パノラマ島綺談
評判
パノラマ島綺談の評価:
4.03/5点 レビュー 35件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1〜10 1/1ページ
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パノラマ島綺談の評価:
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だが私は、それよりも清張が乱歩作品に対して否を唱えた根底には、乱歩作品にやたらと登場する「天涯孤独ではあるが親が残した幾許かのの財産があり喰うには困らない、それ故に働いていない」という所謂「遊民」どもに対する反感があったのではないかと考察するのだ。職に就いても「こんな仕事に男子の一生を費やせるか」といって辞めてしまい、職を転々とするも結局は長続きしないので無職になり下がる。けれど遺産が入るので働かない。そして犯罪嗜好者になり世間に迷惑を及ぼす。こんな唾棄すべき主人公どもにたくさんの家族を養うため、長い長い下積み生活を送ってきた清張氏が反感を抱かないはずがない。特に本巻に収録されている「空気男」に登場するふたりのバカ主人公には私は憎悪すら感じる。何が、働きもしないで「退屈だ、退屈だ」であろうか。しかも食うには困らず、その上、悪所通いで知り合う??常にやり繰りで汲々としている私などは「ふざけるな!!」と言いたいところである。
なるほど探偵小説の主人公には自由度を持たせるため、時間に縛られているサラリーマンは向かないかも知れない。原稿を書くために机に張り付かねばならない乱歩にとって小説の主人公はせめて拘束を脱した「自由人」でなければならなかったのかも知れない。だが、それにも限りがある。そういう「遊民」設定の主人公があまりにも多すぎるのだ。親だの親戚の遺産でもって食っているヤツなど世に一握りであろう。みな働いて食っているのだ。そして多くの者は「真に自分のやりたいこと」を職業にしているわけではない。皆どこかで妥協しつつも職業を選び、懸命に働いて毎日毎日を生きている。昨今では「就活」などと言って何社も何社も試験を受けて回る学生さんや求職者もいて、なかなか仕事に就くのも大変だ。それが現実の世の中なのである。
山田風太郎氏は乱歩作品を「あと百年は新しい」と評したが、こんな「遊民」を主役に設定した変態作品がそう長く愛読されるとも思えぬ。また、この「空気男」なる作品。掲載誌の休刊に伴い中絶したが乱歩は「いつか続きを書きたい」などと言っていたそうだが、その神経もわからない。
ともあれ、清張氏が乱歩批判に奔った根底には私同様、これら「遊民」設定の主人公どもへの反感があった、と考察するのである。