■スポンサードリンク


(アンソロジー)

小松左京“21世紀”セレクション1 見知らぬ明日/アメリカの壁【グローバル化・混迷する世界】編



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

小松左京“21世紀”セレクション1 見知らぬ明日/アメリカの壁【グローバル化・混迷する世界】編の評価: 3.00/5点 レビュー 6件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(5pt)

「未来予測」には疑問、でもレアな中・長編が読める。

徳間文庫の特選。小松左京なら主要作品は読んでいるーーとスルーしようとしたが、本の大半を占める長編1作と中編2作が未読だった。即購入した。主として60年代の作品だ。

「アメリカの壁」北米と中米が白い壁に覆われ、外界との連絡が不可能となる。
遅れた世界の面倒を見ることに疲れたアメリカが、超モンロー主義による引きこもりを選んだらしい。
アメリカが善意の権化のように描かれているのに驚く。
「四月の十四日間」日米が馴れ合いの戦争を始める。日本はほとんど損害を受けず、嬉々として敗北を受け入れた。たしかに敗戦によって日本人は豊かで自由になった。だからと言ってもう一度負ければもっと幸福になるというものではないと思うが。
上記二作のアメリカへの信奉ぶりには驚かされる。「小松左京の未来予測は凄い」というコンセプトの本らしいが、むしろ半世紀前の国際感覚のお粗末さにあきれ果てた。小松さんが極端な親米主義だったわけではなく、当時の日本人の常識に合わせたのだろう。

「HE-BEA計画」国と地域による格差がテーマの陰謀SFだ。
ここで提示された問題は、半世紀後の今日は解消どころか拡大している。重い後味の佳作だ。
「見知らぬ明日」中国チンハイ省が異星人の攻撃を受けた。現在の中国ではない。国連に加入する前の、謎に包まれた中国だ。国連の中国とは国府(台湾)のことだったのだ。
侵略SFは地球の科学者が集まって対策を練るのが定番だが、何しろ当の中国との意思疎通が不自由なのだ。チンハイ・ウイグル自治区と侵略を進める宇宙人は、中ソ国境を突破してソ連軍とも交戦を開始する。侵略SFの形をとった政治シュミレーションである。300ページ近いボリュームだ。重厚で読み応えのある、小松左京らしい力作だ。本作を読むためだけに買う価値があった。

「極冠作戦」月からの移民二世が、温暖化で水没した地球を訪れる。
地球をもとの姿に戻そうという計画は、障壁に突き当たる。技術SFであり、政治小説でもある。
短編やショートショートは、全部読んでいた。
クレジットカードについて作中で解説しているのが時代を感じさせる。未読長編を評価して、星五個。
小松左京“21世紀Amazon書評・レビュー:小松左京“21世紀"セレクション1 【グローバル化・混迷する世界】編 見知らぬ明日/アメリカの壁 (徳間文庫)より
4198946825
No.5:
(5pt)

頑迷なジャンル読者から開放するための試み

小松左京の未来論を軸にした今回のアンソロジーの試み、私は非常に面白いと思う。

ジャンルに固着した老害読者は「小松左京は預言者ではない」と絶叫し、SFの神様としての小松にしがみつこうとするだろうが、本来彼の持ったヴィジョンと知見は、一般社会に通用する広範な読者に通じるものである。その証拠に、彼の代表作『日本沈没』は普段SFを読まない読者の信頼を得、未だにドラマ化され、再刊を繰り返して、今も新しい読者を得ている。

いわば今回のこのアンソロジーは、“(一部の低劣な)ジャンル専門読者(太字)”が取り憑かれている偶像としての小松像ーー盲目的な祭り上げーーから開放し、一般社会に生きる読者に、「未来学」を提唱した社会批評家としての小松(すなわち小説のみならず、社会啓蒙書を多く著したウェルズの系譜に連なる)をプレゼンテーションしているわけだ。

その意図は、解説にあえてSF人脈の人間を充てず、評論家である池上彰を置いたこと、あるいは冒頭に小松の提唱した未来学ヴィジョン『現在から未来を見る法』を置いたことからも、十分に伺える。

この文中、小松は「未来もののSFを書くことの中には「現在を未来化する」、すなわち、現在のさまざまな要素を未来にかけて延長する、という操作をベースにして、「未来を現在化する=現在を過去化する」という二段階の操作がふくまれていることになります」と述べている。

これ即ち、現実に対し空想要素を如何にExtrapolation(外挿:ある既知の数値データを基にして、そのデータの範囲の外側で予想される数値を求める方法論)するかの手付きを述べているわけだ。これこそがSFという「方法論」の真髄であり、彼が未来SFを書く際に手放すことのなかった根本理論だったわけである。

さらに小松は言う。
「「未来もの」SFは、イマジネーションを通じて、現実に新しい見方あたえることにより、現実ーーあるいは社会現象ーーそのもののかくされた性質を探求する性質をもっている」と。

すなわち彼は「未来そのものの厳密な予測」ではなく、未来に起きるであろうことの“性質”を洗い出すために未来SFを描いているのだ、と。

さらに引用するなら、こうも書いている。
「まず「過去において人々はどんな現実観(あるいは世界観)を持っていたか、またどんな“未来観”あるいは“未来予測”を持っていたか」ということを調べることによって、その後の「現実の歴史」の展開によって、過去における世界観、未来観が、どの程度あたり、どの程度はずれたかということをチェックできます。そして、なぜはずれたか、なぜ当たったか、という原因を検討することによって、現在から見る未来像の構築の上に、大いにプラスすることがあるでしょう」と。

「小松左京はノストラダムスじゃない!」とか「SF作家を予言請負業扱いするな」とお怒りの諸兄はこのエッセイ読まずにお好きな小説だけ読んでおられるのではないか? それ自体は全然構わないが、小松の仕事、小松の言葉を大上段に振りかぶって定義しようと勢い込むなら、まず当人が書いたものをきちんと精査されてはいかがなものか。

お持ちの本には、【何が当たり、どう外れたかを、逐次検証せよ】とご本人自身の決意と思想がきちんと明示されているのである。

要するにこのアンソロジーは、昭和に足を置いていた小松の「未来観」のチェック本なのである。当然、当たった外れたはあるだろうし、そもそもフィクションである以上、細部までピッタリと“当たる”ことはないし、その必要もない。

ある程度蓋然性の高い予測と、慎重な外挿の手法を守ってヴィジョンを描けば、<未来に起きるであろうことの“性質”>の核を捉えることができる。

すなわちその成果が『復活の日』における【世界的ウィルスの蔓延とパンデミックのパニック】というおおまかの状況を言い当てたわけであり、『アメリカの壁』では【保守的なリーダーの出現によるアメリカの内向化】という精度の高い予測を的中させたのだ。本書でいえば、『四月の十四日間』における【日米の蜜月の終わりと摩擦の発生+奇妙な共生関係の維持】の原理解明は実に見事で。日本資本によるエンパイアステートビルの買収を「経済の真珠湾攻撃」、あるいは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
と騒がれ、マイクル・クライトンをして『ライジング・サン』を書かせるに至ったバブル期前後の転倒した日米の衝突ぶりを、十数年早く小説に仕立て上げた、隠れた名作だと思う。この企画設定でなければ、日が当たることもすくない作品を、よくぞ発掘してくれたものだ。

また本書の中核を成す『見知らぬ明日」のチョイスには、本当に痺れた。通常なら、作品序盤の中国軍の軍事行動の開始部分のみを<予言実現>として読むのが常道だろうが、今回再読してみて感じたのは、<外敵>への対抗で共闘する各国という構図自体、コロナのアナロジーとしても捉えられるしーーさらには覇権国家として台湾(そして米国)との対立色を明確にし始めている中国もまた、“枠の外”の存在として置き換えることが可能になっていくのではないか、ということだ。

無論、私は嫌中論に傾くネトウヨではないので、その構図が『嬉しい』わけではもちろん無い。地政学と政治体制によって変化する<未来図>の行方が、このタイミングで小松のヴィジョンの暗示した絵柄に重なりつつあることに驚嘆しているにすぎない。

小松の言う<未来学>とは、このように常に「今」を起点に、越し方を踏まえ、向かいし方を眺望する人類の水先案内として、人類に不可欠のヴィジョンなのだということを、本書に集められた各編は教えてくれていると思う。

たった一本の冒頭のエッセイーー小松自身の言葉によってーーこのシリーズ『未来を視た人<ザ・プロフェット>』全体のヴィジョンと意義を代表させた、記名なき徳間の編集担当者の慧眼とスマートさには尊敬の念すら抱く。

一見、小松=予言者と持て囃す時流に載っかった「売らんかな」本位の企画に見せかけて、実は小松がライフワークにしていた未来学の容貌を浮かび上がらせ、なかなか実現しなかった“21世紀初頭における実地検証”の場を作ってみせたのだ。ーーチョイスされた作品ラインナップの通好みな渋さといい、既存アンソロジーと角度を変えた切り口設定といい、小松作品に通暁したかなりの手練の編者がこのシリーズの背景には居るのではないかと、推測してみたのだが如何だろう。

いずれにせよ、非常に優れた試みであり、いつまでも十代に自分が読んだSFの有り様に拘り、ジャンルにしがみつく面倒なオールドファンに潰されること無く、のびのびと刊行を続けて頂きたい。(このような老害SF読者がAmazonのレビューに跋扈すること自体、本来自由であるはずのジャンルの発展の邪魔をしているように思えてならない。)

私は十分に堪能したし、多分狭義のSFジャンルよりも更に広い層に向けたスタンダードとして、後にも残る作品集になっていると感じる。さらにこのシリーズの続刊に期待したい。
またそれが小松左京という偉大な作家に対する最大のリスペクトにもなるのだと思う。
小松左京“21世紀Amazon書評・レビュー:小松左京“21世紀"セレクション1 【グローバル化・混迷する世界】編 見知らぬ明日/アメリカの壁 (徳間文庫)より
4198946825
No.4:
(1pt)

多くの傑作が収録されているのだが

故人の作品を、恣意的な編集で現代批判(を利用した商売)に利用するのは大変問題があります。そもそも預言と予言を混用している時点で、編纂者の文学に関わる資質そのものに疑問を感じます。表紙も酷い。
SFなのだから未来予測的、社会批評的な側面があるのは当たり前で、「復活の日」にしてもパンデミックを描いているというだけで殊更予言的な内容ではありません。
小松左京“21世紀Amazon書評・レビュー:小松左京“21世紀"セレクション1 【グローバル化・混迷する世界】編 見知らぬ明日/アメリカの壁 (徳間文庫)より
4198946825
No.3:
(1pt)

作品自体は名作・・・なれど

明日当り届く『さよならジュピター』のBlu-rayに
合わせて『見知らぬ明日』読んどきたいな。と、思ってたら渡りに船。
TUTAYAのレジに持っていきました。
収録作品の面白さは周知の通りなのですが。
各作品につけられた××を予言している的なキャプションが興を削ぐ。
この編者のアタマの中は、SF作家=未来予測がおシゴト
というレッテルが大手をふるっていた
'60年代あたりまでの認識で
今日まで来ちゃってるんじゃないか?
なんか、1969年アポロ11号の月着陸時に
某マスコミ関係者が吐いた
"SF作家は書くことが無くなりますね"
という発言に通じる浅墓さを強く感じる。
もう、イイカゲン予言だ!予言だ!って持ち上げ方はやめませんか?
小松左京“21世紀Amazon書評・レビュー:小松左京“21世紀"セレクション1 【グローバル化・混迷する世界】編 見知らぬ明日/アメリカの壁 (徳間文庫)より
4198946825
No.2:
(5pt)

今の若い読者にこそ読んでほしい!

再ブームが来ている小松左京。
『日本沈没』ドラマ化のタイミングで、未来予言者として位置付けたオリジナル作品集が刊行された。何度読んだと言っても、やはり買わざるを得ない。
ジャーナリスト池上彰氏の解説も、意外にもSFファンだということが分かり近い存在に感じた。
若い読者には今小松左京の作品はどう映るのだろう。
読み進めながら、子供と話してみたいと思った
小松左京“21世紀Amazon書評・レビュー:小松左京“21世紀"セレクション1 【グローバル化・混迷する世界】編 見知らぬ明日/アメリカの壁 (徳間文庫)より
4198946825
No.1:
(1pt)

各文章に初出が明記されていない

ひどい
小松左京“21世紀Amazon書評・レビュー:小松左京“21世紀"セレクション1 【グローバル化・混迷する世界】編 見知らぬ明日/アメリカの壁 (徳間文庫)より
4198946825

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!