竈河岸: 髪結い伊三次捕物余話
評判
竈河岸: 髪結い伊三次捕物余話の評価:
4.72/5点 レビュー 25件。 A ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全50件 41〜50 3/3ページ
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竈河岸: 髪結い伊三次捕物余話の評価:
4.72/5点 レビュー 25件。 A ランク
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6篇中、興味深かったのは「暇(いとま)乞い」です。
時代小説は、架空の物語の中に、歴史上の実在の人物がうまく絡んできたりするといっそう興がわきますが、「暇乞い」には、蝦夷松前藩家老にして「夷酋列像」(アイヌの酋長たちの絵)の作者・蠣崎波響(作中では波音)が登場します。
不破の娘・茜が、本所緑町にある松前藩江戸下屋敷の奥女中(別式女)として勤めている縁で、幼馴染の伊与太の絵を蠣崎に見てもらおうと考え、引き合わせるという成り行きです。
小藩とはいえ家老職の武士が、まだ名前も知られていない修行中の絵師の卵と会うというのは、ま、普通に考えれば無理筋もいいところですが、そこは練達の語り手宇江佐です。茜が、亡くなった藩の跡継ぎの思われ人だったという重要な伏線がこれまで語られてきたことで、なんとなくありそうな話に仕立てています。
伊与太の絵を見た蠣崎が「これは浮世絵ではない。本画に近い。そちは絵の流儀を誤っているのではないか」とまで評価し、貴重な絵の具と絵筆を与えたところから、伊与太の運命は大きく動き出す…。いいですねえ。
親の跡を継がず、絵師になりたいという息子を、案じながらも応援する伊三次とお文。しかし芽が出るまでにどれほどかかるか分からない世界に入った伊与太を、語り部の宇江佐自身がもてあましているようにも感じていました。
それがここに来て大きく動きはじめ、敬愛する師匠・歌川国直に暇乞いをし、ときどき出入りしていた葛飾北斎から結髪亭北与(けっぱつていほくよ)の雅号をもらって信州に旅立つ。なにかがおきそうな、若い絵師の彷徨です。がんばれ伊与太と声をかけたくなります。
宇江佐は『桜花(さくら)を見た』(2004年)所収の短篇「夷酋列像」で蠣崎波響を正面からとりあげ、絵の力で藩の窮状を救う姿を描いています。エッセイでも何度も波響に触れ、敬愛を語っています。
茜が縁談を嫌って松前藩の江戸屋敷に奉公にあがるという話しになった時(シリーズ第10巻『心に吹く風』)は、「お、でましたね。得意の松前藩」くらいの感じでしたが、成長した伊与太と蠣崎波響(波音)を出会わせるなんてことまで思っていたのかな。
想い思われる伊与太と茜の身分違いの恋はどうなるのか。身分など超える生き方が江戸時代にはたくさんありましたよ、ということを書いてきた宇江佐だから、きっと実らせただろうな。読みたかった。
とうとう伊三次・お文夫婦にお別れする時がきてしまいました。
あらためて、宇江佐真理さんの冥福を祈ります。
江戸市井の人々の暮らしを書き続けた作家に、献杯。