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tacu さんのレビュー一覧

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レビュー数9

全9件 1~9 1/1ページ

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No.9: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

この書は

これまでに世界で起こったことであり、これから起こりうることであり、起こってほしくないことでもあります。
例えば、暴対法のため、ヤクザのしのぎがきつくなり、若者が半グレに流れ込み、裏社会が更に無秩序に、混沌とする日本。
多くの児童虐待が明らかになる中、未だに虐待から逃れられない子供たちがいる日本。
現代の日本で実際に起こっている、社会の歪みが、作品中でもかなり極端に、残虐な形で示されています。もちろん、本書に描かれているように、他国でも。

弱きものは暴力の連鎖から逃れられず、強きものも暴力の果てに滅びてゆく。
人間は所詮一人一人ばらばらの存在で、暴力=テスカポリトカの支配のもと、「われらは彼の奴隷」として、つかの間の生にひたり、いつの間にか死んでいく。
私たち人間の持つ残酷性、自己保全のために他者を切り捨てる酷薄さが、目を覆いたくなるような描写で、かつ淡々と叙述されていきます。


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テスカトリポカ (角川文庫)
佐藤究テスカトリポカ についてのレビュー
No.8:
(8pt)

あなたが消えた夜にの感想

 ロジックを駆使した正統派のミステリ小説ではありません。しかし、この世に生きるものすべてが感じる「大いなる闇の論理」とでもいうべきものが、作品全体を通して痛切に伝わってきます。また、作中の人物によるさまざまな言葉に、作者の思いが色濃く込められているのがよくわかりました。ミステリとしても十分楽しむことができますし、文学史上においても貴重な作品として語られるに十分な小説だと思います。

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あなたが消えた夜に (毎日文庫)
中村文則あなたが消えた夜に についてのレビュー
No.7: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

世界は光に満ちているかも

 特異な状況にある主人公が、日常の中で事件に巻き込まれて解決するという大筋に、恋愛の要素の絡んだミステリです。プロットは決して明るいものではなく、むしろ現実における悪意や矛盾、理不尽が大いに絡んでいます。それらを乗り越えるところに「主人公の成長」が味わえる青春小説の味があります。
 全部で4つの短編からなりますが、作中作のバリエーションである「幽霊はわらべ歌をささやく」が特にお勧めです。最後は希望の持てるエンドシーンだなと思いました。山本弘さんはもともとSF作家であり、この小説も「アントン症候群」にかかった主人公のバーチャルな視点の描写など、SFとしても「絵になる」シーンが見られて、にやりとさせられました。

僕の光輝く世界 (講談社文庫)
山本弘僕の光輝く世界 についてのレビュー
No.6:
(8pt)

分水嶺の感想

 ミステリとしてよりも、山岳小説として、また文明批評の書としての側面がより強く感じられました。事前にトムラウシ山遭難に関する書籍を読んでいたこともあり、山の美しさや恐ろしさがわかる描写や、登攀の様子などより臨場感を持って読むことができました。
 話としては、主人公が、父と田沢という二人の魂に対する理解を深める中で、自分自身にも「奈落の綱渡り」をする心境が訪れ、大きな自省と未来への歩みを見せる小説です。ミステリの要素としては、田沢の冤罪に関する部分や、それに絡むさまざまな事件が交錯しています。
 重厚な話ではありますが、読みやすくお勧めです。また、オオカミについても、ミステリとしての体裁を備えたうえで、主人公の人生を転換する大きな経験として描かれています。
分水嶺
笹本稜平分水嶺 についてのレビュー
No.5: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

現代の残酷な説話

 「イヤミス」に登録されていた本作、確かに読んでみて、心の中にどろっとした、ぬめっとした形容しがたい情動が生じてくる描写もありました。しかし、同時に自分自身の深奥にに通じる感覚も見られました。ノートによる手記の部分は、その内容自体は残酷な事実の連続なのですが、語り手の持つ思いの変化に、一筋縄でいかない人の心理が垣間見えました(サイコパス的といえばそうですが・・・)。

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ユリゴコロ (双葉文庫)
沼田まほかるユリゴコロ についてのレビュー
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(8pt)

時代の雰囲気と女学院の空気

 「薔薇密室」や、「開かせていただき光栄です」でも、その当時の時代性を濃厚に描き切った感のある皆川博子さんの作品です。この作品では、太平洋戦争中の日本本土という、私たちにとって後世に伝えるべき時代を、決して難解でない平易な、かつある部分では淡々とした文体で描いています。人も多くなくなる場面が多いのですが、それを女学生の視点から、あたかも現実にこうであったのかもという描写でさらっと描き、それが却って印象強く迫りました。同時に、女学院の生徒との交流において、女生徒同士の交流にみられるさまざまな心の綾についても、どろどろになりすぎず読んでいて共感しやすい構成で描かれています。
 ヤングアダルト向けということですが、どの世代の人が読んでも、十分読み応えのある物語だと、私は感じました。
 個人的には、女学生の感想の形で描かれたエゴン・シーレの絵に関する記述が、簡素にしてその本質を言い当てているように思えて、その点でもこの作品にひかれました。
 謎解きそのものよりも、謎が生じるに至った過程について、余韻の残る作品だと思います。

 

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倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)
皆川博子倒立する塔の殺人 についてのレビュー
No.3: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

帯通り「愚かで、哀しい」

貫井徳郎さんの作品はこれで5作目の読了です。「慟哭」で大きな衝撃を受けて以来、続けて読みたくなり、この作品にたどり着きました。

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愚行録 (創元推理文庫)
貫井徳郎愚行録 についてのレビュー
No.2: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ミステリは人間心理との交錯にあり


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後悔と真実の色
貫井徳郎後悔と真実の色 についてのレビュー
No.1: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

切ない

読みやすく瑞々しい感性が伝わる文章でした。桜庭一樹さんの小説は初読ですが、これからも他の作品を読み続けたくなりました。

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
桜庭一樹砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない についてのレビュー