容疑者たちの事情
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1993年にデビューした英国女流作家の日本での初翻訳作品。1997年に書かれたもので、ローズ・トレヴェリアン・シリーズ第一弾です。 ライト・ミステリとあったのでまず頭に浮かんだのは、たとえばケイト・キングスバリーのペニーフット・ホテルのシリーズなど、ユーモア含みのくすっと笑える軽いものでした。が、意外なことにそうでなくて、ユーモア部分はほとんどありません。ごく普通にずっとシリアスな描き方です。 最愛の夫を亡くした痛手からまだ立ち直れていない40代の画家兼写真家のローズが、地元で起きた殺人事件に巻き込まれながら、自分の人生を振り返ったり、これからを模索するという内容です。 ミステリ部分は正直言って特筆すべきものはないので、おもしろいミステリが読みたい!と期待して読むと、正直当てがはずれると思います。特異な事件や異常な犯人、錯綜する捜査に、あっと驚く真相というものはまったくありません。日常で、もし殺人事件に巻き込まれることがあったとしたら、まあこんなふうになるのかなという感じです。 時々視点がいろんな人物に変わりますが、大部分は主人公ローズの視点から語られています。女性の気持ちがうまく描かれているので、どちらかというと女性小説の要素が強いかも。男性には退屈かもしれません。 舞台になっているコーンウォールの風物がめずらしいです。個人的な話で恐縮ですが、英国は好きで、今までロンドン周辺とイングランド中央部、スコットランド、北アイルランド、インナーヘブリディーズ諸島の一部に行ったことがあります。もし次に行くなら、ウェールズとコーンウォールがいいなと思っていたところでした。英国では唯一、日光が豊富で地中海のように明るい気候だというのは、この作品を読んで初めて知りました。 このシリーズ、日本ではとりあえず7冊翻訳されているようです。コーンウォールの雰囲気を楽しみながら、ローズの人生にも注目して読んでいきたいと思います。 | ||||
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著者自身の故郷であるイギリスのコーンウォール島を舞台にアラフォーの未亡人で写真家兼画家ローズ・トレヴェリアンの素人探偵としての活躍と第二の恋愛に踏み出す姿を生き生きと描く名物シリーズの第1弾です。本シリーズはユーモアが控え目な真面目系コージー・ミステリーに分類出来ると思いますが、この種の物語のヒロインには夫に先立たれた未亡人という設定が本当に多いなあと改めて感じました。本書のヒロイン・ローズ・トレヴェリアンは四年前に最愛の夫デイヴィッドを癌による病死で喪ってから写真家兼画家として悠々自適の人生を歩んで来ましたが、今回の事件をきっかけに心境の変化を感じ新たな人生の一歩を踏み出す事となります。 ローズはコーンウォールの土地に移り住んだばかりの夫人と仕事を通じて知り合い、彼女の開いたパーティーへの招待に応じたが、その夜偶然にも女主人の転落死体の発見者となってしまう。やがて殺人事件と断定した警察から自身も犯人の疑いを持たれたローズは身の潔白を証明する為にも自ら調査に乗り出して行く。 本書のミステリーとしての面白さは、ロンドンで別居中の夫や息子とその婚約者の女性に夫の不倫相手や地元の家政婦等の容疑者たちの心理をそれぞれの独白体で記す事によって思惑や本音の部分が見え隠れする心理描写の巧みさでしょう。勿論殺人の告白こそ無い物の根は真面目な罪のない人物と異常なねじれた性格の人物の描き分けは中々に見事だと思います。そしてコージー・ミステリーのもう一つの傾向は主人公と犯人の対決をクライマックスに持って来る事だなあと本書を読んで再認識しました。私が本書を‘大人の愛のミステリー’と考える理由はヒロイン・ローズの第二の恋愛模様で、ローズを昔から深く愛しながら気持ちを思い遣り過ぎて消極的な態度で友人にしかなれない内気な独身男バリー・ロウと逆に押しの強さで大胆に攻めまくる経験豊富なバツイチ男ジャック・ピアース警部とではハナから勝負にもならず、恋の勝利者は決定的に思えますしラスト近くでは二人が大人同士の男女関係になる様子がサラリと描かれています。 著者が深く愛するコーンウォール島の素晴らしい自然の姿が楽しめて緻密な心理描写に満ちた大人の小説を読む味わいが感じられるシリーズは大いに期待が持てそうですので、これから既訳作品をどんどん読み進んで行こうと思います。 | ||||
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人によって受け取り方が違うかもしれませんが、私は主人公の考え方が自分と似ていてびっくりしました。心の内面が丁寧に描かれてます。登場して来る人物はそれぞれ個性的で、この人はこんな顔といった具体的な顔までうかびます。主人公が40代という年齢なのかストーリーは静かに進むのがドタバタの嘘くさいストーリーに飽きてる人には新鮮かも。私は好きです。 | ||||
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ヒロインの周囲の人たちが抑制の効いた大人で、そのへんがほろ苦ないい味になっています。 ストーリー運びには欠点もあり、ミステリー的な完成度はイマイチです。 しかし本書の魅力は、いかにもイギリスらしい人生をかいま見ることができる点にあります。 ゆったり身をゆだねれば、心地よい読後感を味わえると思います。 | ||||
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登場人物が少ないため、犯人の候補も少なく、すぐに予想がついてしまいました。 犯人が判明するシーンも唐突な感じ。 題名が魅力的だっただけに消化不良と言うか残念と言うか・・・。 イギリスの田舎の風景も、それほど詳しく書き込まれておらず、それも残念です。 | ||||
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