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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数210件
全210件 201~210 11/11ページ
※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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これは一言で云うと面白い。ミステリーでいうトリックが幾重にもあり、最後の最後までドンデン返しのある仕掛けで書かれている。全体の話としては横溝 正史の世界のようで名作「八つ墓村」を彷彿とさせるものだが、密室殺人、首なし死体、その土地に代々伝わる祟りと亡霊の物語などクラシックと云えばそのとうりだが、良くできたプロットと入念に練られた物語の構成などで一気に読ませる。因習の村、繁栄のための男児の誕生、首なし様の伝説、密室の山、探偵小説、一言のセリフが伏線として存在するなど手が込んでいる。目の肥えた人もそうでない人も楽しめるミステリー小説としておススメの一冊です。
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最初にこの作者の本を読んだのは『GOTHリストカット事件』で、そのダークな世界に絶句したまま読み進めたことだった。今までにない異質な世界の物語で、全く違った面からミステリーを書くその感覚に圧倒されたものだった。この『暗いところで待ち合わせ』も評判は良かったので直ぐに探して読んでみた。良くあるラブロマンスの設定みたいだが、結局筆力があることに依ってその世界をうまく作り上げ、読者をその夢の世界に取り込んで、目覚めさせることなく遊ばせることに成功している。職場に嫌な先輩がいる。逃げることしか考えないいじめられっこのような男。下手をすればこんな男は読者から嫌われる。だがそうならないように書き込まれている。むしろ共感さえ覚えるように。目の悪い少女。彼女の心の内も有り得ない状況なのに説得力のある描写で読み手を納得させる。こうなるとページを捲る手は止まらない。最後まで一気に読み終えた。ずるいよねこんな話は。
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始めに、ミステリー度は低い。でもこういった物語は好きだ。メインは杉下希美だろう。野バラ荘に住む三人。台風で床上浸水をきっかけに言葉を交わすようになる。例えば今街を歩いていてすれ違った人、年のころ40~50代の人がこれまでどのような人生を送ってきたか、そんなことは誰にも分からない。どんな過去がありどんな思いを溜め込んでこれまで生きてきたか・・・。それぞれ人には事情がある。タワーマンションの一室で起きた若い夫婦の死亡事件。それぞれのモノローグと回想で少しずつ事件の全容が見えてくるストーリー。
Nのために・・・。みんなが少しずつウソをつき隠したこと。 『告白』は好みじゃなかったけれど、これは自分の好みに入る物語だった。倒叙形式のような過去の回想と事件への関わりへの事情がそれぞれの視点から語られる物語。最後のページまでその世界に入り込み楽しめた。 |
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クラシック音楽の世界。ピアニストを目指す少女。レッスンやコンサートの臨場感を表わし伝える文章力はたいしたもの。ミステリーとしてのトリックは古いものだが、うまく使って音楽物ミステリーとして楽しめる作品に仕上げている。モノローグ・台詞・状況の描写などムダな言葉を排し流れるような文章で読み易い。ただ一点、個人的に納得出来ないのは火事の原因。物語のうえで火事は必然でも、あの家族にとっては火事は偶然の出来事。祖父は理路整然と話し頭の良さをみせ、人を見る目は確かで深い洞察力で人となりを判断する人物。そんな人が趣味のために揮発性の塗料などが沢山置かれている部屋の中でストーブを焚くだろうか?
普通、暖をとるならエアコンだろう。そんな思慮浅い人物とは紹介されていない。火事がなければ物語りは始まらない、その都合だけでおざなりに書かれた印象だ。私ならもっと別の原因で火事が起きるように書く。重箱の隅を突っつくような事と思われるかも知れないが、人物像と行為が合っていないので違和感が拭えない。その他は問題なく楽しめたので7ポイントの評価とした。他の作品も読んでみたい作家だ。 |
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このミステリーがすごい2011年の16位作品。評価は低いが完成度は高い。でも、好みが別れる作風だろうね。特筆は文章の素晴らしさ。ボキャブラリーの乏しい不思議な言語を操るいまどきの高校生ギャルに読ませたい。もっとも、こういったイメージもテレビからのもので、ただ、単に世間を知らないのは私のほうかも知れない。プロローグの出来事から時間を遡り物語が始まる。通俗小説のような、母の愛人だった男と結婚した一人の女の身の回りの様子や生活。関わりのある人物などが静かに語られていく。歳の離れた男は生活面では苦労はさせない、時間もあげるから何をしようと自由だ。愛だの恋だの言わずにプロポーズされ受けた節子。その夫が交通事故で意識不明になる。ホンの脇役と感じた人物からの一枚のメモと共に子供を預けられた時から日常が少しずつ壊れていく。感情的でなく芯の強い女。しかし、そうなるにはそれなりの過去があり、それらは徐々に明らかになっていく。ラストの切ない気持ちは主人公の節子に思いいれたっぷりに読み進めた結果だろう。北海道のある小さな町を舞台にしたそこに生きる一人の女の生き方と一人の刑事。ため息のでる読後だった。
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『シューマンの指』の作者で、先に読んだこの本と、今回読んだこの本のタイトルから正統派のミステリーで
森 博嗣の犀川教授のような深い洞察力の持ち主の大学教授が謎を解くスタイルの物語かも、と思っていたら・・・。まるで違った。(笑) 有り得ないほどの爆笑をもたらす痛快さで、ダメ准教授の桑潟 幸一ことクワコーの日々の生活と、大学で起こる不思議な出来事に振り回される姿を描いたものだった。顧問の文芸部の面々も爆笑ものだが、中の一人ジンジンと呼ばれる神野仁美の名推理で驚くべき真相が最後に用意されている筋立てだ。A館の409号室の窓から転落した国語教授、20年前の首吊り、そして霊が出るとの噂に隠された真相の物語である『呪われた研究室』。そしてポーの名作と同じタイトルの『盗まれた手紙』。さらに文芸部員とクワコーが出入り口を見張っていたにも関わらず人が消えるトリックの『森娘の秘密』の中篇三作が収められている。いまどきの大学生の生態と云うか、はなし言葉などがリアルに綴られていてそこだけでも爆笑だがさらにクワコーこと大学教授の姿が、世の中の人達から見る「大学教授」という概念をまるでぶち壊す有り様で、笑いっぱなしで読み進む事となる。そして著者は山形出身とあるが千葉の県知事からヒットマンが密かに送られているのではないかと本気で心配するほど千葉を馬鹿にした記述があちこちにみられる。とにかく、ユーモア・ミステリーは知っているが爆笑ミステリーは知らなかったので、これはある意味読むクスリといえる。お疲れ気味の人にはおススメしたい。 |
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著者のプロフィールに横溝 正史を尊敬しているとある。そして2000年横溝 正史賞を受賞してデビューした。受賞作は『葬列』。これは先に読んだがクライムロマンと言ったところで、横溝 正史とは相反する内容だった。でもこの本は内容的には尊敬しているとある横溝 正史の世界に似たもので、岡山県のある地方の寒村を舞台にした殺人事件と、それを調べ犯人を明らかにする探偵の物語。横溝 正史を尊敬しているとアドバルーンを上げるのは、例えそれが作家としての足固めの手段の一つとして利用しているとしても、自分のスタンスを明確にしているので、読み手としても収支選択が取りやすいので不都合は無い。つまり同好の志は集まれと手を上げて居る訳だから。さて、この作品は丁寧に散りばめられた伏線と探偵が読み解く真相が破綻無く書き込まれ、主人公的な中二の男子 阿久津 智明の多感な時期の心情がきめ細かく描写されていてとても物語の世界に入り込み易い。事件の三日前から物語が始まるが、じっくりと村とそこで暮らす人々を書き込んでいく。事件の背景となる過去の出来事なども人物描写と絡めてうまく書かれている。個人的な話だがミステリーを読むときに、さあ名探偵よりも先に謎を解いてやろうと一言一句見逃さずに目を皿のようにして読む・・・。そんな読み方は私はしません。むしろ騙される楽しみを味わいたくて読むほうです。ですからハイこれが伏線ですよとミエミエな書き方のものは作者の力量が無いのだなと切り捨てます。上手く読者を騙してくれる作品を愛してやみません。これはそう云った意味からも合格点を付けられるものです。複雑な人間関係とその人物の想いなどがキチンと描かれていて、猟奇的な犯罪の意味もなるほどと合点がいくものです。ただ、隠された部分をもってアンフェアだと言う読者もいるかもしれませんが、そう何もかも明らかにしていてはミステリーは成立しません。足りないピースは推理で補うしかないのです。
昭和の時代の地方の静かな村を舞台にした、思春期真っ只中の少年と仲間。そして起きた哀しい事件。 清々しい読後感も気に入りました。 |
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退出ゲームなどが評価が高くて最近名前を知った作家である。この本はファンタジーとするレビューを目にしたが私はそうは思わない。逆にとてもリアルな話しだと感じた。自分の身体を難病や過酷な運命にさらされ、死を待つだけの絶望の淵にいる人たちのため臓器提供を願う少女。その臓器を届ける役目の少年は世間の荒波に飲まれた孤独なライダー。しかし、本人も気付かないところで少女との接点があった。各章で臓器提供を受ける側の人たちの悲惨な、あるいは愛に溢れた心と行動の物語を紡ぎ、警察や族の仲間たちに追われる少年を絡ませてひとつのストーリーを見せる。普段表舞台で語られることはそう多くない臓器移植の問題。待つだけの人々。ドナー登録はあっても適合の問題や費用の問題。あまりにも過酷な現実。生と死の重いテーマに暗くなりがちだが、少年の再生への希望とピュアな心情に触れるストーリー展開とに依って読後の気分は悪くない。これがデビュー作だが文章もこなれていて読みやすく感情移入もしやすい。他の作品も楽しみだ。
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過去に起きた毒殺事件。一応の決着が付いた事件だったが、あるベストセラー小説を偶然手にした男が30年前のあの事件を題材にしていることに気付く。彼は自身の中に燻ぶっていた気持ちに決着をつける為に調査を始めることにした・・・。あとがきにもあるように謎解きの面白さと、どんでん返しの意外性は新人離れの完成度と感じる。他のレビューにも有るとおり現在進行形の殺人事件の謎解きよりも、過去の事件を掘り起こし関係者の意外な証言を拾い出していき真相に至るミステリー形式のほうが面白いと思う。好みの問題でしょうけど。毒が使われた理由とホワイダニットつまり動機が明らかになる最後まで破綻無くまとめられ読み応えのある内容で楽しめた。今後の活躍を期待したい。
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密室ものはもうネタ切れだと思うのだが、これは密室にする意味が成立する斬新な手で、登場人物たちの会話も知的で上質なうえ、時間を追って真相が明らかになる展開がうまく、一気に読ませる作品だった。
なるほど密室ものはまだまだ書き様があるんだなと希望の持てる内容で『星降り山荘の殺人』以来の面白さを堪能した作品だった。 |
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