正雪記

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評判

正雪記の評価:

3.91/5点 レビュー 22件。 B ランク

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平均点3.91pt

Amazonレビュー一覧

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全24件 21〜24 2/2ページ
No.4
(3pt)

山本周五郎の史眼

山本周五郎の眼差しはいつも変わらない。その弱者への勁くて優しい眼差しがこの小説では江戸初期の浮浪化した浪人たちへ向けられ、彼らを救うために腐心する由井正雪と磐石な幕府の基礎を築くため不逞浪人たちを駆逐しようとする「知恵伊豆」松平信綱との対決という構図になっている。しかし、別の面では、江戸へ出て軍学者の石川主税助の下で修行に励んでいた久米与四郎が由井正雪になっていく一種のビルドゥングスロマンとも読める。しかしそれでは、起承転結の承の部分つまりさなぎが脱皮して蝶に生まれ変わる過程の描写が十分でないように思うのは評者の勝手な思い入れであろうか?それはともかく、正雪の生涯の恋人ともいえる石川はんの「底知れぬ知恵と勇気」そして正雪の、「徒労感」に打ち勝つ行動力など、周五郎ワールドから一歩を踏み出した展開、そして浪人救済のための蝦夷地入植などのちの田沼意次の政策を先取りし、埋蔵金や島原の乱など全体に伝奇的要素もふんだんに取り入れた仕掛けの楽しい作品に仕上がっている。蛇足ながら名作「さぶ」もお忘れなく。
正雪記 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 正雪記 (新潮文庫)より
4101134162
No.3
(5pt)

いまこそ由比正雪を待望する

家光下の世に突如勃発した島原の乱。異教徒による叛乱であるとして、徳川政権は知恵伊豆松平信綱を彼の地に送り込み徹底的に弾圧する。しかし、島原の乱は実際のところ農民叛乱なのであり、「パックス・トクガワーナ」の陰に、改易などで食い詰めた武士階級の浪人化の問題がトグロを巻いていたのだ。名人・周五郎はそうした「歴史観」のもとに筆を進めており、非常に説得力がある。
本書はいまこそ読まれるべき傑作ではないか! 由比正雪の武士目線が中心であるため、農民の視点は少ないが、巻末近くの「武士の農法」とも言うべきエピソードにおけるその独善性も指摘しており、決して農民の境遇や目線を等閑視しているのではない。
いま、本書に何を読むか。ごたごた言うのはやめるが、現在、由比正雪はどこにもいない。
正雪記 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 正雪記 (新潮文庫)より
4101134162
No.2
(4pt)

予想外に面白かった

最初の部分を読んだときにはこの後どうなるやらという展開だったが、意外や意外、思ったよりもかなりおもしろ
い作品だった。由井正雪の乱とは人為的に幕府によって作られた事件であるというコンセプトのもと書かれて
おり、細かな史実が不明な分、通説とは全く違う見方で再評価しようとしている。その意味で栄花物語の田
沼意次に通じるものがある。この作品での正雪は、山本周五郎氏自身の考えでもあろうが、自害もしくは自
滅を拒否する生き方を選び、あくまで生き抜くこと、最後まで努力することに価値を見出している人間として
描かれており、「樅の木は残った」や「長い坂」と同じ思想で貫かれている。つまりはきわめて正統的な山本
周五郎作品ということが言えるだろう。
正雪記 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 正雪記 (新潮文庫)より
4101134162
No.1
(4pt)

怪力・乱心を語りつつ...組織権力に破れるポジティブな理想主義者の姿はリアルに美しい

由井正雪..といって、どことなくインチキくさい人物を思いうかべこそすれ、ヒロイックかつ真っ当なイメージは描きづらい。そもそも、正雪は駿府の紺屋の息子といわれ、慶安事件そのものはもとより、その出自自体謎めいている人物だ。周五郎はこの人物に、当時の江戸幕府の浪人弾圧策に立ち向かった冷静なNPOとしての役柄を与えている。結果、謎の洞窟金銀財宝や謎の占星術師と御嶽山で修行、日英混血の霊感少女などを登場させ、世にすくっと立った後の与志郎、すなわち民部正雪のカリスマ性にリアリティを持たせるという荒技を用意した。そのため、初期の海南太平記のような荒唐無稽さを幾分含んでいる嫌いはある。また、特に覚念坊の取り扱いに破綻があったり、各人のキャラ設定に甘いところもあるが....その辺は割り引かねばならんが、このお話は「何があろうと、どんな困難があろうと、精一杯生きて、あきらめないでやるだけやろうよ」というのが骨太なテーマとしてあり、充分重みのある読後感を楽しめる。ところで、正雪と惹かれあいながら結局結ばれないおはんのストーリーは柳橋のおせんちゃんとかぶるところがあって、なかなかどきどきした。実際はわからんけど、周五郎の正雪は原田甲斐や田沼意次と並ぶ素敵な人物である。間違いない。
正雪記 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 正雪記 (新潮文庫)より
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