【村上春樹】
スプートニクの恋人
評判
スプートニクの恋人の評価:
3.95/5点 レビュー 190件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全274件 21〜40 2/14ページ
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| 文章がすばらしく読みやすい。そして、読みにくい。 「ぼく」の心の描写が細かく、僕は「ぼく」になってしまったようだった。 読み終わっても、「さて、なんの話だったっけ?」と思ってしまうのだが、それはそれでいいような気もする。 ただ言えることは、この本を読んでいる時間がすごく心地よく感じられた。 それだけで、読む価値はあるのはでないだろうか。 | ||||
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| 文章がすばらしく読みやすい。そして、読みにくい。 「ぼく」の心の描写が細かく、僕は「ぼく」になってしまったようだった。 読み終わっても、「さて、なんの話だったっけ?」と思ってしまうのだが、それはそれでいいような気もする。 ただ言えることは、この本を読んでいる時間がすごく心地よく感じられた。 それだけで、読む価値はあるのはでないだろうか。 | ||||
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| 某戦争国家のロシアは本書を禁書・焚書に指定したそうである。 「言葉というかたちをとらない何か…言葉というかたちをとるべきではないなにか」に挑戦した小説にさえ泥を塗ろうとする暴徒だ。 「彼らは生きていた。彼らがぼくの肉を食べ、ぼくの心臓をかじり、ぼくの血を吸っている…彼らの赤く粗い舌先が、ぼくの意識のやわらかなひだをうまそうになめた。そのひとなめごとに、ぼくの意識は陽炎のように揺らぎ、薄れていった」 講談社系でも続編があるとしたら、その総合小説、全体小説は当初から宣言されていた通りドストエフスキーをも堅く抱き締めることになるだろう。 | ||||
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| 某戦争国家のロシアは本書を禁書・焚書に指定したそうである。 「言葉というかたちをとらない何か…言葉というかたちをとるべきではないなにか」に挑戦した小説にさえ泥を塗ろうとする暴徒だ。 「彼らは生きていた。彼らがぼくの肉を食べ、ぼくの心臓をかじり、ぼくの血を吸っている…彼らの赤く粗い舌先が、ぼくの意識のやわらかなひだをうまそうになめた。そのひとなめごとに、ぼくの意識は陽炎のように揺らぎ、薄れていった」 講談社系でも続編があるとしたら、その総合小説、全体小説は当初から宣言されていた通りドストエフスキーをも堅く抱き締めることになるだろう。 | ||||
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| Gooood | ||||
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| Gooood | ||||
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| 村上春樹の世界観を味わいたい方にオススメの本です。 | ||||
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| 村上春樹の世界観を味わいたい方にオススメの本です。 | ||||
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| 読みながら、三部作の鼠やノルウェーのレイコさんや、あちら側とこちら側のことなど、これまでの村上作品を思い出したけど、だからと言ってこれまでの焼き直し、という代物ではない。 あちら側とこちら側、その境に扉があって、それを開くか閉ざすか、留まるか押し込められるか。 しかも、あちら/こちらは、解放/束縛、魅惑と危険/凡庸と安全といった単純な二元ではない。 相変わらずの語り口で淡々と、ある時は心地よいリズムで読み進められるのだけど、あちらとこちらについて自らに問いかけるような読み方をしてしまったので、重みのようなものも感じた。 終わり間近に、主人公が担任しているクラスの小学生が万引きをし、スーパーの保安室に呼び出される章がある。 この章がとてもよい。 あちら側とこちら側について自分なりの整理ができるきっかけのような話。 この章があってラストに繋がったから、わたしは図らずも落涙してしまったのだと思う。 | ||||
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| 読みながら、三部作の鼠やノルウェーのレイコさんや、あちら側とこちら側のことなど、これまでの村上作品を思い出したけど、だからと言ってこれまでの焼き直し、という代物ではない。 あちら側とこちら側、その境に扉があって、それを開くか閉ざすか、留まるか押し込められるか。 しかも、あちら/こちらは、解放/束縛、魅惑と危険/凡庸と安全といった単純な二元ではない。 相変わらずの語り口で淡々と、ある時は心地よいリズムで読み進められるのだけど、あちらとこちらについて自らに問いかけるような読み方をしてしまったので、重みのようなものも感じた。 終わり間近に、主人公が担任しているクラスの小学生が万引きをし、スーパーの保安室に呼び出される章がある。 この章がとてもよい。 あちら側とこちら側について自分なりの整理ができるきっかけのような話。 この章があってラストに繋がったから、わたしは図らずも落涙してしまったのだと思う。 | ||||
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| ミュウと主人公がギリシャの島で出会ったところから、読むのが止まらなくなりました。 一筋のホラーと、不思議な(現実にはきっと起こりえない)展開に引き込まれました。 海辺のカフカが好きな私としては、最後まで楽しく読めました。終わり方も好きでした。 | ||||
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| ミュウと主人公がギリシャの島で出会ったところから、読むのが止まらなくなりました。 一筋のホラーと、不思議な(現実にはきっと起こりえない)展開に引き込まれました。 海辺のカフカが好きな私としては、最後まで楽しく読めました。終わり方も好きでした。 | ||||
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| 【超単純化物語要旨】 この物語の語り手、「僕」 の憧れであるすみれは、愛するミュウの 《こころ》 を探そうと、隣の世界に行ってしまいます。 理由は不明ですが、ミュウは15年前に、隣の世界へ足を踏み入れ、今は “この世界:理性、肉体” と “隣の世界:感情、情動” に半分ずつ分かれている。 “この世界” にはミュウの 《肉体》 のみが “隣の世界” には 《こころ》 があります。 このように、ミュウの成り立ちの分裂・分断の故に、彼女は―――愛してやまない―――すみれの愛を受け入れることができない・・・・・・・。 [緒言] 最初に、わたしレビュアーは村上のことを〔文章を紡ぐことについては、日本で、すくなくとも3本の指に入る達人である〕と評価しております。 従って、明らかに村上が、推敲を重ねて凝りに凝って書いたセンテンスが英語翻訳者 Gabriel 氏に、その真意(こころ)が伝わり十全に英語に表現されているのかは、日本人である私にとって非常に興味深いことです。仮に、その日本文が通り一遍の、なんてことのない英文に翻訳されていた、としたら、私としては哀しさ以外の何物でもない。普通の、あるいは少し程度の低い英文に翻訳されていたとしても―――極端な話、村上でさえも―――誰も困らないだけに、たちの悪い問題なのです。なぜなら、村上が書いたこの『スプートニクの恋人』のように、物語に力がある作品の場合、よほど酷い翻訳でないかぎり、ある程度売れることはあきらかですので、出版社も原著者も、翻訳の良・劣は忘れがちになります。 ここでは私、レビュアーが Gabriel 氏による英語翻訳を日本語に翻訳して、村上の原文と比較してみた。本一冊すべての英文をを日本語に逆翻訳するのも大変な作業になります。そこで、村上の原著『スプートニクの恋人』の中で、彼がとりわけ心血を注いで日本語に紡いだに違いない!!、とレビュアーが感じられる文章が英文翻訳ではどのような文章になっているのか、に焦点を絞って、英文翻訳 VS. 日本語原作、の優劣(?)を検討してみた。 この拙い論文みたいなものの最後に、翻訳者である Gabriel 氏 を称賛することになると良いですね。 [結果] この作品は、物語の進行役である「僕」の視点、すなわち一人称で記述されている。主流はミュウとすみれの、特にミュウに対する、すみれの狂おしいまでの恋の物語であり、「僕」とすみれの恋物語はあくまで亜流であるり、小学校担任である「僕」と、その教え子の万引きトラブルに関わるお話は、さらに亜流である。 1:[すみれが小説家になることを目指して悪戦苦闘している] 【ページ8、3行目】 その決意は千歳の岩のように堅く、妥協の余地のないものだった。彼女という存在と、文学的信念のあいだには、髪の毛一本入りこむすきまもなかった。 英語翻訳:【Page 3, line 1 from the bottom】 Her resolve(決意) was a regular Rock of Gibrator(イギリスのジブレイターの岩). Nothing could come between her and her faith(信念、信仰) in literature(文字). 【レビュアーによる翻訳】 彼女の決意はジブレイターの岩のようなものだった。彼女と、彼女の持つ文学上の信念との間には、何も入りこむ余地はなかった。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章。優劣を比較するまでもない〕 2:[文学のビートニクに関して、スプートニクと名前を勘違いしているミュウと、すみれのかみ合わない会話] 【ページ13, 後ろから6行目】 そして、特殊なかたちをした記憶の壺の底を探るように、指先でテーブルを丸く撫でた。 英語翻訳:【Page 7, line 1 from the bottom】 She traced a circle on the table with her fingertip, as if rummaging(捜索) through some special jar(壺) full of memories. 【レビュアーによる翻訳】 彼女は、記憶で一杯になっている何か特別の壺でも探索でもするように、指先でテーブルの上を丸くなぞった。 ◎翻訳の判定:〔短いが、村上にしか書けない文章〕 3:[すみれが小さい頃亡くなってしまった母親の印象と思い出] 【ページ13, 後ろから6行目】 小柄な女性で平凡な髪型をして、首をひねりたくなるような服を着て、いごこちの悪い微笑みを顔に浮かべていた。そのまま後ずさりをして、背後の壁と一体化してしまいそうに見える。 英語翻訳:【Page 11, line 2】 A short, humdrum(平凡な) hairstyle, clothes that made you wonder what she could have been thinking, an ill-at-ease(落ち着かない) smile. If she’d taken one step back, she would have melted right(まともに) into the wall. 【レビュアーによる翻訳】 小柄で平凡な髪型おしており、服装も彼女が何を考えているのか不思議な気持にさせるようなもので、不安げな笑顔をうかべていた。もしも彼女が一歩でも後ろに下がったら、そのまま壁に溶けてしまいそうだった。 ◎翻訳の判定:〔村上 >> Gabriel〕 4:[物語の進行役、「僕」がすみれの、少し変った性向をもつ、父の姿勢に対しての見解] 【ページ18、後ろから4行目] ・・・彼女がそれを熱源にして、自らを温めていくことができる滋養あふれた言葉を。この太陽系第三惑星における彼女のおそらくは根拠不確かな人生を、曲がりなりにも支えてくれる、軸となり柱ともなる言葉を。 英語翻訳:【Page 11, line5 from the bottom】 ・・・ for nourishing(滋養となる) words that could have been a source of warmth and comfort(慰め) ― a pillar(柱), an axis(軸), to help prop up(支える) her uncertain life here on this third planet from the sun. 【レビュアーによる翻訳】 ・・・彼女にとって、温かさや、慰めの源泉となるような滋養溢れる言葉 ― それは、この場所、太陽から第三番目の惑星での不確実な人生を支える助けとなる、支柱や軸となったはず。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章だが、それにしてもこのセンテンスでは翻訳者は真面目に作業していない〕 5:[すみれのこれまでの生きざまを説明している・・・] 【ページ19、最終ラインか】] ―――もちろん地球は人を笑わせ楽しませるために身を粉にして太陽の周りを回転しているわけではない――― 英語翻訳:【Page 12, line 6 from the bottom】 The earth, after all(何といっても), doesn’t creak(軋む) and groan(うめき) its way around the sun just so human being can have a good time and a bit of a laugh. 【レビュアーによる翻訳】 何といっても、地球は私たち人間を、楽しませたりちょっと笑わせたりするために、軋んだりうめいたりしながら太陽の周りを回っているわけではない。 ◎翻訳の判定:〔短いが、村上にしか書けない文章のような気がする〕 6:【すみれの書いている小説に対する、この物語の進行役、「僕」の印象】 【ページ23、最終ラインから】 彼女は文章を書くことにまだじゅうぶんに慣れていなかったし、その文体はときどき、異なった趣味と疾病を有する何人かの頑固な婦人たちが一堂に会して、ろくすっぽ口もきかずに作りあげたパッチワークみたいに見えることもあった。 英語翻訳:【[Page 15, line 5 from the bottom] True , at times her style resembles a patchwork quilt(キルト) sewn(縫い合わせる) by a group of stubborn (頑固な)old ladies, each with her own tastes(趣味嗜好) and complains(不平不満), working in grim(厳格な) silence. 【レビュアーによる翻訳】 実際、当時の彼女の文体は、完全な沈黙のもと、各々が頑固な趣味嗜好や不平不満を持った頑固な老婦人たちのよって縫い合わされるキルトのパッチワークにも似ていた。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章。それにしても Gabriel の翻訳英文は雑過ぎ〕 7:[すみれはミュウとの出会い・会話にウットリしている。ミュウに褒められて] 【ページ32、9行目】 すみれの顔は熱くなった。胸の中では心臓が、まるで木の橋を走り抜ける狂った馬のひどめみたいに大きな音をたてていた。 英語翻訳:【Page 21, line 3 from the bottom】 Sumire’s face grew hot. Her heart galloped(疾駆する) as loudly(激しく) as a crazed horse on a wooden bridge. 【レビュアーによる翻訳】 すみれの顔は熱くなった。彼女の心臓は、木の橋の上で激しく疾駆する狂った馬のように激しく高鳴った。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章〕 8:[すみれとの会話で、ミュウが自分自身のことを語っているときに] 【ページ34、後ろから5行目】 彼女はそこで句読点をうつように短いため息をついた。 英語翻訳:【Page 23, line 20】 She punctured(穴を開ける) all this with a sigh(ため息). 【レビュアーによる翻訳】 彼女は、ため息をついてその話をするのを止めた。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章。しかも翻訳者は意味を少し取り違えている?〕 9:[すみれとミュウが楽しく会話している。そして、ミュウが何かを提案する] 【ページ38、2行目】 すみれは反射的にうなずいた。あらためて考えるまでもなく、予定のない時間は彼女の主要資産だった。 英語翻訳:【Page 26, line 3】 Sumire nodded reflexively(反射的に). She didn’t even have to think about it. Free time, after all (何といっても), was her main asset (資産). 【レビュアーによる翻訳】 すみれは反射的にうなずいた。 彼女はそのことについて、考えてみるまでもなかった。何といっても、自由な時間は、彼女の主要資産だった。 ◎翻訳の判定:〔村上の文章の真骨頂!!〕 10:[ミュウとすみれが会話をしている時・・・・] 【ページ39、1行目】 まわりの空気が急にすっと薄くなったような気がした。ふたつの乳首が着衣の下で硬くこわばるのがわかった。 英語翻訳:【 Page 26, line 9 from the bottom】 Sumire felt the air around her suddenly grow thin. Her nipples tightened under her dress. 【レビュアーによる翻訳】 すみれは自分の周りの空気が突然薄くなっているのを感じた。彼女の乳首は着衣の下で硬くなった。 ◎翻訳の判定:〔翻訳英文では、村上の良さが失われている〕 11:[ 主人公である「僕」が、すみれに象徴と記号の意味するところの違いを説明している ] 【ページ45、8行目】 「いいかい、つまり矢印は一歩通行なんだ。天皇は日本国の象徴ではあるけれど、日本国は天皇の象徴ではない。それはわかるね」 英語翻訳:【Page 31, line 8】 “Okay, how about this – the arrow points in one direction. The emperor is a symbol of Japan, but Japan is not the symbol of the emperor. You understand that, right?” 【レビュアーによる翻訳】 「いいかい、こんな例えはどうだい ― 矢印は一方向を指している、ということなのさ。天皇は日本の象徴である、だけど日本は天皇の象徴ではない。これは分かるよね」 ◎翻訳の判定:〔村上の方が、かなり優れている〕 12:[ ミユウはすみれに自分の状況を説明している ] 【ページ73、後ろから6行目】 「ここにいるわたしは本当のわたしじゃないの。今から14年前に、わたしは本当のわたしの半分になってしまったのよ。わたしがそっくりわたし自身であったときに、あなたに会えたらどんなにか良かっただろうと思う。でもそれはいまさら考えてもしかたのないことなの」 英語翻訳:【Page 51, line 5 from the bottom】 “The person here now isn’t the real me. Fourteen years ago I became half the person I used to be. I wish I could have met you when I was whole – that would have been wonderful. But it’s pointless to think about that now” 【レビュアーによる翻訳】 「今ここにいるわたしは、本当の私じゃないの。14年前に、わたしは、あるべき私の半分の人間になったの。わたしが、丸ごとの 《100》 であった時にあなたに会えていたら・・・どんなにか良かったでしょうね。だけど、今となっては考えても仕方のないことなの」 ◎翻訳の判定:〔村上の方が、ほんの少し優れているか?〕 13:[ ミユウはすみれに自分の生きてきた状況を説明している ] 【ページ75、7行目】 「・・・ピアノはわたしに、わたしの肉や血をまるごと、供物として要求していたし、それに対してわたしはノーと言うことはできなかった。ただの一度も」 英語翻訳:【Page 53, line 6】 “・・・・・The piano demanded every ounce of flesh(肉), every drop of blood, and I couldn’t refuse. Not even once ” 【レビュアーによる翻訳】 「・・・・ピアノは、すべての血や肉を要求してきて、わたしはそれを拒絶できなかった。ただの一度も」 ◎翻訳の判定:〔村上の日本語の切実さをPhilip Gabrielは理解してない〕 14:[ローマから「僕」に送られてきた、すみれの手紙 ] 【ページ110、8行目】 うまく説明できないんだけれど、そうね、ぐっすり眠りこんでいるあいだに、だれかの手でいったんばらばらの部品に分解されて、それからまた大急ぎで組み立てられたみたいな感じ、と言えばいいのかな。そういうのってわかりますか? 英語翻訳:【Page 77, line 12 from the bottom】 It’s hard to put it into words, but I guess it’s as if I was fast asleep, and someone came, disassembled me, and hurriedly put me back together again. That sort of feeling. Can you understand what I’m getting at(ねらいとする)? 【レビュアーによる翻訳】 言葉にするのは難しいんだけど、思うに、わたしはあっという間に眠りに落ちて、そして誰かが来て、わたしのことを分解してしまい、そのあと、すごい速さで再び元通り組み立てるの。そんな感じなの。 わたしが言わんとしていること、わかる? ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabrielの翻訳英文、かな?〕 15:[ギリシャにいるミユウから、日本にいる「僕」に突然の電話がかかってくる ] 【ページ123、3行目】 シーツにはまだ午後のセックスの記憶がかすかに残っていたし、カーディガンのボタンを掛け違えたみたいに、すべての物事が一段階ずつ現実との接点をうしなっていた。 英語翻訳:【Page 77, line 12 from the bottom】 The bed sheets still retained a faint memory of the afternoon’s lovemaking, and reality was one step out of line(調和しない), a cardigan with the buttons done up wrong. 【レビュアーによる翻訳】 ベッドのシーツは、午後の情事のかすかな記憶をまだとどめていた、そしてカーディガンのボタンをひとつずつ掛け違えているかのように、いま一つ現実感はなかった。 ◎翻訳の判定:〔村上圧勝:村上の原作 >> Philip Gabrielの翻訳英文〕 16:[ギリシャにいるミュウからの連絡があり、「僕」は飛行機に乗るため成田空港のラウンジで少し眠っている。夢を見ているらしい ] 【ページ130、6行目】 世界は現実性の核を喪失していた。色は不自然で、細部はぎこちなかった。背景ははりぼてで、星は銀紙でできていた。 英語翻訳:【Page 77, line 12 from the bottom】 The world had lost sense of reality. Colours were unnatural, details crude(雑). The background was papier mache (張りぼて), the stars made out of aluminum foil. 【レビュアーによる翻訳】 世界はリアリティを失っていた。色は不自然で、細部は雑にできていた。背景は張りぼてであり、星はアルミ・フォイルでできていた。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 > Philip Gabrielの翻訳英文、でしょう〕 17:[ギリシャでミュウと合うことが出来た「僕」。ふたりはすみれのことについて話をしている ] 【ページ143、1行目】 彼女はオリーブをひとつ口に入れ、指で種をつまみ、まるで詩人が句読点を整理するみたいに、とても優雅にそれを灰皿に捨てた。 英語翻訳:【Page 102, line 10 from the bottom】 Miu popped an olive into her mouth, grasped the pit(サクランボなどの種) with her fingers and, like a poet getting the punctuation just right, gracefully discarded it in an ashtray. 【レビュアーによる翻訳】 ミュウはオリーブを口に入れ、指で種をつまみ、詩人がまるで正しい位置に印をつけるみたいに、優雅に種をゴミ箱に捨てた。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabrielの翻訳英文〕 18:[ギリシャでのミュウと「僕」。ふたりはすみれが煙のように消えてしまったことについて話をしている ] 【ページ147、11行目】 語るべき言葉を探しているというよりは、始まりも終りもない個人的な記憶の中にひたっているみたいに見えた。 英語翻訳:【Page 106, line 5】 It didn’t look like she was trying to find the right words she wanted to say, rather that she was immersed(浸る) in some personal memory, one without beginning and without end. 【レビュアーによる翻訳】 彼女は語るべき正確な言葉をみつけようとしているようには見えず、むしろ始まりも終りも無い、ある個人的思い出に浸っていた。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabrielの翻訳英文。正確には、Gabrielの英文は多少原文とずれているが〕 19:[ミュウはすみれとのギリシャでの数日間の日常について、「僕」に語っている ] 【ページ154、7行目】 「わたしは世界の端っこにいて、そこに静かに腰かけていて、誰もわたしの姿はみえない。そんな気がしたわ。ここにいるのはわたしとすみれだけ。・・・・」 英語翻訳:【Page 111, line 7】 “There we were, sitting quietly on the edge of the world, and no one could see us. That’s the way it felt – like Sumire and I were the only ones here. ・・・・・・・” 【レビュアーによる翻訳】 「私たちはここに、世界の端っこに静かに腰かけていて、誰も私たちを見ることはできないの。 そんなふうに感じられたわ―――すみれとわたしがここにいる、たった二人のように。・・・・・」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 > Philip Gabrielの翻訳英文。村上の文章は端正である〕 20:[ミュウが、女子高でのカソリック講話を思い出してすみれに話している ] 【ページ158、後ろから5行目】 「・・・・わたしは最初それは何かの冗談だろうと思ったの。その次になにか愉快なオチがくるんじゃないかって。でもオチはなかったわ。・・・・」 英語翻訳:【Page 114, line 15】 “At first I thought it was some kind of joke. I was waiting for the punchline(オチ). But there wasn’t one. ” 【レビュアーによる翻訳】 「・・・・・わたしは最初、それは何かの冗談だろうと思ったの。オチを待っていたの。でも、そんなものはなかったわ。 ・・・・・」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 > Philip Gabrielの翻訳英文。Philip Gabrielの文章は雑〕 21:[すみれが消えてしまう前に、自分のパソコンに残していた文章 ] 【ページ202、1行目】 わたしたちがもうたっぷり知っていると思っている物事の裏には、わたしたちが知らないことが同じくらいたくさん潜んでいるのだ。 理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない。 それが(ここだけの話だけれど)わたしのささやかな世界認識の方法である。 英語翻訳:【Page 146, line 9】 On the flip(裏返す) side of everything we think we absolutely understand lurks (潜む) an equal amount of the unknown. Understanding is but the sum of our misunderstanding. Just between us, that’s my way of comprehending(理解する) the world. In the nutshell(木の実の殻). 【レビュアーによる翻訳】 わたしたちが完全に理解している、と思っていることの裏側には、まさに同量の知らないことがあるの。 理解は誤解の総体なの。 わたしたちの間では、これが世界を理解する方法なのです。殻の中において。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel。 特に、Philip Gabrielは原文の―――(ここだけの話だけれど)――-を誤理解している??〕 22:[主人公「僕:小学校教師」のクラスの子が、スーパーで万引きをして、しょぼい部屋に呼び出されている ] 【ページ275、後ろから5行目】 コンクリートの壁に走ったひびは「どうせそのうちにそっくりと壊されるのだから、とくに気にしないでもらいたい」と言葉少なに訴えかけているように見えた。 英語翻訳:【Page 146, line 9】 Hey, don’t worry about us, the cracks in the concrete walls seemed to say, They’re just going to tear this place down (tear down: 取り壊す) someday anyway. 【レビュアーによる翻訳】 「やあ、あまり気にしないでくれ」と、コンクリート壁にできたヒビ割れが言っているようだった。「どうせそのうち、この場所は取り壊されるのだから」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel〕 23:[スーパーの警務員の悪意のある様子 ] 【ページ276、後ろから3行目】 眼鏡をかけなおすと、冷たさは後退して、力のあるよどみのようなものが後をうめた。どちらにしてもそれは、人を和ませることを目的にした視線ではなかった。 英語翻訳:【Page 146, line 9】 When he put them (眼鏡) back on, the coldness retreated(後退する), replaced by a kind of powerful glazed (どんよりした) look. Either way, this wasn’t a look to put people at their ease (安心). 【レビュアーによる翻訳】 彼が眼鏡をかけなおすと、冷たさは少なくなるものの、ある種、非常にどんよりとした表情が、とって代わった。とにかく、彼の表情は他人に安らぎを与えるようなものではなかった。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabriel〕 24:[スーパーの警務員が先生という職業に対する悪意ある見解をのべながら] 【ページ278、4行目】 口もとにはひからびたような笑いが浮かんでいた。でも眼鏡の奥にある目は、限定された動きだけをもとめる深海の捕食生物のように、ぼくの底を探っていた。口ぶりは丁重だったが、それはあくまで表面だけのものだった。 英語翻訳:【Page 200, line 12】 A stillborn(死産のような) smile played around(遊び回る) his lips, yet his eyes remained those of a deep-sea predator searching my depths for the slightest movements. His words were polite enough, but that was only a veneer (見せかけ). 【レビュアーによる翻訳】 死んだような微笑みが彼の口もとにうかんでいたが、目は、深海の捕食生物のように、ちょっとした動きからも、私の心の中を、ずっと探っていた。彼の言葉は丁寧ではあったが、単に見せかけだけであった。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel〕 25:[主人公「僕」の夢想か:すみれが隣の世界から帰って来て] 【ページ316、後ろから1行目】 「あなたと会わなくなってなってから、すごくよくわかったの。惑星が気をきかせてずらっと一列に並んだくれたみたいに明確にすらすらと理解できたの。わたしにはあなたが本当に必要なんだって。 あなたはわたし自身であり、わたしはあなた自身なんだって。・・・・」 英語翻訳:【Page 228, line 4】 “When I couldn’t see you any more, I realized that. It was as clear as if the planets all of a sudden lined up in a row for me. I really need you. You’re a part of me; I’m a part of you. ・・・・” 【レビュアーによる翻訳】 「わたしはあなたと会えなくなってからよくわかったの。惑星がわたしのために、突然直列に並ぶくらい確かなことなの。わたしには、本当にあなたが必要なの。あなたはわたしの一部であり・・・・、わたしはあなたの一部なの。・・・・」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel。村上の原文が圧倒的〕 26:[主人公「僕」は、これまで起こったすべてのことを内省している] 【ページ318、後ろから3行目】 それからぼくは指をひろげ、両方の手のひらをじっと眺める。ぼくはそこに血のあとを探す。でも血のあとはない。血の匂いもなく、こわばりもない。それはもうたぶんどこかにすでに、静かにしみこんでしまったのだ。 英語翻訳:【Page 229, line 4】 I spread me fingers apart and stare at the palms of both hands, looking for bloodstains. There aren’t any. No scent(におい) of blood, no stiffness(凝り、関節などが固まる). The blood must have already, in its own silent way, seeped(浸みこむ) inside. 【レビュアーによる翻訳】 ぼくは血の跡を探して、指を広げて両方の手の掌(てのひら)をみつめる。そんな痕はどこにもない。匂いも、こわばりもなかった。 血はもうすでに、静かにどこか内側(うちがわ)に浸み込んだにちがいない。 ◎翻訳の判定:〔村上の原文が圧倒的にすばらしい〕 [考察] この論文では、村上がこだわりを持って書いたと想像される【センテンス(s) 26カ所】が、英語翻訳者Philip Gabriel によってどのように表現されているかを丁寧に調べてみた。言うまでもなく、選択した26のセンテンス はレビュアーが、村上の文章を【優れた文章】、【一見、回りくどいが、小説全体にはまると良文】、【端麗・端正と言うしかない文章】、【悪文かもしれないが、村上が書くと美文に錯覚】 の何れかに分類されるものです。 従って、村上 VS. Philip Gabriel での優劣判定を、各26センテンスについて冗談のように付けたが、そこに大した大きな意味は無い(村上 > Philip Gabriel は自明の故)。 小説に限らず、学術論文においても、著者の力の入れ方が半端では済まない場面になることが時々ある。そんな時に著述者の力量が問われる。少し生意気な、もちろん偏見さ満載の判定ですが、多くの小説家(研究者)は、ある基準に明らかに達していない、(と思われる)。学術論文の場合は、得られた研究結果に新奇性・重要性があれば、論文の書き方が陳腐であろうが平易であろうが、最終的には得られた研究の事実(真実なら申し分ない)が饒舌に、数十年、・・・・時に数百年にわたって、そのすばらしさを語ってくれる。その点、小説は、源氏物語のような、一部の例外を除いて、その有効期間は非常に短い。 ただし、例外もあり、その最右翼がここで取り上げている村上の一連の作品でしょう。村上の作品が―――1)村上の作品を1つくらいしか読んだことのないがなんとなくやっかみ半分で嫌い、2)小説に描いてあることを認識できなかった、3)あるいは内容は理解するものの本当に村上の世界が身体になじまない、・・・などのアンチの人は別として――――かくも長期間にわたり世界中のフャンに愛されているのはなぜなのでしょうか? その答えのヒント、あるいは解明のインスピレィションを・・・・この論文の、かなり安易で陳腐な比較で・・・・誰か、賢い人の脳に与えられたら、これに勝る喜びはありません。 最後に余談ですが、ここで、レビュアーが焦点を当てた『スプートニクの恋』は、全体の文章は村上の小説にしてはかなり凝っており、(生意気な言い方ですが)日本の他の純文学の作家に比べても数段上のクオリティーを有している。ただ、面白いことに、レビュアーが、ほとんどのセンテンスを個別に見てみると、「変な表現?!」と感じられるセンテンスも散見される。ただ、この“変なセンテンス”も作品全体の中に入ると、逆の意味で “作品全体を輝かせるセンテンス” となっている。 このことが、村上作品と、他の凡庸な作家、やっかみで村上作品を批評する評論家の文章とを明確に区分けする特性のひとつだと考えます。 村上の中期より後の小説では、極めて技術的に凝った表現が普通の文章の中に、そっと挿入されている。それがあまりに自然になされているため、うっかりすると読者は殆ど気にもせず読み進んで行く。 これを、たくさんいる凡庸な小説家が、スケベ心、あるいは自身の軽薄な自慢から「どう? わたしの優れた言語表示能力は?」の裏付けでもしてるかのようにやられると、わたしはシラケてしまう。 [使用作品] 1. Haruki Murakami, 「Sputnik Sweetheart」、 Translated Japanese by Philip Gabriel, Vintage Books, London, 2002 2. 村上春樹、「スプートニクの恋人」、講談社文庫、2001,4,15 | ||||
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| 【超単純化物語要旨】 この物語の語り手、「僕」 の憧れであるすみれは、愛するミュウの 《こころ》 を探そうと、隣の世界に行ってしまいます。 理由は不明ですが、ミュウは15年前に、隣の世界へ足を踏み入れ、今は “この世界:理性、肉体” と “隣の世界:感情、情動” に半分ずつ分かれている。 “この世界” にはミュウの 《肉体》 のみが “隣の世界” には 《こころ》 があります。 このように、ミュウの成り立ちの分裂・分断の故に、彼女は―――愛してやまない―――すみれの愛を受け入れることができない・・・・・・・。 [緒言] 最初に、わたしレビュアーは村上のことを〔文章を紡ぐことについては、日本で、すくなくとも3本の指に入る達人である〕と評価しております。 従って、明らかに村上が、推敲を重ねて凝りに凝って書いたセンテンスが英語翻訳者 Gabriel 氏に、その真意(こころ)が伝わり十全に英語に表現されているのかは、日本人である私にとって非常に興味深いことです。仮に、その日本文が通り一遍の、なんてことのない英文に翻訳されていた、としたら、私としては哀しさ以外の何物でもない。普通の、あるいは少し程度の低い英文に翻訳されていたとしても―――極端な話、村上でさえも―――誰も困らないだけに、たちの悪い問題なのです。なぜなら、村上が書いたこの『スプートニクの恋人』のように、物語に力がある作品の場合、よほど酷い翻訳でないかぎり、ある程度売れることはあきらかですので、出版社も原著者も、翻訳の良・劣は忘れがちになります。 ここでは私、レビュアーが Gabriel 氏による英語翻訳を日本語に翻訳して、村上の原文と比較してみた。本一冊すべての英文をを日本語に逆翻訳するのも大変な作業になります。そこで、村上の原著『スプートニクの恋人』の中で、彼がとりわけ心血を注いで日本語に紡いだに違いない!!、とレビュアーが感じられる文章が英文翻訳ではどのような文章になっているのか、に焦点を絞って、英文翻訳 VS. 日本語原作、の優劣(?)を検討してみた。 この拙い論文みたいなものの最後に、翻訳者である Gabriel 氏 を称賛することになると良いですね。 [結果] この作品は、物語の進行役である「僕」の視点、すなわち一人称で記述されている。主流はミュウとすみれの、特にミュウに対する、すみれの狂おしいまでの恋の物語であり、「僕」とすみれの恋物語はあくまで亜流であるり、小学校担任である「僕」と、その教え子の万引きトラブルに関わるお話は、さらに亜流である。 1:[すみれが小説家になることを目指して悪戦苦闘している] 【ページ8、3行目】 その決意は千歳の岩のように堅く、妥協の余地のないものだった。彼女という存在と、文学的信念のあいだには、髪の毛一本入りこむすきまもなかった。 英語翻訳:【Page 3, line 1 from the bottom】 Her resolve(決意) was a regular Rock of Gibrator(イギリスのジブレイターの岩). Nothing could come between her and her faith(信念、信仰) in literature(文字). 【レビュアーによる翻訳】 彼女の決意はジブレイターの岩のようなものだった。彼女と、彼女の持つ文学上の信念との間には、何も入りこむ余地はなかった。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章。優劣を比較するまでもない〕 2:[文学のビートニクに関して、スプートニクと名前を勘違いしているミュウと、すみれのかみ合わない会話] 【ページ13, 後ろから6行目】 そして、特殊なかたちをした記憶の壺の底を探るように、指先でテーブルを丸く撫でた。 英語翻訳:【Page 7, line 1 from the bottom】 She traced a circle on the table with her fingertip, as if rummaging(捜索) through some special jar(壺) full of memories. 【レビュアーによる翻訳】 彼女は、記憶で一杯になっている何か特別の壺でも探索でもするように、指先でテーブルの上を丸くなぞった。 ◎翻訳の判定:〔短いが、村上にしか書けない文章〕 3:[すみれが小さい頃亡くなってしまった母親の印象と思い出] 【ページ13, 後ろから6行目】 小柄な女性で平凡な髪型をして、首をひねりたくなるような服を着て、いごこちの悪い微笑みを顔に浮かべていた。そのまま後ずさりをして、背後の壁と一体化してしまいそうに見える。 英語翻訳:【Page 11, line 2】 A short, humdrum(平凡な) hairstyle, clothes that made you wonder what she could have been thinking, an ill-at-ease(落ち着かない) smile. If she’d taken one step back, she would have melted right(まともに) into the wall. 【レビュアーによる翻訳】 小柄で平凡な髪型おしており、服装も彼女が何を考えているのか不思議な気持にさせるようなもので、不安げな笑顔をうかべていた。もしも彼女が一歩でも後ろに下がったら、そのまま壁に溶けてしまいそうだった。 ◎翻訳の判定:〔村上 >> Gabriel〕 4:[物語の進行役、「僕」がすみれの、少し変った性向をもつ、父の姿勢に対しての見解] 【ページ18、後ろから4行目] ・・・彼女がそれを熱源にして、自らを温めていくことができる滋養あふれた言葉を。この太陽系第三惑星における彼女のおそらくは根拠不確かな人生を、曲がりなりにも支えてくれる、軸となり柱ともなる言葉を。 英語翻訳:【Page 11, line5 from the bottom】 ・・・ for nourishing(滋養となる) words that could have been a source of warmth and comfort(慰め) ― a pillar(柱), an axis(軸), to help prop up(支える) her uncertain life here on this third planet from the sun. 【レビュアーによる翻訳】 ・・・彼女にとって、温かさや、慰めの源泉となるような滋養溢れる言葉 ― それは、この場所、太陽から第三番目の惑星での不確実な人生を支える助けとなる、支柱や軸となったはず。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章だが、それにしてもこのセンテンスでは翻訳者は真面目に作業していない〕 5:[すみれのこれまでの生きざまを説明している・・・] 【ページ19、最終ラインか】] ―――もちろん地球は人を笑わせ楽しませるために身を粉にして太陽の周りを回転しているわけではない――― 英語翻訳:【Page 12, line 6 from the bottom】 The earth, after all(何といっても), doesn’t creak(軋む) and groan(うめき) its way around the sun just so human being can have a good time and a bit of a laugh. 【レビュアーによる翻訳】 何といっても、地球は私たち人間を、楽しませたりちょっと笑わせたりするために、軋んだりうめいたりしながら太陽の周りを回っているわけではない。 ◎翻訳の判定:〔短いが、村上にしか書けない文章のような気がする〕 6:【すみれの書いている小説に対する、この物語の進行役、「僕」の印象】 【ページ23、最終ラインから】 彼女は文章を書くことにまだじゅうぶんに慣れていなかったし、その文体はときどき、異なった趣味と疾病を有する何人かの頑固な婦人たちが一堂に会して、ろくすっぽ口もきかずに作りあげたパッチワークみたいに見えることもあった。 英語翻訳:【[Page 15, line 5 from the bottom] True , at times her style resembles a patchwork quilt(キルト) sewn(縫い合わせる) by a group of stubborn (頑固な)old ladies, each with her own tastes(趣味嗜好) and complains(不平不満), working in grim(厳格な) silence. 【レビュアーによる翻訳】 実際、当時の彼女の文体は、完全な沈黙のもと、各々が頑固な趣味嗜好や不平不満を持った頑固な老婦人たちのよって縫い合わされるキルトのパッチワークにも似ていた。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章。それにしても Gabriel の翻訳英文は雑過ぎ〕 7:[すみれはミュウとの出会い・会話にウットリしている。ミュウに褒められて] 【ページ32、9行目】 すみれの顔は熱くなった。胸の中では心臓が、まるで木の橋を走り抜ける狂った馬のひどめみたいに大きな音をたてていた。 英語翻訳:【Page 21, line 3 from the bottom】 Sumire’s face grew hot. Her heart galloped(疾駆する) as loudly(激しく) as a crazed horse on a wooden bridge. 【レビュアーによる翻訳】 すみれの顔は熱くなった。彼女の心臓は、木の橋の上で激しく疾駆する狂った馬のように激しく高鳴った。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章〕 8:[すみれとの会話で、ミュウが自分自身のことを語っているときに] 【ページ34、後ろから5行目】 彼女はそこで句読点をうつように短いため息をついた。 英語翻訳:【Page 23, line 20】 She punctured(穴を開ける) all this with a sigh(ため息). 【レビュアーによる翻訳】 彼女は、ため息をついてその話をするのを止めた。 ◎翻訳の判定:〔村上にしか書けない文章。しかも翻訳者は意味を少し取り違えている?〕 9:[すみれとミュウが楽しく会話している。そして、ミュウが何かを提案する] 【ページ38、2行目】 すみれは反射的にうなずいた。あらためて考えるまでもなく、予定のない時間は彼女の主要資産だった。 英語翻訳:【Page 26, line 3】 Sumire nodded reflexively(反射的に). She didn’t even have to think about it. Free time, after all (何といっても), was her main asset (資産). 【レビュアーによる翻訳】 すみれは反射的にうなずいた。 彼女はそのことについて、考えてみるまでもなかった。何といっても、自由な時間は、彼女の主要資産だった。 ◎翻訳の判定:〔村上の文章の真骨頂!!〕 10:[ミュウとすみれが会話をしている時・・・・] 【ページ39、1行目】 まわりの空気が急にすっと薄くなったような気がした。ふたつの乳首が着衣の下で硬くこわばるのがわかった。 英語翻訳:【 Page 26, line 9 from the bottom】 Sumire felt the air around her suddenly grow thin. Her nipples tightened under her dress. 【レビュアーによる翻訳】 すみれは自分の周りの空気が突然薄くなっているのを感じた。彼女の乳首は着衣の下で硬くなった。 ◎翻訳の判定:〔翻訳英文では、村上の良さが失われている〕 11:[ 主人公である「僕」が、すみれに象徴と記号の意味するところの違いを説明している ] 【ページ45、8行目】 「いいかい、つまり矢印は一歩通行なんだ。天皇は日本国の象徴ではあるけれど、日本国は天皇の象徴ではない。それはわかるね」 英語翻訳:【Page 31, line 8】 “Okay, how about this – the arrow points in one direction. The emperor is a symbol of Japan, but Japan is not the symbol of the emperor. You understand that, right?” 【レビュアーによる翻訳】 「いいかい、こんな例えはどうだい ― 矢印は一方向を指している、ということなのさ。天皇は日本の象徴である、だけど日本は天皇の象徴ではない。これは分かるよね」 ◎翻訳の判定:〔村上の方が、かなり優れている〕 12:[ ミユウはすみれに自分の状況を説明している ] 【ページ73、後ろから6行目】 「ここにいるわたしは本当のわたしじゃないの。今から14年前に、わたしは本当のわたしの半分になってしまったのよ。わたしがそっくりわたし自身であったときに、あなたに会えたらどんなにか良かっただろうと思う。でもそれはいまさら考えてもしかたのないことなの」 英語翻訳:【Page 51, line 5 from the bottom】 “The person here now isn’t the real me. Fourteen years ago I became half the person I used to be. I wish I could have met you when I was whole – that would have been wonderful. But it’s pointless to think about that now” 【レビュアーによる翻訳】 「今ここにいるわたしは、本当の私じゃないの。14年前に、わたしは、あるべき私の半分の人間になったの。わたしが、丸ごとの 《100》 であった時にあなたに会えていたら・・・どんなにか良かったでしょうね。だけど、今となっては考えても仕方のないことなの」 ◎翻訳の判定:〔村上の方が、ほんの少し優れているか?〕 13:[ ミユウはすみれに自分の生きてきた状況を説明している ] 【ページ75、7行目】 「・・・ピアノはわたしに、わたしの肉や血をまるごと、供物として要求していたし、それに対してわたしはノーと言うことはできなかった。ただの一度も」 英語翻訳:【Page 53, line 6】 “・・・・・The piano demanded every ounce of flesh(肉), every drop of blood, and I couldn’t refuse. Not even once ” 【レビュアーによる翻訳】 「・・・・ピアノは、すべての血や肉を要求してきて、わたしはそれを拒絶できなかった。ただの一度も」 ◎翻訳の判定:〔村上の日本語の切実さをPhilip Gabrielは理解してない〕 14:[ローマから「僕」に送られてきた、すみれの手紙 ] 【ページ110、8行目】 うまく説明できないんだけれど、そうね、ぐっすり眠りこんでいるあいだに、だれかの手でいったんばらばらの部品に分解されて、それからまた大急ぎで組み立てられたみたいな感じ、と言えばいいのかな。そういうのってわかりますか? 英語翻訳:【Page 77, line 12 from the bottom】 It’s hard to put it into words, but I guess it’s as if I was fast asleep, and someone came, disassembled me, and hurriedly put me back together again. That sort of feeling. Can you understand what I’m getting at(ねらいとする)? 【レビュアーによる翻訳】 言葉にするのは難しいんだけど、思うに、わたしはあっという間に眠りに落ちて、そして誰かが来て、わたしのことを分解してしまい、そのあと、すごい速さで再び元通り組み立てるの。そんな感じなの。 わたしが言わんとしていること、わかる? ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabrielの翻訳英文、かな?〕 15:[ギリシャにいるミユウから、日本にいる「僕」に突然の電話がかかってくる ] 【ページ123、3行目】 シーツにはまだ午後のセックスの記憶がかすかに残っていたし、カーディガンのボタンを掛け違えたみたいに、すべての物事が一段階ずつ現実との接点をうしなっていた。 英語翻訳:【Page 77, line 12 from the bottom】 The bed sheets still retained a faint memory of the afternoon’s lovemaking, and reality was one step out of line(調和しない), a cardigan with the buttons done up wrong. 【レビュアーによる翻訳】 ベッドのシーツは、午後の情事のかすかな記憶をまだとどめていた、そしてカーディガンのボタンをひとつずつ掛け違えているかのように、いま一つ現実感はなかった。 ◎翻訳の判定:〔村上圧勝:村上の原作 >> Philip Gabrielの翻訳英文〕 16:[ギリシャにいるミュウからの連絡があり、「僕」は飛行機に乗るため成田空港のラウンジで少し眠っている。夢を見ているらしい ] 【ページ130、6行目】 世界は現実性の核を喪失していた。色は不自然で、細部はぎこちなかった。背景ははりぼてで、星は銀紙でできていた。 英語翻訳:【Page 77, line 12 from the bottom】 The world had lost sense of reality. Colours were unnatural, details crude(雑). The background was papier mache (張りぼて), the stars made out of aluminum foil. 【レビュアーによる翻訳】 世界はリアリティを失っていた。色は不自然で、細部は雑にできていた。背景は張りぼてであり、星はアルミ・フォイルでできていた。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 > Philip Gabrielの翻訳英文、でしょう〕 17:[ギリシャでミュウと合うことが出来た「僕」。ふたりはすみれのことについて話をしている ] 【ページ143、1行目】 彼女はオリーブをひとつ口に入れ、指で種をつまみ、まるで詩人が句読点を整理するみたいに、とても優雅にそれを灰皿に捨てた。 英語翻訳:【Page 102, line 10 from the bottom】 Miu popped an olive into her mouth, grasped the pit(サクランボなどの種) with her fingers and, like a poet getting the punctuation just right, gracefully discarded it in an ashtray. 【レビュアーによる翻訳】 ミュウはオリーブを口に入れ、指で種をつまみ、詩人がまるで正しい位置に印をつけるみたいに、優雅に種をゴミ箱に捨てた。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabrielの翻訳英文〕 18:[ギリシャでのミュウと「僕」。ふたりはすみれが煙のように消えてしまったことについて話をしている ] 【ページ147、11行目】 語るべき言葉を探しているというよりは、始まりも終りもない個人的な記憶の中にひたっているみたいに見えた。 英語翻訳:【Page 106, line 5】 It didn’t look like she was trying to find the right words she wanted to say, rather that she was immersed(浸る) in some personal memory, one without beginning and without end. 【レビュアーによる翻訳】 彼女は語るべき正確な言葉をみつけようとしているようには見えず、むしろ始まりも終りも無い、ある個人的思い出に浸っていた。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabrielの翻訳英文。正確には、Gabrielの英文は多少原文とずれているが〕 19:[ミュウはすみれとのギリシャでの数日間の日常について、「僕」に語っている ] 【ページ154、7行目】 「わたしは世界の端っこにいて、そこに静かに腰かけていて、誰もわたしの姿はみえない。そんな気がしたわ。ここにいるのはわたしとすみれだけ。・・・・」 英語翻訳:【Page 111, line 7】 “There we were, sitting quietly on the edge of the world, and no one could see us. That’s the way it felt – like Sumire and I were the only ones here. ・・・・・・・” 【レビュアーによる翻訳】 「私たちはここに、世界の端っこに静かに腰かけていて、誰も私たちを見ることはできないの。 そんなふうに感じられたわ―――すみれとわたしがここにいる、たった二人のように。・・・・・」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 > Philip Gabrielの翻訳英文。村上の文章は端正である〕 20:[ミュウが、女子高でのカソリック講話を思い出してすみれに話している ] 【ページ158、後ろから5行目】 「・・・・わたしは最初それは何かの冗談だろうと思ったの。その次になにか愉快なオチがくるんじゃないかって。でもオチはなかったわ。・・・・」 英語翻訳:【Page 114, line 15】 “At first I thought it was some kind of joke. I was waiting for the punchline(オチ). But there wasn’t one. ” 【レビュアーによる翻訳】 「・・・・・わたしは最初、それは何かの冗談だろうと思ったの。オチを待っていたの。でも、そんなものはなかったわ。 ・・・・・」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 > Philip Gabrielの翻訳英文。Philip Gabrielの文章は雑〕 21:[すみれが消えてしまう前に、自分のパソコンに残していた文章 ] 【ページ202、1行目】 わたしたちがもうたっぷり知っていると思っている物事の裏には、わたしたちが知らないことが同じくらいたくさん潜んでいるのだ。 理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない。 それが(ここだけの話だけれど)わたしのささやかな世界認識の方法である。 英語翻訳:【Page 146, line 9】 On the flip(裏返す) side of everything we think we absolutely understand lurks (潜む) an equal amount of the unknown. Understanding is but the sum of our misunderstanding. Just between us, that’s my way of comprehending(理解する) the world. In the nutshell(木の実の殻). 【レビュアーによる翻訳】 わたしたちが完全に理解している、と思っていることの裏側には、まさに同量の知らないことがあるの。 理解は誤解の総体なの。 わたしたちの間では、これが世界を理解する方法なのです。殻の中において。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel。 特に、Philip Gabrielは原文の―――(ここだけの話だけれど)――-を誤理解している??〕 22:[主人公「僕:小学校教師」のクラスの子が、スーパーで万引きをして、しょぼい部屋に呼び出されている ] 【ページ275、後ろから5行目】 コンクリートの壁に走ったひびは「どうせそのうちにそっくりと壊されるのだから、とくに気にしないでもらいたい」と言葉少なに訴えかけているように見えた。 英語翻訳:【Page 146, line 9】 Hey, don’t worry about us, the cracks in the concrete walls seemed to say, They’re just going to tear this place down (tear down: 取り壊す) someday anyway. 【レビュアーによる翻訳】 「やあ、あまり気にしないでくれ」と、コンクリート壁にできたヒビ割れが言っているようだった。「どうせそのうち、この場所は取り壊されるのだから」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel〕 23:[スーパーの警務員の悪意のある様子 ] 【ページ276、後ろから3行目】 眼鏡をかけなおすと、冷たさは後退して、力のあるよどみのようなものが後をうめた。どちらにしてもそれは、人を和ませることを目的にした視線ではなかった。 英語翻訳:【Page 146, line 9】 When he put them (眼鏡) back on, the coldness retreated(後退する), replaced by a kind of powerful glazed (どんよりした) look. Either way, this wasn’t a look to put people at their ease (安心). 【レビュアーによる翻訳】 彼が眼鏡をかけなおすと、冷たさは少なくなるものの、ある種、非常にどんよりとした表情が、とって代わった。とにかく、彼の表情は他人に安らぎを与えるようなものではなかった。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 ≒ Philip Gabriel〕 24:[スーパーの警務員が先生という職業に対する悪意ある見解をのべながら] 【ページ278、4行目】 口もとにはひからびたような笑いが浮かんでいた。でも眼鏡の奥にある目は、限定された動きだけをもとめる深海の捕食生物のように、ぼくの底を探っていた。口ぶりは丁重だったが、それはあくまで表面だけのものだった。 英語翻訳:【Page 200, line 12】 A stillborn(死産のような) smile played around(遊び回る) his lips, yet his eyes remained those of a deep-sea predator searching my depths for the slightest movements. His words were polite enough, but that was only a veneer (見せかけ). 【レビュアーによる翻訳】 死んだような微笑みが彼の口もとにうかんでいたが、目は、深海の捕食生物のように、ちょっとした動きからも、私の心の中を、ずっと探っていた。彼の言葉は丁寧ではあったが、単に見せかけだけであった。 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel〕 25:[主人公「僕」の夢想か:すみれが隣の世界から帰って来て] 【ページ316、後ろから1行目】 「あなたと会わなくなってなってから、すごくよくわかったの。惑星が気をきかせてずらっと一列に並んだくれたみたいに明確にすらすらと理解できたの。わたしにはあなたが本当に必要なんだって。 あなたはわたし自身であり、わたしはあなた自身なんだって。・・・・」 英語翻訳:【Page 228, line 4】 “When I couldn’t see you any more, I realized that. It was as clear as if the planets all of a sudden lined up in a row for me. I really need you. You’re a part of me; I’m a part of you. ・・・・” 【レビュアーによる翻訳】 「わたしはあなたと会えなくなってからよくわかったの。惑星がわたしのために、突然直列に並ぶくらい確かなことなの。わたしには、本当にあなたが必要なの。あなたはわたしの一部であり・・・・、わたしはあなたの一部なの。・・・・」 ◎翻訳の判定:〔村上の原作 >> Philip Gabriel。村上の原文が圧倒的〕 26:[主人公「僕」は、これまで起こったすべてのことを内省している] 【ページ318、後ろから3行目】 それからぼくは指をひろげ、両方の手のひらをじっと眺める。ぼくはそこに血のあとを探す。でも血のあとはない。血の匂いもなく、こわばりもない。それはもうたぶんどこかにすでに、静かにしみこんでしまったのだ。 英語翻訳:【Page 229, line 4】 I spread me fingers apart and stare at the palms of both hands, looking for bloodstains. There aren’t any. No scent(におい) of blood, no stiffness(凝り、関節などが固まる). The blood must have already, in its own silent way, seeped(浸みこむ) inside. 【レビュアーによる翻訳】 ぼくは血の跡を探して、指を広げて両方の手の掌(てのひら)をみつめる。そんな痕はどこにもない。匂いも、こわばりもなかった。 血はもうすでに、静かにどこか内側(うちがわ)に浸み込んだにちがいない。 ◎翻訳の判定:〔村上の原文が圧倒的にすばらしい〕 [考察] この論文では、村上がこだわりを持って書いたと想像される【センテンス(s) 26カ所】が、英語翻訳者Philip Gabriel によってどのように表現されているかを丁寧に調べてみた。言うまでもなく、選択した26のセンテンス はレビュアーが、村上の文章を【優れた文章】、【一見、回りくどいが、小説全体にはまると良文】、【端麗・端正と言うしかない文章】、【悪文かもしれないが、村上が書くと美文に錯覚】 の何れかに分類されるものです。 従って、村上 VS. Philip Gabriel での優劣判定を、各26センテンスについて冗談のように付けたが、そこに大した大きな意味は無い(村上 > Philip Gabriel は自明の故)。 小説に限らず、学術論文においても、著者の力の入れ方が半端では済まない場面になることが時々ある。そんな時に著述者の力量が問われる。少し生意気な、もちろん偏見さ満載の判定ですが、多くの小説家(研究者)は、ある基準に明らかに達していない、(と思われる)。学術論文の場合は、得られた研究結果に新奇性・重要性があれば、論文の書き方が陳腐であろうが平易であろうが、最終的には得られた研究の事実(真実なら申し分ない)が饒舌に、数十年、・・・・時に数百年にわたって、そのすばらしさを語ってくれる。その点、小説は、源氏物語のような、一部の例外を除いて、その有効期間は非常に短い。 ただし、例外もあり、その最右翼がここで取り上げている村上の一連の作品でしょう。村上の作品が―――1)村上の作品を1つくらいしか読んだことのないがなんとなくやっかみ半分で嫌い、2)小説に描いてあることを認識できなかった、3)あるいは内容は理解するものの本当に村上の世界が身体になじまない、・・・などのアンチの人は別として――――かくも長期間にわたり世界中のフャンに愛されているのはなぜなのでしょうか? その答えのヒント、あるいは解明のインスピレィションを・・・・この論文の、かなり安易で陳腐な比較で・・・・誰か、賢い人の脳に与えられたら、これに勝る喜びはありません。 最後に余談ですが、ここで、レビュアーが焦点を当てた『スプートニクの恋』は、全体の文章は村上の小説にしてはかなり凝っており、(生意気な言い方ですが)日本の他の純文学の作家に比べても数段上のクオリティーを有している。ただ、面白いことに、レビュアーが、ほとんどのセンテンスを個別に見てみると、「変な表現?!」と感じられるセンテンスも散見される。ただ、この“変なセンテンス”も作品全体の中に入ると、逆の意味で “作品全体を輝かせるセンテンス” となっている。 このことが、村上作品と、他の凡庸な作家、やっかみで村上作品を批評する評論家の文章とを明確に区分けする特性のひとつだと考えます。 村上の中期より後の小説では、極めて技術的に凝った表現が普通の文章の中に、そっと挿入されている。それがあまりに自然になされているため、うっかりすると読者は殆ど気にもせず読み進んで行く。 これを、たくさんいる凡庸な小説家が、スケベ心、あるいは自身の軽薄な自慢から「どう? わたしの優れた言語表示能力は?」の裏付けでもしてるかのようにやられると、わたしはシラケてしまう。 [使用作品] 1. Haruki Murakami, 「Sputnik Sweetheart」、 Translated Japanese by Philip Gabriel, Vintage Books, London, 2002 2. 村上春樹、「スプートニクの恋人」、講談社文庫、2001,4,15 | ||||
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| ミュウの観覧車の部分がとても怖いです。夜中に読まないほうが良いです。村上春樹さん作品のなかではシュールホラーカテゴリーです。 | ||||
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| 無事に商品を受け取りました。ありがとうございました。本の内容については、よく分からなかったです。ただ、著者の読みやすくおしゃれな文章が好きなので、そこは満足でした。 | ||||
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| 村上流の比喩表現が楽しく、ストーリーもなかなか面白く、あっという間に読み終わりました。理屈屋の私には、道理が通らず引っかかるところがあって、ほとんどは「ぼく」の夢のように思われたりもするわけですが、要はかなりファンタジー寄りの作品ということなんでしょうね。 | ||||
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村上春樹の小説には、精神医学的には、発達障害、解離障害、パーソナリティ障害、統合失調症等の病名のつくであろう女性を主要人物として登場させ、主人公の男性がその病的な純粋さに惹かれるという設定が数多くみられる。主人公も抱えているものがあり、その抱えているものが、1人っ子であった村上春樹自身の投影と思われ、この病的な感覚が、村上春樹のたまらない魅力になっていると感じる。
所々に優れた描写があるものの、残念ながらこの小説は、村上春樹の長編小説の中では上位に位置することのない小説であろう。