(アンソロジー)

クイーンズ・コレクション1



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初公開日(参考)1983年05月
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クイーンズ・コレクション 1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-35)

1983年05月01日 クイーンズ・コレクション 1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-35)

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クイーンズ・コレクション1の総合評価:9.00/10点レビュー 2件。Bランク


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(8pt)

クイーンが名アンソロジストであることを証明したアンソロジー

本書は80年代のEQMM誌に発表された短編を集めたアンソロジーの第1弾。その顔触れはまさに錚々たるメンバーだ。

口火を切るのはレックス・スタウトのネロ・ウルフ物の中編「殺人鬼はどの子?」だ。
正直いきなり縁のないシリーズ物での事件であるとは思わなかった。3人のうち犯人は誰という趣向は確かに邦題や原題を想起させる知的ゲームの様相を呈しているが、中身はずっと骨太。
3人の弁護士のうち誰が依頼人を殺したのかを探る物だが、内容としては弁護士の倫理を問うものになっている。邦題は原題の持つ雰囲気を忠実に表した好訳だが、そんな牧歌的な題名とは裏腹な深い内容が変なギャップを生んでいる。

次のジョン・D・マクドナルドの「罠に落ちた男」は買い物に出かけた男がいきなりさらわれ、現金強奪用の車として自家用車を奪われ、監禁される一部始終が語られる。
この作品にはあっというトリックもなければロジックもない。ただ事件の顛末が語られるだけだ。輸送会社を経営する男が機転を利かせて危うく命を拾うという話。

エドガー・ウォレスの「ウォーム・アンド・ドライ」はある詐欺師の物語が警視の口から語られる。ニッピイというあらゆる詐欺や軽犯罪を繰り返してきた男の顛末であり、裏切りとそれによる報復があるがサスペンスがあるわけでもない。物語としては実に淡々としている。
ただ題名にある「ウォーム・アンド・ドライ」という慣用句が場面場面で色んな意味に使われており、そこに妙味があると云えるだろう。
時には「誠実で虚飾のない」という意味であり、ある時には「猛りくるって酒はこりごり」であり、「仲良くかつ、割り切って」であり、更には「冷気及び湿気を禁ず」の意もある。言葉遊び好きなクイーンの好奇心をくすぐった作品なのだろう。

サスペンスの女王パトリシア・ハイスミスの「池」は夫を亡くした妻が借りた家の庭にある奇妙な池の話だ。
生き物のように復活する池と意志を持つ手のように近づく物を絡め取る水草や蔓。そこには理屈のない恐ろしさが存在する。
特に仰々しい描写はなく、淡々と物語は進むがそれが反って得体の知れなさを助長している。

期限切れの本の回収や紛失した本の捜索が仕事の図書館専門の探偵という設定が面白いのがジェイムズ・ホールディングの「やっぱり刑事」。
図書館の本の捜索が麻薬売りの犯罪証拠となるマイクロフィルムの発見に繋がり、そこから探偵が危機に陥るという物語の幅が広がるユニークな物語。
しかし図書館専門の探偵は作者の創作によるものだろうか?本当にいれば実に面白いのだが。

リチャード・レイモンの「ジョーに復讐を」は<ジョーの居酒屋>に訪れた突然の訪問者は店主のジョーを撃ち殺しに来たのだという。
わずか10ページ強の単純ながらも最後にツイストが効いている作品だ。正直ネタは途中で解るが、単純なストーリーに銃を持ったおばさんが店内の客まで脅迫するという奇妙なシチュエーションが印象を強めている。

マイクル・ギルバートの「ちびっこ盗賊団」は現代のロビンフッドと呼ばれる未成年たちの犯罪グループを警察が捜し出すというもの。
自ら信じる正義のためなら誘拐や強盗すらも辞さない。しかし盗んだお金は金に瀕して困っている人に全て与えるという義賊。短編でさらりと書いているが、このテーマは膨らますとシリーズ化できるまでに面白くなりそうだ。

L・E・ビーニイによる「村の物語」はある田舎町を舞台にした奇妙な味わいの物語が2編語られる。
1編目の「約束を守った男」は連続殺人の罪で死刑囚となった弟の許を訪れた男の話。
2編目の「どうしてあたしが嫌いなの?」は連続殺人を犯した脱獄囚が街を抜け出したと云う話。
実に奇妙なテイストの結末。死刑囚の兄は弟の面倒を見るという亡き母親への誓いを守るため、死刑直前で自ら弟を射殺する。それまでに淡々と描写される男のストイックさがその決断をゆるぎないものとして読者の心に落とさせる。
2編目は孤独な女が狂気に陥るまでが淡々と語られる。女性の寂しさが彼女に訪れる狂気を見事に納得させる。これは面白かった。

続くダグラス・シーの「おせっかい」は人気推理作家にトリックが非科学的であると作品ごとにアドバイスの手紙を送る大学助教授とその作家のやり取りで構成されている。
これはオチが痛快。特に手紙でこき下ろされる作品のトリックの数々には推理小説4冊分のネタが盛り込まれている。
もしかしたら推理作家はこのようなクレームの手紙を実際に受けているのかもしれない。アイデアの勝利!

トリッキーな物語構成で独自の本格ミステリ路線を歩いたパトリック・マガーはなんとスパイ物の作品が収録された。「ロシア式隠れ鬼」はマガーのシリーズキャラクター、女スパイのセレナ・ミードがロシアの友人の頼みで観光客に成りすまして偉大な詩人でさらには共産主義者の唱道者であった友人の父の遺された自筆の詩の原稿を取り戻しに行くというもの。
夫が情報機関Q課のエージェントであり、妻の偽装旅行をあっさり看破し、彼女にあの手この手で忠告を与える。また友人の協力者がどのように接触し、詩を渡すのか、そしてQ課が介入するほどの詩には何が書かれているのか、さらにはKGBが見守る中、どうやってセレナは詩を持って帰るのかとミステリの要素満載の短編。
ポーの有名な短編からヒントを得た詩の原稿の持参方法がユニークで秀逸。結末は大人しめだが物語の起伏に富んだ作品だ。

心胆寒からしめる結末なのがジャック・P・ネルソンの「イタチ」だ。
果たして弁護士は本当に推定無罪の精神で弁護をしているのか?この原理的な問いに衝撃的な報復で疑問を投げかける結末。
なんと同情の余地もない殺人犯の無罪を勝ち取った弁護士の家族の許にその殺人犯を送るという形で被害者は復讐したのだ。これは今でも衝撃的。しかもハリウッド映画が1本作れる秀逸なアイデアだ。これが個人的ベスト。

歴史に残る短編シリーズの中にアイザック・アシモフの『黒後家蜘蛛の会』があるが、「ロレーヌの十字架」はそのシリーズの1編。
これは夜の車中だからと云うシチュエーションを勘案して納得のできる危うい結末。

その有名シリーズの向こうを張ったパロディがジョン・L・ブリーンの「白い出戻り女の会」だ。
全てにおいてアシモフ印の作品。『黒後家蜘蛛の会』というミステリにアシモフが唱えたロボット三原則を絡めた謎と云うニヤリとせざるを得ないミステリだ。

人の神経を逆撫でする人物とはいるものでデイナ・ライアンの「破滅の訪れ」に登場するエマはその最たるものだ。
人の云うことを聞かず自分のペースと思い込みで物事を進める人がいるがエマもまたその典型。
終始イライラさせられるが上手いストーリー運びだ。

プロンジーニ&マルツバーグの「不幸にお別れ」はたった6ページの最短の物語。
精神異常者とカウンセラーとの往復書簡で構成される本作は異常者がカウンセラーを逆恨みして殺されるが、それには意外な事実が隠されていたというもの。フランスのエスプリに満ちた1編。

シーリア・フレムリンの短編「魔法のカーペット」は実に現代的な作品だ。
育児ノイローゼは現代の社会問題となっているが、本書は高層マンションとご近所問題、そして小さい児を持つ親の育児ノイローゼを扱った物。

ジョン・ボールと云えば黒人刑事ヴァ―ジル・ティップスが登場する名作『夜の熱気の中で』が有名だが、「閉じた環」は仲の良さそうに見える隣人夫婦の見えざる妬みと屈辱を扱った作品。
これは最後の一行の皮肉が実に効いている。
神の見えざる手を感じる結末だ。

次の「仲間はずれ」は編者クイーン自身の作品だが、これは先般読んだ『間違いの悲劇』にも収録されており、ここでの感想は割愛する。

短編の名手であるロバート・L・フィッシュの「秘密のカバン」は実にウィットの効いた作品だ。
凄腕の金庫破りながら変に心配性の所があるクロードの焦り具合が面白い。
流れも自然なのにこれほど計算された作品も珍しい。さすが名手の業だ。

最後は中編とも云うべき長さの物だが、これがまた素晴らしい余韻を残す作品だった。ウィリアム・バンキアの「危険の報酬」は元大リーガー投手の物語だ。
実に味わいのある作品。落ちぶれたかつてのヒーローが行きずりの男女に引き込まれて誘拐の手助けをする。しかし彼は彼らが自分を生贄の山羊にしようとは露にも思わず、罠に嵌る。富豪の息子の殺人犯に仕立てられるのだ。しかし彼はその土壇場で誇りを取り戻す。警察に死体が自分の部屋にあることを告げ、わずかな手掛かりから2人の行方を辿り、2人を捕まえて自首しようとするのだ。
特にところどころに挿入される主人公ミリガンの回想や追憶シーンが読ませる。かつて自分はアメリカ人が誰もが憧れるヒーローだった。そんな輝かしい日々が挿話としてアクセントを加えている。そして彼を犯罪に導くヴェラとノーマンの2人はボニーとクライドをモデルにしたかのような、人生と犯罪を愉しむ享楽主義者だ。特にノーマンは裏切ったミリガンと再会してもそれを喜び、手を差し伸べるという理解に苦しむ性格をしている。前に読んだ東野氏の『殺人の門』の倉持修のような男だ。
最後のミリガンの結末と云い、発端から経過も含めて大人の小説だ。これがベスト。


本書はEQMM誌に収録した短編から選抜された短編集。
エラリイ・クイーンが選出したEQMM誌収録の短編集だからといって必ずしもトリックやロジックが横溢した短編とは限らない。いやむしろそのような本格推理物を期待しない方がいいだろう。

ジャンルはクライムノヴェルに誘拐物、サスペンスにホラーにスパイ小説、サイコ物に奇妙な味と実に多岐に渡る。

本書におけるパズラーはレックス・スタウトの「殺人鬼はどの子?」、アイザック・アシモフの『黒後家蜘蛛の会』シリーズの1編「ロレーヌの十字架」、クイーン自身の「仲間はずれ」の3編。これはてっきり珠玉のパズラーのオンパレードかと思いきや実に意外だった。

しかしこれこそがクイーンが選者として名伯楽であることの証左のように思えてならない。
なぜなら本書にはクイーンが新しい形のミステリを模索し、その可能性を見出した作品が選ばれているように感じる。そのせいかミステリとしてはまだ粗削りであり、正直出来が良いとは思えない作品もある。しかしここには現代に繋がるミステリの原型とも思える作品が揃っているように思えた。

私のお気に入りの作品はジャック・P・ネルソンの「イタチ」、L・E・ビーニイの「村の物語」、ダグラス・シーの「おせっかい」、ジョン・L・ブリーンの「白い出戻り女の会」、ジョン・ボールの「閉じた環」、ロバート・L・フィッシュの「秘密のカバン」が挙げられよう。
これらはアイデアが実に秀逸で短編を読む楽しみに満ちた作品だ。

しかし個人的ベストを挙げるとすれば最後に収録されたウィリアム・バンキアの「危険の報酬」となる。久々に心地よい余韻に浸った味わい深い作品を読んだ。そしてこのような作品をクイーンが選んだことに彼の懐の深さを感じる。

本書は逆にそういう意味ではクイーンが選んだということである種の先入観を抱かせて、損をしているように思える。
現代の本格ミステリ作家が神格化した存在として掲げているクイーンは必ずしもパズラーに特化した作家ではなく、名アンソロジストであったということをミステリ読者は忘れがちなのではないだろうか。何より自身の名前を冠したコレクション(原題もそう)である本書はクイーンが自信を持って提供する短編集なのだ。

これは続く2巻目が実に楽しみになってきたぞ。


▼以下、ネタバレ感想

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No.1:
(5pt)

中にはミステリー?なものも

わがエラリイ氏編集の
とっておきの作品ばかりを収録した
作品集です。

この手の作品だとどうしても
ミステリーでないものが数点まぎれています。
中にはホラーに近いものも…
でもそれらの作品も決して出来が悪いものではないので
作品がその手の描写がないからといって
怒らぬよう。

面白いのは
してやったりと思った犯人が
手痛い反撃を受けたあえなく逮捕といった作品や、
賢さを過信したあまりに、被害者の遺族に恨まれ
同じ仕打ちを受ける羽目となった弁護士など
こういった予想外がある作品です。

この作品でしか読めない作品もあるので
ミステリーが好きな人はぜひ。
長いのはちょっと難点ではありますが。
クイーンズ・コレクション 1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-35)Amazon書評・レビュー:クイーンズ・コレクション 1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-35)より
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