展開してゆきながら、最終的には文学たりえているのだ。その鍵はもしかしたら、文中に登場する「フリオ・イグレシアス」にあるのかもしれない。冒頭と最後で象徴的に登場するフリオ。なぜ、フリオっ? てところが文学。そして、表紙も当時は大胆で奇抜で新しかった。「インディヴィジュアル・プロジェクション」というタイトルが英語なのも、今までにほとんど例がなかったらしい。阿部和重の輝かしい出世作。J文学はここから始まった。時代が回転する小説がコレだ!
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.18
(4pt)

阿部和重

阿部和重。芥川賞受賞の報に友人が「やっと、っていう感じ」と言いながら紹介してくれた作家である。本書の主人公・オヌマ。彼はこの世界に生きていながら(生きざるを得ないのに、というべきか)、どこかこの世界と結びついていない。現実に足がついていない、という言葉で言い表せるような、そういう結びつきのなさではなく、どこにも存在していないかのような存在の希薄さ。彼はまた感情も希薄だ。それは主人公に限らず、登場人物全員に共通している。感情を持った人間としてではなく、カタカナでのみ表記された、記号化されている人物たち。その感じが作品の底辺に流れ、この独特な醒めた世界を形成している。乾いたモノクロの世界。こうした主人公が世界を結びつくためには、一人の自分だけでは不可能だったということか。錯綜する自己と他者。み・ん・な/じ・ぶ・ん。そして、この、自分が他者でもあったのかもしれないという混乱の中で、初めて彼は自分の感情=混乱をあらわにする。その主人公の混乱に巻き込まれ、読者であるわれわれも混乱の中に入り込む。しかし、その混乱はあっけないほど簡単に収束し、その混乱の収束と同時に、いったんはスピードをあげたかのようにみえた物語もまたガクンとスピードを落とす。この存在の希薄さ(世界との結びつきのなさも、自分=他者というのも、自己が希薄だからに他ならない)こそ、現代という時代の特徴なのかもしれない。その意味で阿部和重は、現代を描く文学者の一人であると思う。最後に。本書はアヤコと主人公が話している場面で終わるのだが、この場面はHが高校生に襲われる場面と重なるように感じるのは私だけだろうか。だとしたら、この物語はまた初めに戻り、永遠に抜け出すことのできない迷宮の世界でもあるのだ。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.17
(4pt)

阿部和重

阿部和重。芥川賞受賞の報に友人が「やっと、っていう感じ」と言いながら紹介してくれた作家である。本書の主人公・オヌマ。彼はこの世界に生きていながら(生きざるを得ないのに、というべきか)、どこかこの世界と結びついていない。現実に足がついていない、という言葉で言い表せるような、そういう結びつきのなさではなく、どこにも存在していないかのような存在の希薄さ。彼はまた感情も希薄だ。それは主人公に限らず、登場人物全員に共通している。感情を持った人間としてではなく、カタカナでのみ表記された、記号化されている人物たち。その感じが作品の底辺に流れ、この独特な醒めた世界を形成している。乾いたモノクロの世界。こうした主人公が世界を結びつくためには、一人の自分だけでは不可能だったということか。錯綜する自己と他者。み・ん・な/じ・ぶ・ん。そして、この、自分が他者でもあったのかもしれないという混乱の中で、初めて彼は自分の感情=混乱をあらわにする。その主人公の混乱に巻き込まれ、読者であるわれわれも混乱の中に入り込む。しかし、その混乱はあっけないほど簡単に収束し、その混乱の収束と同時に、いったんはスピードをあげたかのようにみえた物語もまたガクンとスピードを落とす。この存在の希薄さ(世界との結びつきのなさも、自分=他者というのも、自己が希薄だからに他ならない)こそ、現代という時代の特徴なのかもしれない。その意味で阿部和重は、現代を描く文学者の一人であると思う。最後に。本書はアヤコと主人公が話している場面で終わるのだが、この場面はHが高校生に襲われる場面と重なるように感じるのは私だけだろうか。だとしたら、この物語はまた初めに戻り、永遠に抜け出すことのできない迷宮の世界でもあるのだ。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.16
(4pt)

阿部小説に関心ある人必読

芥川賞作家になったわけですが、小説という表現形態で新境地に挑戦していく力は凄みを感じるほどです。インディヴィジュアル・プロジェクションは読み物としてもストーリーを追いやすく、楽しい。そしてもちろん、よく考えて読むと、深い、と私は感じた。どんどん話が展開するが、それをどうまとめて考えていくか、あるいは考えないか、それは読者次第。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.15
(4pt)

阿部小説に関心ある人必読

芥川賞作家になったわけですが、小説という表現形態で新境地に挑戦していく力は凄みを感じるほどです。インディヴィジュアル・プロジェクションは読み物としてもストーリーを追いやすく、楽しい。そしてもちろん、よく考えて読むと、深い、と私は感じた。どんどん話が展開するが、それをどうまとめて考えていくか、あるいは考えないか、それは読者次第。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.14
(5pt)

アイデンティティー

自分は、誰でもあり、誰でもない。個人のアイデンティティの喪失を鮮やかに描ききった傑作。私設スパイ養成学校で過ごした過去を持つ映写技師の主人公の妄想は、他の誰かのリアリティかもしれない。そして、他の誰かの妄想が自分のリアリティかもしれない・・・・。変転する関係の中で自分を掴むことすら出来ない。現代人の乾いた孤独の在り方を見事に表している。とっくに芥川賞をとっていてもおかしくなかった。今回の「グランド・フィナーレ」での遅すぎる受賞には心からおめでとうをいいたい。それにしても、選考委員である石原氏の「安っぽい」発言には渋面を作らざるを得ない。そういう発言そのものが「安っぽい」のに気がつかないのだろうか・・・・。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.13
(5pt)

アイデンティティー

自分は、誰でもあり、誰でもない。個人のアイデンティティの喪失を鮮やかに描ききった傑作。私設スパイ養成学校で過ごした過去を持つ映写技師の主人公の妄想は、他の誰かのリアリティかもしれない。そして、他の誰かの妄想が自分のリアリティかもしれない・・・・。変転する関係の中で自分を掴むことすら出来ない。現代人の乾いた孤独の在り方を見事に表している。とっくに芥川賞をとっていてもおかしくなかった。今回の「グランド・フィナーレ」での遅すぎる受賞には心からおめでとうをいいたい。それにしても、選考委員である石原氏の「安っぽい」発言には渋面を作らざるを得ない。そういう発言そのものが「安っぽい」のに気がつかないのだろうか・・・・。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.12
(5pt)

情報、暴力、そして内省

 渋谷で映写技師のバイトをしている主人公オヌマが日記に自分の過去(スパイ養成塾の体験)と現在(塾生に纏わる話、たとえば塾生の事故死)を綴っていく形式で物語が語られてゆく。 驚嘆させられるのは情報量の多さだ。スパイ、やくざ、恋愛、事故、映画、塾、プロトニウム、マックシェイク、フリオイグネシアス、女子高校生、右翼、喫茶店、コンビニ…。まさに情報社会の中に生きる僕らの世界が書かれているわけだ。そして暴力。暴力的な会話が魅力的だ。「クソッタレのクズやろうばかりだから、戦争したくて仕方がないんだ/こらオヌマ、馬鹿にすんなよ、おれはべつにあんたが好きだから奢ってやってんじゃねえんだぞ!」などなど。だが情報社会、暴力といった主題にも関わらず、オヌマは思考を凝らす。というか小説の半分くらいはオヌマの思考内容だ(さらに言えば日記を書く行為自体が思考だし)。オヌマはすごく内省的な性格なのだ。暴力的なのに内省的ってとこが僕は好きだ。 ちなみにめっちゃ読みやすい。あまり読書しない友人三人に勧めてもみんなおもしろいって言ってた。初心者は「グランドフィナーレ」よりこっち読んだほうがいいよ。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.11
(5pt)

情報、暴力、そして内省

 渋谷で映写技師のバイトをしている主人公オヌマが日記に自分の過去(スパイ養成塾の体験)と現在(塾生に纏わる話、たとえば塾生の事故死)を綴っていく形式で物語が語られてゆく。 驚嘆させられるのは情報量の多さだ。スパイ、やくざ、恋愛、事故、映画、塾、プロトニウム、マックシェイク、フリオイグネシアス、女子高校生、右翼、喫茶店、コンビニ…。まさに情報社会の中に生きる僕らの世界が書かれているわけだ。そして暴力。暴力的な会話が魅力的だ。「クソッタレのクズやろうばかりだから、戦争したくて仕方がないんだ/こらオヌマ、馬鹿にすんなよ、おれはべつにあんたが好きだから奢ってやってんじゃねえんだぞ!」などなど。だが情報社会、暴力といった主題にも関わらず、オヌマは思考を凝らす。というか小説の半分くらいはオヌマの思考内容だ(さらに言えば日記を書く行為自体が思考だし)。オヌマはすごく内省的な性格なのだ。暴力的なのに内省的ってとこが僕は好きだ。 ちなみにめっちゃ読みやすい。あまり読書しない友人三人に勧めてもみんなおもしろいって言ってた。初心者は「グランドフィナーレ」よりこっち読んだほうがいいよ。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219
No.10
(4pt)

まずは素直に楽しむのが良いのでは

小説を読んで「考えさせられる」ことは多いと思うが、この作品ではその考えさせるポイントが非常に「著者」に近いところにある。「著者」⇒「作品」⇒「読者」というより「著者(作品)」⇒「読者」って感じ。読んでいるときは、「作品(著者)」⇒「読者」の感じなんだけど。まずは「作品」にどっぷり使って読んでいくのが楽しい。「え!なんなの」って。人によっては最初が難関かもしれないけど、途中からグイグイくるので我慢。「インディビジュアル」とか「プロジェクション」とか「この終わり方ってなんなの」とか、後で考えてみるのがまた面白い。「正解」を探そうとすると悩んじゃうけど。
インディヴィジュアル・プロジェクション Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクションより
4104180017
No.9
(4pt)

まずは素直に楽しむのが良いのでは

小説を読んで「考えさせられる」ことは多いと思うが、この作品ではその考えさせるポイントが非常に「著者」に近いところにある。「著者」⇒「作品」⇒「読者」というより「著者(作品)」⇒「読者」って感じ。読んでいるときは、「作品(著者)」⇒「読者」の感じなんだけど。まずは「作品」にどっぷり使って読んでいくのが楽しい。「え!なんなの」って。人によっては最初が難関かもしれないけど、途中からグイグイくるので我慢。「インディビジュアル」とか「プロジェクション」とか「この終わり方ってなんなの」とか、後で考えてみるのがまた面白い。「正解」を探そうとすると悩んじゃうけど。
インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)より
4101377219